子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
950531 いじめ自殺 2000.9.10. 2001.5.25 2003.7.1更新
1995/5/31 鹿児島県鹿児島市立坂元中学校に転校2ヶ月で、池水大輔くん(中3・14)が、自宅のベランダで首吊り自殺。
経 緯 1995/4/18 転校3日目で大輔くんは、同級生2人に殴られ、2千円を脅し取られた。この出来事をきっかけにふさぎ込むようになり、無断欠席もした。

学校側は、加害者の親子がお金を返し謝ったから一件落着とする。

その後、クラス、学年にいじめが広がる。

自転車が壊される、腹が痛いというなど、息子の異変に気づいた両親が学校に訴え、担任教師に学校での様子を尋ね、「声をかけてやってください」と頼んでいた。しかし、担任も生徒指導主任も取り合わず、市立病院の精神内科受診を勧められた。

5/31 朝、大輔くんは腹痛訴えて、登校を嫌がったが、母親は諭して、仕事に出かけていた。
学校・ほかの対応 遺書はなく、事件直後に学校は2カ月前の暴行恐喝事件は認めるが、「この問題は大輔くんの家族に謝罪するなど、すでに解決ずみです」として、いじめとの関係を否定。

5日後、両親からのたびたびの抗議にようやく、「いじめが自殺の原因に関係している」と認める。

「池水のところへは行くな」「話しをするな」と、学校から連絡網で全校生徒に指示が回る。お盆以降、学校関係者の足が途絶える。
事故報告書 校長が遺族に口頭で簡単に説明する一方で、市議会、マスコミには、事件に関する膨大かつ詳細な資料のコピーが配布される。遺族が市の公文書公開条例を使って、学校から市教育委員会への「事故報告書」などを請求したが、個人情報のため一部を除き非公開。もしくはほとんどが真っ黒に塗りつぶされて公開。
アンケートほか、作文など 大輔くんの自殺直後に、学校が全校生徒700人を対象にアンケートを集める。3年生約250人には、大輔くんへのいじめがなかったか、記述式で回答を求めた。
結果、いじめなどを実際に見たり、本人から聞いたことがあると回答したのは全校で13件。他の生徒から聞いたと回答したのは16件。同じクラスの調査では、実際に見聞きしたという回答が14件、別の生徒から聞いたのが2件だった。(学校側の報告による)

「公表しないと生徒に約束したから」と、わずかな概略を説明しただけで、プライバシーを楯に両親に非公開。

1995/6/15 市議会で開かれた総務文教委員会に、学校はアンケートを提出。マスコミにもコピーが配布された。遺族はマスコミを通してアンケートの内容を確認するが、中には明らかな誤認があり、訂正を求めるが拒否される。

アンケートには、「クラスで殴られていた」女子が気持ち悪いと言って避けていた」「入学式の後片付けの時、体育館の裏で、生意気だから殴ろうかと相談していた」などと書いてあった。

6/1 葬儀の日、担任が持参した同級生33人の手紙には、「いつも一人だった」「こうなったのは僕のせい」などと書かれていた一方で、「簡単に死んだ」だの「チャオ!そっちはどう?」などと書かれていた。
加害者 殴ったAくんが遺族宅に3回訪問。「学校は僕だけのせいにして、僕だけを悪者にしようとしている」「学校って汚い」「先生って汚い」と訴える。
誹謗・中傷 PTA総会で、「あそこは共働きで子どもに無関心だから」などと父母が発言。
PTAの人間が訪問して「マスコミに追われるから、あなたたち以上に在校生は辛い」と発言。
「子どもが自殺したのは夫婦仲が悪いのが原因」「父親が単身赴任なのに母親が仕事をしているような家庭だから悪い」「子どもをほったらかしにするような親だから死ぬ」などの噂が飛び交う。
参考資料 月刊「子ども論」1996年2号/クレヨンハウス、『せめてあのとき一言でも』/鎌田慧/1996年10月草思社、『隠蔽 −父と母の<いじめ>情報公開戦記』/奧野修司著/1997年11月文芸春秋、1995/6/1産経新聞(月刊「子ども論」1995年2月号/クレヨンハウス)、1995/6/10西日本新聞(月刊「子ども論」1995年8月号/クレヨンハウス



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