MAIの規定と提案:1998年4月交渉テキストの分析



経済協力開発機関(OECD) は1995年、大きな期待をもってMAIの交渉を開始した。OECDの条文の文言によると、MAIは、外国投資の待遇と保護のために「高い水準の」基準を設定するものである。つまりMAIは、外国投資家の権利を確立することにより、そして外国あるいは国内の投資家の行動を規制する政府の権力を制約することにより、投資規制を漸進的に自由化する枠組みを設定するものでもある。提案されているMAI規定は、例えば株式市場のセーフガード措置や、海外直接投資に対するパフォーマンス要求、外国投資家の不動産所有や戦略的産業の所有に対する制限、資本移動の直接的な統制をかなり制限するものである。

MAIは、OECD加盟国内ですでに実施されている政策を温存するだけではなく、開発途上国に対する投資を保護・促進するルールを作り出すための枠組みを目指すものである。米国と欧州連合(EU)は、アジアと南米で急成長を遂げている非加盟国経済がMAIに加盟することの重要性を認識してきた。

MAIの最初の分析が発表されたとき、MAIの交渉テキスト(協定案)はまだ一般には公開されていなかった。MAIが企図している効果について書かれたこれらの文書は、OECD投資作業部会が公刊した準備テキストに依拠するものであり、それはMAIをその対象範囲の広さ、投資家の待遇や保護の基準の厳密性、持続的な自由化メカニズムの観点から前例のない協定として描写している。これらの文書によれば、MAI規定の青写真は、北米自由貿易協定(NAFTA)の投資規定であり、その範囲については世界貿易機関(WTO)がモデルとされている。MAIはこの両方の協定をさらに前進させたものである。

1997年2月にリークされた最初のMAIの作業ドラフトは、OECD作業グループの提案にかなり従ったものである。1997年5月にリークされた第二次交渉テキストは、OECDのMAIに対する意気込みがほとんど低下していないことを示していた。交渉テキストがNGOのウェッブサイトで入手できるようになって1年後の1998年2月、OECDはMAIの新しい交渉テキストを公式に発表した。しかし、これは個々の国の交渉の立場に関するコメント部分を除いたものであった。

1998年4月のOECD閣僚理事会でMAIを調印することができないと明らかになった時、OECDは顕在化した問題を解決するため、そしてMAIに対する国内的な支持を強化するための協議期間を半年間設けることを決定した。賢い広報活動として、1998年4月24日付のMAIの交渉テキストが閣僚理事会で公表され、OECDのウェッブサイトでも1998年4月のMAI交渉テキストが掲載された。しかしOECDは、OECDと各国の提案を含む付属書や労働及び環境基準、収用及び一般的待遇条項、投資家対国家紛争解決のような問題に対するNGOの批判を扱った「議長提案」の付属書を付け加えた。これらの提案の多くは、過去半年間以上も議論されてきたものである。これらは同意されていないか又はMAIの拘束力を持つ条項に含まれていない。このように、MAIの起草者は当初の目的を放棄できずに立ち往生しているのである。

MAIのここでの分析は、2つに分かれている。第一部では、MAI交渉テキストの最新版におけるMAIの中心となる条項を説明する。また交渉国が「中心となる規定」となることを合意している条項について考察する。これらの条項については、まだ決定されていない要素も1998年春の交渉テキストに残されている。我々は、これらについて特に説明し、過去の交渉テキストとの違いについて解説する。第二部では、各国やOECDに提起された環境、労働、その他のイシューに関する提案のリストを分析する。


第一部 MAI交渉テキストの中心となる規定

イントロダクション:投資の定義

MAIの範囲及び適用(第2章)の規定では、この協定における「投資」の厳密な定義を構築している。投資とは、「投資家によって直接又は間接に所有又は支配されている全ての種類の資産」のことである(第2章定義2;強調付与)。投資の定義では、不動産および鉱物や石油などの自然資源(第2章(vii);MAIコメンタリー第2章定義投資14)ポートフォリオ投資および株式所有(第2章定義2(ii)と(iii);MAIコメンタリー第2章定義投資8)、特許やブランド名、「のれん(信頼性)」などの全ての形態の知的所有権(第2章定義2(vi);MAIコメンタリー第2章定義投資12)、およびサービスや製造業への直接投資などにMAIの規定が適用されることが規定されている。

これに加え、MAIの投資の定義には、投資の成果も含められている(MAIコメンタリー第2章定義投資1)。このように広く投資を定義することで、MAI規定に違反する各国の法律が提訴される根拠が広がることにり、結果として、MAI協定に署名する政府の潜在的責任を増大させる。またMAIの規定は、締約国の投資家が間接的に支配している投資にも適用される。

さらに、こうした規定は、他の締約国の投資家の権利を保障するMAI規定の恩恵を、MAIに公式には加盟していない国々からの投資家にも拡大することになる。MAIのコメンタリーによれば、「MAIの締約国内に設立された企業による投資で、MAI非締約国の投資家によって所有、もしくは支配されている投資」をも投資の定義の中に含めることについて幅広い支持がある(MAIコメンタリー第2章定義投資2(a))(強調付与)。これが意味することは、例えば、締約国でない中国の企業が、MAIの締約国である国に投資することによって、アメリカにおいてMAIの恩恵に預かることができるのである。このような法の抜け穴は、政府が国家安全保障のために、ある国家との経済的関係を制限するような政策を維持したり実施したり、またテロリストを援助したり、かくまったり、また著しい人権侵害が行われた国家に経済的制裁を課すなどというようなことを極度に困難にする。それに加えてこの規定は、MAIの恩恵を受けるという目的のために、MAI締約国の国内に「トンネル会社」が設立されることを助長する。

同様に、MAIの「投資」の定義の中に、「MAI締約国の投資家によって所有もしくは支配されているが、MAI非締約国の投資家によって設立された」投資を含めることについても幅広い支持がある(MAIコメンタリー第2章定義投資2(b))。これは、MAIの非締約国は、単にMAI締約国の投資家と合弁企業を行うことにより、MAIの恩恵を享受できるようになるということである。間接投資についてのこのような解釈は、MAIから恩恵を受け、かつMAIの下で法的権利を持つことができる投資家が、実質的に、ほとんど無制限に増加することを意味する。

MAIの下では、全ての資産が投資として扱われるわけではない。外国にある別荘を、その国の政府によって例えば道路建設のために奪われた個人は、その価値を下落させるような方法で商業上の財産が奪われたり、投資を規制された外国投資家と同じような保護を得ることはできない。MAIの下で保護される投資とは、将来に渡って収入を生む可能性を持つ資産など、投資としての特徴を持っていなければならない(第2章2脚注2)。

I.MAIの投資家の待遇の保障(第3章)

MAIは、二種類の外国投資家の権利を確立する。第一の種類は、国内投資家が享受する権利に準じて海外投資家に与えられる権利である。これは、内国民待遇や最恵国待遇の規定(第3章、内国民待遇と最恵国待遇1-3)を含んでいるが、これらの規定の分類の下では、外国投資家は、国内投資家と「同等に優遇」(もしくは、同等以上に優遇)した待遇を与えられなければならない。

第2の種類は、投資家や投資の扱いについて絶対的な基準を作り出すものである。例えば、政府が投資に一定の条件を課すことを禁じるMAIのパフォーマンス要求の部分(第3章パフォーマンス要求1-5)では、普遍的に適用される、つまり国内と海外の投資家に対して同じように適用されるパフォーマンス要求でさえ制限するものである。この第2の権利は、「差別」といった問題は取り扱っていないが、経済、社会や環境目標のために政府が企業活動を制限することを制約することになる。MAIの下では、外国投資家のみが、このような絶対的な権利を侵すような国内法に対して異議を唱えることができるが、MAIの参加国の法律や政策についての変更がもたらす効果は、国内の規制措置の中において国内投資家にも同様に影響するものである。

MAIのそれぞれの規定は政府とその国の法律に影響を与えるが、一般的には、第2のタイプのMAIの権限(つまり、絶対的権限)は、先進国に対して、より深刻な影響を与えるだろう。なぜならば、これらの国は、すでに内国民待遇やその他の投資自由化の原則を確立しているからである。多くの途上国に国際通貨基金(IMF)と世界銀行が課してきた構造調整プログラムに関連して、途上国の学者の一部が、MAIを北の国々に対する「構造調整プログラム」と呼んでいるのは、政府を制約するような企業の絶対的な権利がMAIに含まれているからである。いずれにしても、途上国には、投資家の権利についての2つの分類は、基本的な発展を促進するために外国投資に制約を課そうとしている途上国の努力を切り捨てる内国民待遇が新たに導入されることに伴い、重大な影響がもたらされるだろう。

A.相対的な投資家の権利1.内国民待遇(第3章内国民待遇1及び3)

MAIの内国民待遇の原則は、最初の投資からその後の調整のための投資に至る投資の全ての段階と側面において、外国投資家を自国の投資家と同等の待遇で扱うことを政府に要求している。しかし、政府が外国投資家を自国の投資家より優遇することは容認されている(第3章内国民待遇3)。

内国民待遇規定は、表面上は中立的であっても実施的に差別的な効果を持つ政府の施策も対象としている。1998年4月の時点でも、そうした事実上の差別を禁止する規定が依然としてMAIに含められていることは、関係者すべてが容認している(MAIコメンタリー:第3章内国民待遇8)。したがって、例えばある国が鉱物資源の採掘を全面的に制限する施策を実施すれば、その法律が外国投資家の市場アクセスを拒み、すでに鉱物採掘権を保有している国内投資家を事実上優遇する効果を持っているとして、外国投資家はこの法律を差別的だと主張できるのである。多くの地方自治体が住宅地や市町村の「特徴」を保護するために実施しているゾーニング規制(土地利用計画)も、MAIの事実上の差別条項に抵触する恐れがある。こうした法律は、だいたい中心地の繁華街への大企業の進出を排除することを意図しているが、規制対象となる大企業とは、MAIの条項の恩恵を受け、海外で事業を展開できるほど規模の大きい海外からの進出企業である場合が多い。

内国民待遇は、その当然の結果でもある最恵国待遇という原則とともに、国際法の経済統合の根本的な原則を形成している。これらの枠組みはGATTから引用されており、二国間投資協定にも存在している。しかし、驚いたことに世界中の99%以上の二国間協定とは違って、MAIでは市場参入の段階においても海外の投資家に対して内国民待遇を与えるよう、政府に要求している(第3章内国民待遇1)。二国間協定の多くは、投資家が市場への参入を許可された後、つまり投資を行う権利を認められた後に、内国民待遇を適用するとしているが、MAIでは、外国投資家に、すべての経済分野に参入する権利を投資のあらゆる段階で与えることになる。このことは、本質的に、国際投資の自由化ために国境措置を全て排除するということである。

ほとんどすべての経済分野を国際競争にさらすことになる内国民待遇は、単なる差別の問題だけでなく、国際的な経済競争に限度を設けるべきか、否かという根本的な疑問を投げかけている。MAIはグローバリゼーションに向けた自由市場アプローチを促進するだろう。しかし、どの市場が国際競争にさらされるべきかという問題は、国際投資法という周辺的な領域で決定されるべきではなく、国内の民主的で、説明責任が確保できる場において取り組まれるべきである。

この流れで言えば、MAIの枠組みを草案している人々の言う、内国民待遇と最恵国待遇とは、単に国内と外国の投資家が「同じ土俵で勝負をする」ようにするものだという主張は、めくらましである。政府は常に自国民以外を差別してきているのだ。国境の存在自体がそもそも差別的なのである。例えば入国管理法は、外国人の入国の権利を保障するものではない。しかし、その入管政策が、自国民と外国人を差別しているとして議論されたことはない。MAIは外国投資家について、そのような前代未聞の権利を確立しようとしているのである。内国民待遇と最恵国待遇についての議論を差別という点からのみ行うことは、国内の投資家にとって国籍による恩恵を保持することに合法的な理由があるかどうかという議論を都合のいいように利用するものである。

公害を出す企業の規制、森林を伐採し移転する林業:投資家に対する国籍条項が、公共の利益にかなう場合もあるという例は、環境保護の分野で見ることができる。産業の環境影響は、しばしば公害が発生してから何年も後にならないとわからないことが多い。国家が、将来の環境被害や林業における「伐採し移転する」ような企業行動を防止するために、もともと転出することの多い外国企業に対しては、異なる義務を課したいと考えたとしても不思議ではない。開発途上国の中には、そのような問題を防止するのために、外国の「汚染」産業の対内投資を禁止しているところもある。いくつかの国では、有害物質の廃棄産業に対し、国内企業への投資を規制することによって、何か問題が生じたときに、当該企業に対し、法的な措置を確保できるようにしているところもある。こうした法規を有するコロンビアや台湾では、外国企業が廃棄物処理工場を保有することによって、海外で生産された有害物質が国境を越えて自国に持ち込まれることを外国投資家が子会社と取引する権利を侵すことなく規制することがより困難になるとの考えに基づき、このような法規が実施されているのである。

MAIの締約国間の経済発展段階の相違:MAIは全ての国が加盟できる条約を意図しており、OECD非加盟国である途上国に対しても参加を認めている(第12章加盟)。しかし内国民待遇を適用すれば、これらの国々が拠り所としている、多くの経済戦略が無効とされてしまうであろう。というのは、その戦略には、しばしば国内の投資家や投資に特権を与え、自国の経済目標を達成するために海外投資には条件を課している場合が多いからである。途上国のMAI批判者は、外国投資家に国内投資家と同等の権利を与えることにより、対内投資の量と性格を調整する途上国政府の権限が狭められ、これらの国々よりも断然強力な多国籍企業の投資に対抗する途上国の能力が低下させられると主張する。欧州や米国も、経済成長期には外国投資家に内国民待遇など与えていなかった。

実際、今でも多くの国(および多くの米国の州)には、農地の所有を自国民に限定する法律がある。途上国でも、土地の再分配プログラムの根底をなしている原則は、農地を地元の住民に所有させるということである。しかし、MAIが意図的に手本としたNAFTAの投資規定の下で、メキシコは憲法中の土地改革条項を修正するよう求められた。その改革条項は、メキシコ革命の後に策定されたものだが、米国やカナダの投資家が土地を大規模に獲得できるようにするために排除されたのである。NAFTAが実施されてからの4年間で、その修正は、外国のアグリビジネス企業が再び大規模プランテーションをつくるために地元の小規模農民が移住を余儀なくされるという結果をもたらした。MAIの内国民待遇によって、他の途上国の土地再配分プログラムに同様の結果がもたらされかねない。

確かに、ほとんどの全てのMAI条項は、OECDで交渉されたMAIであれ、現在WTOで交渉することが提案されている同様の投資協定であれ、加盟する途上国に逆効果となるような強力な影響を与えかねない。提訴された政府から希少な国家財源を奪い取る投資家対国家の紛争解決システムから、貿易関連の実績要求に対する完全な禁止を課すパフォーマンス要求の規定や、外国企業の経営構造に対する制約を禁止するMAIの条項に至るまで、多くのMAI条項は歴史が証明した第三世界経済の生き残り技術に(そして、すべての経済に)途方もない影響を及ぼしかねない。

文化的憂慮:内国民待遇の対象から文化産業をはずすよう主張している国々は、人間の活動の中には、市場の力に委ねるべきではない領域があると主張する。この議論を賞賛に値するものと考えるかどうかはともかく、多くのOECD諸国は、出版・放送メディアや先住民の文化的遺産を守る事業を内国民待遇の対象から除外するよう求めている。ほとんどのOECD諸国が、メディアや文化産業の完全な民営化に抵抗しているという事実にもかかわらず、MAIの内国民待遇条項は文化産業分野も自由な国際競争にさらすよう各国に要求している。文化産業は米国の主な輸出産業であり、米国の文化市場はすでに広く門戸を開いているので、米国はMAIからの文化分野の適用除外には声高に反対している。事実、米国のマスコミや娯楽産業は、この分野において新たな市場アクセスを得ることは、MAIが米国にもららす大きな恩恵だと考えている。文化の分野にまでMAIの適用範囲を拡大しようとする彼らの情熱は、GATTウルグアイ・ラウンドにおいて交渉をまとめるために「ハリウッドを犠牲にした」米国の譲歩によって火をつけられたのである。

米国の主権と米国憲法の商業条項:米国憲法の商業条項は、外国企業に対する差別を制限しており、米国内における内国民待遇条項のようなものである。この商業条項は、多州にわたる商業活動を規制する州の権利を制限している。

同商業条項は、州や地域が雇用を創出したり、地域における資本蓄積を奨励したり、資本流出をくい止める能力をかなり制限するとして地域の経済開発戦略起草者から非難されている。商業条項による制限のために、州や地域に残された経済開発戦略はほとんどないと彼らは主張する。地方自治体は、州外企業を投資優遇策によって誘致するという費用のかかる方法に頼らざるを得ない。この方法は、良質な雇用の創造につながらず、より魅力的な提案がなければ企業が移転していってしまうとして広範に批判されている。それに対してMAIの内国民待遇は、各国政府による地域発祥型の州内および国内の企業を優遇することや、企業との官民提携の形成をますます困難にし、オルタナティブな経済発展モデルへの扉を閉ざしてしまう。

MAIの内国民待遇条項は、いくつかの点で米国憲法の商業条項よりもさらに制約的である。まず、商業条項の下では、州が市場参加者であれば地元企業を優遇したり、州外企業を差別することを容認している。それに対してMAIは、政府が規制したり、国営企業を民営化したり、財・サービスを購入するときに、自国企業を優遇することを禁じている(第3章民営化1;第3章独占・国営企業・免許A2-3(a)(b))。第二に、米国の最高裁は一般的に州政府は商業に干渉できるとしており、いくつかの法令では、人々の健康と安全を守るために州外企業を差別できるとしている。健康と安全のための施策が州外企業により大きな負担を強いているということだけでは、米国憲法の商業条項の違反にはならないのである。裁判所が州の施策の違憲性を判断する際には、州外企業が、その施策によって全面的な負担を負うという証拠を要求する傾向にある。一方、事実上の差別に対するMAI規定の下では、ある施策が外国投資家の待遇を悪化させる影響を持っている事実のみで、内国民待遇違反が成立しかねない。

MAIの内国民待遇条項は、米国の各州に対し、州民に与えている数多くの権利を排除するよう求めかねない。例えばそれらの権利の中には、メーン州のロブスター採取許可や多くの西部の州が設定している水利権、多くの州が設けている鉱物採掘権や、木材の伐採権、商業免許などを取得するためには、その州の住民でなければならないというような商業条項の下で容認されているものも含まれる。しかし、連邦制をとっていない国々にとっては、州や自治体が、そのような法案を成立させることができるという事実は、やっかいなことでしかない。実際、EUが毎年作成している米国の貿易障壁に関するリストでは、特に章を割いて、米国市場に参入するにあたって連邦制が最も大きな障壁であると記述している。MAIは、州や自治体がそのようなややこしい政策を持つことを禁止しかねず、米国憲法の下では、隣の州の住民が拒否される権利を、外国投資家や企業が保障されるという事態もあり得る。

2.最恵国待遇(第3章最恵国待遇2)

MAIの最恵国待遇条項は、MAIの締約国に対し、全ての投資家について参入および参入規制に関する待遇を同じにするよう求めている(第3章最恵国待遇2)。投資家は、国籍によって市場への参入を拒絶されたり、異なる扱いを受けない。この条項によって、ある国に国内の人権や労働状況の改善を迫るために、その国からの投資を規制するというような政策が全て違反とされるようになる。もしMAIが1980年代に成立していたら南アフリカ政府にアパルトヘイト政策をやめさせることに成功した、経済制裁という外圧による兵糧攻め戦略は禁止されていただろう。米国では、市や州政府が南アフリカ資本の銀行との取引を停止し、自治体はロイヤル・ダッチ・シェル社やその子会社の投資を拒絶するシェル追放ゾーンを設け、州や自治体が南アフリカ系企業からの調達をやめた。これら全ての措置は、MAIの原則と条文に違反するものであり、もしMAIが発効していて南アフリカがその締約国であったら、これらの措置はMAIの下で提訴されていただろう。

公共の資金が倫理と社会的責任に基づいて投資されるようにする努力を妨げるMAI条項では、政府が、第三国で行われた外国投資家の活動に関連して、その特定の外国投資家に国内で責任を負わせることできない(二次的投資ボイコットの禁止)というものがある。MAI規定では、他の締約国からの進出企業は、例えばビルマやナイジェリアの軍事独裁政権と商取引を行ったことに関して、国内でペナルティを課されないのである。ある政府が国籍によって投資家を差別しなかったとしても、MAIの二次投資ボイコット禁止条項によって(附属議定書1:二次的投資ボイコット)、そのような差別措置は外国投資家の第三国での行為に対する法の域外適用を意味することになるのだ。

最恵国待遇は、特に二次的投資ボイコット禁止との組み合わされることにより、社会政策を商業に関連づけることを不可能にする。ビルマのUNOCALと商業利益の結びつきや、ナイジェリア政府とシェル石油の関係が示している通り、独裁政権は、海外からの対内投資の生み出す利益の恩恵を受けている。MAIの下では、人々が憤慨したとしても、自分たちの民主的な政府に、強力な多国籍企業と抑圧的な政権の癒着に対して対策をとるよう圧力をかけることができなくなる。各国は、MAIの狭義の「本質的な安全保障」のための例外規定に基づいて、国籍によって外国投資家に対して経済的措置をとることはできても、ほとんどの人権侵害や労働侵害に対して措置をとることができなくなる。

3.投資家及びキーパーソネルの一時的入国、滞在及び労働(第3章短期入国1-3)、幹部職、支配人及び取締役会メンバーの国籍要求(第3章国籍要求番号なし段落)

MAIの目的のひとつは投資家が他国においても、母国内と同様に自由に経済活動を行えるよう保障することである。一時的入国及び国籍要求に関するMAI条項では、この目的を達成するために、国内の入国管理と労働を許可する規定(就労許可規定)を修正するよう求めている。

MAIは各国に対して、締約国の投資家と投資に対して適用されている数量割当てのレベルを設定するために現在しばしば活用されている労働市場や労働者の雇用状況に基づく基準、および数量割当てそのものを撤廃することを国家に要求することになる。多くの国々は、専門家ビザ発給の制約を取り去るために、国内では確保できないような、例えば看護婦やコンピュータープログラマーなど、労働市場において、ある一定の専門性を有する労働者に対する需要を示すことを要求している。入国規定が国籍でなく、専門性や労働市場の要因に基づいて設定されていたとしても、MAI条項は締約国に対して、他の締約国の投資家についてはその規定を撤廃するよう求めている。MAIはまた短期滞在で入国するあるいはMAI条項に基づいて働く幹部職、専門家、および支配人の配偶者にも労働許可を与えることを要求している(第3章一時的入国、1(b)(ii))。工場労働者を訓練し、サービス部門やコンピューター関係など他の仕事にも就けるよう配慮している国においても、MAIは、それらの職を外国人雇用でまかなえるようにしてしまうのである。

その上、MAIでは国家は投資家に雇用の創出を要求してはならず、また地元から幹部職や専門家、支配人を雇用することも要求してはならない(第3章一時的入国)。MAIに加盟する途上国にとってこの政策は、海外投資から得られる利益を狭めることになる。それらの国々は管理職研修のような知的資本の移転に関して海外投資に依存しているのである。

同様に、MAIは締結国が支配人や幹部職、取締役の選出においてその国籍を特定することを禁じている(第3章国籍要求)。管理職の雇用時にも人種やジェンダーに基づいて雇用することを主張する優遇政策はこれらの国籍要求条項と抵触する。

4.民営化(第3章民営化1-9)

MAIの下では、国家資産を民営化する際にも、各国は内国民待遇及び最恵国待遇の原則を適用しなければならない。

多くのOECD加盟国、特に東欧の国々は、これまでこのような規定に抵抗してきた。これらの国々は、締約国がその政治・経済的状況の中で最も良い方法で民営化を行えるようにすべきであると主張してきた。民営化のための具体的な枠組みに関する技術的な規定は、まだ議論しつくされていない課題として残っている。しかし、原案の段階で、その範囲は大規模に適用されている。例えば、締約国の自然人に排他的権利を付与する取り決めなどがある(第3章民営化2と7)。これによって、地域社会は資産を民営化しつつも、その資産に対する影響を維持することが可能になる。米国は、この「バウチャー・スキーム」は、民営化された資産の事後の売却に対し、非居住者が入札できないことから、事実上、内国民待遇原則を侵すものだと主張している。

別の民営化の手法である「ゴールデン・シェア」もまた、MAI規定の中で違反とされる可能性がある(3章民営化5)。この手法は政府が資産に影響力を維持したまま民営化する方法で、資産が不適切な投資家に売られないように保障するものである。米国は、この規定もまた政府が「ゴールデン・シェア」を保有することで、外国投資家への売却を阻害できるとして、外国投資家への差別となる可能性があると主張している。

過去一年間、民営化に関するMAI規定はほとんど変更されていない。米国は、競争入札プロセス以外の民営化手法の選択肢を残したいと考えている国々が、国別例外事項でこれに対処せざる得なくさせるような文言の採択を求めている。なぜなら、米国は国別例外事項は次第に排除されていくだろうと考えているからである(ロールバック条項)。しかし、より柔軟な民営化アプローチを提唱している国々は、MAIの内国民待遇や最恵国待遇の規定とオールタナティブな民営化手法を整合させるための規定を盛り込むことを主張し続けている。

OECD加盟国が、いかにしてこれら民営化に関する政治的に微妙な問題を解決していくのかは今後の課題である。しかしながら最も経済的に自由で発展している国々においてでさえ民営化の便益と損益については論争となる問題であり、民営化については排外的な国際投資法の領域よりも、むしろOECDメンバー国内の立法機関において議論が行われるべきであろう。仮にMAIにおいて民営化に関する議論が合意に至っても、国内での議論を飛び越してしまうのは非常にまずいことである。

5.独占(第3章A-C)

MAIにおけるもう一つの大きな争点として挙げられているのが、独占の取り扱いについてである。独占に関する条項では、締約国が独占企業を維持、指定又は解体することを特に認めている。しかし、この権利は、MAIの収用条項における補償ルールに従うことを条件に与えられるものである。つまり、仮に国家が他の企業を排除して特定企業に独占を認めた場合、これは国営化(あるいは、それと同等の措置)と見なされ、収用に対する補償規定に基づき、排除された企業に金銭補償を行わねばならないことになる。

交渉国は、国家企業や免許、政府機関と区別して「独占企業」を定義することに四苦八苦している。同様に民間の独占と公共機関による独占との間の線引きを明確にすることにも失敗した。1998年4月の交渉テキストでは、国家が民間企業による独占を認める場合に関しては合意に至ったようだが、内国民待遇や最恵国待遇規定と矛盾しないようにしなければならない。しかし、公的機関による公的独占にも適用するかどうかについては合意に至っていない。

これに加え、米国は内部相互補助(cross-subusidization)という社会政策を廃止に追い込む可能性のある提案をしている。公共サービスなどの独占サービスが全ての人に行き渡るよう保障するための措置である。遠隔地に電力や通信サービスを供給するコストは都市地域に比べてかなり高くなるが、内部相互補助は公共料金を低く押さえたままで遠隔地の生活者がサービスを受けられることを可能にしてきた。こうした政策の実施により、ある特定地域の人口がスラム化することを防止することができる。

米国の提案は、独占企業による内部相互補助の活用を禁じるものであり(第3章独占A3(c))、「[独占財又は独占サービスの購入又は販売の際に、商業上の考慮のみに従って行動すること]」と規定している(第3章独占A3[d])。条文中には「[顧客の種類に従った価格差別並びに....内部相互補助それ自体は、この規定に反するものではない。独占企業による競争阻害行為の道具として利用された場合には、本サブパラグラフの規律に反する]」という非常にあいまいな表現が含まれている(第3章独占A3[(d)])。他の多くのMAI条項と同様、一つの条項の中で明白に認められた保護規定が、他の条項によって侵害されてしまっているのである。

B:投資家の絶対的権利:投資家保護の保障とパフォーマンス要求

MAIにおける投資保護条項(第3章パフォーマンス要求と第4章)は、投資受入国政府の責任を定め、外国投資家の絶対的権利を拡大することによって、投資にともなうリスクを実質的に社会全体に負わせている。この権利は、OECD加盟国の国内法よりも外国投資家の保護を優先し、自国市民の財産に対するよりも手厚い保護を外国投資家に与えている。

この投資家保護条項こそ、途上国およびOECD加盟国の法律と社会に最も大きな悪影響を与えるものである。投資家に絶対的権利が与えられることによって、国境を超えた資本移動の安全が確保され、それによって上がる利益も増大する。例えば、米企業は今まで、投資リスクを受入国政府が負う場合に海外民間投資公社(OPIC)の投資保証が適用される際、義務付けられてきた環境面での審査を受けなくても良くなることになる。これまで海外投資に伴うリスクを「仕事の一部」と考え、民間部門による投資のリスクを自らが当たり前のように負ってきたを国際投資家は、MAIの下で国内産業よりも手厚い国家保護を受けることになる。MAI交渉テキストの中には、投資家の保護に関する枠組みがいくつか盛り込まれている。収用に対する正当な補償を受ける権利、一般的待遇、パフォーマンス要求の制限、資金移転の自由、戦争からの保護などである。

1998年4月のMAI交渉テキストの付属書には、OECD議長が提案した「規制する権利の確認」と題する文書が含まれている。この提案は、MAIの規定が各国の規制自体に影響を与えないことを確認するという意図をもって提案された。しかし残念なことに、この提案文書(満場一致でなければ法的拘束力をもたない)は、同義反復的であり、MAIの野心的で広範かつあいまいな条文(国家手続きやパフォーマンス要求、収用、一般的待遇)に対する保護策にはなり得ない。この提案では「締約国は、投資活動が健康と安全、環境問題に配慮して行われることを保障するための適切な施策を、こうした施策がMAIの規定に抵触しない限り、採択、維持、強化することができる」(付属書2議長提案:環境および労働に関する提案パッケージ)。この提案では、最後に制限的条件を付加することで、最初の部分の改善提案が骨抜きにされている。

1収用及び補償(4章2)

この条項では、政府が直接あるいは間接的に投資家の投資や利益を「収用」したり収用と「同様の効果を有する措置」を講じた場合、外国投資家には補償を受ける権利が与えられると定めている。交渉テキストでは「締約国は、以下の場合を除いて、自国領域内における他の締約国の投資家の投資を直接又は間接に収用又は国有化したり、同様の効果を有する措置をとってはならない。1)公共の利益に関する場合、2)無差別原則を基本とする場合、3)法の適正手続に従う場合」(4章2-1)

MAIにおいては、「間接的な収用」と同様の効果を持つ政府の措置とは、補償できない資産の差し押さえ禁止(これは米国憲法をはじめ各国の法律に財産権として定められている)にとどまらない。MAIの収用に関する定義には、いわゆる「規制措置」も含められ、投資価値を下げるような規制措置を課さないことを政府の義務と定めている。この定義によって、投資家は投資に損害を与えるような土地利用法や環境保護法に対して補償を求めることができるようになる。

その一例が、北米自由貿易協定(NAFTA)の収用規定に則って米国のメタルクラッド社がメキシコ政府を提訴したケースである。同社は、メキシコ・サンルイスポトス州の廃棄物処理施設を買収し、事業を開始しようと際に、サンルイスポトス州がその地を環境保護区の一部に指定したことが、実質的に投資の収用に相当するというのが提訴の理由である。メタルクラッド社の買収した施設は、過去に地下水を汚染しており、そのため同社はその汚染を浄化することを買収時に義務付けられていた。しかし環境影響評価の結果、同施設が生態系にとって重要な地下水脈の真上にあることが判明し、州知事は操業再開を禁止した。メタルクラッド社は、この措置によって今後見込まれる利益が奪われたとし、9000万ドルの損害賠償を求めている。NAFTAの収用条項がなければ、メタルクラッド社は投資に伴うリスクを自社で引き受けることになり、巨額を投資する前にきちんと環境アセスメントを実施しなければならないと学ぶ貴重な経験を積んだはずである。しかしNAFTAの定める投資家の権利(MAIでは、それがさらに拡大される)によって、企業が勝訴すればメキシコ政府が同社のリスクと投資コストを肩代わりすることになるのである。

米国にいてMAIに反対している人々の反対の理由も、MAIの収用条項が米国内法(および他のOECD加盟国の国内法)をはるかに凌ぐものだという点にある。米国では、補償義務のない収用もある。米国憲法の法理において、(私有地の取得に反対するような)規制と取得は別物だと考えられてきた。

MAIにおける収用条項は、自国の「収用」に関する国内法原理を覆す、極端なものである。この分野に関する米国の法律は個人の財産権を尊重しているが、投資家の土地が収用された場合にはその逆で、一般的に規制によって投資の経済利益が減じた場合も訴訟の対象になるとは認識されていない。しかしMAIは、個人にさえ適用されないような権利を投資家に対し、国際法上で与えているのだ。米国では、「規制的収用」をめぐって最近行われてきた議論の上に、MAIの「収用」の議論が重なってきた。米連邦議会も多くの州議会も、米国の収用原理を拡大することが法に基づく政府の規制能力を過度に侵害し、各国政府の財政に大きな負担を強いる可能性を持つことを認めている。

MAI交渉テキスト(4月版)には、環境と労働基準に関する提案が付属書として盛り込まれている。米国は現行の収用規定をもっと緩い規定にすることを提案した。その文書では「各締約国は自国領域内における他の締約国の投資を収用あるいは国有化したり、収用や国有化と同様の措置をとってはならない」(付属書「環境と労働に関する文書提案」)。この提案では「間接」という用語が使われていない。しかし脚注によれば、これは「財産権は侵害されない・・収用」(「忍び寄る収用」として知られている)を含むものである。MAIが「忍び寄る収用」に適用されるものであることは、MAIコメンタリー第4章2-5を参照のこと。

この脚注は、各国の規制法を擁護するものである。これが採択されれば、MAIが収用や一般的待遇に関する国際法の新たな基準を示すものではないということを明確にするための交渉者や政策起草者、紛争処理機関への指針となる。しかし、こうした解釈は、OECDの膨大な文書に記されたMAI起草者の意図に反するものである。そして現行の交渉テキストでは、この提案は規制措置を保障するものとはならないのである。

さらに、収用の定義についても、国際法では決着が付いていない。国連の国際協定のいくつかでは、極端な国有化の場合も含め、補償を受ける権利は確立されていない。しかし国際投資紛争解決センター(ICSID)のような紛争処理機関では、国有化という忍び寄る収用による損害に対しても補償を義務付けている。

第二には、NAFTAが環境および健康、安全の規制に関連して、収用に関する新たな国際基準を作ったと言える点である。仮にMAI交渉グループが現行の国際法の枠内で収用に関する定義をまとめようとしても、先に示したメタルクラッド社のケースのようにNAFTAで出される判例が、MAIにおける義務として収用を定義する時に影響していくこともあり得る。MAI文書の脚注がより効果を持つためには、以下のような文言が必要だろう。「国際法上の判例にいかなる先例があろうとも、MAIにおける収用と一般的待遇の条項では、公共の利益のために政府が行う規制や財源確保、その他の通常の政府活動によって生じる投資家あるいは投資の損失について、締約国に補償を義務付けてはならない。」

2一般的待遇(「章の1条)

MAIにおける「一般的待遇」条項は、締約国に対して「[非合理正当又は差別的な][非合理かつ差別的な]措置によって、自国領域内における他の締約国の投資家の投資の運営管理、維持、利用、享有又は処分を妨げてはならない」とを指示している。この条項では、適用範囲とされる投資家の活動が、運営管理、維持、利用、享有、処分と極端に拡大されており、政府が企業を規制する全ての方法が網羅されている。

この条項が意図しているのは、収用に関するMAIの定義が拡大されているにもかかわらず、投資家が規制の対象とされた場合にも、投資家を保護できるようにしておくことにある。例えば国際投資家はこの一般的待遇条項を使って、禁止されたパフォーマンス要求(この要求自体は私的資本を公共の目的に添わせるための措置である)のリストには列挙されていない投資条件についても提訴の対象とすることができる。特定分野の企業に適用される最低賃金法や、特定産業において労働組合に対する中立性を要求する法律、一定期間その国や自治体から転出させないという要求、解雇された労働者や移転させられた地域社会に対して解雇手当や補償の支払いを要求する法律、その他、資本移動を規制し、地域住民のために質の高い仕事を創出するための既存あるいは立案中の政策など、先進国と途上国の両方で実施されている重要な政策がその中に含まれる。

MAIは、各国政府の実施する規制措置が一般的待遇に違反しているかどうかを判断するための基準を明確にするにあたって、慣習国際法を参照していない。その代わりに、MAIの一般的待遇条項は「合理性」あるいは差別などを根拠とする新たな国際的法基準を設定しているが、規制法に関わる紛争処理において、仲裁パネルがこの基準をどう適用すべきなのかについては明示していない。

これらの不明瞭な規定は、投資家に国家および地方自治体の法律をMAI違反として提訴するさまざまな根拠を与えており、これは仲裁パネルにも、公共の利益のうち、投資家が担うべき「合理的」な責任とは何かを判断するに際して自由裁量権を与えている。環境や人々の健康、および労働者の安全に関する規制とその実施は、この条項によって全てMAI違反とされてしまう可能性がある。

MAI交渉テキスト(4月版)付属書の「環境と労働に関する提案」に、一般的待遇に関する米国提案を含めることを交渉グループは決定した。この提案は、上述した収用に関する提案と類似しており、これが採択されれば、MAIは投資家の一般的待遇に関して新たな国際基準を設定せず、むしろ既存の国際法に存在する基準に依拠することが明示されることになる。

3資金移転に関する規制撤廃(4章4条)および金融サービスの自由化(3章内国民待遇)

投資を広く定義するMAIでは、ポートフォリオ投資(株式や債券、通貨取引)にも規定が適用される(MAI コメンタリー2章8条)。MAIは締約国に対し、海外および国内資本と海外資本との間で金融資本移動について差別することを禁じている。海外資本は相場の変動などに応じて国外に移転してしまう可能性が高い。OECDはMAIの資本移転に関する条項によって世界規模の資本移動を促進することを目指しているが、今は世界銀行でさえ各国には資本の流入・流出を規制するための正当な理由があると認めるようになってきている。主流の経済学者や世界銀行のような機関が唱える資本移動に対する規制は、海外投資と国内投資を区別して考えている。

現在、世界中の通貨取引の90%以上(1日の取引額は1兆3000億ドルとも言われる)は、投機に使われている。つまり、海外投資家が外国通貨を買い求める時、そのほとんどが投機目的なのである。その資金が工場建設や製品の輸入、国債の購入、株式の購入にあてられることはない。むしろ、通貨価値の変動によって利益を得る(あるいは為替損益を回避する)ことを目的とした売買なのである。

MAIに関連して、OECDは資本移動に関する伝統的政策から脱却しようとしている。資本移動の自由化に関するOECDコードでは、加盟国が必要と判断すれば一方的に資本規制を実施することが認められている。しかしMAIは、これに加盟するOECD非加盟国も含め、このような規制を行うことを認めていない。

とりわけMAI交渉テキストでは、資本移動を禁止するために、各国が以下の措置をとることを禁じている。

・通貨交換に上限を課すこと。通貨危機が起きたときに、政府が通貨交換を認可制に移行して資本の大規模な流出を防ごうとすること(4章2条)。

・長期投資を奨励するために「スピード・バンプ」を課すこと。チリは、外国投資家に一定期間投資を国内に留めることを要求している典型的なケースである

それに加えて、対内投資の流入を制限するための以下のような政策も禁止される

・外国投資家に対し、国内銀行からの借り入れに上限を定めること(3章1内国民待遇)

・ポートフォリオ投資に支払い準備要求を課すこと。国によっては、短期投資の流入を制限するため、株式市場への投資額と同額を中央銀行に払い戻しのできない形で預金することを要求すること(3章内国民待遇、3章1パフォーマンス要求)

・外国投資家の銀行預金に対して政府保証を与えないこと(3章内国民待遇)

・外国債の起債について行政認可が必要とすること。および外国債に最短償還期限を課すこと(3章内国民待遇)

・海外投資家の資本取引に関して他より不利な交換レートを適用すること

アジア通貨危機という事態を考えれば、このルールをあらゆる状況に適用することが賢明かどうかは大きな疑問である。MAI交渉グループは、国際収支問題が生じた時にもMAIが定める義務をできるだけ停止しないことを提案してきた。しかし、OECD資本移動自由化コードとは異なり、問題があるかどうかの判断が当事国に委ねられている訳ではない。MAI起草者は、その決定を国際通貨基金(IMF)に委ねるという条項を盛り込んだ(6章 2一時的セーフガード)。歴史的にIMFは、危機的状況にあっても「正常」な(つまり、できるだけ制限されない)貿易と資本移動を制約することに反対してきた。そのため、この様に例外を嫌うIMFを利用して、MAIに対する拒否権を認めさせることは、およそ実現的ではない。

4 パフォーマンス要求(3章パフォーマンス要求1-5(c))

パフォーマンス要求と呼ばれている投資に対する条件は、各国政府が経済発展の目的を達成するために講じる措置である。途上国は外国投資家に対して、国際競争から自国市場を保護するために製品の輸出を義務付けたり、国際収支バランスを保つためや工業化政策のために機軸通貨による資本移動を制限したりすることが多い。また、外国投資家に国内の製品や部品の使用を義務付けることも一般的である。

先進国の場合、パフォーマンス要求は、貧困地区における雇用の創出や銀行融資における人種差別に対抗するコミュニティへの再投資、環境保全など、政治的な目的と結びついている。MAIでは、外国投資家から譲歩を引き出す目的のパフォーマンス要求と経済発展を促進する目的あるいは経済・政治・環境など特定の問題に対処するためのパフォーマンス要求を区別していない。MAIにおけるパフォーマンス要求の一般的制限は、途上国の実施している戦略にも先進国の戦略にも適用される。

この規則は、外国投資家および国内投資家・投資に対する政府措置に適用される(3章
パフォーマンス要求1)。交渉テキストには「締約国は、自国領域内における他の締約
国又は非締約国の投資家の投資の設立、取得、拡大、管理、運営、維持、使用、享有、売却又は他の処分に関して、以下の要件を賦課、強制、維持し又は約束若しくは合意を実施してはならない(強調付加)」と記されている。締約国に「a(ある一つの)」が付いていることに注意してほしい、これは適用される対象として外国投資家を「another(他の)」締約国の投資家と記している「内国民待遇条項」と対照的である。つまり、各国政府のパフォーマンス要求に対する制限は、国内企業にも外国企業にも適用されるという意味である。

MAI交渉を開始するにあたって、OECDは、MAIにおけるパフォーマンス要求の制限はNAFTAよりも厳しいものになるだろうと語っている。MAIの起草者は、この協定では自
主的なパフォーマンス要求を禁止しすべきだと提案した。さもなければ、各国政府は、ある程度の要求を受け入れる投資家を、そうしない投資家よりも優遇することになるからである。彼らは、パフォーマンス要求が投資の流れを歪めることのないようにする最善の方法は、仮に政府が補助金を払ってでも行いたいパフォーマンス要求の幾つかを完全に禁止することであると説明している。MAIの起草者はまた、MAIが政府に対し、国内投資家にパフォーマンス要求を課すことを禁止しない限り、政府は要求を従わせることができる国内投資家を優遇し、そうできない外国投資家を冷遇するだろうと説明している。

MAI草案(4月版)では、こうした野心的な構想が全く縮小されていない。MAIは、MAFTAよりも広い範囲でパフォーマンス要求を禁止しており、自主的なパフォーマンス
要求のいくつかについても禁止している(3章パフォーマンス要求2)。さらに、上述したように、外国投資家と投資と同様に、国内投資家と投資に対する待遇についてもこのパフォーマンス要求条項が適用される。

MAI交渉テキストでは、国内および外国投資家対して以下のパフォーマンス要求が禁止
されている。投資家が、「優遇」を受けるかわりに自発的に要求をのむことについて
も以下のような場合に禁止されている(補助金あるいは他のインセンティブ)。

・国内コンテント要求(3章パフォーマンス要求1-b)
・国内調達要求(3章パフォーマンス要求1-c)
・輸出入均衡要求(3章パフォーマンス要求1ーd)
・領域内における販売制限(3章パフォーマンス要求1ーe)
・一定レベルの輸出要求(3章パフォーマンス要求1-a)

さらに、「優遇」が伴わない限り、外国および国内投資家に対する以下のようなパフォーマンス要求を課すことはできない。

・研究開発要求(3章パフォーマンス要求1-i)
・一定レベルの国民を雇用する要求(3章パフォーマンス要求1-j)
・国内の企業と合弁する要求(3章パフォーマンス要求1-k)
・国内資本の参加義務要求(3章パフォーマンス要求1-l)
・技術移転要求(章パフォーマンス要求1-f)
・本社を自国内い設立する要求(3章パフォーマンス要求 1-g)
・財およびサービスを自国領域からのみ供給する要求(3章パフォーマンス要求1-h)

さらにMAIには、NAFTAには盛り込まれているような環境分野のパフォーマンス要求を禁止対象から部分的に外すという規定が含まれていない。NAFTAにおける環境規定は、当該国の環境あるいは健康、安全に関する法律を遵守するために必要である場合に限り、政府が国内コンテントまたは、国内調達要求を課すことができるというものである。MAIの脚注によれば、この部分的対象外規定はOECD加盟国からほとんど支持を受けていない。

国内の経済発展のための「プログラム」は、MAIにおけるパフォーマンス要求の禁止か
ら派生したものである。各国政府は経済発展を実現するためには企業を規制してはならない、というのがこの「プログラム」の原則である。しかし、場合によってはこの目的を達成するために政府が投資家に補助金を支払うことも認められる。

MAI草案(4月版)のパフォーマンス要求条項(雇用要求の禁止)では、以下の文がサブ・パラグラフ(j)の脚注として挿入されている。「このパラグラフは、条件不利地域・個人を対象としたプログラム、あるいは他の同様に正当性を持つ雇用政策プログラムに干渉するものと解釈してはならない」(3章パフォーマンス要求1ーjへの脚注24)(強調付加)。この脚注によって、条件不利地域・個人を対象としている大半のプログラムが適用から除外されるわけではない。これは、特定の雇用創出目的に沿ったプログラムのみに限定されているからである。つまり、条件不利地域・個人を対象としたプログラムでも、雇用要求以外の11のパフォーマンス要求からはこのプログラムが適用除外とされないのだ。。条件不利地域を活性化するための政府の政策能力を支援するためには、MAIの全てのパフォーマンス要求からこうしたプログラムを除外しなければならなず、実際、このようなプログラムは条約全体の適用除外とされねばならない。

5. 戦争からの保護(4章3)

MAIの投資家保護条項では、締約国に対して戦争時に外国投資を保護するよう求めてい
る。ここで言う戦争とは、戦争や他の武力紛争、革命、暴動、「市民騒動」、その他の緊急事態のことを広く指している(4章3-3-1)。ここに記されているように、MAIにおける戦争の定義は、食糧や燃料不足に起因する暴動、ストライキ(国によっては不法なこともある)、天災などによる社会混乱などのような多様な事態が含まれるほど広いのである(4章3-3-2(a)(b))。

MAIではこのように広範に定義された紛争期間に外国投資を保護するために、内国民待遇または最恵国待遇のいずれかより厚遇な措置を外国投資家に与えるよう各国政府に要求している(4章3-3-1)。しかし、MAIは、国内投資家には与えられていない場合であっても外国投資家に対する弁償または補償も保障している。政府が投資の全てもしくは一部を「接収」した場合、または戦争によって投資の一部または全部をその必要もないのに破壊した場合がそれにあたる(4章3-3-2(a)(b))。

暴動や戦争あるいは他の紛争によって投資に損害を受けた場合、外国投資家はMAIの紛
争解決パネルに該当財産の破壊が「必要」だったかどうかの判断を求め、その裁定に基づいて保障を受けることができる。その一方で、政府軍によって損害あるいは破壊を受けた国内企業はMAIに提訴を行うことができない。この条項は、投資法の専門家で組織されるMAIの紛争解決パネルが、武力闘争や侵略あるいは暴動などにおける当該政府の政策決定が有効であったかどうかを判断するための権限を強化する。

II. MAI条項の適用 

投資家ー国家の紛争処理手続き

MAIの与える影響に関する議論の多くは、「投資家対国家」紛争解決に焦点を置いている。この条項では、投資家(企業あるいは個人)がMAIで認められた自らの権利が侵害されたと考えたときに、政府を国際法定で提訴し損害賠償を請求する権利を与えている(5章D1-2)。

実際、MAIに違反すると考えられる政策や法を提訴するのかどうか、またはいつ、どこで提訴するのかを決定するのは投資家である(5章D2;D3(a))。投資家の主張を審査するための政府機構は存在しない。このような過大な権力を制限するよう求める声明がいくつかの政府から再三出されているにもかかわらず、MAIテキストには、いまだ何の制限も盛込まれていない。

MAIは重要な分野において紛争の裁定を行う仲裁パネルが採用すべき基準を設定していない。このように、このMAI協定には不明瞭さが残されているため、NGOもMAI交渉者もこの協定がもたらす本当の影響については憶測するしかなく、それによって実施段階においてMAIの立法の意図が縦横無尽に追求できるというわけだ。

全ての国はMAIの調印にあたって、投資家が提訴した場合には紛争仲裁パネルの裁定に無条件に従わねばならない(5章D3)。

MAIでは投資家が政府を提訴する際に以下の三つの機関から一つを選択することができ
る。一つは、世界銀行の一部である国際投資紛争解決センター(ICSID)。ここを利用
するには当事国が投資紛争解決条約の加盟国でならなければならない(5章D2(c)(i)(ii))。

MAIの締約国が投資紛争解決条約の加盟国でない場合、投資家は国連国際貿易法センター(UNCITRAL)あるいは国際商業会議所(ICC)の調停機関を利用することができる(5章D2(c)(iv))。

ここで指定されている投資に関する調停機関同士の間には、大きな利害の衝突という問題がある。例えば、国際商業会議所は、MAIの議論に関しての中立な立場を保つ機関ではありえず、むしろ、投資の規制撤廃の唱道者である。国際商業会議所はMAIにおいて公式な立場を確保するために精力的なロビイ活動を行い、他の国際貿易調停機関と競いあった。紛争解決機関にとってお金と名誉が重要であるという事実は、紛争処理仲裁人が投資家に対して有利な仲裁をする動機となるであろう。

クリントン政権は、MAIに対する批判の多くがこの「投資家対国家」紛争解決メカニズムに関するものであることを認識している。米政権は、市民の懸念を和らげるために、この「投資家対国家」紛争解決メカニズムはすでに、現存する1600以上の二国間投資協定に盛込まれいると主張し、投資家が米国の法律に対して、また環境および労働規制を避けるために、この紛争処理メカニズムを使ったことは一度もないと指摘している。しかしながら、MAI条項を施行するために投資家対国家紛争解決メカニズムが利用された場合の規制への影響を予測するための事例としては、これまでの二国間投資協定のケースでは全く不十分である。

二国間投資協定は、先進国が新たに独立した国家(旧ソ連邦諸国など)の規制の厳しい市場に参入を促進し、政治と法治組織が不安定な国に投資する際のリスクを最小限にするためにに結ばれてきた。しかし二国間投資協定の相手国となっている比較的貧しい国々は、先進国市場の大きなシェアを占めるような多国籍企業(MAIの潜在的な原告)の本拠地ではないため、二国間投資協定において米国や他の先進国の政策が提訴されるような事態はまず起こりえない。それに引き替え、OECD加盟国の大半、つまりMAIの当初の締約国となる国々からは、多額の対外投資が行われている。したがって、米国と二国間協定を結んでいるハイチやウズベキスタン、キルギスタンなどと違い、MAIの締約国は、紛争解決プロセスに影響を与えて自らの優位を保つことができる巨大資本を持った多国籍企業の本拠地なのである。そして二国間投資協定の相手国とは異なり、ほとんどのOECD加盟国は米国に投資している(その逆もある)。

さらに、米国と二国間投資協定を結んでいる国々と違って、OECD加盟国の市場は比較
的開放されており、国内法によって外国投資もかなり保護されている。このような自由化された投資環境のもとでは、投資に対する既存の障壁のほとんどは規制である(例えば、環境保全や土地利用法、危険物の製造を禁ずる公衆安全法、独裁政権との商取引を行なう投資家に対する経済制裁など)。したがって、MAIが締結されれば、この投資家対国家紛争解決メカニズムは、投資家が投資障壁だと認識する規制を提訴するためにしばしば活用されるようになるだろう。

MAIの投資家ー国家紛争処理メカニズムは、NAFTAの投資条項(第11章)以上に、国内の規制政策を脅かす可能性持っている。第一に、NAFTAの投資家対国家メカニズムは、NAFTAの一部の条項にしか適用されない。第二に、NAFTAの下で投資家が紛争解決プロセスを開始したら、他の法的機関で金銭的損失を取り戻す権利を放棄しなければならない。このルールによって、投資家が「紛争の場を買い漁る」ことや、自分に都合のいい判決が出る可能性を追求し、次々と国内および国際の法定で並行していくつもの訴訟ケースを抱えるといった事態を防止することができる。MAIの投資家対国家紛争解決条項では、この防衛措置は、政府がそれを望んだときにのみ適用される選択肢の一つにすぎない。

全般として、MAIの各条項は広範すぎるし、漠然としており、曖昧な規定が多い。起草者らは、一般的待遇や収用、事実上の差別などの領域に関しては、ほとんど解説的な指針が示されていない。しかし、その分野こそMAIが国際法上の新たな基準を設けている所なのである。MAI条項の曖昧さがこれに加わり、国内における立法に対するMAIの影響という点において、紛争解決メカニズムは多くの不確実性を内在している。


1998年4月のOECD閣僚会議の後で、交渉グループは、MAIの投資家対国家紛争解決条項
によって国家権力が実質的に企業に委譲されることを制限しようとするだろうという漠然とした報告が出された。また、MAI交渉グループは、投資家が政府を提訴する件数を減らし、それによって政府の関連経費を減らすための「審査」メカニズムを検討しているという噂が流れた。このメカニズムの提案nは、MAIの仲裁機関の外部に上訴審を設立する可能性や、政府が企業や個人投資家の「下らない」提訴をふるい落とすためお事前審査メカニズムの可能性が含まれていた。

MAI交渉テキスト(98年4月版)では、付属書のなかに「諮問意見:MAIの紛争解決あるいは機構問題専門家に対する提案」と題された草案が含まれていた。そこでは、締約国は「MAIの解釈と適用」に関する法律問題諮問委員会を設立することを提案している。この「諮問意見」という短く曖昧な言葉は、提訴されたケースを事前に審議するあたっての制限が設定されるのかどうか、また委員会で出された意見が仲裁機関に持ち込まれる投資紛争に関して何らかの意味を持つのかどうかなどは全く不明である。

MAI交渉グループでは、投資家対国家紛争解決メカニズムの審査プロセスについての議
論は進展していないようだが、政府をパネル裁定に従わせるため条項は草案したようである。MAIの「締約国の書面による合意」条項(5章D5)では、MAIに調印する国は、国内の現行法よりもMAIルールを優先することに同意し、MAI仲裁機関の裁定に国内法を従わせることに同意すると規定している。

MAI条項は、調印国にニューヨーク条約第2条に同意することを求めている。これは、MAIの投資法に関する仲裁パネルの裁定については、国内法廷においても遵守手続きを踏むことを規定するものである。このようにしてMAIは、NAFTAおよびGATTにあった抜
け道を閉ざすことになった。NAFTAでもGATTでも、国際貿易および投資に関する法廷で出された裁定あるいは損害賠償は、かならずしも国内法廷によって政府に遵守させら
れてこなかったのである。

2 国家ー国家紛争処理(」章A-C)

MAIにおいて締約国は、他の締約国にMAIの義務を実施するよう求めることができる。
投資家と同様に国も、国際法廷において相手国の措置、政策、法律を提訴することが
できるのである。締約国は、自国の投資家のために損害を請求することができるが、その投資家は原告である国の国民でなければならなず、またMAIは投資家のために開始された国家対国家紛争解決プロセスについて一切規定していない。弁償や補償が絡む投資家対国家紛争解決と異なり、仲裁パネルが勧告するのは「締約国が協定の義務に適合した措置をとる」という点である(5章C6(c)(ii))。つまり、MAIの国家対国家仲裁パネルは、当事国の法律がMAIのルールに適合するよう改正を求めるのである。

 しかし、MAIテキストは、投資家対国家紛争解決条項の下で民間投資家に認めているような裁定に従わせるためのメカニズムを、国家対国家紛争解決には与えていない。MAI交渉テキスト(98年4月版)では、「敗訴した」国がMAIの国家対国家仲裁パネルの裁定に従わない場合、「勝訴した」国はできるかことについて二つの選択肢をかぎ括弧付きで提示している。「対抗措置をとる」か、相手国に対して自国のMAI上の義務を停止するという二つの選択肢は、MAI違反が自国もたらした損害と「均衡するレベル」で実施される(5章(c)(9)(a))。またMAI締約国グループ(MAI締約国政府)は、非承諾国がそのグループへの参加を停止することができる(5章C9(c)(ii))。これらの選択肢は、ニューヨーク条約を援用し、国内裁判所を通じた遵守手続きを取り入れている投資家対国家紛争解決システムと比べ、強制力が弱いように感じられる。事実、全体としてMAIの紛争解決システムは、民間企業が国家メカニズムに対して行使することを主眼にために作られている。

III. 締結後も継続される、さらなる投資自由化交渉

1実質20年間、締約国を拘束するMAI(7章1条および3条)

MAIの起草者らは、この協定が「さらなる投資自由化」の継続的な促進を約束する枠組みにしたいと長い間考えてきた。MAIの加盟国は以後最低5年間はこの協定から抜けられない。5年経った後に協定からの脱退を申し出ることはできるが、既存の投資についてはそれ以後も15年間、MAIルールを適用しなければならない(7章3条)。このように加盟国が20年間も拘束される国際協定は他には存在しない。例えばNAFTAは、協定からの脱退を書面で通知すれば、それから6ヶ月後には全てのNAFTAルールの遵守義務を解かれる。

2 ロールバック(4章A(b);MAIコメンタリー;4章ロールバック条項)

OECDのMAI起草者らは、MAI加盟国に対して20年間の拘束だけでなく、各国に国別例外措置として残された外国投資に対する障壁を順次撤廃するためのスケジュールを立てさせたいと考えている。これを英語では「ロールバック」といい、フランス語では「ディスマントルメント:撤廃」と呼んでいる(MAIコメンタリー:4章ロールバック条項1−2)。すでにOECD各国はさらなる自由化交渉を継続するための準備を行っているとの報告もある(MAIコメンタリー:4章ロールバック条項4(c))。さらに、OECD各国は、国別例外措置の一定期間ごとの見直しについて定めた条項をMAIに含めることについてすでに議論している(MAIコメンタリー;4章ロールバック条項4(b))。このようにMAI締結後の自由化交渉の継続があらかじめ定められてしまえば、各国が特定の国内法を守るための枠組みとなってきた留保プロセスは実質的に効力を失う。留保された法律は、保護されずにむしろ撤廃時期が引き伸ばされるだけということになる。

3 スタンドスティル(4章A;MAIコメンタリー:4章スタンドスティル条項)

MAIのスタンドスティル条項では、各国が留保した特定の法律または政策を協定への調印後に強化したり、同様の法律や政策を新たに導入することを禁止している(4章A(b);MAIコメンタリー:4章スタンドスティル条項3(c)(d))。例えば、スタンドスティル条項によって、各国は農地の所有権を国内居住者に限定するという新たな措置を導入することはできなくなる。MAIでは限定的に定義されたいくつかの政策分野については、撤廃する期限を設けない留保を認める可能性もある(4章〔B〕)。期限なし留保によって、各国は特定の限定的に定義された政策分野においてMAIに違反する法制を新たに導入することが認められる。NAFTAではこうした期限なし留保が認められており、米国は核政策と航空政策をNAFTAルールの適用から永久除外している。しかしMAIでこのような留保が認められたとしても、将来行われる貿易交渉などにおいてこれらの留保が撤廃の対象とされない保証はどこにもない。

1998年4月の交渉テキスト付属書には、各締約国に対し、MAIに違反する留保措置について他の締約国に対する補償を義務付けるプロセスについての提案が含まれている。これは一ヶ国が提案したものである。この政府は、国内法を守るためのさまざまな手段−例外、期限付き留保、期限なし留保、独占解除や民営化などの特定分野における条項−は、「締約国間の自由化義務の全体的なバランスにおいて将来発生するかもしれないゆがみの評価を困難にし、こうしたゆがみ自体を生み出す原因となる。さらに、これらの条項はよりたくさん留保を行った、あるいは新たにMAIに反する措置を導入しようとしている『悪い奴』に利し、そのためにこの協定の法的質を著しく低下させる。.......」(付属書:全体の自由化レベルの維持、イントロダクション、3)。留保および一般的例外の下でMAIに抵触する措置を実施する国は、「全体の自由化レベルの維持を保障しなければならず、必要に応じて補償による調整を行わねばならない(付属書:20条;全体の自由化レベルの維持、1−2)。

この提案されている条項の下では、MAI加盟国は他の締約国の留保または例外について仲裁パネルに審査、および「補償による調整」の必要の有無、そして必要だという判断の場合には「適切かつ十分な」補償額についての決定を要請できる。この条項がMAIに含められることになれば、各国政府は文字通り、外国との競争から特定分野を保護し、外国が自国の特定の法律について提訴することから自国を守る主権のために補償を支払わねばならなくなる。

4 MAIの例外

通常、例外規定は全ての締約国に対して法的拘束力を持つ形で交渉テキストの中心部分に含まれている。そこには、ペナルティを課されずにその協定に違反することが許される状況が列挙されている。例外規定は、締約国の国内法や政策が協定違反として提訴されたときにだけ、これら法制を守るというその効力を発揮する。例えばGATT20条の例外項目のリストは、GATTルールにおいて、締約国が人間や動植物の健康や生命を保護するために必要な措置や、国家財産や公の秩序または道徳の保全に関連する措置がGATT違反である場合に、これらの措置を実施することを認めている。

これまでの国際経済協定に比べると、MAIの例外規定のリストはかなり短いものである。MAIが現在認めている例外には、「国際平和及び国際安全保障の維持のための国連憲章上の義務」を履行するための措置や、「当該締約国の安全保障のために不可欠な利益を保護するために必要」と認める措置があり、その他には「公の秩序」の維持のための措置を条件付きで容認しているに過ぎない(6章一般的例外2と3)。それに対してGATTは、例外として公の道徳や人間・動植物の健康、国家財産、有限天然資源、国家安全保障、公の秩序などを含んでいる。

EUはMAIにGATT20条の例外規定を挿入することを提案している。これは「人間、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要」、または「有限天然資源の保存に関連する」法律を例外と規定している。交渉グループ議長の極秘メモによると、この例外規定がMAIに挿入する可能性は高いという。

しかしGATTでは、このような非常に範囲の狭い例外規定によって重要な環境法が保護されてきていない。最近のケースに、マレーシアとインド、パキスタン、タイの4カ国が、海ガメ回避装置(TEDs)を使用せずに捕獲されたエビの輸入を禁止した米国を提訴していた件がある。この件で1998年4月に出されたWTO裁定は、GATTの例外規定が存在するにもかかわらず、貿易を環境法よりも優先している。米国の当該の法律やこの紛争ケースの総合的な結論に対する意見がどうであれ、今回の裁定におけるGATT20条の解釈には問題がある。WTOパネルの報告は、エビ輸出国が国内のエビ漁船にTEDsの装着を義務付けることを要求した米国の輸入禁止は、GATTの例外規定によっても正当化され得ないとしている。その理由は、こうした措置が「多角的貿易システムを傷つける」からであるとしている。このパネルはGATT20条を極端に狭義に解釈し、例外規定は自由貿易を制限することを意図する法律には適用されないとした。このWTOパネルは、環境保全措置を含む全ての各国規制は、米国の特定のエビの輸入禁止の場合のように無差別的であり、かつ天然資源と動植物の生命を保全・保護する多国間の取り組みの一環である場合であっても、自由貿易原則に則っていなければならないと判断したのである。つまり、米国のエビ禁輸措置は、絶滅の危機に瀕する動植物の国際貿易に関するワシントン条約(CITES)などの多国間環境協定に則っていても、例外規定は適用できないということだ。CITESでは、絶滅に瀕している種を危機に追いやっている国に対して貿易制裁を発動することが容認されている。EUがGATTの例外規定と同じ文言をMAIに挿入することを提案しているため、この最近のWTOパネル裁定はMAIにおける環境保全措置の扱いにも直接関係する問題となった。GATT20条の例外規定についての詳細な分析は以下の第二部を参照されたい。

最後に、MAI条項が例外規定の適用範囲を狭めているため、紛争解決パネルにおいて例外措置が提訴される可能性は高くなり、例外規定の適用が非常に厳しく審査されるようになることはほぼ間違いない。MAIの下では、例外措置は「純粋に経済的な理由のため」には発動することができず、さらに「保護された利益に比例して」いなければならない(6章一般的例外5)。驚くべきことに、あるMAI締約国が他の締約国の留保について、問題に比して釣り合わない措置だと主張すれば、協議プロセスが開始されるというのだ。これでは、例えば核政策などの基本的な安全保障問題などに関連するルールを策定する際に、各国は他国の反応を予測しなければならないという非常に困った事態が発生することになる。

5 加盟(7章)

MAIはOECD非加盟国が加盟することもできる開かれた協定であり、OECDのMAI起草者らはこれら国々のMAIへの加盟を奨励している。すでにOECD非加盟国4ヶ国がオブザーバーとして交渉に参加しており、7ヶ国がMAIに最初から加盟したいと表明している。

設立メンバーとしてMAIに加盟しない国々に対し、MAI交渉グループは途上国のMAI参加を歓迎するという「強い政治的メッセージ」を送るために新たな文言を提案した(7章加盟4)。この提案によって、締約国グループ(MAI加盟諸国)は途上国の加盟申請を受け入れるために必要な国別例外などについて、「それぞれの加盟申請国の特別な状況」を考慮に入れ、「加盟申請国の国内投資規制の総合的な改革という文脈においてこのような例外措置を残す提案について加盟国は検討する」ことができるようになった(7章加盟4)。この提案は、MAIが途上国のニーズと利益を考慮していないとの批判に答えたものだ。これらの例外がMAIの中心的な条項であるパフォーマンス要求や内国民待遇原則などにも適用されるのか、それともこれらの例外が国別例外にされる法律だけに適用されるのかは明らかでない。

一方で、交渉グループはOECD非加盟国の人権・労働権の扱いなど、MAIへの加盟申請前に考慮されるべき事項についてのその他の基準は全く提案していない。


第二部 「1998年2月・4月MAI交渉テキストにおける環境および労働に関する提案」の分析

1998年2月および4月のMAI交渉テキストには、環境と健康・安全、および労働に関する法律をMAIでどう扱うべきかについて、慌てて付け加えられた提案が含まれている。その一部にはかぎ括弧が付いており、これはMAI交渉グループが条文は作成したものの、それをMAI協定に含めるかどうかについて合意に至っていないことを意味する。その他の提案のほとんどが各国政府による提案であり、MAIに含められるかどうかの交渉さえ進んでおらず、含められない可能性も高いものである。つまり、これらの全ての各国提案は合意に至っておらず、MAI協定に含まれる可能性は非常に低い提案なのである。

これらの提案は、OECDの新たな戦略を反映したものである。この戦略は、WTO閣僚会議におけるクリントン米大統領の演説や、OECDが「グローバリゼーションの恩恵」を広く宣伝することで貿易協定や投資協定を売り込むために実施した「投資と貿易」に関する出版物の販促ツアーなどに具現化されている。最近になって続々と出された環境や労働に関する提案によってMAIが環境・労働政策やその他の公共政策に対する明確かつ包括的な保護策を講じたと結論付けるのは間違いである。また、MAI交渉者らが真剣に系統立てて環境や健康、開発などの問題に取り組もうとしていると考えるのも妥当でない。むしろ、環境や労働およびその他の国内の公共政策の正当性について、MAIの法律家や紛争解決パネルの解釈を左右する効力をほとんど持たないこれらの提案を乱発しているに過ぎない。

これら最近の提案では、MAIに関連する環境や労働などの問題をどう扱うべきかについて異なる意見が出されている。いくつかの提案は、既存の環境法を温存し、かつ将来的に各国が環境や健康・安全に関する法律を制定する余地をより多く残すことを企図しているが、大方の提案は各国政府が投資誘致のために環境・労働基準を引き下げないことを勧告するという内容に留まっている。しかし、中には国内の企業が弱い環境規制を求めて他国に移転することを防止するための環境法を制定するのをMAIによって制限しようとする提案もある。

さらに、「環境に配慮した」条項をMAIに含める提案の多くは、実際に環境政策が影響を受けないように明示するのではなく、むしろその点を不明瞭にしている。環境法を例外とする提案には多くの制約条件が課されており、中には環境政策がMAIに抵触していない場合のみ、その合法性を容認するというような、重複していて無意味な提案さえある。各国政府が高い環境基準を追求することを奨励するという提案も、勧告の域を超えておらず、投資自由化に関連して起きる環境破壊について明示し、それに対処するための具体的な目標を定めるものではない。

これらの提案は、MAIにおける環境問題の扱いに対して長い間論じられてきた以下のような批判には対処していない。(1)MAIは投資家に責任を課していない、(2)全ての環境保護法制・政策はMAIの投資家対国家紛争解決メカニズムにおいて提訴の対象とされる、(3)「収用」や「一般的待遇」などの問題の多いMAI条項について、これら条項が外国投資家に経済的損失を与えた、もしくはこれら投資家の投資に関連した活動を「不当」に制約したとの理由で、環境・健康・安全を守るための法制を攻撃することのないよう、修正が加えられていない。(米政府は収用と一般的待遇について、代替の文言を提案した。これについては本文中の他の場所で論じている。なお、MAI交渉グループ議長はこの提案に支持を表明している。)

概念の明解さという面から、これらの提案は二つのタイプに分けることができる。ひとつは環境・健康・安全基準をMAIの例外と扱うとする提案で、もうひとつは環境・労働基準についての各国政府に対する勧告のようなものである。

A提案されている「例外」

1パフォーマンス要求に関する環境面での例外
これは、NAFTAのパフォーマンス要求の条項を採用したもので、MAI交渉テキストには1997年1月の交渉テキスト以降に含まれるようになった。以後に出された新しい提案が優先されるが、前の版も解釈の際に参照される。この例外は禁止されている12種類のパフォーマンス要求のうちの2つに適用される。環境・安全基準および環境保全目的を達成するために必要な場合、または既存の環境・健康・安全規制の遵守に不可欠である場合にのみ、国内調達比率または国内調達要求を課すことが認められる。

条文:〔該当措置が恣意的若しくは不公正な方法で適用されないこと又は投資に対する偽装制限とならないことを条件に、パラグラフ1(a)から1(c)の文言は、締約国が、環境に関するものを含む以下のような措置を導入又は維持することを妨げるものと解釈されてはならない。(a)この協定の条項に反しない法令との整合性を確保するために必要なもの;(b)人間、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要なもの;(c)生命を有するかどうかを問わず、有限天然資源の保存に必要なもの〕(第三章パフォーマンス要求4.)

説明:国際環境協定でない限り、国内および国家間の環境法・政策は統一されていないのが一般的である。例えば米国は環境保全の目的やその必要性に応じて産業ごとに違うルールを課している。カリフォルニア州ではスモッグ問題に対応するために他の州よりも厳しい排出規制が実施されている。他の国では、例えば北欧諸国の熱帯木材利用規制のような資源保全のためにより弾力的に厳しい環境政策を実施している場合も多い。その効果により、地元産業はこうした環境規制に従う形で事業を展開している。外国投資家はこれらの地域特有の環境基準を満たすために地域で製造された汚染防止装置を購入しなければならないことになるかもしれない。同様に米国では、特定製品のリサイクル原料の使用割合など、資源保全のための法律があるため、外国投資家はこの法律を守るために地元のリサイクル技術に資金を投入しなければならないこともあるだろう。国内調達要求が例外として認められることにより、通常は海外の親会社あるいは関連会社から資材や設備を輸入するところを、国内調達要求によって地元から調達を余儀なくされたとして、このような環境規制はMAI違反であると主張する外国投資家の訴えから政府を守れるようになる。

分析:この条項、各国政府が環境保全のための政策目標を達成し、全ての投資家を既存の法律に従わせることを目的としているにもかかわらず、実際に提案されている文言は非常に限定的なものである。NAFTA協定から引用したこの条項は、政府の措置が人間、動物又は植物の生命又は健康を保護するため、および天然資源を保存するために「必要」であることを条件としている。(これはGATT20条の文言よりも制約的である。)

環境や健康・安全を守るために「必要」な法律であるかどうかの決定の基準とされるのはなんだろうか?MAIはこの点について指針を示していない。同様の文言はGATTルールでは、こうした目的のための法律が「最も貿易制限的でない」措置であるかどうかという基準をパスしなければならないという意味に解釈されている。つまりこのような法律を維持しようとするとき、その国はその目的を達成するのにこの措置が最も貿易制限的でないということを証明しなければならない。(さらに、目的そのものの正当性も別途、法的判断に付される。)MAIが政府に対し、その法律や政策措置が目標達成に必要なだけででなく、最も投資制限的でないことを証明する義務を課すようになるのかどうかは、明確な説明がなされない限りはMAIの交渉担当者や紛争解決の仲裁者にさえ分からないのである。

MAIにおいて、明確な説明なしに「必要」という文言が採用されることになれば、例えばリサイクル資源の含有量を特定する措置などが、「必要」かどうかを基準とするのか、資源保全のための措置として最も投資制限的でないかどうかを基準とするのかは、紛争解決パネルの判断に一任されることになる。

パフォーマンス要求禁止の二つの例外に関する提案に含まれている、「恣意的」という文言と「偽装した」という文言は、GATTケースにおいて環境法制をGATT違反と判断した根拠になった文言である。国際法の解釈事例には、これらの文言について有効な別の解釈が存在していない。

さらにこの例外は12もあるパフォーマンス要求の禁止事項のうちの2つ(国内調達要求および現地調達比率要求;ローカルコンテント要求)にしか適用されないのも問題である。これでは、例えば気候変動枠組み条約の中で規定されているような国際環境政策の目標を達成するために、政府が外国企業に対して技術移転を要求することは認められないことになる。気候変動枠組み条約では、多国籍企業がより貧しい投資受入国政府に「環境適正」技術を提供することでより効果的な排出削減を行うよう勧告している。

現状:この条項の提案には、1997年1月の交渉テキストに含まれて以後、かぎ括弧がついたままである。この条項の備考には、この条項は広範囲をカバーしているために大多数の政府が削除を希望していると記されている。(政府はパフォーマンス要求を実施する余地が広がりすぎることを懸念しているのである。)しかし1998年4月の交渉テキストは、新たな環境と労働に関する条項ととともに再度この条項が含まれている。

2GATT20条「環境に関する一般的例外」
ECは、人間・動植物の保護、および生物または無生物の有限天然資源の保全に必要な法律をMAIの例外とするためにGATT20条と同様の条項を挿入することを提案した。一般的例外は、前述したパフォーマンス要求禁止からの例外より優先する。

条文:「該当措置が恣意的若しくは不公正な差別、又は投資に対する偽装制限として適用される場合を除き、この協定は締約国が以下の措置を採用または維持、実施することを妨げるものと解釈されてはならない。(a)人間、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要なもの;(c)生命を有するかどうかを問わず、有限天然資源の保存に関連するもの。」(第三章環境と労働に関する追加的条項)

分析:この条文は、前述の国内調達とローカルコンテントに関するパフォーマンス要求禁止からの例外という狭い例外ではなく、この条件に適合する全ての法律を例外として扱うものである。しかしここでもまた、提案された文言は制約的なもので、最近さらに弱められたGATTの解釈に基づいている。各国の措置は「恣意的若しくは不公正な差別、又は投資に対する偽装制限として適用され」てはならないのだ。この文言は、GATT20条の前文について、自由化優先の解釈を行うときに持ち出される基準となっている。この文言は、投資家が環境・健康・安全に関する法律をMAI違反として提訴する明確な根拠となるため、このECの提案はあまり有効な例外条項とは言えない。

MAIの「安全保障」のための例外条項では、政府の措置に対してこのような条件は課されていない。ただ「この協定は、締約国が、以下のような、当該締約国の安全保障のために不可欠な利益を保護するために必要と認める措置を執ることを妨げるものではない...」とのみ記されている。

同様に、この提案では、人間・動植物・健康を守るために「必要」な、というGATTの文言を用いている。パフォーマンス要求禁止の部分的例外のところでも説明したように、「必要」という用語は投資家に、国際法廷で環境規制を提訴する重要な根拠を与えている。いかなる判断基準が適用されても、MAIが「必要」という文言を採用することによって各国の全ての環境政策が説明責任を伴わない商業優先の国際法廷の判断にさらされることになることは間違いない。紛争解決パネルは、外国投資家が受入国の環境法や公衆衛生規制などによって地元企業よりも不利な立場に立たされたと主張すれば、各国の環境保全の取り組みを精査することができるようになるのである。

GATT20条の文言を採用するとの提案において、ECは資源保全と健康・安全に関する法律との間に明確な区別をつけようとしている。GATT20条の下では、資源保全のための法律はそれが「必要」かどうかが判断基準にはされておらず、その措置が環境保全に関連していれば良いことになっている。(前述の(b)参照)それによって政府は、鉱物資源の採掘に規制を課したり、リサイクル法を施行するより広い裁量権を持つことができると考えられている。しかしこれまでのGATTやWTOにおける紛争ケースでは、この二つの分野をほとんど区別しておらず、GATT20条の前文を参照することで前述のように各国が環境法を維持することを例外と認めてこなかった。

現状:この例外規定がMAIに含まれる可能性は全くないというものから、かなり可能性が高いというものまでさまざまな予測が飛び交っている。

3炭化水素を含む鉱物資源の探鉱、採掘および精錬に対する許認可についてのノルウェー提案

条文:〔(2)「現存の協定に従い、締約国は以下の措置を取ることができる。(a)この条項に従い、希望する全ての投資家が行った申請に対する許認可のための手続き;(b)申請許可のための基準;(c) 許認可事業への国家の参加の有無や、炭化水素を含む鉱物資源の探鉱・採掘・精錬などの事業活動の実施とその期間について許認可の中に含めるか、それ以前に決定しておくのかなどの条件および要求事項」〕

(3)締約国はパラグラフ(2)で規定されている手続きおよび基準、条件、要求事項を、炭化水素を含む鉱物資源の探索・採掘・精錬などの活動の実施に関して、透明かつ客観的な方法および投資家の国籍に基づいて差別しない方法で適用しなければならない。

分析:この条文はこれよりも以前の、鉱物資源は「投資」の定義から完全に削除するというノルウェーの提案の修正案である。この提案では天然資源を外すのではなく、政府にMAIルールからの逸脱を認め、採掘の条件を定め、外国投資家の設立する権利を制限するものである。この提案では政府が課税や規制目的で国家による管理を維持するために投資家とジョイント・ベンチャーを組むことを容認するものである。しかしこの提案では、政府が採掘に対する許認可を与える際に外国投資家と国内投資家を差別することは認めていない(内国民待遇)。国内の天然資源は、他の戦略産業と同様に保有国の他国に対する比較優位となっている場合も多いため、これは問題の多い規定である。

現状:この提案にはかぎ括弧が付いており、これは作業部会が検討したが内容および文言について合意は形成されていないことを意味する。

4米国が提出した「追加的条項パッケージ」

米国は、現在のMAI交渉テキストの環境に関する部分に環境保全に関する提案のパッケージを追加することを提案した。これは2つの提案から成り立っており、もし採用されればMAIにおいて環境・健康・安全に関する法律を守ることができるよう、MAIの基本原則の適用を制限することになる。

A条文:このパラグラフは、〔のような状況において〕というかぎ括弧内の文言の解釈として協定に含められることになる。この文言は、米国がMAI交渉の最初の段階から内国民待遇と最恵国待遇の部分に含めるよう提案しているものである。この提案は、内国民待遇と最恵国待遇の定義を狭めることになるだろう。「同様に、政府には特定の状況下において、国内投資家と外国投資家の扱いに違いを設けるための正当な理由があるかもしれない。例えば内国民待遇と最恵国待遇の原則に反していない国内法の遵守のために必要な措置である場合などである。さらに、政府が適用した措置が他の締約国の投資や投資家に差別的な効果があったという事実自体が内国民待遇と最恵国待遇に反する措置であると判断されることはない。」(付属書:環境と労働に関する条文の提案パッケージ、解釈2,3)

分析:「のような状況において」とい文言を加えるという米国のもともとの提案では、内国民待遇・最恵国待遇を徹底させるために投資のタイプ別比較を行っていた。原則的には、外国銀行は国内行と同じ扱いとされるべきだが、国内の製造業と同じ待遇を与えられる必要はない。現在提案されている追加部分には、このような投資家や投資、法律などの分類についての明示しておらず、法律の目的について触れているに過ぎない。この条項は、ある法律が外国投資家に対して差別的な効果がある場合に、それがかならずしも内国民待遇・最恵国待遇の原則に違反するものではないことを明確化することを目的としている。この文言がMAI協定に含まれることになれば、企業活動を規制する政府の権限の一部は維持され、内国民待遇・最恵国待遇の原則−環境・健康・労働などの全ての法律を対象としている−の適用範囲が狭められる。こうした変更によって、外国企業だけが製造している製品を禁止する環境・健康・安全に関する法律は保護される可能性がある。国内法遵守のためのコストが外国企業にとってより高いという場合などもこの条項の適応範囲であるかどうかは明らかではない。しかしもしそうなれば、現在の政策の変更を意味する。州政府の調達の古紙含有率を定めているミネソタ州の法律は、リサイクル紙が少ないカナダに不利であるため、米加二国間の貿易協定に違反しているとしてカナダ政府はこの法律の撤廃を要請してる。

これが「事実上の差別」の禁止というMAI交渉者らの目的を達成する条項であるかどうかははっきりしない。「事実上の差別」とは文字通り、「法制上の差別」と違って、実際に存在する差別のことを指す。「事実上の差別」には作為的なものもあれば、表面的には中立的に見える法律が適用において国内投資家優先であったり、外国投資を妨害するような無作為的なものもある。

米国は、事実上であれ法制上であれ、作為的な差別と無作為的な差別を区別しようとしているように見受けられる。しかしMAIの無差別原則に関する条項では、外国投資家の待遇は国内投資家の待遇よりも「悪くては」ならないというものであり、これは作為的差別と無作為的差別の区別を難しくしている。なぜなら、環境法制の中には、無作為的に外国投資家の待遇が悪くなっている場合があるのである。

内国民待遇および最恵国待遇というMAIの基本的な無差別原則に関する条項は、GATTを手本としていることを覚えておく必要がある。なぜならそうした事実によってGATT裁定の先例は、これらMAIの原則が投資紛争パネルでどのように解釈されるかをある程度予測することを可能とするからである。GATTパネルでは、無作為に差別的な法律を、それが必要以上に貿易制限的であるという理由から内国民待遇条項に違反している可能性があると判断している。WTOの紛争解決パネルは、EUが成長ホルモンを使用した牛肉の輸入を禁止したことについて、これは作為的な差別措置ではないが、この措置が国内酪農家よりも米国の酪農家により深刻な影響を与えるとの理由からGATTルールに違反すると主張した。

現状:内国民待遇・最恵国待遇の範囲を狭めるために米国が提案した「のような状況において」という文言は他の政府の合意が得られないためにまだ条文に含まれていない。米国が「のような状況において」という文言の提案を取り下げ、新たな提案を再提出しないかぎり、この条項について合意が成立しなければ、それに付随している解釈も考慮されないことになる。1998年4月の交渉テキストの付属書2を見る限り、議長はこの文言を協定に含める提案を支持している。しかし議長の提出物は法的拘束力を持たないため、それがどの程度交渉グループの意見を左右するのかは不明である。

B条文:「この協定は締約国が他の契約国の投資家または投資に対して、投資受入締約国の国内法制への遵守を確保するための情報提供、検査受け入れを要求することを妨げるものと解釈されてはならない。(1998年2月交渉テキスト、追加的提案パッケージ)

分析:この文言がMAI交渉テキストの「透明性」に関するセクションに追加されれば、投資受入国は同国内で操業する外国企業の子会社に国内法の遵守を徹底するために海外の親会社から情報を引き出しやすくなる。

現状:この提案がどの程度支持されているのかは不明である。

B各国政府に対する勧告

労働・環境基準を守ることについて、MAIは投資家の責任について法的拘束力を持つ規定を持たない。労働と環境に関する全ての条項は、既存の労働・環境基準を維持・施行する政府の責任に関するものであり、また、政府に環境に配慮した政策の採用を奨励するものである。これらの条項は全て法的拘束力を持たない。現在「投資誘致のために環境・労働基準を引き下げない」とする条項に拘束力を持たせ、MAIが加盟国(締約国)間の調停の対象とするという提案が出されている。

1環境法および環境法の域外適用に関する一般条項

ある政府は、ECの環境に関する例外提案を代替するものとして、さらに弱い文言を提案した。MAIに抵触する環境法制も容認するとしながら、各国が自国企業の海外での操業を規制できないようにすることを提案している。

条文:この協定が、締約国が時刻の領域内における投資活動が環境に配慮した形で行われるようにするために適切と考える措置がMAIに抵触しない限り、その措置の採択・維持または施行を妨げると解釈されてはならない。

同様に締約国は、他の締約国への対外投資に対して、偽装された規制となるような環境保全措置を採択・維持または施行してはならない。

分析:この条項の第一段落は、NAFTA1114.1条を引用し、政府はMAIに違反しない限りにおいて環境規制を自由に施行できると述べている。この文言はMAIに抵触しているかいないかによって環境法を分類するための指針を紛争パネルに提示するものではない。この段落では政府がどの程度踏み込んだ環境政策を追及できるのかを明示していない。つまりこの段落は不明瞭さを増幅させるだけである内容を繰り返しているのだ。

第二段落では、政府が国内資本の移動を制限する方法を制約するという前例のない提案を含んでいる。例えば国内企業が海外の公害規制が緩い地域(Pollution Haven)に簡単に移転するのを防ぎたい場合、議会は投資受入国よりも高い(場合が多い)国内の環境法に従うことを義務付ける法律を施行することができる。しかし、このMAI提案が採用されれば、こうした法律がMAI違反とされる可能性は非常に大きく、MAIは単に国内外の投資家に対する政府の規制能力を制限することによって、MAIが環境保護を促進しないばかりか、阻害する協定になってしまう。NAFTAの交渉中に生まれた合意−投資は環境・労働基準の引き上げによって流出するとの認識−は、このような条項が環境規制を「守る」MAIルールとして採用されれば、実質的に放棄されることになる。

現状:この提案は一ヶ国が提案したもので、他の国がどの程度これを支持しているのかを交渉テキストから判断するのは不可能である。

2(労働・環境)基準の引き下げ禁止

MAI交渉テキストには、1997年5月の交渉テキストより、投資措置のための環境・労働基準の引き下げに関する条項が含まれている。この条項を政府を法的に拘束するものにすべきかどうかについて、および、この条項の適用範囲を環境・労働規制の緩和全般にまで広げるべきか、あるいは投資誘致のための規制の棚上げにのみ限定すべきかについて、交渉グループでは合意に至っていない。

MAI交渉グループの議長は、1998年4月の交渉テキストの中の議長提案で、この条項の適用範囲を「特定の投資」にのみ限定し、全ての労働・環境規制の緩和には適用しないのが望ましいと述べている。(付属書2:環境と労働に関する議長提案)つまり、特定の投資あるいは投資家を誘致するためでない、法律・政策問題としての規制緩和である限り、環境・労働基準を引き下げることができるようにするということである。

現状:何らかの形で「基準引き下げ禁止」条項がMAIに含まれるようになるのはほぼ間違いないが、交渉グループはこれに法的拘束力を持たせるかどうか決定していない。3ヶ国の政府がこの条項に労働基準を含めることに反対している。

3米国が提出した「追加的条項パッケージ」

以下は、米政府の環境に関する提案「パッケージ」で前述しなかった部分である。

a条文:この協定が、締約国が自国の領域内における投資活動が環境に配慮した形で行われるようにするために適切と考える措置がMAIに抵触しない限り、その措置の採択・維持または施行を妨げると解釈されてはならない。

分析:この条文は、一般条項として他の政府が提案したNAFTA1114.1条と同じものである。米政府はこの条文を「基準引き下げ禁止」条項に挿入することを提案している。この条文の問題点に付いては前述した通りである。つまりこれは内容的に重複しており無意味な条文である。

b条文:締約国は、適切な国際機関や産業界との協力を通じ、投資家が有害化学物質や有害廃棄物の製造・廃棄に関する環境保全基準を達成するための政策を実施する場合あるいはそのような公約を表明する場合には、必要に応じて投資家を奨励する措置を講じるべきである。(付属書)

分析:この文言はアジェンダ21から引用されている。この条項は法的拘束力を持たず、「しなければならない(shall)」ではなく「すべきである(should)」という言葉が使われている。この勧告は、有害廃棄物の製造・廃棄が環境に与える影響に対処することを政府に求めている。しかし、これを実施に移すための枠組みは、国際機関やNGOおよび産業界が廃棄物の製造・廃棄に関する基準を開発するための自発的な活動を開始するための枠組みさえ設定されておらず、こうした基準の達成に向けた具体的な目標も定められていない。さらに、この条文は、有害廃棄物の越境移動や廃棄を制限しておらず、また有害廃棄物の越境移動を規制しているバーゼル条約とMAI協定との関係について触れていない。この条文は政府に対しても投資家に対しても全く拘束力を持たないのである。

c 条文:各締約国が、独自の国内環境保全や環境関連開発政策およびその優先事項を設定し、それに応じて国内の環境法制を採択する権限を有していることを認識し、各締約国は国内の法制によって高い水準の環境保全を実現し、これらの法制を引き続き改善していくべきである。さらに、各締約国は、適切な政府措置を通じてこれらの環境法制を効果的に実施すべきである。

分析:法的拘束力を持たないこの文言は、NAFTAの環境に関する補完協定から引用したものである。ここでもShallではなくShouldが使われていることに留意してほしい。この条項では、MAI加盟国間で環境法制について監視する必要性には触れておらず、また、環境基準を相互に引き上げていくための目標を設定するための機構的枠組みを設定していない。この条項はまた、環境法の域外適用を阻害する効果を持つことになるかもしれない。環境法の適用に関する各国の主権を確認することで、国内投資家の海外での活動に対して各国が環境基準を設定することを妨害するために援用されることになる可能性がある。

d条文:「全ての締約国は、自国領域内で行われる予定の投資が、健康または環境に深刻な影響を与える可能性が高い場合には、正当な政府機関の決定に基づき、最恵国待遇および内国民待遇に関する条項に抵触しない形で適切な影響評価を要求または実施すべきである。」

分析:これはリオ宣言から引用された法的拘束力を持たない条項である。この条項は海外直接投資に対して特別な審査を要求するものではないが、全ての投資に適用されねばならない。この文言は他のMAI条項によって投資案件に対する審査の実施が制約されているという問題にきちんと対処していない。「正当な政府機関の決定に基づき」という文言によって、各国は適切な審査機関が存在する場合にのみ、環境影響評価を実施できるということになりかねない。


第三部 MAIの政治的背景に関する簡単な説明

OECDおよび米通商代表部(USTR)の公式な立場は、各国政府が各国内でMAIに対する理解を得られない限り、交渉は再開されないというものである。MAI交渉の今後について、OECDで継続すべきかWTOに交渉を移すべきかについてOECD各国の閣僚が再会し、決定を行う時期として1998年10月が選ばれた。

OECDとUSTRは、交渉を1998年10月まで凍結する意向を明らかにしたにもかかわらず、二国間レベルではその後も交渉を行っていた。過去数ヶ月の間に米国、EUおよびカナダのMAI交渉担当者の間で会合が2回行われている。

最初の会合はオタワでUSTRとEUおよびカナダのMAI交渉者の間で行われた。USTRはNGOに対する説明会において、この会合ではMAIとは関係のない問題について話し合うために開かれたと主張しつつ、しかしMAI における国別例外の問題について話し合う時間も設けられたと述べた。この会合では米国が自国の補助金と政府調達を例外とするよう求めていること、およびEUが地域経済統合機構(REIO)を最恵国待遇と内国民待遇の原則の例外とするよう求めていることなどが議論された。EUはそれ自体がREIOであるため、EU各国の間だけで適用される法律が、EU以外の国からMAI違反として訴えられないようにしたいと主張している。USTRはこの会合について単に「混乱を解消する」ための話し合いだったと説明した。

最近の会合は7月13日にロンドンで行われたもので、ここではOECD非加盟国がMAIに加盟する場合の問題について話し合われた。USTRはごまかそうとしたが、この会合で交渉者らはOECD非加盟国のMAIへの加盟条件について話し合えるようなるほど、MAI交渉は進展していると感じていることは明らかだ。





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