ラテンアメリカの
  ストリートチルドレン

深田 由香



生まれたその瞬間からはじまった

拷問、差別、苦難

ひもじさ、喉の渇き、嘔吐

そしていちばん欲しかったものは

手に入らなかった…

周りの人々からの敬意



自分で自分の面倒を見て大きくなった

路上を歩いて。

非行少女、売春婦、麻薬中毒、強盗。

社会はわたしをそう見ていた。



わたしが意思に反して処女を無くしたことも知らないくせして。

暴力、レイプ、こうして

息子が生まれた。

まさか自分がこんな目にあうとは思いもしなかった。

死にたかった。

清潔な街、何もない土地、

わたしは苦しみ、ひとりでいる。

否定され、放り出されて。

これがわたしたちの人生の物語。



          (詩、Brasilの13歳、Ester Ribeiro 作)



 世界には、少なくとも人生の一時期を路上で生活する、3千万から1億7千万人の子どもがいます。ストリートチルドレンとは、都市や町の路上で労働や生活をしている子どもたちのことで、世界のいたるところに見られます。しかし、ほとんどはラテンアメリカ、アジア、アフリカに集中し、それぞれのおおよその数は、4千万人、2千5百万〜3千万人、1千万人となっています。 

 ストリートチルドレンは、2つに分類することができます。すなわち、路上にいる子どもたちと路上の子どもたちです。前者は、共に生活する家族や友人がありながらも、家計をたすけるために路上で働かなければならない子どもたちです。仕事の内容は、靴磨き、物乞い、バス内の唄歌い、小物売り、インフォーマル・セクターでの仕事などから売春にいたるまで様々です。ラテンアメリカのストリートチルドレンの殆どはこの分類に入ります。

 後者は、家がなく、路上で生活し、労働し、そして寝る子どもたちです。例えば、路上で生活する子どもたちは、ボリビアに3千人、ブラジルに7百万人、エクワドルに4千人、ホンジュラスのテグシカルパに100〜 150人、メキシコに25万人います。この分類に含まれる子どもの数は、ラテンアメリカにおける全ストリートチルドレン人口に比べるとほんのわずかです。ラテンアメリカでは、親がなるべく女の子を家庭内にいさせようとするので、ストリートチルドレンの数も男の子のほうが多いです。女の子は、母親の手伝いをして家庭内で働いたり、食べていくために売春宿や路上で売春をしたりします。ブラジルだけを例にとっても、19歳以下の少女売春の数は、50万人に上ります。

 ストリートチルドレンは、常に危険と背中合わせにいます。多くは、薬物を使用し、ギャングと何らかの関わりを持っています。同じ針の使用、無防備なセックス、売春等のリスクの高い行為の結果として、最近のストリートチルドレンにとって最大の脅威はAIDSです。しかし、一番重大な関心事は、おもにブラジル、コロンビア、グアテマラを中心に、ストリートチルドレンたちを殺すいわゆる“殺人隊”です。具体的には、リオデジャネイロ州で殺された子どもの数は年々増加し、1988年から1991年にかけてブラジル全体で殺された子どもの数は7千人に上りました。また、もう一つの問題として、臓器売買の目的でストリートチルドレンが誘拐されるということがあります。

 ストリートチルドレンの悲劇を考えるときに私たちが誤解してはならないのは、子どもたちが“問題”なのではなく、これはラテンアメリカに潜む問題の結果であるということです。過去何十年の間、この悲劇を引き起こした要因は国によって違います。しかし、共通するものとしては、貧困、悪化する所得配分の不平等、家庭崩壊、家庭内暴力、高い失業率、1980年代における経済不況と公共支出の減少、経済不況の悪化、そして急速な人口増加が挙げられます。

 ラテンアメリカの政府によって打ち出された4つの大きな政策方針があり、それらは、修正型、社会復帰型、手ほどき型、そして予防型の対策です。修正型アプローチとは、年少犯罪者と見なされてしまった子どもたちを対象にした第一のステップで、刑務所や施設で施されてきました。これらの多くは、危険で衛生状態が悪く、概ね乱暴で虐待的なのものです。

 社会復帰型アプローチでは、好ましからぬ生活環境がストリートチルドレンを生み、また彼らは、将来、国の生産力になるのだということを前提に、教育、家庭環境の改善、麻薬治療プログラムによる更正必要性が唱えられています。しかし、この小規模で費用のかかる方法だけでは、その地域の何百万人ものストリートチルドレンに対応することはできません。

 手ほどき型アプローチは、現在、ラテンアメリカにおいて、支持を集めています。この政策では、路上教育者が、公園、歩道でストリートチルドレンに教育、カウンセリング、職業訓練を行います。なぜなら、特定の施設これらを行うのは、随分と費用がかかり、なおかつ、ストリートチルドレンが育った環境とはあまりに違うからです。多くのストリートチルドレンは進んでこれらの仕事をし、信頼と友情を分かち合ってくれる路上教育者の多くにとても感謝しています。

 修正型アプローチでは、ストリートチルドレンは、彼ら自身が問題の根源ではなく、より大きな社会的要因と関係があることが強調されています。その要因とは、都市から地方への移民、不適切な居住環境、高い失業率、社会福祉事業の不備などです。公共施設の収容、捨て子、あるいは路上労働は不適切であり、そのかわりに基本的な予防策となるような、その社会を対象としたプログラムが実施されることが最も望ましいのです。

 どのアプローチをとってみても、その地域の何百人ものストリートチルドレン全ての声に答えることはできません。修正型アプローチは、深刻な犯罪活動に関わってしまった、ほんの一握りのストリートチルドレンに限ってのみ役立つでしょう。社会復帰型アプローチは、すでに社会の枠組みから外れてしまった者にとって適切であり、予防型アプローチは、恵まれない家庭環境によって危険にさらされてしまった子どもたちにとって役立つのです。

 ラテンアメリカ諸国の政府は、ストリートチルドレンの問題を長期的な課題として扱う必要があります。政府が、経済開発に加え、社会開発、特に人を中心にした開発に取り組むことは非常に大切なことです。また、国際組織、より開発の進んだ国々、ラテンアメリカ諸国の社会、そして、ストリートチルドレン自身の、強力な支援、認識、責任感が、ラテンアメリカのストリートチルドレンの現状改善の鍵になっているのです。

翻訳: 小池なつ子
     富岡宏乃
     山田新吾


「Organization of Latin America」より転載させて頂きました。




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