江戸川区議会が日本政府に対し、

MAIへの慎重な対応を要請する決議を採択

(1998年3月19日)

 3月19日、東京都江戸川区議会は、来月4月の締結を目指してOECD(経済協力開発機構)で交渉されているMAI(多国間投資協定)について、日本政府に慎重な対応を求める意見書を採択した。この意見書は、MAIによって多国籍企業や外国投資家がより大きな「自由」と「権限」を与えられる一方、地方自治体が地場産業や地元企業を優遇することや、環境保護や雇用確保のために外国投資や外国企業の進出に条件を付けることを認めていない点について懸念を表明している。また、世界規模の競争に勝つために劣悪な労働をさせ、利益追求のために環境破壊をもいとわない企業には「自由」よりも「規制」が必要であるとしている。

 この協定については、すでに3月10日には欧州議会でもMAIを現在の内容のまま採択することはできないとする決議を採択しており(英文の決議文を希望の方は2001まで)、また、フランス政府もMAI交渉からの撤退を正式に表明するなど、NGOの反対運動から発展した政府レベルでの反発が世界各国で広がっている。



江戸川区議会で採択された意見書の全文:


MAI(多国間投資協定)の交渉に関する意見書


 現在、OECD(経済協力開発機構)において、先進29ヶ国だけで交渉が進められている、MAI(多国間投資協定)が、今年の4月に締約されようとしています。この協定は、国際投資の自由化によって、多国籍企業や国際投資家に、より大きな「自由」と「権限」を与え、規制緩和を進めるものです。
 MAIが実施されると、地方自治体が地場産業や地元企業を優遇することや、環境保護や雇用確保のために、外国投資や外国企業の進出に条件を付けることは認められません。その上この協定の下では、例えば日本国内で、特定の農薬に関して使用禁止の指定をしていても、国際的農薬会社が、差別を受けたという理由で、直接日本政府を訴える権利をも持つことになります。本来なら、世界規模の競争に勝つために劣悪な労働をさせ、利益追求のために環境破壊も厭わない企業には、「自由」よりも「規制」が必要です。
 自由化や規制緩和によって、価格低下がもたらされるにしても、環境や雇用を犠牲にしてまで安さのみを求めてよいというものではありません。このMAIによって、一部の多国籍企業が社会的弱者や途上国の人々の生活を押し潰してしまいます。また、これまで消費者が求めてきた食の安全性は無視され、地域の小規模生産者はより深刻な影響を受けることになります。
 よって、江戸川区議会は、MAIの交渉にあたっては慎重に対応されるよう、強く要望します。
 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出します。


 平成10年3月19日 江戸川区議会議長 中山保二


内閣総理大臣・通商産業大臣
外務大臣・経済企画庁長官 あて
農林水産大臣