参議院選挙・政党アンケート
(98年7月3日発表)

「MAIにNO!日本キャンペーン」では、7月12日の参議院議員選挙に向け、各政党に対して多国間投資協定(MAI)に関するアンケートを実施しました。各政党が、「投資の自由化」「グローバリゼーション」に対してどのような見解を持っているかが、如実に現れる結果となっています。

概要

投資の自由化に関するアンケート(質問票)

各政党の回答






概要

●アンケート送付先は、自由民主党、公明党、民主党、社会民主党、新社会党、新党さきがけ、自由党、共産党の計8政党。そのうち、公明党だけが無回答であった。

●MAIへの国民あるいは国会の関与については、民主党以外の全ての政党が、国民に開かれた議論をすべきと回答。国会が関与すべきと回答したのは自民党と民主党、および共産党。

●外国企業に対して一定の社会的規制(環境・雇用・中小企業)を設ける必要があると答えたのは民主党、社民党、新社会党、共産党の3党。自由党は環境規制は互恵が望ましいとし、自民党は環境規制が外国企業に差別的に適用されるのは不適当とした。

●外国企業の自由を優先する国際協定は必要ないと答えたのは新社会党と共産党。自民党は「MAIは外国企業の優遇を求めているとは承知していない」とし、社民党は「(MAIの)内容の充実を図る」とした。さきがけは「地元・地場産業の振興策も行うべき」としていることから、MAIが地域振興策を容認しない場合には賛成しないということだろう。

●MAIの例外分野として各国が提出している「留保項目」については、自民党は「留保」が「該当国が個別に施策判断するものと考えられる」と回答しており、「留保」が実際にはMAI交渉において交渉国の承認を必要とすること、逆に言えば却下されたり、今後撤廃・削減を迫られる可能性があることを理解していない。

●外国投資家が受入国政府を直接訴えられる「投資家vs.国家」紛争解決メカニズムについては、共産党と新社会党が反対しており、さきがけが「公平性を保つ最低限のルールを設けるべき」としている一方、民主党は「国内企業も外国企業も公平に扱うことが重要」と回答し、自民党はこのメカニズムが「外国企業を一方的に有利にするようなものを目指しているとは承知していない」と回答。

●多国籍企業の国際規制と自由化のどちらを優先すべきかとの質問に、規制を優先すべきと答えたのは共産党と新社会党。自由党は両方を同時に行うべきとし、さきがけはMAIの中に多国籍企業の倫理規定を作るのが望ましいとした。民主党は「国内企業と外国企業を公正・公平に扱うルールが必要」とし、自民党は外国投資の自由化のプラスの側面を強調し、MAIが日本企業の海外活動を促進すると回答した。

●経済のグローバリゼーションについてどう考えるかとの設問には、民主党が「率先して日本が進めるべき」と回答し、また自民党と自由党はこれを不可避な流れとして国内対応の必要性を訴えている。経済のグローバリゼーションは弊害が多く、規制を優先すべきとしたのは共産党と新社会党。


投資の自由化に関するアンケート(質問票)

Q1 日本や欧米諸国など29カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)では、世界規模で投資の自由化を推進する多国間投資協定(MAI)を締結しようとしています。

 この多国間投資協定についてご存じですか?

はい  いいえ  その他( )

Q2 多国間投資協定(MAI)は、日本企業の海外進出を助けるだけでなく、日本に外国投資を呼び込むことになります。日本社会に大きな影響を及ぼすことになるこの協定が、多くの国民に知らされていません。

 こういった状況についてどのような対応が必要だとお考えになりますか?

( )広く国民に開かれた議論を行うべき 
( )国会が関与すべき
( )外務省に任せるべき 
( )その他( )

Q3 多国間投資協定(MAI)では、地域の環境や雇用、中小企業を守るために外国の企業に対して条件をつけることが一切認められていません。国内の環境や雇用を守るために、外国企業に対して一定の社会的規制を設ける必要があるとお考えですか。

( )必要(必要と思われる分野をお選び下さい:複数回答可)
   ( )環境規制 ( )雇用確保の規制 ( )中小企業保護
( )その他( )
( )必要ない 
( )わからない 
( )その他

Q4 多国間投資協定(MAI)がこのまま締結されれば、地元の伝統産業や地場産業に対する優遇措置は協定違反とされる一方で、外国企業を優遇することは違法とされません。地元の利益よりも外国企業の自由を優先する国際協定は必要だとお考えですか。

必要  必要ない  わからない  その他( )

Q5 多国間投資協定(MAI)が実施された時に多大な影響を受ける分野については、各国別に「留保」事項という例外分野リストが提出されています。しかし「留保」として例外になっても、今後全ての「留保」は削減・撤廃の対象となります。つまり、海外投資によって影響を受ける分野に対する保護はどんどん減らされていく可能性が高いのです。こうした事実をご存じでしたか。

はい  いいえ  その他( )


Q6 多国間投資協定(MAI)が締結されれば、地元に投資している、もしくは投資しようとしている外国企業・外国投資家は、日本の法律や自治体の条例の適用が外国企業に差別的と判断した場合、損害賠償を求めて国家を直接訴えることができます(逆に国家は企業を訴えることができません)。このように住民や議会の権利より外国企業の権利を重視する協定についてどうお考えですか。

賛成  反対  どちらともいえない  その他( )

Q7 このように外国企業の「自由」と「権利」を拡大するMAIと、多国籍企業の活動を国際的に規制する協定とのどちらを優先すべきであると思われますか?

( )多国間投資協定(MAI)を優先すべき
( )多国籍企業行動を規制する国際ルールを優先すべき
( )その他( )

Q8 多国間投資協定(MAI)に代表されるような自由化の流れを進める経済のグローバリゼーションについてどうお考えですか?

( )率先して日本が進めるべき
( )世界的な流れなので仕方ない
( )弊害が多く規制を優先すべき
( )その他( )

Q9 その他ご意見をお書きください。



各政党の回答

自民党

公明党

民主党

社民党

新社会党

新党さきがけ

自由党

日本共産党

Q1

はい (無回答) はい はい はい はい はい はい

Q2

その他
MAI交渉に限らず、外交政策については、政府・国会のみならず国民もさまざまな問題について議論を行うことは望ましい。MAI交渉が行われているということについては報道や市民団体の活動などもあり、高い関心をもっている国民も多いと承知している。MAI交渉の推移については、必要に応じ国会でも議論をしていくことが望ましい。
(無回答) 国会が関与すべき 広く国民に開かれた議論を行うべき 広く国民に開かれた議論を行うべき 広く国民に開かれた議論を行うべき 広く国民に開かれた議論を行うべき 広く国民に開かれた議論を行うべき・
国会が関与すべき

Q3

その他
地域の環境や雇用、中小企業を守るための政策は必要であるが、外国の企業であることのみを理由に規制を設けることが必要か否かは一律に判断しうる問題ではなく、個別具体的な政策、規制ごとに慎重な検討を行うことが必要である。一般論として、環境規制については、外国系企業であれ国内企業であれ、日本国内の規制は順守すべきであり、差別的な扱いが行われることは不適当である。雇用確保の規制、中小企業保護のための規制についても、経済の国際化が進展する中で、何が適切か慎重に考える必要がある。
(無回答) 必要
・環境
その他
公正・公平な自由競争を保障する規制
必要
・環境
・雇用
・中小企業
(社会的規制という表現が適切かどうかとも思うが、これらの分野では十分な配慮が必要)
必要
・環境
・雇用
・中小企業
その他
国際貿易における通商ルールを決める際には、環境や雇用をはじめとする非貿易関連条項についての議論が前提とされるべき。
その他
環境規制は互恵が望ましい
必要
・環境
・雇用
・中小企業
その他
工場閉鎖・縮小の規制、地方自治体への報告・協議

Q4

その他
MAIの義務の一つは、外国企業と国内企業との間に差別的な扱いを設けることを禁止する内国民待遇であると承知しているが、MAIは外国企業を優遇することを求めるものとは承知していない。
(無回答) その他
地元の利益と外国企業の自由との整合性をとることは重要
その他
Q3の回答をベースに、内容の充実を図る。
必要ない その他
経済活動のグローバル化の進展にあわせ、地元・地場産業の振興策も行うべき。
その他 必要ない

Q5

その他
MAIの交渉の結果、締約国により認められれば、特定の国についてMAIの規定と適合しない措置を維持できると承知している。この留保を削減・撤廃すべきかについては、交渉の結果をも踏まえながら最終的には当該国が個別に施策判断をするものと考えられる。
(無回答) その他
留保される分野は必ずしも一方的に削減されていくわけではなく、継続的な議論が必要
その他
協定の内容はまだ確定していないと認識している。Q3の回答をベースに、内容の充実を図る。
はい はい はい はい

Q6

その他
一般論として、日本に進出した外国企業は、日本の法律や自治体の条例を遵守する義務を負っている。この法律や条令に違反した企業は、外国企業であれ国内企業であれ、国内での罰則が適用される場合には平等に国内手続きに服するものと理解している。MAI交渉では、外国企業に対して差別的措置がとられる場合に企業が国家を訴える手続きを定めることについて議論が行われていると承知しているが、外国企業を一方的に有利にするようなものを目指しているとは承知していない。
(無回答) どちらともいえない
「日本の法律や自治体の条例の適用が外国企業に差別的云々」から「住民や議会の権利より外国企業の権利を優先する」という結論は論理的に導かれない。国内企業も外国企業も公平に扱うことが重要
その他
協定内容の確定の際には、設問の趣旨にも充分配慮すべきと考える。
反対 その他
グローバル化に対応した国内の政策を推進すると同時に、MAIにおいても公平性を保つ最低限のルールを設けるべき。
その他 反対

Q7

その他
多国籍企業の活動に問題があるとの指摘は従来よりなされているが、MAIが外国企業の自由と権利を拡大するものであったとしても、それが即座に多国籍企業の問題を助長するものであると即断すべきではない。むしろ外国投資の自由化等がもたらすプラスの側面についての議論を深めるべきであると考える。日本の中小企業等が国際的に一層活躍できるための環境づくりの側面もある。
(無回答) その他
国内企業と外国企業を公正・公平に扱うルールが必要
その他
Q3の回答とMAIの理念との整合性を図る中で、規制のあり方について検討を行いたい。
多国籍企業行動を規制する国際ルール優先 その他
MAI交渉の過程で多国籍企業の倫理規定を作るのが望ましい。
その他
市場化と規制は同時に扱うべき。
多国籍企業行動を規制する国際ルールを優先すべき

Q8

その他
経済のグローバル化の進展は、技術革新の急速な進展等もあり、半ば不可避的なものである。この流れの中で、わが国経済も国際的な競争にさらされる機会が多くなり、構造改革等の対応が焦眉の課題となっている。MAIのような自由化の流れがわが国経済にもたらし得る悪影響については、慎重に検討する必要があるが、外国投資の自由化が高度な技術を持ちながら海外発展の機会を得にくかった中小企業等を含めてわが国経済にもたらす利益をも考えれば、必ずしも全て否定されるべきではないのではないか。
(無回答) 率先して日本が進めるべき その他
国際経済の安定が「国際平和と安定」に寄与する機能として作用できるように、MAIの内容についても国民的な議論を尽くすべきと考える。
弊害が多く規制を優先すべき その他
自由化の流れの中で非貿易関連条項についての国際ルールをつくる努力をするべき。
その他
市場化に対応できる体制を整えるべき。
弊害が多く規制を優先すべき

Q9

(なし) (無回答) (欄外) (なし) (欄外) (欄外) (なし) (欄外)



Q9回答


●民主党
自由化の進展に伴い、競争に敗れる者が増加すると予想されるが、それを放置するのではなく、社会的なセーフティネットを整備することも重要と考える。まったくの自由社会は単なる弱肉強食であり、自由と安心のバランスが問題

●新社会党
多国籍企業がそれぞれの国の経済社会の健全な発展よりも自己の利害を優先して行動することには弊害は多い。特に途上国における行動は、労働者の権利、住民の生活、環境保全、資源の保護などの面で監視・規制を強めるべきだと考えます。


●新党さきがけ
先進国の論理が優先する協定の決定のあり方は是正すべき。


●日本共産党
日・米・欧多国籍企業の国境なき利潤追求、全世界に向けた直接投資の拡大は、需給ギャップの世界的規模での拡大、環境破壊、労働争議、アジア通貨危機の背景とされる外資依存型輸出工業化路線の破綻、わが国におけるコメ輸入自由化や産業空洞化、大量失業問題など多くの問題をひきおこしている。現在まずとりくむべきことは、多国籍企業の投資活動がひきおこしている問題を民主的に規制していく国際的な秩序づくりである。そのためにも、日・米が抵抗している国連多国籍企業行動規範(案)の早期成立を図るべきである。