子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
920529 いじめ報復
殺人
2001.12.7 2002.1.6 2002.12.23更新  
1992/5/29 山梨県中巨摩郡竜王町の町立玉聡中学校で、男子生徒A(中3・14)が、自分を呼び捨てにする下級生の男子生徒Tくん(中2・13)をナイフで刺殺。
経 緯 4/上旬に、2人は廊下で肩が触れあい、にらみ合いになった。このことがきっかけで、TくんはAに呼び出しをかけ一方的に痛めつけた。

2年生にけんかで負けたことで、AはTくんらに呼び捨てにされたり、殴られたりするようになり、同級生らからもばかにされるようになった。
教師の対応 Aは暴行を教師に相談していたが、取り合ってもらえなかった。
殺害までの経緯(犯行態様) 5/29 当日は午前中に授業と生徒総会があった。
午後1時過ぎ、AはTくんから校舎脇の武道館側に呼び出しを受けた。2人で話しはじめたが、Tくんから殴られそうになってAは逃げようとした。するとTくんがAの
名前を呼び捨てにした。Aが返事をしないと繰り返し呼び捨てにした。

「なめられっぱなしでは、上級生として示しがつかない」と思ったAは、館内の自分が所属する柔道部の部室に戻り、学生服のポケットからナイフを取り出すと、翌日からはじまる中間テストの勉強のために帰宅しようとしていたTくんのところに引き返し、殴ろうと構えたTくんの左胸を刺した。

Tくんは病院に運ばれたが、
午後1時47分に出血多量で死亡。
凶 器 刃渡り8センチの折り畳み式ナイフを興味本位から甲府市内で購入。
母親に見つかり、「学校に持っていったら危ない」と言われ、取り上げられる。(その数日後にTくんとけんか)

けんかの数日後、Aは母親のたんすの引き出しにしまっておいたナイフを秘かに持ち出し、ナイフを手放さないようになった。

Aは、このナイフを教室内に持ち込み友だちに見せて、注目を集めていた。

Aは犯行後、ナイフを校内の水道で洗い、自分のかばんのなかにしまった。
加害者について 小学校3年生のときに、中国から帰国し、岐阜県と山梨県の小学校を数回転校したことがあった。

Aは柔道部員。
成績は中くらいで、活発で明るい少年だった(おとなしい性格だったという評価もあり

Aは、ナイフを振るった理由について、いじめへの報復ではないかという見方を否定。「このままではなめられると思った」と屈辱感が動機であるとした。
被害者について Tくんは地区の野球部のメンバーで、体格もよかった。学級長を務め、行動力があり積極的な性格だった。ツッパリグループの一員だった。
周囲の認知 事件が起こる1カ月余り前、Aは顔にあざをつくり、足全体をひどくすりむいて帰宅。しかし、けんかの相手が誰かは、母親に言わなかった。けんかして起きあがれないので学校を休むと母親から連絡を受けた担任教師が、電話でAに問い質したところ、「知らない高校生らしい人に殴られた」と応えた。

事件前後、捜査員や友人に、いじめを親や教師に打ち明けなかった理由として、
「学校は好きだけど、先生は大嫌い。だから、いじめを受けても相談しなかった。親にも悩みを話す気はなかった。相談しても何も変わらないし」と話していた。
背 景 竜王町は甲府市のベッドタウンで人口が急増。中学校は新設校だった。

2年生には、Tくんも加わる数人のグループがあり、Aを含む何人かを校舎裏に呼びだしては、殴る蹴るの暴行を加えていた。なかでも、おとなしいAへの暴行は半年以上も続いていた
学校の対応 学校長は事件後、「第二、第三の男子生徒、下級生が出現しない保証はない」と話した。
参考資料 1992/5/30新潟日報(「月刊子ども論」1992年7月号/クレヨンハウス)、1992/7/1、7/2、7/7、7/8産経新聞(「月刊子ども論」1992年9月号/クレヨンハウス)、「いじめ時代の子どもたちへ」/芹沢俊介・藤井東(はる)著/1995.8.25新潮社、「子ども白書」1993年版/日本子どもを守る会/草土文化、別冊宝島410「殺人百貨店」/1998.11.2宝島社発行



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