子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
940705 いじめ自殺 2001.5.3 2001.5.25 2005.5.15更新
1994/7/5 東京都江戸川区立中学校の菅原光治くん(中3・14)が、午後7時頃、自宅近くの都営住宅9階から飛び降り自殺。
遺 書・ほか 自宅机の上に、古いノートの切れ端に鉛筆で書いたメモが置かれていた。
同級生のAを名指しして、「いつもいつも○○にいじめられている。でも もう学校に行きたくない。自分のいやなことをすべてオレにおしつけて、それをやんないとけったりなぐられたりするのはもうたえられない。このままでいるとどんどんお金をとられたりいじめられたりするのでたえられない。(塗りつぶし)また今日も金をもってこなくてひっぱたかれたりされた。もうこんなこともいつもくり返しているのにはたえられない。」と鉛筆で書いたメモが残されていた。メモの黒く塗りつぶされた箇所は、「もう生きていても楽しいことなんかない」と判読できた。

光治くんが使っていた合唱コンクール用の譜面の隅に鉛筆書きで、「Aにとられる」「300」「500」「1000」「1000」「1500」の文字が並んでいた。
経 緯 自宅を出るとき「ちょっとコンビニまで行って来る。飲みかけのウーロン茶はそのままにしておいて」と家族に言い残していた。
自宅から自殺場所の都営住宅に向かう途中、偶然出会った同級生が声をかけたが、「あ、ちょっと」とだけ返した。ものすごく悲しい顔をしていたという。
調 査 6/20 光治くんはAから1000円を借りた。すぐに返済しなかったため頭を殴られ、催促された。

6/29-7/1 修学旅行中、教室でのプロレス仲間7人と、旅館でプロレスごっこをした。ルールは、ジャンケンで負けたら技をかけられスリーカウントかギブアップで負けになる。事前に計画された「賭け」は中止になっていたが、1人だけ知らされていなかった光治くんは、Aに負けたあと、「いくらだっけ」と尋ねて500円を渡した。

7/1 修学旅行中に返却したが、「利息」として1500円を要求された。

7/5 自殺した夜の7時15分に貸しビデオ店で待ち合わせて、金を渡す約束だった。(飛び降りた場所とは別の方向)


面長の
容姿をからかわれ「タイ米」などと呼ばれていた。
証 言 生徒たちは「仲良しクラス」と口を揃える。
「スガタ(光治くん)は、明るくてひょうきんで人気があった。プロレスごっこもいやがっているようには見えなかった」「Aは少し乱暴だけど、親分肌のいいやつだ」「スガタとAは友だちだった。教室で楽しそうにしゃべっていた」
一緒に登校していた男子生徒は、「旅行前に(光治くんが)『負けてお金を取られるからプロレスはしたくないんだ』と言っていた。深刻そうには見えなかった」「亡くなった日の朝、菅原くんが買ったばかりのテレビゲームの話をした」と話した。
担任の対応 担任の女性教師は、光治くんが亡くなった日も放課後は午後5時半まで合唱コンクールの練習をしたが、変わった様子には気付かなかったとした。
学校・ほかの対応 学校は事件後、同級生全員から聞き取り調査をしたが、「(Aが)いやなことをすべておしつけて」とメモに書いていたことに関して、「英語の得意な菅原君がワークブックをやらされていたというほかに、見当がつかない」とした。「遅刻や欠席もなく、成績も中位だった。自殺のきざしがなかった」と主張。
警察の対応 警察は、「組織的ないじめは確認できなかった」「一対一の金銭が絡んだトラブル」との見解を発表
教育委員会の対応 区教委は、警察の見解を理由に「いじめが主因とは言えない」として、自殺の原因を「その他」に分類。
被害者 クラスのアンケートで、面白い子は誰かの項目で、ナンバーワンにあがったこともあった。
ひとりっ子だった。
加害者 Aの母親は、「息子は『いじめていない。金を貸さなければよかった』と後悔している」と話した。
背 景 都内で唯一の丸刈りの公立中学校。部活動が盛んで、「いい子が多い」と評判。
誹謗・中傷・その他 「事件で私立高校の推薦枠が減るのでは」と心配する親の声も。
参考資料 1994/7/7日経新聞・夕刊、1994/7/7東京新聞、1994/7/13東京新聞(月刊「子ども論」1994年9月号/クレヨンハウス、総力取材「いじめ」事件/毎日新聞社社会部編/1995.2.10.毎日新聞社、ルポいじめ社会 あえぐ子どもたち/村上義雄/1995.5.15朝日文庫、1995/12/15毎日新聞(刊「子ども論」1996年2号/クレヨンハウス



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