MAIの内容についてのもう少し詳しい情報


▼OECD/MAIとは?

経済協力開発機構(OECD)加盟国である先進29カ国のみで1995年9月から交渉が続けられている「国際投資の自由化」を目指した協定。OECD非加盟国(途上国)はMAI締結後に加盟することができる。

当初、1997年5月のOECD閣僚会議での締結を目指していたが実現せず、現在は1998年4月末に予定されているOECD閣僚理事会での締結を目標としている。その後、各国での批准手続きを経て、1999年末から2000初頭に発効する予定。

▼協定の主な内容は?

1. 投資の保護(既存の投資に対する保護)

 現地政府が収用を行う際の投資家への補償の義務づけなど。「収用」の概念が 拡大解釈される恐れがある。

2. 投資の自由化(新規の投資の参入・設立などの自由化)

 パフォーマンス要求の禁止など(ローカルコンテント政策、外貨・貿易均衡政 策、株式公開・合弁などの要求を含む)。これにより、経済・開発政策の選択肢が大幅にせばめられ、地場産業が多国籍企業と対等に競争せざる得なくなる。

3. 投資に関する紛争解決メカニズムの設置

 外国投資家が受け入れ国政府を訴えられる紛争解決メカニズムの設置。外国企 業が国内法制の最低過程に実質的影響力を持てるようになり、また、国家財政によって外国企業に多額の補償を行わねばならなくなる可能性も高い。



▼MAIにおける自由化の範囲

1 外国投資に「内国民待遇(National Treatment)」と「最恵国待遇(Most
Favored Nation)」を原則適用することによって投資/投資家の待遇に「内外無差別原則」を徹底する。

2. 全てのレベルの政府、全ての産業分野、全ての投資(株式・債券なども含む)に
適用される。

▼MAIの例外

1. 国家安全保障、文化、安全、公の秩序などの分野については一般的例外が適用さ
れる。

2. その他、国際収支に著しい支障が認められる場合は、IMFと締約国の監視下で一時
的MAI適用除外が認められる。

3. MAI交渉に参加しているOECD加盟各国から提出されている、個別の「留保項目(Reservation)」については適用から外す(現在この留保は600ページ分もあり、現在これを減らす交渉が行われている。つまり留保項目は今後の交渉対象であって、
今後ずっと留保される保障はない)。

▼MAIの意味(影響)

1. 世界貿易機関(WTO)で「投資協定」の交渉開始に反対していた途上国のいないOECDにおいて、ほとんど非公開で交渉が進められてきたため、先進国および先進国の多国籍企業にとって都合の良い、非常に一方的な内容の協定となっている。外国投資を誘致したい途上国には実質的にMAI加盟への圧力がかかり、またWTOで「投資協定」の交渉を始めさせる外圧ともなる。

2. 「収用」に対する解釈が大幅に広げられ、新たな環境・社会法制に従わない企業
の業務停止や閉鎖などについても政府が補償しなければならない事態が起きる。

3. パフォーマンス要求の禁止により、政府(特に途上国政府や自治体)の経済・開
発政策が制限される。

4. 外国投資誘致のために、各政府間の環境・労働基準の引き下げ競争を実質的に引
き起こす(MAIにはこれを禁じる条項は一応入ってはいるが....)

5. 国際的な環境協定や労働基準、その他の国際合意が無効化させられる可能性があ
る。

6. 外国企業が受け入れ国政府を訴えられる「紛争解決メカニズム」によって、外国
企業の義務を伴わない権利が大幅に拡大し、民主主義が崩壊する。


▼日本政府の立場

1. 1990年代になって急増した二国間投資協定(BIT:現在世界に約1,300存在)を5カ国としか結べていない日本政府としては、MAIの成立によって多くの手間が省け、日
本 企業の海外投資を守ることができるので好都合。MAI交渉グループでは副議長を務めるなど、全般に積極姿勢を示している。

2. しかしMAIを通じて外国企業による対内投資が公共部門や一次産業に参入してくることには警戒が強く、「公の秩序」という名目の一般的例外を主張している。

3. 紛争解決メカニズムについては、外国企業による提訴の頻発を心配しており、提
訴する際の要件を厳しくすべきだと考えている。