年表:MAIをめぐる世界の動き

■GATTウルグアイ・ラウンド終結(1993年12月)
モノに関連した外国投資に対する国内措置(投資障壁)を削減する貿易関連投資措置(TRIM)協定、およびサービスに関連した投資障壁の削減を含むサービス貿易協定(GAT)などを含むマラケシュ合意(WTO協定)が成立。同時に、GATT(関税・貿易一般協定)に新たに合意された協定を加えたWTO協定を実施する国際機関として世界貿易機関を設立することが決定された。


■北米自由貿易協定(NAFTA)が発効(1994年1月)
アメリカ・カナダ・メキシコの北米三カ国が1992年に締結したこの地域貿易協定の投資に関する条項は、域内の投資家が投資受入国を直接訴えることを可能とする「投資家vs.国家紛争解決」を採用しており、三カ国の政府や自治体の法制・政策が外国投資家の利益を損ねた場合には、これを「収用」と見なし、外国投資家が損害賠償を請求できる道を切り開いた。この条項が、後のMAI協定案のモデルとなった。


■WTO協定の発効(1995年1月)
120カ国以上が参加するWTOは、GATT事務局を引き継ぎ、最強の国際機関となった。WTOが管轄する領域は、モノの貿易に加え、今まで実質対象外とされてきた農業や、新たに加わったサービスや投資の分野、知的所有権など広範に及び、また貿易協定と環境や開発との関係について検討する委員会も開始された。

■WTOにおいて、貿易と投資の関係について「調査プロセス」がスタート(1995年3月)
EUは、WTOジュネーブ本部にて途上国数カ国に対しブリーフィングを行い、「世界規模の直接投資のための公正な協議場」という報告書を配布、投資協定の交渉開始に向けた非公式な準備プロセスが事実上スタートした。この報告書の中で、EUは後にOECDで交渉されたMAIの基本原則となった数々の提案を行っている。

■経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会がMAIの交渉開始を決定(1995年5月)
ウルグアイ・ラウンドで十分にカバーしきれなかった国際投資の自由化を達成するため、まず先進国同士で「水準の高い」投資自由化を達成しようと、先進29カ国の加盟するOECDでMAI交渉を開始することが決定。依然、WTOでの投資協定締結を目措していたEUとは対称的に、OECDでのMAI交渉はもっぱらアメリカの望んだ戦略だった。

■MAI交渉がスタート(1995年9月)
1997年5月のOECD閣僚理事会での調印を目指し、MAIの実務レベル交渉が開始された。MAI交渉グループに参加したのは先進29カ国とEU。事務局はOECDの財政金融企業局(DAFFE)。以後3年間の間、2〜3カ月に一度の会合が開催され、MAIに加盟を希望する途上国(最終的には8カ国)もオブザーバとして会合に参加。


■WTO政府調達協定が発効(1996年1月)

■第一回WTO閣僚会議がシンガポールで開催される(1996年12月)
WTOで新たな分野の交渉を開始したい欧米などの先進国と、既存の協定の実施も困難な中、新たな分野における自由化交渉の開始を阻止したい途上国の間の意見が対立。先進国の要求の中には、外国企業に政府調達をさらに開放すること、および外交投資家に国内市場を開放すること、各国内に適切な競争法(独占禁止法など)を整備すること、および労働や環境を理由とする自由化からの例外を設けることなどが含まれていたが、いずれの分野についても交渉開始は合意できず、これらのイシューについては、作業部会を設け、情報共有や教育プロセスがスタートすることになった。
この会議は、WTO関連の会議としては初めて、NGOのオブザーバ参加を認めた。ここで多くのNGOがOECDで交渉されているMAIを問題視するようになった。


■MAI交渉テキスト(協定案)を米加のNGOが入手、インターネットで公開(1997年1月)
それまで非公開とされてきたMAI交渉テキストがNGOのウエッブサイトで公開されたことによりMAIの問題点が明らかになり、世界各国でMAI反対キャンペ一ンが盛り上がる大きなきっかけとなった。

■NAFTAルールに基づき、アメリカの廃棄物処理会社がメキシコの州政府を提訴(1997年1月)
アメリカの廃棄物処理会社、メタルクラッド社が1997年l月にメキシコ・サンルイスポトス州政府をNAFTA違反で提訴していたことが明らかになった。メタルクラッド社が同州内の廃棄物処埋施設を買収し、事業を開始しようとした際に、州知事が生態系保護地域内であるとの埋由でそれを認めなかったため、損害を被ったとして同社は9000万ドルの賠償を請求した。

■WTO基本テレコム協定の交渉が柊了(1997年2月)

■OECD閣僚理事会がMAlの交渉期限の延長を決定(1997年5月)
期限を迎えたMAIの交渉は、各国の利害対立によってこう着していた。アメリカは、EUの主張する文化的例外を一般的例外項目とすること、およびEU内の自由化を域外に適用しないこと(地域統合機構:REIOの例外扱い)に納得せず、EUはアメリカの提出した国別例外項目があまりに多岐に渡っていること(自治体・州などの条例・政策を全て除外するなど)や、ヘルムズ・バートン法やダマート法(キューバ・リビア・イランなど、以前に米資本の資産を収用した国々と取引を行う外国企業を米市場から排除する米国内法)をアメリカが他国に一方的に押しつけていることに大きな不満を抱いていた。閣僚理事会は、こうした事態を受け、MAI交渉期限を1998年4月の閣僚理事会まで延長することを決定した。

■タイ・バーツの暴落を期にアジア金融危機が発生(1997年7月〜)
7月2日にタイバーツの大暴落を受けて金融当局が固定相場制を放棄し、以後インドネシアやマレ一シア、フィリピン、韓国などに通貨危機が飛び火し、為替投機の問題が大きくクローズアップされるようになった。MAIはポートフォリオや為替取引など、あらゆる国際的な資金移動に適用されるため、投機抑制が叫ばれるようになり、MAIの投資の定義が広すぎることに批判が集中することとなった。

■OECDパリ本部でMAI交渉グループとNGOの協議が開催される(1997年10月)
MAI交渉グループは、世界各国でMAIに反対する市民や自治体の動きを受け、既にNGOによってリ一クされていたMAI交渉テキストを一般に公開し、NGOと協議の場を設けることで合意。10月27日に開催された協議には23カ国65名(70カ国を代表)が参加し、OECD事務局および各国のMAI交渉担当者らと協議を行った。この協議の前後に行われたNGO戦略会議の場で「MAI反対世界キャンペーン」が正式に立ち上がった。日本のNGOは、この協議の直前に初めて外務省のMAI担当者と会合を持った。

■WTO金融サービス協定の交渉が終了(1997年12月)

■米政権、ファスト・トラックを否決される(1997年12月)
アメリカ議会は、貿易交渉の結果について議会が内容を修正することなく承認(あるいは否決)するため必要とされる「一括承認手続き(ファスト・トラック)」法案を史上初めて否決した。


■OECDがMAIについてビジネス産業諮問委員会(BIAC)・労働組合諮問委員会(TUAC)と共に再度NGOとも協議を行う(1998年1月)
OECDの正式な諮問機関であるBIACおよびTUACがMAI交渉グループとMAIについて協議を行う際、NGOとも再度協議を行いたいとの提案がOECD事務局から出され、若干名が参加した。


■フランス経済相がMAI交渉からの撤退発言(1998年2月)
ストロース=カーン経済相は、MAIがいくつかの条件を満たさない限り、フランスは交渉から撤退すると仏議会で発言した。

■「MAIにNO!日本キャンペーン」がスタート(1998年2月)
市民フォーラム2001、アジア太平洋資料センター、APECモニターNGOネットワークの三団体が事務局となり、日本政府にMAI交渉からの撤退と、市民参加の下で多国籍企業の行動を規制する国際ルール作りを行うことを求める署名集め、およびOECD事務局長と日本の首相にMAI交捗の停止を求め、各自治体の首長にMAIの問題を知らせるハガキ・キャンペーンを行った。

■各国の自治体が次々にMAI反対決議を採択(1998年2月〜)
既にMAI反対を決議していたカナダ・ブリティッシュコロンビア州に続き、カナダの数多くの自治体(トロント市、モントリオール市、ハミルトン市など含む)、およびアメリカのサンフランシスコ市やバークレー市、イギリスの複数の自治体がMAI反対を掲げた決議を採択した。日本では東京都江戸川区議会が日本政府に対し、MAIの危険性を伝え、慎重な対応を求める決議を3月19日に採択。

■欧州議会がMAIの内容変更を求める決議文を採択(1998年3月)
この決議文の要請内容の一部を抜粋すると:他の国際条約との整合性の確保、途上国に加盟の圧力をかけないこと、UNCTAD(国連貿易開発会議)の知見の参照、動植物や人の遺伝子などを含む特許に関連する投資の定義の明碓化、知的所有権を除外、「地域経済統合機関(REIO)」のMAIでの容認(EU内適用の最恵国待遇の域外適用を強制されないようにすること)、EU内の今後の法制整合化を妨げないこと、「投資家対国家」紛争解決メカニズムの必要性の再検討、文化や言語の多様性を守る各国主権の容認、多国籍企業の税制問題の除外、などである。

■デンマーク議会がMAI決議を採択(1998年3月)
その内容は、外国投資を保護するための国際ルールの必要性を認めつつも、MAIは持続可能な開発の原則を守り、国内の通常の環境規制を妨げず、また基本的労働権(ILO条約)に配慮したものでなければならないとしている。また、MAIについて広く国民に開かれた議論を開始すべきであるとして、その議論に国内外のNGOを含めるよう外務省に求めた。

■「MAIにNO!日本キャンペーン」、国内9都市を巡るキャラバンを実施、日本政府に申し入れ(1998年4月)

■OECDが「オープンマーケット:貿易・投資の自由化の恩恵」というレポートを発表(1998年4月)

■OECD閣僚理事会がMAI交渉を6カ月間凍結すると決定(1998年4月)
4月28〜29日に開催されたOECD閣僚会議は、MAIについて別途声明を採択し、MAI交渉を10月まで凍結し、その間に各国はMAIの影響評価を行い、また関心を持つ市民と協議を行うよう勧告した。

■WTO閣僚会議(1998年5月)
OECDでのMAI締結が危ぶまれるようになり、投資協定の交渉がWTOの場に移ることを懸念する市民・NGOの多くがWTO閣僚会議の開かれたジュネーブに集まった。EU内の青年と途上国の農民が組織したデモは7000人規模に膨れ上がり、ジュネーブ市内は騒然となった。結局市民からのバックラッシュを恐れたWTOおよび各国政府はWTOにおける投資協定交渉の開始についてはほとんど言及せずにこの会議は終了した。

■UNCTAD(国連貿易開発会議)が「投資に関する多国間の枠組み(MFI)」について会合を開催(1998年6月)
6月10日、UNCTADは各国の駐ジュネーブ大使とNGOを招いて「投資に関する多国間の枠組み(MFI)」について対話セッションを主催し、翌11〜12日にはNGOと労働組合を招き、UNCTAD職員との間で意見交換を行った。この一連の会議において、多くの途上国大使とNGOはOECD/MAIを強く非難し、WTOにおいて投資協定の交渉を開始することにも反対した。

■OECD各国で、MAIに関する市民との協議プロセスがスタート(1998年6月〜)
アメリカ:市民・NGOの強い要請を受け、7月15日にワシントンD.C.で市民との協議が行われた。米政府はこの協議の場で、「我々はWTOやFTAA(米州自由貿易圏)など、あらゆるフォーラムで投資の規制緩和を推進していく」と述べ、しかし「NGOが求める高い労働・環境基準を実現する投資協定を作るにはOECDが最適の場であり、NGOはOECD/MAIを受け入れるべきだ」と要請した。
EU:9月22日、欧州各国は市民・NGOとの協議を行った。政府側は、MAIの内容についてNGO側の主張を一部受け入れた。


■NAFTA三カ国の鉄鋼労粗がNAFTAを憲法違反として提訴(1998年7月)
全米鉄鋼労組(USW)が、米議会でのNAFTAへの承認手続きが憲法違反だったとして、北アラバマ連邦地裁に対し、同協定の無効確認を求める訴訟を起こした。USWの主張は、NAFTAは条約であり、憲法上では承認に上院の三分の二以上の賛成が必要とされているにもかかわらず、実際には上院が61対38、下院が234対200の僅差で可決されているために無効であるというもの。

■NAFTAで係争中のエチル社の訴えに対し、カナダ政府がMMT越境輸送禁止を撤回、1000万ドルの賠償支払いで和解に!(1998年7月)
MAIの「投資家対国家」紛争解決メカニズムのモデルとされたNAFTAの投資紛争解決システムにおいて米エチル社に提訴されていたカナダ政府は、提訴の根拠となっていたMMTの輸入・越境販売禁止を解除し、エチル社に推定1000万ドル(約14億円)の賠償(提訴費用と損失補償)を支払うことを決定した。MMTとは、オクタン価を上げるためのガソリン添加物(マンガン化合物)であり、神経系統に影響を与えるとして97年4月にカナダ政府が輸入・越境販売を禁止していた。同社は今回の決定を受け、この提訴を取り下げた。カナダ政府は「MMTは環境・健康のいずれにも害はない」という声明を発表し、エチル社はこの声明を同社の広報で使用する権利を得た。ケベック大学の調査では血中マンガン濃度と神経系統の障害には相関関係があることが明らかにされている。


■参議院選挙前に各政党に対し「投資自由化に関するアンケート」を実施(1998年7月)
アンケート送付先は、自由民主党、公明党、民主党、社会民主党、新社会党、新党さきがけ、自由党、共産党の計8政党。そのうち、公明党だけが無回答。以下は一部抜粋。
・外国投資家が受入国政府を直接訴えられる「投資家vs.国家」紛争解決メカニズムについては、共産党と新社会党が反対。さきがけは「公平性を保つ最低限のルールを設けるべき」としており、民主党は「国内企業も外国企業も公平に扱うことが重要」とし、自民党は「外国企業を一方的に有利にするようなものを目指しているとは承知していない」と回答。
・経済のグローバリゼーションについてどう考えるかとの設問には、民主党が「率先して日本が進めるべき」と回答し、また自民党と自由党はこれを不可避な流れとして国内対応の必要性を訴えている。

■「MAIにNO!日本キャンペーン」が外務省に質問書を提出(1998年7月)
「MAIにNO!日本キャンペーン」は外務省に対し、6月初旬に市民との協議を申し入れ、担当者の多忙を理由に1カ月以上も先まで対応できないとの返答を得たため、OECD閣僚声明に明記された「MAIに関する市民との協議」および「MAIの影響評価」をどのような形でいつ実施するのかについて外務省の担当セクションに質問書を提出した。

■外務省が「MAI説明会」を開催(1998年9月)
政府側の参加者は、外務省を始め、通産・大蔵・建設・法務・農水・自治・環境など。ポートフォリオも含めた全ての国際投資を一律に自由化することのメリットとデメリットに関する議論は、FDIおよび経済成長が社会開発・環境保全を促進、あるいはこれらと両立するのかどうかという根本的な前提の違いから平行線を辿った。

■アメリカ議会がファスト・トラックを再度否決(1998年9月)
米政権の懸案となっていた貿易関連の国際交渉を行政府が一括して交渉する権限(ファスト・トラック)が再度、米下院で反対243票、賛成180票で否決された。2000年に期限切れとなるWTO農業協定の再交渉の開始までに同法案を可決したいと考える議員の支持を取り付けようと、アーチャー共和党下院議員はMAIの交渉権限を除外したファスト・トラック修正案を提出した。

■ドイツがMAI協定案の内容をダウンサイズするよう提案(1998年9月)
ドイツ政府はEU理事会にノンペーパーを提出し、MAI協定の早期締結を目指し、協定案の内容を削減することを提案した。具体的な削減個所の提案:@「投資の範囲」を直接投資とポートフォリオ(証券・為替)投資に限定する。A「投資家対国家」紛争解決については、既存の二国間投資協定と同様に、その対象範囲を「設立後」の投資に限定する。Bサービス関連投資については、WTO/GATSの遵守義務との整合性という観点からMAIの国別例外リストを大幅に削減する。C「運輸」については、MAIが既存の二国間協定あるいは地域協定で規定されている自由化義務に抵触するものではないと明記する。D禁止されるパフォーマンス要求のリストを短くするか、あるいは完全に削除してWTO/TRIM協定を参照することにする。E「独占」に関する条項から「反競争行為」などの項目を削除する。F「例外」については「(一定割合の)居住者(の雇用などの)要求」は内国民待遇原則に反していないので、例外項目から外す。

■国際商業会議所(ICC)主催の会合で産業界は投資協定をWTOに移すことで一致(1998年9月)
世界の多国籍企業のトップ450名と、WTO、UNCTAD、OECDなどの国際機関の事務局長らが集った「ジュネーブ・ビジネス・ダイアローグ」の記者会見で、産業界は「最後になって社会条項が付け足されてしまったMAIは、もう支持しない」と語った。

■EUおよび欧州諸国とNGOとの協議が開催される(1998年9月)
NGO、産業界、および文化団体を対象とした「MAIに関する協議」がECおよび欧州各国政府の参加の下に開催された。これとは別に、ECと欧州各国は労働組含との協議を開催している。この中でEUは「収用」の条項について、予防原則を取り入れることを約束したが、包括的影響評価については予算がないこと、および協定が最終化されないと実施できないことを理由に実施できないとした。オランダ政府は、既存の多国籍企業ガイドライン(MNEs)に欠点があることを認め、フランスとベルギーはMNEを強化すべきだとし、特にベルギーはMNEに法的拘束力を持たせるべきだと主張した。フランスは交渉に最初から途上国を参加させなかったのは間違いであったと述べた。

■カナダ・ブリティッシュコロンビア州議会でMAlに関する公聴会が開かれる(1998年9月)
昨年既にMAI反対決議を採択している加ブリティッシュコロンビア(BC)州では、9月29日にMAIに関する州議会の公聴会が「MAIに関する特別委員会」の主催で開始された。

■フランス政府がラルミエール・レポートを発表(1998年9月)
「多国間投資協定に関する報告書(ラルミエール・レポート)」は、フランス政府の諮問を受けたカテリーヌ・ラルミエール欧州議会議員とジャン・ピエール・ランドー大蔵総監(Inspector General of Finance)が作成、フランス政府がMAI交渉から撤退する根拠となった。このレポートでは、OECDにおけるMAIの締結には反対しつつ、各国NGOのMAI反対の根拠に基づき、WTOにおいて交渉し直す場合にどのような協定を目指すべきかの指針を示している。

■マレーシア、ベトナムなどが外為・外資規制を新たに導入(1998年9〜10月)
マレーシアは9月初頭、株式の一年間売却禁止措置(非居住者の株式売却代金の海外送金を一年間禁じる)、対ドル固定相場制の導入など、次々と自由化路線という世界的潮流に逆行する措置を発表した。自由化の旗手の一人であるクルーグマンMIT教授なども同国の措置を支待する発言を行っており、投機家ジョージ・ソロスもまた、「完全な資本移動の自由を認めるのは賢明ではない」(日経10/6夕刊)と述べるなど、市場規制に対する受けとめ方が大分変わってきた。
一方、ベトナム政府は外国人による国内企業の株式取得の上限を30%とする法律を来年から実施する。これに並行してベトナム国家証券委員会(SSC)は、近々に創設される証券市場において、外国人の株式取得制限比率を30%とする方針を決めた。


■MAI交渉が10月20〜21日にOECD本部で再開(1998年10月)
4月のOECD閣僚埋事会の決定を受け、6カ月間凍結されていた、MAI交渉が10月に再開された。しかしフランス政府が交渉からの撤退を宣言したため、これは正式な交渉ではなく、非公式な会合となった。

■OECD多国籍企業ガイドライン、今年から2年間のレビュー作業が始まる(1998年11月)
OECD投資・多国籍企業委員会(CIME)の管轄するOECD多国籍企業ガイドライン(MNEs)の2年間のレビュープロセスが、ブタペストで開始された。MAIに法的拘束力を持たないまま付属文書とされたこのガイドラインのレビューには産業界や労働組合も多大な関心を示しており、MAIに対するNGOの世界的な反対を受けてレビューにはNGOも招待された。

■日本政府がロシアと投資保護協定を締結(1998年11月)
最近の二国間投資協定(BIT)には「パフォーマンス要求の禁止」などのMAIに類似した規定が盛り込まれるようになってきた。11月に政府がロシアと締結したBIT、および現在韓国と交渉中のBITがまさにそのような規定を含んでおり、これは明らかにMAI交渉およびそれと類似するアメリカのBITの流れに追随する動きである。

■「MAIにNO!日本キャンペーン」がMAIからの撤退と、多国籍企業行動規制のための国際ルール策定を求める約17,000名分の署名を提出(1998年11月)
「MAIにNO!日本キャンペーン」は、日本政府に対して、MAI交渉からの撒退と、多国籍企業行動規制のための国際ルールの策定を求める要請署名を、外務省経済局国際機関第二課長に手渡し、申し入れを行った。


■WTO投資と貿易作業部会が開催される(1998年11月)
1996年のWTO閣僚会議で設立が決定された「WTO投資と貿易に関する作業部会」は、タイ政府の務める議長の下、30〜40カ国が参加し、1997年初頭より2年間に含計6回の会合を重ねてきた。11月25〜26日に開かれた6回目の作業部会では、この作業部会が新たな投資協定の交渉やその準備を行う場ではないという公式の了解をよそに、EU(欧州連合)が当初からの目的である投資協定の交渉開始を途上国に迫る場面もあり、インドを中心に途上国側の強い反発を招いた。

■OECDにおける多国間投資協定(MAI)の交渉が正式に断念される(1998年12月)
12月3日にOECDパリ本部で開かれたMAI交渉グループ会合は、交渉の継続を正式に断念すると決定した。前回(10月)の会合以来、MAI交渉からの撤退を表明し交渉のテーブルについていないフランスを交渉に引き戻すことができなかったことを受けた決定である。ただしフランス政府を含め、OECD加盟29カ国は、国際投資ルールを策定する必要性と、これに資するような投資に関する何らかの作業をOECDで継続する必要性について合意しており、今後、国際投資ルールをどこで作っていくのかという点と、OECDにおける作業はどのような内容にすべきかという点についてフォローアップするための会合が開かれる。

■漏洩されたEC書類には、WTOにおいてOECD/MAIとほぼ同じ内容の投資協定を交渉する意向が示されていた(1998年12月)
EU理事会の専門家委員会に提出された討議資料(ECが作成)の内容が、欧州のNGOを通じて明らかになった。これは、WTO次期交渉においてEUはどのような投資協定の締結を目指すべきかの大枠を示すものだったが、その内容は、ECがいまだにOECD/MAIとほぼ同じ内容の投資協定を作ろうとしていることを明確にしたものである。この資料の日付は、MAI交渉中止が決まった後の12月15日となっている。


■日本とEUがWTO次期ラウンドに投資協定の交渉を含めることで一致(1999年1月)
OECDにおけるMAI交渉が打ち切りになったことを受け、2000年から予定されているWTOの次期交渉テーマに投資を含めるとの日本とEUの合意が成立、既に再交渉されることが決まっている農業、サービス、知的所有権などの分野とともに、ラウンド形式で交渉を行い、3年間以内のラウンド終結を目指すことで一致した。農業、サービスなどの分野は前回のウルグアイラウンド交渉において自由化スケジュールの終了する2000年に再交渉が開始されることが既に定められているが、投資分野については今年11月にアメリカで予定されているWTO閣僚会議の場で、新たに交渉の対象とされるかどうかが決定されることになる。

■OECDがオランダ・ハーグで国際会議「海外直接投資(FDI)と環境」を開催(1999年1月)
OECD非加盟国やNGOも含めたこの国際会議では、FDIの拡大と環境保全の両方を達成する国際ルールのあり方について、FDIの環境影響評価、投資基準、自主規制、ガイドライン、環境報告・監査、情報公開などの点から検討を行った。


■外務省が日本の民間団体に対し、WTO次期交渉についての説明と意見聴取を行う(1999年3月)




作成:佐久間智子(市民フォーラム2001)


◆お問い合わせ◆

MAIにNO! 日本キャンペーン事務局

市民フォーラム2001事務局内   〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル3階 TEL.03-3834-2436 FAX.03-3834-2406  E-mail; pf2001jp@jca.apc.org