例会報告> 12月22日/中野商工会館

  電脳労組ジャパンユニオンの試み 

リストラに対抗する新しい発想

 

by 小林アツシ 

 いきなり個人的な話になってしまうが、会社員時代は零細企業勤めで現在フリーということもあり僕自身は「労働組合」というものにはいままでほとんど縁がなかった。にもかかわらず今回の例会の報告係をすることにしたのは、労働運動に縁が深い人間の報告よりも縁が浅い人間の報告のほうが必要な気がしたからだ。

 やはり「労働組合」というテーマだと人は集まりづらいのだろうか?  12月22日に行われた[民衆のメディア連絡会]今年最後の例会の参加人数は19名といつもより少なめだった。

 つい先日の新聞でも労働組合に所属している人の数がどんどん減り続けているとあった。失業が増えて雇われている人自体が減っている事と組織化されていないパート労働者が増えている事が、労働組合員が減っている要因だという。そして中小・零細企業においては、所属するしないというよりもほとんどの会社に労働組合がないのが現状だ。しかし、失業・リストラといった労働問題はこのところどんどん深刻になってきている。

 今回の例会に招いた東京東部労組・ジャパンユニオンの取り組みは、そんな時代に対応すべく実践されているといえる。東京東部労組からは石川源嗣氏(写真左下)ほか2名が参加した。またパソコン雑誌の記者の取材もあった(写真右下)。

          

 東京東部労組は、会社の枠にとらわれない地域の合同労組で、どんな零細企業の社員であってもパートで働いていても一人でも加入できる。今回上映された『組合づくり』は社員41人の運送会社の社員達が賃金引き下げや解雇に怒り、自分達の生活を守るために東京東部労組の手を借りて組合を作り権利を獲得していく過程を追いかけたドキュメンタリービデオだ。運送会社に出来た組合の委員長は「左翼はキライだった」と言う。今年、東京東部労組が援助して出来た組合の中には、フランチャイズのピザ屋で働くパート・アルバイトの人達10人で作られた組合もある。

 個人個人の働く人達が自分達の生活と権利を守るために組合を作るというのは労働運動の本来の姿と言える。

 僕自身今回の例会で詳しいことがわかったのだが、労働運動は法律によって保護されているため、合同労組に加盟すれば団体交渉の際の援助を得られ要求を勝ち取ることが出来る。ビデオや資料でも何度か登場した以下の言葉は印象的だった。組合のない労働者は「ケンカしてやめる」「我慢して泣き寝入り」の二つの選択肢しかない。しかし労働組合を結成する事によって要求を勝ち取るという第三の選択肢が得られるのである。

 東京東部労組が開設した労働相談センターにメール・電話・来所・FAX・手紙などで相談が来た数は年々増加しており、特に1996年にホームページを立ち上げてからが急増しているという。かつては電話帳(タウンページ)で見ての相談が最も多かったそうだが現在ではインターネットで知ったという相談が75%に増えている。全国から来る相談の中には組合さえ作れば絶対成功するとわかるのだが遠方なために日常的な援助ができないという悔しい想いを抱くケースもあったという。組合づくりのノウハウをまとめた前述のビデオもそんな悩みの解決策のひとつだ。

 そしてさらにインターネット上の労働組合「ジャパンユニオン」も今年9月に結成した。地域の枠にもとらわれず全国にいる組合組織のない労働者が誰でも参加できる電脳労組だ。現在ではまだまだ新規加入者も少ない。そもそも零細企業に勤める労働者でインターネットに接続できる環境を持っている人の割合が少ないのではないかという指摘も出た。インターネット利用者としてはインターネットを利用していない人もいるという配慮は常に必要である。もちろん、だからといってインターネットを利用しない手はないだろう。利用できるものはどんどん利用すればいい。その結果、生じた問題への解決策をさらに考えていけばいいのだ。例会参加者の中からは、インターネットだけのつながりでは不充分でやはり一度は顔を合わせる必要がある、という意見も出た。

 「ジャパンユニオン」では2000年に「サービス残業追放キャンペーン」を行うという。現在、数多くの人達が残業手当無しか、もしくは非常に低賃金で残業をさせられている。サービス残業は違法なのだ。しかも労働者自身が積極的にサービス残業をしているという実態もある。サービス残業で長時間働かされる人がいる一方で失業して仕事がない人がいる。サービス残業をやめれば90万人の雇用機会を作ることが出来るという試算も出ている。ヨーロッパでは労働時間を短縮してワークシェアリング(仕事の分かち合い)するという雇用対策が行われているという。

 「サービス残業追放キャンペーン」によって仕事の無い人が少しでも仕事を得られるきっかけになればと思う。

 僕自身の反省も含めてだが、石川氏が言うように「働いている人自身があまりにも自分の権利や労働法を知らなすぎる」のだろう。

 今回は講師としての出席だったが、「ホームページやメーリングリストなどについては皆さんに教えてほしい」「インターネットは労働組合にとっては未知の領域だが失敗をおそれないでやっていきたい」という石川氏の真摯な姿勢には共感した。例会の後半は、石川氏をはじめとする講師陣に対し参加者が[民衆のメディア・メーリングリスト]への「オルグ」をするという展開になったが、いままでにない発想や新しい取り組みが必要なのは我々すべてである。


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