子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
910927 いじめ事件 2002.12.23 2003.6.22 2005.6.7更新  
1991/9/27 石川県河北郡七塚町立七塚小学校で、担任教師が研修のために不在の日の休憩時間に男児Aくん(小5)が、児童13人(小5)にロッカーに閉じ込められたうえ、殴る、ける、水をかけるなどの集団暴行を受け、2週間のけがを負う。
経 緯 1991/2/ Aくんは埼玉県から転校してきた直後から、たたかれるなどのいじめを受けていた。
5年生に進級してからもいじめが続いた。

1991/9/27 担任教師が研修のために不在の日の休憩時間に、同級生の児童13人がAくんをからかい、ロッカー内に閉じ込め、足蹴り、殴打、性器を触る、水をかけるなどのいじめを約20分間にわたりくり返し行った。
結果、Aくんは両膝打撲、両足関節挫傷で2週間のけがを負った。
その後 その後半年間、Aくんは登校できなくなったが、1992/春  6年生から登校。
裁 判 1 1992/6/30 Aくんの両親が、いじめた児童の親権者と学校設置者である七塚町を相手取り330万円の損害賠償を求めて提訴。
経 過 提訴時、学校側は取材に対して、「いじめがあった」と認めていたが、民事訴訟の法廷で、町は「いじめの事実はなかった」と否定。
加害生徒のうち1人の親は、いじめを認めて和解。
判 決 1996/10/25 金沢地裁で、請求を一部認容。町と児童の親権者に約35万円の支払い命令。
被告控訴。


市村陽典裁判長は、「児童同士のふざけあいとみなし得る範囲を大きく逸脱し、執拗で悪質な行為があった」と暴行などの事実
を認定。また、学校には暴行行為の予見可能性を認め学校の安全義務違反を認定。(判例時報1629号113頁)
判決要旨

(親権者の責任について)
「本件暴行行為当時、同人らは責任能力のない未成年者であって、本件におけるY8(七塚町)を除いた各被告らが右各児童の親権者であることは、当事者間に争いがない。
そうだとすると、親権者であるY1〜Y7らは、各児童に対する
親権者としての監督義務を怠らなかったことを主張立証しない限り、民法714条1項に基づいて本件暴行行為によってAが被った害を賠償する責任を免れない。

親権者が尽くすべき右監督義務の範囲は、その子たる児童が家庭にいると家庭外にいるとを問わず、原則として子供の生活関係全般に及ぶべきものであり、少なくとも、他人の生命・身体に対して不法な侵害を加えないとの規範は、社会生活を営んでいく上での最も基本的な規範の一つであるから、親権者としては、当然にこれを身につけるべく教育を行う義務があるものというべきである。

したがって、たとえ子供が学校で起こした事故であっても、それが他人の生命・身体に危害を加えるというような社会生活の基本規範に抵触する性質の事故である場合には、親権者は、右のような内容を有する保護監督義務を怠らなかったものと認められる場合でない限り、学校関係者の責任の有無とは別に、右事故によって生じた損害を賠償すべき責任を負わなければならない。

これを本件についてみると、(証拠略)中には、Y1〜Y7らが、普段から、子に対して、人に迷惑をかけないこと、人のいやがるようなことをしないことなどを言い聞かせていた旨の供述部分があるが、かかる
説諭のみをもってしては、右のような保護監督義務を尽くしたとは到底いえない。

したがって、Y1〜Y7らは、民法714条1項の規定に基づき、本件事件によって、Aに生じた損害の賠償をすべき義務がある。」
判決要旨

(学校の責任について)
判決では、学校長らに対しても、事件は担任教師が不在中の休憩時間中のできごとではあるが、Aに対するいやがらせや暴行行為が発生しており、再発の兆候もあったことから、件の発生が予見でき、これを回避する措置をとることもできたのに、何らの措置も講じなかったとして過失を認めて、学校設置者である七塚町の責任を肯定。
裁 判 2 1997/10/29 名古屋高裁で、町と親権者に60万円の支払い命令。
学校側の対応に教育的配慮を欠いた点があったことを認め、
学校と児童の親が誠意ある謝罪をしていないことなどを理由に一審判決より増額。
参考資料 1992/6/30朝日新聞大阪・夕刊(「月刊子ども論」1992年8月号/クレヨンハウス)1997/10/28朝日新聞・大阪(「月刊子ども論」1997年1月号/クレヨンハウス、「教育判例ガイド」/浪本勝年・箱田英子・岩崎政孝・吉岡睦子・船木正文 著/2001.6.20有斐閣、「いじめ裁判」季刊教育法2000年9月臨時増刊号



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