MAiを巡る最近の動き9806

●MAI交渉が10/20-21にOECD本部で再開される
　4月のOECD閣僚理事会の決定を受け、6カ月間凍結されていたMAI交渉が10月に再開される。同時期には世界各国から市民・NGOがパリに集まり、デモや戦略会議が開かれる予定になっている。

●アメリカ議会がファスト・トラックを再度否決（9/25）
　昨年来、米政権の懸案となっていた貿易関連の国際交渉を行政府が一括して交渉する権限（ファスト・トラック）が再度、米下院で反対243票、賛成180票で否決された。2000年に期限切れとなるWTO農業協定の再交渉の開始までに同法案を可決したいと考える議員の支持を取り付けようと、アーチャー共和党下院議員はMAIの交渉権限を除外したファスト・トラック修正案を提出している。米議会内でMAIに反対しているのは同議員に限らない。輸出産業の大手キャタピラー社を抱える地域から選出されているドン・マンズーロ共和党下院議員は、9月10日に議会公聴会において「MAIは米議会に持ち込まれた途端に、完全に否決されるだろう」と述べている。

●ドイツがMAI協定案の内容をダウンサイズするよう提案
　ドイツ政府がEU理事会のMAIに関するアドホックグループ会合に提出したノンペーパーでは、MAI協定の早期締結を目指し、協定案の内容を削減することが提案されている。また、どこを削減するのかを決める基準として、�投資に関連が深い問題であるかどうか、�他の国際協定、特にWTO協定と重複していないかどうか、�NGOに批判されているかどうか、�早期に解決策が見つかりそうな問題かどうか、の4点を挙げ、具体的な削減個所の提案として�「投資の範囲」を直接投資とポートフォリオ（証券・為替）投資に限定し、知的所有権や契約権などの財産権については、投資受入国に存在する子会社の資産である場合に限定して対象とする。�NGOからの批判が大きい「投資家対国家」紛争解決については、既存の二国間投資協定と同様に、その対象範囲を「設立後」の投資に限定する。�サービス関連投資については、WTO/GATSにおいて自由化ルールが存在しているため、MAI交渉各国がGATS遵守義務を再検討することで、サービス関連投資に関連したMAIの国別例外リストを大幅に削減できるはずである。「設立後」の外国投資の待遇についてはGATSにすでに含まれている。�「運輸」については、MAIが既存の二国間協定あるいは地域協定で規定されている自由化義務に抵触するものではないと明記する。�禁止されるパフォーマンス要求の中には、禁止すべきでないものも多いため、このリストを短くするか、あるいは完全に削除してWTO/TRIM協定を参照することにする。�「独占」に関する条項には、直接投資に関係ない内容が含まれているため、「反競争行為」などの項目を削除する。�「例外」については「（一定割合の）居住者（の雇用などの）要求」は内国民待遇原則に反していないので、例外項目からは外す。

●国際商業会議所（ICC）主催の会合で産業界は投資協定をWTOに移すことで一致（9/23-24）
　世界の多国籍企業のトップ450名と、WTO、UNCTAD、 OECDなどの国際機関の事務局長らが集った「ジュネーブ・ビジネス・ダイアログ」では、グローバル経済が直面する問題と、「産業界の経験と専門性を...グローバル経済の意志決定プロセスに（いかに効率的に）反映するか」という点が話し合われた。モーチャーICC会長（ネスレ重役）は、MAI締結が遅れている現状を批判しつつ、最終目標は投資自由化協定をWTOで成立させることだと発言した。同会長は記者会見において「最後になって社会条項が付け足されてしまったMAIは、もう支持しない」と語り、「途上国は、MAIを北の保護主義として反対するだろう」とも述べた。
　一方で、この会議では、多国籍企業のほとんどが短期的な資本移動の規制を望んでおり、また海外直接投資（FDI）とポートフォリオ投資を区別するべきだと考えていることが明らかされ、つい最近まで世界のあらゆる場所で早期に規制緩和と自由化を実現しようとしていた多国籍企業の間で、パラダイム・シフトが起きていることをうかがわせた。その背景には、金融危機が実体経済に大きな影響を与えていることがある。しかしまた、短期的投資の規制が、貿易・投資全般の規制に及ぶことを懸念する声も多い。また、グローバリゼーションを批判する勢力に対処する必要についても議論された。MAIについて見ると、産業界は段階的自由化を望んでおり、トップ・ダウン型で一気に自由化を実現しようとする現状のMAIを支持する声は少ない。

●ジュネーブ・ビジネス・ダイアローグ直前にスイスの警察がNGOに手入れ
　ジュネーブのNGO「ピープルズ・グローバル・アクション（PGA）」が前出のICCの会合に並行して「グローバリゼーションに関するセミナー」を開催すると記者発表した2日後、発表された出席者リストに記載されていた市民・NGO全員がスイス警察に逮捕・尋問され、外国人の何名かは国外追放された。警察側はこれを「予防的」措置だと弁明した。さらに警察は数十名で民家3軒とPGA報道事務所に手入れを行い、6名を尋問、コンピュータ8台、フロッピーディスク100枚以上、そしてほぼ全てのPGA関係書類が押収された。この捜査は5月のWTO閣僚会議の期間、ジュネーブ市内で起きた「暴力」事件とPGAとの関係を立証するためとされた。

●イギリスの漁業ルールはMAI違反？
　WWF-UK（世界自然保護基金・イギリス）によると、イギリスの漁業法が改正され、新しいルールは明らかにMAI協定に抵触する内容となっている。1999年1月から実施される同法では、イギリス政府からイギリスの漁獲割当量を買い取った外国漁船（オランダ・スペイン籍の漁船が多い）に、漁獲の50％をイギリス国内の港で水揚げすること、および船員の50％をイギリスの居住者とすることを義務付けている。このような規定は、MAIで違反とされる「パフォーマンス要求（外国投資家の利益を損ねるような現地調達要求・雇用要求・輸出要求などの総称）」に相当するため、イギリスはこのルールを実施するためには漁業法をMAIの国別例外項目として認めさせねばならないことになる。WWF-UKは、持続可能な漁業を実現するためには、漁業資源を保全する権利を地元漁民に与えることが重要として、この新ルールを歓迎しており、一方でこのような漁場保全のための国内法を違反とするMAIによって、逆にイギリスの漁船が途上国の漁場を荒らし、地元漁民の生活を破壊するようなことが可能となるとすれば、それは明らかな「ダブル・スタンダード」であると述べている。

●EUおよび欧州諸国とNGOとの協議が開催される（9/27）
　NGO、産業界、および文化団体を対象とした「MAIに関する協議」がECおよび欧州各国政府の参加の下に開催された。これとは別に、ECと欧州各国は労働組合との協議を開催している。NGOはMAIの問題点として「投資家対国家」紛争解決メカニズム、トップ・ダウン・アプローチ（「投資」の定義が広いことなど）、パフォーマンス要求の制限、そして投資家の権利と義務のバランスが取れていない点であるとし、MAIの成立によって多国籍企業は投資引き揚げを脅し受入国の環境基準を引き下げることが可能になることや、「収用」条項が汚染者負担原則（PPP）を認識していないこと、途上国が交渉に参加していないにもかかわらず現実問題としては加盟せざるを得なくなる可能性などについて批判した。
　NGOはまた、MAIが実現しようとしている投資の自由化が持続可能な開発の達成に役立つのかどうかを証明するのはOECD諸国の政府の責任であるとして、NGOに挙証責任を押しつけるのは間違いだと主張し、さらに4月のOECD閣僚声明が勧告し、EU議会も要請している「MAIの包括的な影響評価」が全く行われていない現状を非難した。開発への影響については、MAIが国際的な資本移動を規制する各国の能力を制限すること、投資自由化があらゆる途上国への投資を拡大するとは限らないこと、MAIは外国投資家により大きな権限を濫用する可能性を含んでいることなどが出された。その他、MAIと他の国際的な社会・労働・環境協定および宣言とが整合していない点や、国別例外に「ロール・バック（段階廃止）」が適用されることの問題、各国における省庁間の調整の欠如などを批判し、またEU各国の「国別例外」項目リストを公開するよう要求した。
　EUは「収用」の条項について、予防原則を取り入れることを約束したが、包括的影響評価については予算がないこと、および協定が最終化されないと実施できないことを理由に実施できないとした。ルクセンブルグ政府は「収用」条項には各国が規制する権利を明記すべきと述べた。オランダ政府は、投資家の権利と義務をバランスさせるという議論は交渉グループの議題とされることが決まったと述べ、既存の多国籍企業ガイドライン（MNEs）に欠点があることを認めた。他にもフランスとベルギーがMNEを強化すべきだ主張し、特にベルギーはMNEに法的拘束力を持たせるべきだと主張した。途上国への対応については、ECは開発援助によって解決できるとしたが、フランスは交渉に最初から途上国を参加させなかったのは間違いであったと述べた。国別例外項目リストは非公開であるとしたが、各国が個別に公開しているはずだとも述べた。
　この協議では、EU各国の間にもMAIに対する意見の違いが存在することが明らかになった。例えばスウェーデンはMAIと多国間環境協定（MEAs）との関係について評価を行っており、また来年1月にはデンハーグで「FDIと環境」という会議を開催する予定にしており、各国でもMAIの環境影響評価を行うべきだという姿勢である。フランスはOECDでMAIを締結することに積極的でないが、イギリスは今のMAI協定案を支持しており、ドイツから出されたノンペーパーの提案に強く反対しているという。

●デンマーク議会がMAI決議を採択
　デンマーク議会が今年3月にMAIに関する議会決議を採択していたことが明らかになった。その内容は、外国投資を保護するための国際ルールの必要性を認めつつも、MAIが持続可能な開発の原則を守り、国内の通常の環境規制を妨げず、また基本的労働権（ILO条約）に配慮したものでなければならないとしている。同決議ではまた、MAIは（外国投資誘致のための）「基準緩和を禁止」する条項を含むべきであり、さらに途上国の状況に特に配慮した条件によってOECD非加盟国のMAIへの加盟を認めるべきであるとしているほか、MAIについて広く国民に開かれた議論を開始すべきであり、その議論には国内外のNGOを含めるよう外務省に求めている。左派が提案していた「MAI協定からの『収用（Exproproation）』に関する条項の削除」、「紛争解決メカニズムで投資家が国家を提訴できるという内容の削除」、および「国際商業会議所（ICC）はMAIの紛争解決を行う場としてふさわしくなく」、また「文化関連政策はMAIから除外されるべきである」という重要な点は今回の決議には含まれなかった。デンマークでは外務省がNGOと「（WTOミレニアム・ラウンドに関連して）貿易・投資に関する協議」を開始しており、ここがMAIに関する議論を行う主な機会となっていくと見られている。

●NAFTAルールに基づき、アメリカの廃棄物処理会社がメキシコの州政府を提訴
　アメリカの廃棄物処理会社、メタルクラッド社が1997年1月にメキシコ・サンルイスポトス州政府をNAFTA違反で提訴していたことが明らかになった。メタルクラッド社が同州内の廃棄物処理施設を買収し、事業を開始しようとした際に、州知事がそれを認めなかったため、損害を被ったとして同社は9000万ドルの賠償を請求している。メタルクラッド社の買収した施設は、過去に地下水を汚染しており、そのため同社はその汚染を浄化することを買収時に義務付けられていた。しかし環境影響評価の結果、同施設が生態系に重要な地下水脈の真上にあることが判明し、州知事は同地区を含む60万エーカー（約24万ヘクタール）を生態系保護地域に指定した。土地計画法を逆手にとって損害賠償を請求するという手法は米国内では既に広く使われているため、米国内法では簡単には賠償請求が通らないようになっているが、NAFTAの「収用」条項では投資家の権利が拡大されているためにこのような賠償請求が通ってしまう可能性がある。
　このケースでは「市場と関連しない」投資リスクを投資家が政府に転嫁することが合法化される可能性をはらむものである。NAFTA条項がなければ、このような投資リスクは投資家が負うリスクとされ、投資家はリスク回避のために事前に適切な環境影響評価を自ら実施していたであろう。一説によると、メキシコ政府がこの提訴を奨励したとされており、それが事実とすれば、既に水質汚染で苦しむ地元住民の意思に反して国家が環境汚染産業を国内に誘致するためにNAFTA条項が濫用されている可能性も否定できない。事実、メタルクラッド社の事業開始について、地元住民は国家からも州政府からも一度も説明を受けていないという。

●カナダの環境保全措置を撤回させたNAFTAケースを世界のメディアが次々に報道
　MAIの「投資家対国家」紛争解決メカニズムの先行事例として注目されているNAFTAの投資関連紛争ケースの一つ、米エチル社がカナダ政府を提訴していた件（MAIを巡る最近の動き98/6-7参照）で、情勢を不利と見たカナダ政府が和解に応じたことが、加フィナンシャル・ポスト紙（7/28）、英ガーディアン紙（8/13）などに次々と報道されている。この和解でカナダ政府は、エチル社の製造する有害物質（MMT）の健康・環境への悪影響を否定する声明を発表、輸入・越境販売禁止措置を解除した上で1000万ドルの損害賠償を支払う決定を行っており、同様の規定を持つMAIが成立すれば、投資家が投資受入国政府に対して同様の影響力を行使できるようになると恐れる法律家は多い。フィナンシャル・ポスト紙には、この件についてカナダ政府から諮問を受けていた法律家が記事を書いており、その中でカナダのMMT禁輸措置が貿易ルールに反するとアドバイスしたことを間違いであったと認めた上で、NAFTAの規定する「収用の概念が、資産の没収という既存の概念を大幅に拡大している点（外国投資家が直接、間接に関わらず所有している資産・利益に対し、没収と同様の効果を持つ措置に適用）、および紛争当事者が希望すれば紛争解決プロセスが完全に非公開のまま進められる点に警告を発している。

●カナダ・ブリティッシュコロンビア州議会でMAIに関する公聴会が開かれる
　昨年既にMAI反対決議を採択している加ブリティッシュコロンビア（BC）州では、9月29日にMAIに関する州議会の公聴会が開始された。「MAIに関する特別委員会」が開催した公聴会では、トロントの国際貿易投資法の専門家が「MAIルールは全ての地方自治体に適用されるため、地方自治体の規制権限が大幅に制約される」と主張した。それに対してバンクーバーの専門家は「MAIは、既にカナダが調印している二国間および多国間の投資協定と際だって違う協定ではない」と反論した。委員から質問の多くは、MAIの「収用」と「補償」に関する条項について、NAFTAの下で行われている投資家対国家紛争ケースに関して、およびこれらの紛争ケースとMAI交渉の非公開性に関するものだった。カナダ政府が州政府などの地方自治体にMAIなどの国際協定を遵守させる権限を持っているのかどうかという点に関心が集まっていた。「カナダ環境法連盟」は、「MAIはモントリオール議定書などの既存の環境協定を適用除外とすることを明示しておらず、また環境保全に言及しているMAI前文は法的実効性を持たず、GATT20条を踏襲した例外規定もその効力はいまだ証明されていない」として、その結果、森林伐採や廃棄物投棄などの環境影響評価法制を含む、数多くの環境関連法制がMAIに侵害される可能性を示唆した。環境保全に関しては、「シエラ法律防衛基金」とサンフランシスコの「グローバリゼーションに関する国際フォーラム」、および「環境保全のためのカナダ医師連盟」、オタワの「カナダから喫煙をなくす医師の会」などが発言した。委員会の関心は、アメリカ政府が全ての地方自治体の法規制をMAIの例外としようとしていること（MAIフリーゾーン）、国内外の林業に与えるMAIの影響、国際貿易が環境保全よりも優先されること、およびMAIに付加された環境条項が不十分である点などに注がれた。MAIによって、政府が自国民の健康を守るためにタバコ関連の広告を規制する権限が狭められるのではないかという点も議論された。
　MAIがカナダの文化的自己表現を制約するという点も言及された。文化をMAIの例外とするに際しては、文化をより包括的に定義し、かつ文化定例外をスタンド・スティル（これ以上例外を増やさない）やロールバック（例外を徐々に削減・撤廃していく）の対象とすべきではないとの主張が出された。

●イギリス政府の委託で作成された「フィッツジェラルド報告」と、それに対するイギリスNGOの批判レポート
　イギリス国際開発省（DFID）がオックスフォード大学のE.V.K.フィッツジェラルド教授に委託した「MAIの開発への影響」というレポートに対し、イギリスのNGO、世界開発運動（WDM）が批判レポートを発表、MAIが途上国、特に後発途上国に与える影響についての議論を展開した。WDMは、このフィッツジェラルド・レポートはわずか3週間で書き上げられた予備的なペーパーであり、本来なら含められるべき途上国政府、研究者・学者、UNCTADなどの国際機関、南北のNGOなどの見解が反映されておらず、MAIの包括的な影響評価には値しないと主張している。内容についても、MAIの内包する危険や対価に関する評価の多くが抜け落ちており、そのため、途上国の開発に役立つような協定とするためにはMAIのどこを改善すべきかといった提案は全く見られないという。フィッツジェラルド・レポートでは、例外規定を限定していこうとする政治的圧力によって多くの例外が撤廃されていく（ロール・バック）ことを認め、また最貧国がMAIに加盟するためのコストを賄うための新たな追加資金は生まれないと述べるなど、前提においてMAIに批判的でありながら、結論部分ではMAIを支持しており、分析が論理的でないとしている。WDMの主張は、多くの先進国が発展過程では採用してきた国内産業振興政策がMAIでは違反とされる、金融安定化のための政策が違反となる、途上国による自国の社会・文化・環境の保全を認めない、設立準備の段階において外国投資に内国民待遇を適用しなければならないというMAI規定が、政府による外国投資規制を実質的に不可能としているというものだ。WDMは一方でフィッツジェラルド・レポートがMAIに抜けている規定として挙げている外国投資誘致のための外資優遇措置の規制や、移転価格・税回避などの防止、反競争的・制限的商慣行の防止、そして外国投資家の責任などの提言、および債務軽減などがMAI加盟への圧力として利用される可能性を示唆している部分を評価している。

●マレーシア、ベトナムなどが外為・外資規制を新たに導入
　マレーシアは9月初頭、株式の一年間売却禁止措置（非居住者の株式売却代金の海外送金を一年間禁じる）、対ドル固定相場制の導入など、次々と自由化路線という世界的潮流に逆行する措置を発表した。これは昨年来のアジア金融危機が短期的な投機資金の移動によって引き起こされたと見るマハティール首相自らが推進した措置と見られ、その後にIMFなどの奨励する自由化路線を堅持すべきとするアンワル副首相兼蔵相の解任・逮捕事件にも波及した。しかし、自由化の旗手の一人であるグルークマンMIT教授なども同国の措置を支持する発言を行っており、マハティール首相が名指しで批判した投機家ジョージ・ソロスもまた、「完全な資本移動の自由を認めるのは賢明ではない（日経10/6夕刊）」と述べるなど、市場規制に対する受けとめ方が大分変わってきて来ている。また最近、新自由主義のシカゴ学派を率いるミルトン・フリードマン教授が「IMFなど解体すべき」と発言して注目を集めた。
　一方、ベトナム政府は外国人による国内企業の株式取得の上限を30％とする法律を来年から実施する。これに並行してベトナム国家証券委員会（SSC）は、近々に創設される証券市場において、外国人の株式取得制限比率を30％とする方針を決めた。台湾も現在、海外の投機家による「不正な操作」から自国市場を防衛するための政策を思案中であるという。このような一連の市場規制措置は、MAIの原則には反することになるが、MAIのポートフォリオ投資自由化の中ではどのような扱いになっていくのか、今後の議論が注目される。

●外務省が「MAI説明会」を開催（9/2）
　MAIにNO！日本キャンペーンによる再三の要求に答える形で、外務省は「MAIに関する説明会」を開催した。この説明会の案内は一般新聞にほとんど掲載されず、外務省ホームページ上に掲載された（8月17日）9日後（25日）が郵送申込の締切であったこともあり、参加者は市民・NGO約20名に産業界・国際機関・研究者が数名づつという小規模なものだった。政府側の参加者は、外務省を始め、通産・大蔵・建設・法務・農水・自治・環境など各省庁が檀上に顔を揃えた。
　当初予定では1時間半と非常に短い時間（実際には2時間半に及んだ）の説明会であったにもかかわらず、外務省からはこれが「OECD閣僚理事会の声明を受けた正式な市民との協議プロセスだと認識している」と説明され、継続的な協議を希望するNGO発言には明確な返事は得られなかった。外務省の認識は、「継続中の条約交渉に関して市民向けに説明会を開くのは初めてのことであり...各国の政府間交渉における立場は公表しないものなので、国会の審議・承認のプロセスが正式な民主的プロセスであると理解している」というものである。
　情報公開が不十分であるという意見に対しては、説明会前日の9月1日に外務省ホームページに掲載した資料（説明会当日に同じものが配布された）が唯一、日本語になっている資料であり、今までの問い合わせに対しては全て口頭で返答してきたことを認めた。途上国政府や途上国の住民に対しても説明および意見聴取を行う必要があるとの意見に対しては、OECD事務局が途上国でセミナー・シンポジウムを開催、理解を広めていると答えたに留まった。NGOからは「途上国の加盟を前提としながら交渉には参加させていない」「MAIは投資受入国にとっては義務協定であり、投資家にとっては権利協定であるという点でバランスが取れていない」「MAIでパフォーマンス要求を禁止しているのは、通産省の進出企業のためのガイドラインにある現地雇用およびより高い環境基準の採択といった点と矛盾する」「NAFTAの先行事例から見るとMAIの投資家対国家紛争解決メカニズムには濫用される恐れが多く、その結果、必要な社会・環境法制が侵害される可能性がある」「腐敗防止、国際独占禁止法など、必要な措置が盛り込まれていない」などの意見が出されたが、外務省からの返答は満足のいくものではなかった。外務省からの回答の一部を要約すると「途上国への配慮は交渉の中で話し合っていく。MAIは国家の規制する権限を縮小させるものではない。MAIの義務は一律に全ての分野に適用されるが、一般的例外と国別例外リストによって適用除外を規定している。紛争解決については国家はもともと権限を有しているので、投資家が紛争当事者になってもその権限がなくなるわけではない」というもの。通産省は前出のガイドラインについて「進出企業が進出先で受け入れられ易くするためのものであり、いずれにしてもボランタリーなもの」と回答した。現時点でポートフォリオも含めた全ての国際投資を一律に自由化することのメリットとデメリットに関する議論は、FDIおよび経済成長が社会開発・環境保全を促進あるいは、これらと両立するのかどうかという根本的な前提の違いから平行線を辿った。

●投資自由化ルールはどこの機関で？
　OECD/MAIの10月までの交渉凍結を受け、国際投資自由化ルールの早期成立を望む先進国政府や政府間機関の間でも、どの国際機関で遂行するべきかという点で意見が分かれている。例えばドイツ・イギリス・オランダ・米国国務省はOECDでの成立を望んでおり、ニュージーランド・フランス・カナダ・（そして多分）米通商代表部（USTR）はWTOで交渉したいと考えている。途上国にとってはOECD・WTOのいずれも好ましくなく、NGOは国連で話し合うべきとの基本姿勢だが、OECDとWTOに追随している現在のUNCTAD（国連貿易開発会議）の実態を考えればUNCTADが必ずしも適切な場とは言えない。日本政府については、通産省はWTOの場での交渉を望んでいるが、外務省については明らかでない。
　ある筋の予測では、MAIがOECDで協定として成立する確立は40％であり、50％の確立でMAIの議論はWTOに移されるという。MAIが葬り去られる確立は残りの10％とのことである。

●UNCTAD(国連貿易開発会議)が「投資に関する多国間の枠組み（MFI）」について会合を開催
　6月10日、UNCTADは各国の駐ジュネーブ大使とNGOを招いて「投資に関する多国間の枠組み（MFI）」について対話セッションを主催し、翌11～12日にはNGOと労働組合を招き、UNCTAD職員との間で意見交換を行った。この一連の会議において、多くの途上国大使とNGOはOECD-MAIを強く非難し、WTOにおいて投資協定の交渉を開始することにも反対した。　
　ガーナ大使は「途上国にはFDIを誘致するための自由化・規制緩和への圧力がかかっているが、FDIの自由化は経済成長をもたらさず、途上国の社会・経済面でのニーズを満さないという事実が明らかになってきている」と語った。FDIの悪影響として同大使は「国内貯蓄への悪影響」「資本流出（利潤流出が新規対内投資を上回る場合）」「貿易収支への悪影響（輸入増加により輸入が輸出を上回る場合）」を挙げた。パキスタン大使は、これに加えて「ポートフォリオ投資とFDIの不安定性」「中小地場産業への悪影響」「天然資源への悪影響」「ブランド製品販売による消費パターンの歪み」などがFDIによって引き起こされると述べ、MFIは途上国に対して特別の配慮と差異のある措置を行わねばならないとした。具体的には、不安定な資本流出入の破壊的影響を低減するメカニズムの設置、「投資」の定義からポートフォリオを除くこと、途上国に部分的、かつ段階的な自由化、およびパフォーマンス要求の維持を容認することなどが出された。中国大使はFDIを歓迎しつつも「開発」への配慮が十分なされねばならないとし、政府が投資を規制する権限と自由を維持しなければならないと述べた。中国がFDI誘致に成功している秘訣として、同大使は「開発・安定・改革の3要素の微妙なバランスを保つ戦略である」とし、必ずしも自由化の度合いだけが重要ではないと述べた。タンザニア大使は、WTOでMAI交渉を開始する提案に対し、それが後発開発途上国（LDC）の開発政策を著しく制約することから強硬に反対したと述べ、自由化政策の不在によってFDIが誘致できないという仮定は事実ではなく、「開発は投資を呼ぶが、外国投資は開発を促進しない」としてLDCにとってはMFIがない方がよいと語った。エジプト大使の見解も同様で、「いかなる投資でも誘致すれば良いというものではない。アジア金融危機を繰り返してはならない..」と述べ、MFIは必要ないとした。
　一方、EC国連大使は、「貿易と投資はコインの表と裏の関係にある」として「少ない海外投資に対してより良い条件を提示できない国は孤立するだろう」と威嚇した。それに対しジャマイカ大使は「海外投資が量的に奪い合いになるほど少ないとは思えない」として「MFI（MAI）の優先目的が投資家保護なのか、消費者保護なのか、それとも途上国の開発促進なのか」と質問した上で、「UNCTADの調査研究能力を強めることと、単なるルールに基づいたシステムではなく、規範的ルールに基づいたシステムを作っていくことが必要である」と主張した。
　OXFAM-UKは国際投資協定の交渉を全く新たに一からやり直すことを提案し、その中で政府が外国投資を規制する権限がきちんと認識されるべきだと主張した。第三世界ネットワーク（TWN）は、MFIについて話し合う前に、海外直接投資(FDI）の性質と役割について研究が行われるべきだと述べ、2年前にWTO事務局が「大した影響はない」と片づけた「外国投資の国際収支への悪影響」が実際にはアジア通貨危機の一因となった事実を指摘した。TWNはまた、途上国の開発問題を優先課題とすべきUNCTADが、MAIの根本的な問題を正面から取り上げることなく、開発への配慮をつけ加えるだけで途上国やNGOの反対や批判を抑える役割を担っている実態を厳しく批判し、UNCTADの研究分析や作業内容において開発問題を中心に据えるよう要請した。特に「FDIはどのような条件下で開発促進に役立ち、どのような条件下では問題を引き起こすのか」などの分析が必要だとした。カナダのポラリス・インスティテュートはMAIによって「大きな政府が大きな企業に取って代わられ、人々はますます企業を規制することができなくなる」ため、これを「民主主義を覆す問題である」とし、「MAIの前提である新自由主義モデルが問題であり、そのモデルに基づくMAI策定のプロセスに参加することに意味はない」と述べた上で、「開発」は目的であり、投資をその目的に添わせるべきで、投資保護・自由化を主目的とした投資協定において「開発」の問題にも追加的に対処するというアプローチは間違いであると語った。国際自由労連（ICFTU）は、「自由化は経済成長をもたらさず、格差を拡大し、国外からのショックを国内にもたらすものである」と述べたOECDのエコノミストを引用し、新たな政治経済はUNCTADとOECDがリードすべきだと述べた。
　UNCTADの回答は「投資のプラス影響はマイナス影響を上回っており、結論は『投資は開発に貢献する』というものだ」として、「UNCTADの役割は投資のプラス影響を最大化することである。さらに政府間機関という性質上、UNCTADの役割は各国政府が決定するのである（事務局ではない）」と述べるに留まった。UNCTADのセミナーやワークショップには誰が資金を提供し、その出資者（国）がどの程度影響力を持つのかという質問については「出資国のニーズに応える形で事務局が主体的に内容を決定する」と答え、出資国のほとんどが北の国であると述べた。さらにインドのCUTSによれば、UNCTADは多国籍企業の連合である国際商業会議所（ICC）と貿易促進に関する共同イニシアティブを実施しようとしているという。彼は、UNCTADは既にICCと共同で途上国が競争法・政策や消費者保護法・政策の立案に深く関わっており、これは大きな問題であるとした。

●OECD各国で、MAIに関する市民との協議プロセスがスタート
　4月28・29日に開催されたOECD閣僚理事会は、MAI交渉を今年10月まで一時凍結すると決定し、その間に各国市民との協議、およびMAIの影響評価を行うことを勧告した。これを受け、OECD各国で市民との協議が始められている。
アメリカ：市民・NGOの強い要請を受け、7月15日にワシントンD.C.で市民との協議が行われた。米政府はこの協議の場で、「我々はWTOやFTAA（米州自由貿易圏）など、あらゆるフォーラムで投資の規制緩和を推進していく」と述べ、しかし「NGOが求める高い労働・環境基準を実現する投資協定を作るにはOECDが最適の場であり、NGOはOECD-MAIを受け入れるべきだ」と要請した。EUは途上国での外国投資保護が最大の課題として、途上国も含むWTOでの投資協定締結を望んでいるが、米政府はOECDでまず「高い自由化水準」のMAIを作り、それをWTOに持ち込むことを望んでいる。
イギリス：英政府に対して6月、世界自然保護基金イギリス（WWF-UK）、地球の友イギリス（FOE-UK）、世界開発運動（WDM）、オックスファム（OXFAM）カソリック海外開発基金（CAFOD）の5団体が共同で、市民との協議、独立機関による影響評価のプロセス、議会での議論、および情報公開について具体的な要請を行った。
EU：欧州委員会（EC）は欧州のNGOに市民との協議への招待状を送付しているが、この協議の内容がどのように交渉に反映されるかなど不明な点も多く、また招待ベースであることなども含め、プロセスそのものにも批判が上がっている。

●OECDが「オープン・マーケット：貿易・投資自由化の恩恵」を発表（98/4）
　4月に発表された「オープン・マーケット：貿易・投資自由化の恩恵」というOECDレポートに対し、世界自然保護基金インターナショナル（WWF-I）は以下のようなクリティークを発表した。
・このレポートの環境に関する結論の多くは、証明されていないか、あるいは虚偽である。経済成長の環境影響や、鉱業・農林漁業・観光など環境への影響の大きい分野に関する研究、自由貿易地域（輸出加工区）や投資誘致のための部分自由化などの環境影響、および自由化ルールが環境規制に与える影響、自由化が分配に与える影響などが全く検討されていない。また投資拡大で環境適正技術が移転されるという点も、どの程度促進されたのかは示していない。
・分析対象の範囲が不適切であり、そのほとんどが製造業の汚染に関するもので、天然資源の採取・利用が環境に与える影響は考慮されていない。いずれの場合も現実には、投資誘致のために環境規制が低下したり、実施されなかったり、撤廃されたりしている。また、自由化への移行過程では、永久的な環境破壊や貧困の拡大が起きており、自由化によって所得が増えても環境の質が改善されるという理論に根拠はなく、逆に環境破壊は多くの場合に不可逆的であるがために所得増が持続可能性を保証することはない。生物多様性の喪失や土壌流出、気候変動などは不可逆的であり、かつ環境コストとして内部化することは困難またはほぼ不可能であり、これら外部不経済を反映しない市場価格は「資源の不効率な再配分」をもたらす。
・このレポートは、バランスの取れた人間・技術・社会資本の蓄積を行うことと、環境的限界の範囲内で予防原則に基づいた最良の天然資源利用を行うという考えに基づいた、新たな経済成長や持続可能な開発に関する理論を無視している。etc.

●NAFTAで係争中のエチル社の訴えに対し、カナダ政府がMMT越境輸送禁止を撤回、1000万ドルの賠償支払いで和解に！
　MAIの「投資家対国家」紛争解決メカニズムのモデルとされたNAFTAの投資紛争解決システムにおいて米エチル社に提訴されていたカナダ政府は、提訴の根拠となっていたMMTの輸入・越境販売禁止を解除し、エチル社に推定1000万ドル（約14億円）の賠償（提訴費用と損失補償）を支払うことを決定した。MMTとは、オクタン価を上げるためのガソリン添加物であるマンガン化合物であり、神経系統に影響を与えるとして昨年4月にカナダ政府が輸入・越境販売を禁止した。エチル社はMMTの唯一の製造元であったため、これを外国投資に差別的な措置としてNAFTAに提訴していた。同社は今回の決定を受け、この提訴を取り下げる予定である。カナダ政府は「MMTは環境・健康のいずれにも害はない」という声明を発表する予定だが、最近のケベック大学の調査では血中マンガン濃度と神経系統の障害には相関関係があることが明らかにされている。

●NAFTA三ヶ国の鉄鋼労組がNAFTAを憲法違反として提訴
　全米鉄鋼労組（USW）は7月13日、米国、カナダ、メキシコの3カ国間で締結されている北米自由貿易協定（NAFTA）の米議会での承認手続きが憲法違反だったとして、北アラバマ連邦地裁に対し、同協定の無効確認を求める訴訟を起こしたと発表。USWの主張は、NAFTAは条約であり、憲法上では承認に上院の三分の二以上の賛成が必要とされているにもかかわらず、実際には上院が61対38、下院が234対200の僅差で可決されているために無効であるというもの。
　これと並行して、NAFTA3ヶ国の労働組合と人権団体は、NAFTAの付帯協定である労働協力に関する北米協定（NAALC）の提訴システムを通じて米エクリン社を提訴する準備を進めている。メキシコ市近郊のブレーキ・メーカーITAPSA（エクリン社系列）を、選挙違反・労働者虐待・労働権を否定した州労組との癒着などの件でメキシコの鉄鋼労組が提訴したことを受け、カナダと米国の同社労組他40の労働・人権団体が共同で9月に提訴に踏み切る。
　こうした動きは、発効して4年になるNAFTAが、加盟3ヶ国の労働者から職を奪い、賃金を低下させ、農業にも深刻な悪影響を与えているとの認識が広まりつつあることを反映している。

●OECD多国籍企業ガイドライン、今年から2年間のレビュー作業が始まる
　OECD投資・多国籍企業委員会（CIME）は6月23日、OECD多国籍企業ガイドライン（MNEs）を今後2年間かけてレビューすることを決定し、最初の会合は11月中旬にブタペストで開催されることになった。MAIに法的拘束力を持たないまま付属文書とされるこのガイドラインのレビューには産業界や労働組合も多大な関心を示しており、MAIに対するNGOの世界的な反対を受けて今回のレビューにはNGOも招待されることになる。しかし、MAIが法的拘束力と「投資家対国家」紛争解決メカニズムによって多国籍企業に多大な権限を与えている一方で、付属されるMNEsが法的拘束力を持つよう改善される可能性はほとんどない。

●地方議会での決議案、自民党会派の反対によりつぎつぎと不採択に
　3月に東京都江戸川区議会で「MAIの交渉に慎重な対応を求める」意見書が採択されて以後、東京都・川崎市高津区・東京都新宿区などで次々に同様の意見書が提出されたが、いずれも自民党会派のブロックにより留保または不採択とされている。今後も地方議員による意見書の提出と個人による陳情書の提出をキャンペーンの一環として推進していく。

●参議院選挙前に各政党に対し「投資自由化に関するアンケート」を実施
　アンケート送付先は、自由民主党、公明党、民主党、社会民主党、新社会党、新党さきがけ、自由党、共産党の計8政党。そのうち、公明党だけが無回答。
・MAIへの国民あるいは国会の関与については、民主党以外の全ての政党が、国民に開かれた議論をすべきと回答。国会が関与すべきと回答したのは自民党と民主党、および共産党。
・外国企業に対して一定の社会的規制（環境・雇用・中小企業）を設ける必要があると答えたのは民主党、社民党、新社会党、共産党の4党。自由党は環境規制は互恵が望ましいとし、自民党は環境規制が外国企業に差別的に適用されるのは不適当とした。
・MAIの例外分野として各国が提出している「留保項目」については、自民党は「留保」が「該当国が個別に施策判断するものと考えられる」と回答しており、「留保」が実際にはMAI交渉において交渉国の承認を必要とすること、逆に言えば却下されたり、今後撤廃・削減を迫られる可能性があることを理解していない。
・外国投資家が受入国政府を直接訴えられる「投資家vs.国家」紛争解決メカニズムについては、共産党と新社会党が反対しており、さきがけが「公平性を保つ最低限のルールを設けるべき」としている一方、民主党は「国内企業も外国企業も公平に扱うことが重要」とし、自民党は「外国企業を一方的に有利にするようなものを目指しているとは承知していない」と回答。
・多国籍企業の国際規制と自由化のどちらを優先すべきかとの質問に、規制を優先すべきと答えたのは共産党と新社会党。自由党は両方を同時に行うべきとし、さきがけはMAIの中に多国籍企業の倫理規定を作るのが望ましいとした。民主党は「国内企業と外国企業を公正・公平に扱うルールが必要」とし、自民党は外国投資の自由化のプラスの側面を強調し、MAIが日本企業の海外活動を促進すると回答した。
・経済のグローバリゼーションについてどう考えるかとの設問には、民主党が「率先して日本が進めるべき」と回答し、また自民党と自由党はこれを不可避な流れとして国内対応の必要性を訴えている。

●MAIにNO！日本キャンペーンが外務省に質問書を提出
　MAIにNO！日本キャンペーンは外務省に対し、6月初旬に市民との協議を申し入れ、担当者の多忙を理由に1カ月以上も先まで対応できないとの返答を得たため、OECD閣僚声明に明記された「MAIに関する市民との協議」および「MAIの影響評価」をどのような形でいつ実施するのかについて外務省の担当セクションに質問書を7月9日に提出した。現在までそれに対する正式な返答は得ていない。質問書の概要は以下の通り；

MAIを巡る最近の動き・目次

（市民フォーラム2001佐久間智子）