子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
750718 生徒間暴力死 2003.6.22新規  
1975/7/18 岐阜県岐阜市の公立中学校で、男子生徒Aくん(中2)が、同級生の男子生徒Bから投げつけられた傘が頭頂部に突き刺さり、脳挫傷で死亡。
経 緯 クラスで班編制会議を開いたところ、班長になった生徒たちは、問題の多いBを班員にしたがらなかった。そこで、担任教師が、班長のAくんにBを班員として引き受けるよう依頼。Aくんは引き受けた。

Aくんは、担任の指示を守り、Bがいたずらや乱暴な行動をしたり、友だちに迷惑をかけたりしないよう注意した。

1975/5/末頃から、Bの行動は悪化。Aくん自身が、授業中にBからじゃまをされて、落ち着いて勉強ができなくなった。Aくんは、Bの具体的な行動をあげて、担任に訴え続けた。
・BがAくんに石を投げつけ、取り押さえたりすると、椅子を投げつけたり、竹刀を振り回したりした。
・授業中、他の生徒のじゃまをし、Aくんもシャープペンシルで10回くらい突き刺されて、出血した
・Bが授業中に遊んだり、掃除をサボったりするので、注意すると、マジックで腕に落書きされたり、本で頭を殴られたり、ツバを吐きかけられたりした。 

7/18 生活指導担当教師の授業中、Bが後方に座っているAくんを振り返り、「デコピー」とAくんのあだなを呼んだ。Aくんが「いらんことを言うな。前をみていろ」と注意をしながら、自分の机にかかっていたBくんの腕を掴んだところ、Bくんが右手に持っていたシャープペンシルでAくんの股を突いてきた。
Aくんが思わず、「痛い!」と大声を出した。黒板に向かって筆記中だった教師が「何をやっとるのか。そんな声を出して」と注意。その場はおさまった。

授業終了後、Aくんは同教師に教室前の廊下に呼びだされた。Bもともに廊下に出てきた。
教師が「君たちは授業中、何をしていたのか」と問いただしたところ、Aくんが事情を説明。教師は型どおりに双方に注意して、その場を立ち去った。

Bは、同教師の背中に向かって「バカヤロウ」と怒鳴り、近くの下駄箱からズック靴を取り出して、廊下北側の窓から地上に投げ捨てた。
それを見たAくんが、「お前はそのくらいのことしかようやらんのか」と言ったところ、BがAくんのカッターシャツの胸元を掴んでひっぱり、シャツのボタンを引きちぎった。Aくんは無抵抗で、「お前はこんなことをするな」と言った。他の生徒が止めに入って、BはAくんを掴んでいた手を離した。

BはAくんたちにツバを吐きかけ、廊下の一角にある傘置き場から傘を持ち出し、Aくんを殴ろうとした。
Aくんは相手にせず、階段の方向に走って逃げ出した。Bは追いかけてきて、傘をAくんめがけて投げつけた。
傘の先端の石突き部分がAくんの頭頂部に命中。3〜5センチの深さで突き刺さった。Aくんは、脳挫傷で死亡。
加害者 知能指数が81と低かった。
小学校3年生のとき交通事故にあい、頭を強打し、約1カ月意識不明の状態が続き、9カ月にわたって休学した。
休学による学業の遅れも重なって、成績は極端に低迷していた。

学校内外で問題児とみられていた。精神状態が非常に不安定で、衝動的な行動に走りやすかった。
非常に小柄で腕力では級友にかなわないため、手当たり次第、そばのものを投げつけたり、ものを手にして殴りかかるということがよくあった。
担任の対応 担任教師はAくんに、Bが忘れ物をしたり宿題を忘れたりすることのないよう常に注意し、乱暴な行動に出た場合は直ちにそれを止めさせるなど、学習面、生活面にわたって指導監督するよう、依頼。
さらに、Aくんが模範になるよう行動して、Bを指導してほしい、最善をつくしてほしいと指示。

体罰をもって、生徒に自分の指示命令をきかせていた。Aくんも殴られたことがあった。
また、担任は「班長は偉いので、よい高校に入れてやる」などと言っていた。
背 景 この学校では、各学級内で生徒を6、7名ずつ班に分け、班長に班員を統括させるという班組織を採用していた。
裁 判 Aくんの両親は、担任教師、生活指導教師、校長、および教育委員長に過失があるとして、学校設置者である岐阜市に損害賠償を請求して提訴。
裁判の結果 1983/6/15 岐阜地裁で、原告の請求を棄却判決。
判決要旨 判決では、生徒Bが衝動的に乱暴な行動に走る傾向のある生徒で、いたずらも多く、また窃盗事件を起こすなど、指導上問題の多い生徒であることは認めた。
しかし、学校側では、Bが特に粗暴な生徒だと評価されておらず、Bの行動を問題なしとしていたことを認め、担任教師はBが危険な行動に出るかどうかは予見できなかったとした。また、予見すべき特別の事情があったともいえないとして、過失なしとした。
また、生活指導教師は、Bに対して、シャープペンで人を突くいたずらをしないように注意し、Aくんに対しては授業中の粛正を妨げる態度を戒めており、暴力行為など、本事件発生に至る危険性のあるような行為を認めて注意を与えたわけではないと解釈。Bも生活指導教師の注意をおとなしく聞いていたのだから、同教師がその後の事件を予見することは不可能であり、また、予見すべき特別の事情があったともいえないとして、学校側の過失をすべて否定した。
参考資料 「いじめなんかはねかえせ! 〜ルネスいじめかけこみ館からの報告〜/谷澤忠彦 著/1996.8.1ティーツー出版
.類似事件 非常に似通った事件がある(岐阜県・公立・男子生徒・腹いせで傘を投げた結果、脳挫傷で死亡・両親の提訴・学校に予測不可能だったとして棄却、など同じ)。

1993/5/22 
岐阜県岐阜市岐阜県立岐南工業高校で、男子生徒B(19)が、同級生Cくんと教室でけんかし、腹いせで傘を投げたところ、別の男子生徒Aくん(15)の額に傘の先が刺さって脳挫傷で死亡

亡くなったAくんの両親が、岐阜県と同級生のB、その両親を相手どって約8300万円の損害賠償を求めて提訴

1996/9/26 岐阜地裁の谷口伸夫裁判長は、「傘を投げれば、だれかに傷害を与えることは予見でき、重大な過失がある」として、傘を投げた同級生Bに約2590万円の支払い命令。
県とBの両親に対しては、「予測は不可能だった」として、訴えを退けた。

1996/9/27 中日新聞 (月刊「子ども論」1996年12月号/クレヨンハウス) 



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