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2004年5月10日発行193号ピースネットニュースより

【新刊紹介】
『チェチェン 屈せざる人々』

加藤賀津子

 「市民平和基金」主催のチェチェン救援集会で、私は2度チェチェンの人たちに会った。最初は、数人の人たちが、ロシアの支援NGOの人や日本で最初に支援を始めた日本山妙法寺の寺沢潤世師とともに壇上にならんで窮状を訴えた。そのときの穏やかなチェチェン女性の様子が印象的だった。ロシアの一方的な武力攻撃さえなければ、きっと暖かい家庭を築いているお母さんでいただろうに。2回目は、情勢がずっと厳しくなってからだった。今、彼女らは無事でいるだろうか……
 チェチェン共和国は、カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地方のコーカサス(カフカス)山脈の北側に位置する。岩手県ほどの面積に人口80万から100万人という小さな国。気候は北海道に似ている。氏族中心の共同社会で、伝統を重んじる。チェチェン語を話すが、独自の文字はもたない。敬虔なイスラム教徒で、年長者を敬い、「踊らない人を見たことがない」と著者が記すほど、踊りは生活に密着している。
 林さんがチェチェンと出会ったのは、長い新婚旅行のようなかたちで夫婦でモスクワに住むことを決めた1995年。以来9年が経つ。なぜチェチェンを追い続けるのか。
 「私がここで見たのは、過去四百年もロシアと断続的に戦い続けている抵抗の民の素顔である。どんな犠牲を払っても自由を手に入れようという誇りと精神、そして不当な抑圧に立ち向かう気概に私は圧倒された。同時に、外国人やよそ者――ロシア系住民――までをも助けている人々の姿を見た。お互いに尊重し合うチェチェンの共同社会には、近代以降の物質文明に対抗する精神の文化がある。それは、我々人類が目指すべき社会を示唆しているようにも私は思えるのだ。」
 現在の戦争のきっかけは、91年にチェチェンが連邦からの独立宣言したこと。それを認めないロシアは94年に軍を侵攻。96年8月に停戦したが、99年9月にロシア軍による侵略戦争再開。以来、民族絶滅作戦というほどの武力攻撃、拷問が展開されている。
 諸外国からは何の援助もなく、ジャーナリストも入れない状況が続いている。
 「プーチン大統領は『反テロ』戦争であると主張するが、実際に行っているのは、大帝国主義、自国民族中心主義に基ずく少数民族弾圧に他ならない。それに対する抵抗がこの戦争の根本である。その上に、石油利権やロシアの地勢学上の問題やクレムリン内部の権力闘争、チェチェンが抱える国内問題が存在する」と著者は見る。
 本書は、「戦争の現実と真実を伝える報道写真ドキュメンタリー」として、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJ)のメンバーによるシリーズ(イラク、コソボ、ハイチ、フィリピン、、パレスチナ、アフリカなど。責任編集・広河隆一)である。いずれもフリーランスのフォトジャーナリストたちで、マスコミが取材しない地域、あるいはまったく別の視点から、それぞれの生をかけて取材をし続けてきたものである。A5版、80ページ、うち写真と文章が6対4からなる薄い本だが、中身は実に重く深い。写真1枚1枚からチェチェンの状況が伝わってくる。読みながら、さまざまな思いがめぐった。
 私たちは、イラクで本来やってはいけない戦争を始めてしまった。せっかく人類が積み重ねてきた叡智をたたき壊されてしまった感じがする。これを修復し、平和な国際社会をつくっていくには大変な努力を要するだろう。チェチェンやパレスチナなど、虐げられ、悲惨で残酷な状況下に置かれている人びとがいる。私たちの状況とも関連しているのだから、同時代に生きる人間としての責任やできることなどを考えてみたい。
 『チェチェンで何が起こっているのか』林克明、大富亮(チェチェンニュース編集・発行人)共著(高文研)には、資料ややれることの提案、寺沢氏の寄稿などもあるので併読をお勧めする(前号で林さんが紹介されました)。

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