子どもたちに関する事件【事例】



注 :学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ事件を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
880922 障害児
体罰事件
2005.5.4 2005.6.8更新
1988/9/22 愛知県名古屋市の市立南養護学校で、知的障がいをもつ上村創さん(17)が、授業中落ち着きがないなどの理由で、男性教師(34)に個別指導と称して更衣室に連れていかれて、指で右目を強く押さえられ、結膜下出血を起こし全治約3週間のけが。また、ズボンを下げられて、性器を強く握られた。教師は否定。
経 緯 1988/9/ 男性教師が、知的障がいをもつ男子生徒(17)を授業中落ち着きがないなどの理由で、個別指導と称して校舎内の更衣室に連れていった。男子生徒は教師から指で右目を強く押さえられ、結膜下出血を起こし全治約3週間のけが。また、ズボンを下げられて、性器を強く握られた。

学校側は、「友だちとプロレスをしてけがをしたようだ」などと両親に説明。

あとになって、創さんが「先生がやった」と打ち明けた。

教師は否定。
教師の言い分 教師は、「昼休みに個別指導した際、目の充血を発見した」「けがはプロレスごっこが原因」として、体罰を否定。
学校・ほかの対応 母親が教師の体罰について学校に抗議したが、「相手の教師に何度も確かめたがやていないというのでそれを信じる。目撃者もいないし、やったという証拠がない」と言われる。

半年後、弁護士立ち会いのもと、創さんが体罰の実態を話す機会をもったが、「知的障がいの子が、半年前のことを覚えているはずがない。母親が教え込んで言っているだけ」として、学校側は虚偽だと決めつけた。
背 景
(アンケート)
1994/4/ 「支える会」が、無作為に選んだ養護学校・特殊学級の親たちにアンケートを実施。
回答者の30%強の親が、「体罰はある」と回答。
具体的には、
「排泄を失敗して、足蹴りにされていた」
「ウロウロするので、傘立てに首をロープで縛られていた」
「すぐつねる教師がいて、体に跡をたくさんつけて帰ってきた」
「嫌いなおかずを吐いたら、往復ビンタで叩かれ、頬が真っ赤になっていた」
「痛がるので病院に行ったら、肋骨が折れていた」
などがあがった。

このアンケートの結果をもって、名古屋市や愛知県の教育委員会に交渉したが、「匿名や日時の特定がないので調査できずわからない」から「体罰があったとは思えない」として真剣に取りあってもらえなかった。
裁 判 1989/ 学校側が創さんの話を頭から信用しようとしないことから、「教師から体罰を受けてけがをした」として、両親が市を相手に約90万円の損害賠償請求。
被告側の主張 目撃者はなく、学校側は、「(先生がやったという)上村さんの証言は、だれかが後から学習させたもの」などとして、体罰は加えていないと主張。
また、「原告は精神薄弱者(原文のママ)であり、その能力は低いと判断され、そのような能力の者の発言の証拠能力はほとんど認められない」と主張。
原告側の主張 原告側は、「知的障害の有無やその程度と証言の信憑性・記憶能力とは関係が無い。本人は自分が体験したことを話す能力ほもっており、その正確さは普段の生活の中で確かめられている」と主治医や他の専門家の意見とともに立証。
判 決 1 1993/6/21 名古屋地裁で、障がい児の供述の信用性を認めて、市に約30万円の支払い命令。

大橋英夫裁判長は、「(知的障害者に)体験していない事実を自分で体験したように話をさせるのは困難」とする医師の鑑定を採用し、「供述は信用できる」と判断。
「因果関係など抽象的な思考には制約があり、部分的には的外れだったりするが、具体的な事実を問う質問には的確に回答し、自身の体験に基づく記憶の証言」として、体罰を認めた。
「教師は故意に原告に体罰を加えた。原告が被った精神的損害は大きい」などとした。
判 決 2 二審で、証言が断片的で矛盾しているとして、信用性を否定し、原告敗訴。

渡辺剛男裁判長は、「学校側より原告側弁護士に対する回答の方が際立って明確。母親の影響下でなされたのも明らかで、本人の記憶に基づくか判然としない」「証言は骨格だけで、質問の角度が変わると再現性が失われる」「裁判の場における供述は、それがいったん採用されると他人の権利(人権)が損なわれる結果に結びつくものであるから、他の生活場面における信用性の程度とは異なり、その信用性はあらゆる角度から吟味される必要がある」などとして、裁判上の証拠としては採用できないとした
けがについても、学校側の主張を否定できず、結果として体罰の立証は不十分と断じた。

最高裁に上告。
参考資料 1993/3/24朝日(月刊「子ども論1993年5月号/クレヨンハウス)、1993/6/22日経新聞(月刊「子ども論1993年8月号/クレヨンハウス)、「人権侵害は許さない。障害児にも平等な権利を」/上村節子/月刊「子ども論」1996年2月号/クレヨンハウス



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