99年1月11日

電気事業審議会基本政策部会報告(案)及び電気事業審議会料金制度部会中間報告(案)に対する意見

意見提出者
氏名:畑 直之 HATA, Naoyuki
肩書き:市民フォーラム2001地球温暖化研究会、
    市民フォーラム2001活動委員
住所(市民フォーラム2001事務所):
    〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル3F
         TEL・03-3834-2436、FAX・03-3834-2406
         E-mail・pf2001jp@jca.apc.org



今回の報告案はコスト低下だけが主眼とされ環境面からの配慮に欠けている。私は環境益を代弁し地球温暖化問題に取り組む環境NGOの立場から、今回の重要な電力改革が、環境面からも豊かなものとなるよう、以下の通り意見を提出する。
 なお基本政策部会報告(案)と料金制度部会中間報告(案)はもちろん別のものだが、密接に関連した一連の動きであり、意見も分かち難い部分があるので、両方に同じ意見を提出させて頂く。

1.報告に環境保全・地球温暖化防止の視点からの適切な配慮を盛り込むこと

 報告(案)は「はじめに」で「(前略)環境という要請の両立を図る」としているが、本論中で環境について検討した形跡はない。電気事業審議会で今回行われた議論は、あくまで「経済的効果=電力料金の低廉化」という視点のみに基づいており、地球温暖化問題など環境に対する問題意識を全く欠いている。日本では、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量の約3割はエネルギー転換部門からである。温暖化防止のために、化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出量を削減する視点を明記すること。

2.原子力発電の過剰な保護は電力自由化に逆行するのでやめること


 原子力発電は放射能(運転中の事故と廃棄物)という最悪の環境負荷から逃れられないものである。原発は建設コスト・送配電コストに加え、修繕や廃棄物管理などを含む運転コストも急速に上昇しており、コスト削減を目指す自由化とも相容れないはずである。今回の報告(案)では原子力の電源開発を優先するとしているが、環境負荷の面でもコストの面でも問題の多い原発を優先する理由はなく、対等の競争に置かれるべきである。
 なおCOP3を受けた温暖化対策として原発を推進している国は日本だけであるが、これは市民の間で全く合意がなされていない。昨年行われた総理府による地球温暖化問題に関する世論調査では、温暖化問題の解決のためのエネルギー政策として、省エネや再生可能エネルギーの普及促進を第一にあげた市民が73%、より環境に負荷を与えないエネルギー源への切り替え(例:石炭→石油→天然ガス)を支持した市民が13%であるのに対し、原子力の推進を支持した回答はわずか5.6%である。「温暖化対策として原発」は国民の合意は得られていない。


3.環境負荷に応じて電源の優先度が考慮される仕組みを取り入れること

 電力自由化による環境への影響を考えた場合、需要家に対しては風力・太陽光など再生可能エネルギーによるグリーン電力の買い取りメニューなどの設置、地域独占電力会社に対しては再生可能エネルギーの買い取りや一定程度の供給を義務づける制度が必要である。これらの検討の方向を盛り込むべきである。
 一方、独立電気事業者(IPP)が低コストで環境には負荷の高い石炭などを燃料として多用すれば、京都議定書において日本が約束した温室効果ガスの排出削減目標は達成困難となる。IPPの発電についても環境負荷の要素を加味し、環境負荷の低い電気から順に買われるような仕組みを導入すること。将来的には地域独占電力会社を含む全ての電源について、環境負荷の要素を加味し、環境負荷の低い電気から順に買われるような仕組みにする必要がある。


4.省エネを促進する仕組みを取り入れること

 電力料金を下げることによる電力需要の増加効果は、エネルギー消費増になり、環境問題やエネルギーセキュリティーの問題に逆行する。電力自由化の中では、並行して省エネルギーを促進するための、需要家に対するインセンティブが必要である。特に夏のピーク時間帯の料金を現行より相当程度引き上げるなどの「ピークロードに沿った料金設定」などの方策が必要である。また、事業者が温室効果ガスの直接削減につながる省エネルギープログラムなどのデマンドサイド・マネジメント(DSM)の手法を取り入れるようにすべきである。

5.ネットワーク(送配電網)の運用・利用料金の問題


 今後の電力自由化の検討において最大のポイントは、ネットワーク(送配電網)の運用・利用料金の問題すなわち託送制度についてである。地域独占電力会社に有利にならないよう、託送料金はネットワークへの公平で自由なアクセスが保障されるだけの価格である必要がある。将来的には発電と送配電を別会社とする方向に進むべきであり、そのためにも厳密で透明な区分経理とその公開が求められる(次項も参照)。
 またこれらの今後の検討は、環境問題に関する専門家や環境NGOメンバーを含む適切な議論の場において、公開・透明なプロセスで行われるべきである(次々項も参照)。


6.電力会社の各部門の収支区分(経理)は厳密かつ透明性を持って分けること

 自由化部門と規制部門の区分経理は当然であるが、前項との関連で発電部門と送配電部門との厳密な区分も必要不可欠である。託送料金が適切であるかは、これ(発送電の区分)が透明になっていないと判断のしようがないからである。さらに区分経理については、特に原発の問題があるので、発電電源毎のコストがわかるような経理も必要である。
 なお現行の総括原価方式による電力料金の算出は、コスト削減などへのインセンティブが働きにくいと従来から指摘されており、廃止も含めた早急な見直しを行う必要があると考える。

7.環境問題の専門家や環境NGOメンバーを審議会委員に加えること

 電気事業審議会の委員には、環境問題に関する専門家や環境NGOメンバーが含まれておらず、環境の視点からの意見が議論に反映されるシステムになっていない。審議をするのが業界団体の代表ばかりでは、環境の視点が反映されることは期待できない。電気事業審議会及び基本政策部会・料金制度部会の委員に早急に、環境問題に関する専門家や環境NGOメンバーを加えるべきである。適切な人選についての情報が必要であれば、私たちの方でもいつでも協力する。
 そもそも現行の審議会は委員の選任基準がいわゆる「有識者」という以外は示されておらず不透明である。なぜA氏が委員なのか、なぜ現行のような委員構成になっているのか理由や基準が不明である。現在の委員の選任基準を公にするとともに、今後に向けて委員の選任基準自体を公開の場で審議すること。

 今後電力自由化については、発電事業者は「公平で自由な送電線システムへのアクセス」、需要家は「公平な情報に基づいて自ら電気の種類を選択できる利用形態の実現」が最終的に望まれる。そこに適切に環境負荷を反映する仕組みが組み込まれる必要がある。そのためにも環境NGOなど環境の視点からの市民の意見を取り入れることが望まれる。




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