パブリックアクセス−市民が作るメディア

    
       

 アメリカではパブリックアクセスという仕組みがあって、市民がケーブルテレビで番組をつくり流すことができる。もっとも有名なのが湾岸戦争の時に、反戦番組を流したニューヨークのペーパータイガーTV。昨年夏日本からパブリックアクセス視察団(団長=津田正夫)が訪米したが、その調査報告を中心に本書がまとまった。パブリックアクセスに関してこれほど詳しい本は初めてだ。なお「市民ビデオ運動の現場から」(松原明)は民衆のメディア連絡会の活動報告でもある。

 ★98年7月発行/本体2000円/リベルタ出版(お申し込みはこちらへ)
(民衆のメディア連絡会でも取扱中)
  
 <目 次>   
まえがき(津田正夫)               
第1章 素顔のパプリック・アクセス番組(田原礼子)

 
  PACも捨てたものじゃない/千あれば千の物語を語ろう
 個性豊かな市民制作番組
  1.地元を愛する心で作るパブリック・アクセス番組        
2.マスメディアにはない、アジア系米人のための番組を作る! 
  3.PACから商業テレビへの進出を果たした異例の市民アクセス番組
  4.小さなコミュニティに息づくパブリック・アクセス番組     
  5.貧困地区の青少年たちがPACを通じて学んだもの
       
   
第2章 パブリック・アクセスの歴史と現況(平塚千尋)
    
1.パブリック・アクセスのあゆみ              
 あるビデオ活動家の軌跡/PACの前身「キャッチ44」/
   制度化されたアクセス・チャンネル/産みの苦しみ/
   国の規則から自治体のフランチャイズ契約へ
 2.パブリック・アクセスとは何か               
   フランチャイズの条件/アクセス・チャンネルの種類と内容/
言論の自由と多様性/パブリック・アクセスの現在
   
第3章 アクセス・チャンネルの担い手たち
   
1.アクセス・センターの仕組み(小山帥人)          
   パブリック・アクセス・センターの役割 /アクセス・センターの運営と管理/
市民の番組制作トレーニング/市民の番組づくりを支援する組織/
   生協方式によるケーブルテレビの場合/アクセス・センターの課題
2.PACを支える民間非営利団体(NPO)(松浦さと子)   
   PACとNPO/高校での人種問題をPACで提起 /
PACは装置、NPOは仕み/商業メディアの矛盾を突く「ペーパー・タイガー」
/非営利の中間団体の意義/NPOを支える税制優遇措置/
   非営利の発信を促すために
   
第4章 PACをめぐる争点と課題 (魚住真司)
   
1.ケーブルテレビと表現の自由        
   従来のテレビ放送における表現の自由/ケーブルテレビにおける表現の自由/
PACにおける表現の自由/パブリック・フォーラムとは?
2.PACをめぐる争点─伝送拒否をめぐる戦い
 伝送拒否権をめぐるアメリカの議論/最高裁が示した判断/
   揺れるアクセス・センターの役割/ルーケン対コミュニティ21事件/
アナーバー市ヌード・ラン・ビデオ事件/カンザス市「クランザス・シティ」事件
3.PACをめぐる課題―その利用者教育   
   競争原理の九六年電気通信法/アクセス・センターの財源難がやってくる?/
   高等教育機関が果たす役割
   
第5章 どうする日本でのメディア・アクセス(平塚千尋)
   
1.日本型PACのルーツをたどる       
郡上八幡テレビにあったPACの原型
強行された試験放送/テレビは自分たちで作るもの/今と変わらぬ番組構成/
  電話討論番組のさきがけ
地域の市民運動と自主放送
下田ケーブルテレビの自主放送/市民運動と市民アクセス/
都市型CATVと自主放送
2.日本のパブリック・アクセス        
唐津ケーブルテレビに見る市民参加
市民が作るテレビジョッキー/牛小屋から流された自主放送/
誰のために誰が何を
米子中海テレビのPAC専用チャンネル
市民チャンネルからPACへ/種々雑多なごった煮性/
PACはどのように見られているか/番組制作の隘路
市民アクセスの課題
編集、編成の問題/少ない参加番組/揺れる自主制作放送/
ますます高まるPACの必要性/テレビ表現力と非営利団体
  
第6章 今なぜ、市民アクセスなのか
  
1.市民ビデオ運動の現場から(松原明)      
   ビデオカメラの大衆化/言いたいことがあるから/映像によるミニコミ運動/
日本的な形を求めて/自主ビデオの現在/編集をどうするかがネック/
   制作意図と見せ方/公的施設の充実を/パッケージにすれば広がる/
いま必要なことは何か?
 2.市民・住民不在のメディア政策(津田正夫)     
  PACに言及した「多チャンネル懇」
アクセス権をめぐる環境変化/マッチポンプの『多チャンネル懇報告』/
市民・住民はただの「受け手」か
放送局がイメージする視聴者像
消えてしまった「視聴者の利益の最大化」/
「公開」あれど「参加」なしのNHK
地域ジャーナリズムの努力と内部の壁
健闘する地域ジャーナリスト/「自治・分権ジャーナリストの会」/
住民がアクセスできない「地域情報化」政策
  3.求められるコミュニケーションの場とシステム(津田正夫)
(1)自己表現とお知らせ掲示板の機能
(2)市民自治のメディアとして
(3)文化の共有と理解のツール
(4)NPO活動の広報媒体
4.市民によるメディア・アクセスの課題(津田正夫)   
情報・メディア資源の再編を
ツールがあってコミュニケーションがない/NPO放送の胎動と課題/
知らせ権利と表現の自由
パブリック・アクセス実現への基盤
制度化への政策決定と市民ネットワーク/鍵は中間システムの整備/
メディア・リテラシー教育の体系的導入を/自治と共生のジャーナリズムへ
  
あとがき(平塚千尋)
付録 メディア・アクセス便利帳

  
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