子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
930100 暴行傷害 2003.7.1 2005.5.4更新
1993/1/ 大阪府茨木市の市立中津小学校で、同級生約10人のグループからいじめを受けていた男子児童Aくん(小4)は、リーダー格の男子児童から背中を蹴られて棚で顔を打ち、前歯を折るなどのけがをした。
経 緯 1992/5/ Aくんは、同級生約10人のグループから、けられたり、床に押さえつけられるなどいじめられるようになる。担任教師は、「いじめられた方にも責任がある」と放置。

1993/1/25 朝の授業前、教室でいじめグループのリーダー格の男子児童から背中を蹴られて棚で顔を打ち、前歯を折るなどのけがをした。

1/26 Aくんは登校を拒否。

2/中旬 けがのあとも学校側が放置したため、転校。
裁 判 1993/6/24 Aくんの保護者が、「担任教諭が暴力を振るった児童にき然とした態度で注意せず、暴力容認の教育指導に終始した。校長も担任の指導方針を是正するべきだった」と主張。学校設置者である茨木市に責任があるとして、少年側が550万円の損害賠償を求めて提訴。
学校側の言い分 市側は「いじめではなく、児童間に日常的にあるけんかやいたずらだった」と反論。
裁判での証拠採用 事実認定が争点であるため、大阪地裁は京都
大学教育学部の皇(すめらぎ)紀夫教授(臨床教育学)に鑑定を依頼、証拠採用した。(当事者の言い分だけでなく、裁判所が第三者による学問的・客観的な鑑定を証拠として分析・判断するのは極めて異例)

教授は訴訟資料に基づき、
1.教育現場の現状、2.いじめの有無、3.教師の責任、などの観点から調査。
鑑定書は、いじめの傾向として「可視性の低下」「偽装化」「動機の不明確化」が進み、「発現形態や所在の特定が一層困難になっている」と実態把握の難しさを指摘。「主観的要因がつきまとっており、ふざけあい、いたずら、遊び半分などと明確に区分するのは困難」と分析。
しかし、今回のケースについては、「いじめは被害者の身辺に初期的な形態で潜在的に存在しており、第三者にも把握できる形で顕在化していた」と、原告がいじめを受けていたと認定。また、学級担任の対応については、「学級通信の発行や家庭訪問など担任としての一般的な手だては講じられており、暴力を容認していたわけではなく、担任の対応責任を問うには無理がある」と判断。
参考資料 1993/6/25讀賣新聞・大阪(月刊「子ども論」1993年8月号/クレヨンハウス)、1996/6/7毎日新聞・夕刊(月刊「子ども論」1996年8・9号/クレヨンハウス)



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