シアトルで起こったWTOの危機に関する世界NGO声明
『いまこそ変革を!』


 WTOは危機の最中にある。(WTOの)貿易交渉プロセスは、根本的な欠陥を抱えており、21世紀に向けたグローバルな政策決定の基盤にはなりえない。このプロセスから生じるいかなる結論も、正当性のない不当なものである。WTO閣僚会議の数日間で、以下の現実が如実に示された。

● 非民主性−−政府間および各国政府とその市民の間の民主的プロセスの欠如。一例を挙げると、欧州委員会は、加盟各国とその市民社会の反対があるにも関わらず、かれらと協議することなく、バイオテクノロジー作業部会設置の支持を発表した。その結果、欧州連合加盟国15ヶ国の貿易大臣が、この発表に反対する共同声明を出した。

● 不公正・不正義−−途上国の実質的な参加を否定し、これらの国の必要とポジションを無視したこと。一例を挙げると、ニューイシュー(新分野)のワーキンググループでは、議長が、途上国が申し立てた異議を無視し、途上国の批判を、ニューイシューの交渉開始への支持であるとする誤った解釈をした。

● 不透明性−−『グリーンルーム』での取引では途上国が排斥され、NGO、市民社会は、相変わらず無視され、情報の蚊帳の外におかれ続けた。例えば、力の強い大国だけの小グループが、現行のWTO下の国別約束の実施不足に関する取引を行った際、アフリカ諸国、小島嶼国 、後発開発途上国は、完全にこの取引から除外されていた。

● 不均衡−−平等性と持続可能性という広い議論と関心を軽視して、ほんの少数の短期的経済利益のみに焦点をあてたこと。例えば、欧州連合を中心とする先進国は、多国間貿易協定を破棄させた市民社会の切実な反対の声に一切耳を傾けなかった。同様に、USTR(米通商代表部)は、森林問題に取り組んでいるNGOに、森林産品自由化による打撃に関するNGOの意見を考慮する用意は一切ないと告げた。

 これらの事例は、システムの欠陥を示す一例である。市民社会のあらゆる利益よりも産業界の狭義の利益追求が支配するシステムを逆転しなくてはならない。シアトルに世界中から集まった市民が示したように、WTOの交渉者は、ジュネーブの密室の会議に戻り、旧態然とした交渉を続けてはならない。そうではなく、私たち全てが、民主的で人道的、かつ持続可能な国際システムを新たに構築するための広範な作業に取りかかるべきである。

<署名> (12月3日発表の際の署名組織。)
アクションエイド、アクションエイド・ブラジル、AIDC・南ア、アフリカ貿易ネットワーク、アジア先住民女性ネットワーク、カナダ国際環境法センター、市民貿易キャンペーン(米)WTOコモンフロント・カナダ、技術に関する消費者プロジェクト(米)、カナダ国民会議、ペナン消費者協会、消費者の団結と信託協会(印)、地球の友インターナショナル、地球の友・日本、地球の友・アメリカ、グリーンピース・ブラジル、農業・貿易政策研究所(米)、国際開発行動連合、グローバリゼーションに関する国際フォーラム、サウスグループ国際ネットワーク、NCOS・ベルギー、テブテバ財団(比)、オックスファーム・フェアトレード・ベルギー、パブリックシチズン・グローバルトレードォッチ、農薬行動ネットワークアジア太平洋、ポラリス研究所(加)、鳥類保護のためのローヤルソサエティ(英)、南アジア貿易ウォッチ、第三世界ネットワーク、世界開発運動、安全な食と環境を考えるネットワーク、百姓勝手連、生活クラブ生協連合、東都生協、北海道農民連、農団労。

<この声明文は、NGO代表者らが12月2日深夜に行った作戦会議で作成した。閣僚会議以降、世界中の署名を集めWTOに提出する予定だったが、翌日の交渉決裂の際に急遽、署名を集めて発表した。現在インターネット等で、賛同署名を募っている。>