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再度、交渉打ち切りを求める手紙(和訳。送らないで下さい)

OECD事務局長宛のハガキに対するMAI担当局長からの返事に対し、こちらから再度以下の文章で応じることにしました。ハガキ・キャンペーンに協力していただいた方も、そうでない方も、以下の文章の英文(添付)をファックスまたは郵送で送って頂ければ幸いです。



OECD事務局長 ドナルド J. ジョンストン殿
OECD金融財政企業局長 ウィリアム・ウィザレル殿

 MAIに関するハガキに対してお返事をいただき、ありがとうございます。市民との意見交換を行おうとされる姿勢に敬意を表します。

 しかし、頂いたお返事の内容については、私の理解とずれがあります。例えば、海外直接投資(FDI)については、金融財政企業局(DAFFE)が出された論文レビューの中でも、必ずしもあらゆるFDIが無条件に「持続可能な開発」に貢献するものではないことが示されています。資本移動が自由化されることで、環境汚染に対する汚染者負担や天然資源収奪に対する現状復帰の責任を果たさずに国外に拠点を移転する企業がさらに増えることも予想できます。このような企業は当然ながら、長期的な視野に基づいてその国の経済発展を考慮する必要がないため、長期的にはその国の経済発展を阻害するような持続不可能な事業展開を行う可能性が高いのです。

 雇用創出や生活水準の向上に関しても、進出先の弱い労働規制や安い賃金を利用するために投資を行った企業が、労働組合が組織されると同時に国外に転出してしまうケースもすでに存在しており、また進出先の市場開拓をもっぱらの目的として進出する企業は、中間財を輸入する一方で国内消費によって上がった収益を母国に環流してしまうため、進出先の国家の国際収支を悪化させることになります。

 伝統的な地場産業や地元資本の中小企業は、スケールメリットを持つ多国籍企業に対抗できず、吸収・合併あるいは廃業に追い込まれることになりますが、伝統産業は文化的な多様性という価値を体現しているだけでなく、地域資源の持続可能な利用形態を長年をかけて確立してきた産業である場合も多いのです。また、資本・技術集約的な多国籍企業は、その投資額に比しても雇用創出効果が低く、また労働集約的な中小企業の倒産に伴って発生する大量の失業者の技能が活かせない場合が多いため、失業問題を深刻化させる傾向があります。

 各国・自治体には、その国や自治体にとって望ましい経済発展のあり方を決定し、その方向に誘導するための法制を実施する権利があります。こうした目的のための措置がMAIによって差別的であるとして撤廃されることになれば、これは事実上の「規制緩和」です。

 さらに、現行のGDPで計られる経済成長が、実際にはアメリカのような先進国においても人々の生活水準の向上と福利には貢献してこなかったという事実は、統計上にも表れています。GDPはいわば国内での消費活動の合計額であり、国民の富を表しているわけではありません。実際の利潤を手にするのはほんの一握りの企業であり、また外国企業の利益は国外に流出してしまいます。ですから経済発展そのものを、どのような発展を誰のために果たすのかという視点から問い直さねばならないのです。

 OECDあるいはDAFFEを代表される立場におられる方が、このような事例や実証的研究について検討をせず、FDIが全ての国において雇用創出と生活水準の向上に役立つと決めつけてしまう態度そのものに大きな危惧を抱かずにはおれません。

 また、紛争解決メカニズムに関しては、既存の「投資家対国家」紛争解決が二国間協定(BITs)に基づくシステムであるのに対し、MAIは多国間条約であり、またこの制度がMAIの諸条項に基づいて運用されていくこと自体を私は問題にしています。従って、単純に今までの事例を参照することはできません。しかし一方でカナダ政府を訴えているエチル社が「収用」の概念を大きく広げて多額の「賠償請求」を行っていることが多くの市民に脅威を与えていることも事実です。

 OECD多国籍企業ガイドラインを付属文書とすることや、環境と労働について前文に含めることについても、これらが条約の本文に含められねば実質的な効果はないと考えます。また、各国が国内の環境・労働基準を緩和しないのは最低限の義務であり、問題は基準引き上げや新たな環境・社会法制の制定に際し、予防原則に基づいて判断されるのではなく、科学的根拠を示すという今のGATTの考え方をMAIが採用することになれば、現状では不十分である環境保全や労働者保護などを今後達成していくための各国の権限が実質的に奪われることになるのです。

 MAIに賛同できない理由を挙げれば切りがありませんが、MAIがこのように多国籍企業だけに奉仕するような内容である限り、また、途上国政府の交渉への参加と各国における民主的手続きを行ってきていない事実と、OECDレベルでの形式的な参加のプロセスで出されたNGO意見がMAIの内容に全く反映されていない事実を鑑み、私は現行のMAIは交渉を打ち切るよう、再度、要請いたします。