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2002年8月10日発行173号ピースネットニュースより 遺伝子組み換え・一企業による世界の食料の独占!? 文責:曳地トシ(オーガニック植木屋) パーシー・シュマイザーさんはカナダのサスカチュワン州の農民で、現在72才。彼は50年以上にわたり、自家採取したキャノーラ・ナタネの育成と保存に力を注いできた。その彼が、ある日、モンサント社というアグリビジネス企業(農業に関わる企業。食料を扱う商社、種子会社、農薬・肥料メーカー、農機具メーカーなど)に訴えられてしまう。一体、彼の身に何が起こったのか!? 事件の経緯と裁判所の非情な判定 ところが、予審の判定は違った。モンサント社の種子が風や鳥や動物などの媒介であろうが、どんな経緯で彼の畑に入ってきたかは問題にされないという。いったん畑に入ったものは、その畑の種子や作物は、すべてモンサント社のものになってしまうという判決がおりた。そのため、98年以降のキャノーラ・ナタネで得た収入は、すべてモンサント社に渡さなければならないし、その種子も自家採取して使ってはいけないという。つまり、裁判所によって、種子の自家採取を禁じ、種子は企業から買えと言ったことと同じことになる。それは、モンサント社の特許権の方が、農民の権利よりも上回っていることを意味する。 もちろん、裁判所に上訴したが、ここでもモンサント社の勝利に終わった。今までの裁判で、彼は2,700万円ものお金を裁判につぎ込まざるを得なかった。シュマイザーさんの他にも、モンサント社から訴えられている農家は550件に及び、すべてがシュマイザーさんの判決待ちだという。 「アグリビジネス・マフィア」とも言えるモンサント社のやり口 モンサント社のGMO(遺伝子組み換え植物)に関する農家との契約書によれば、
モンサントポリスには元警察官や元農家が雇われている。そして、勝手に畑に入り、勝手に作物の一部を抜いて袋に入れ、調査のために持っていく。不法侵入や窃盗で訴えると反撃しても、「やれるものならやってみろ。お前の人生はその間にめちゃくちゃさ」と不適な笑みさえ浮かべる。 さらに、空中からヘリコプターでモンサント社の農薬を畑に散布し、全部枯れれば、それはモンサント社のGM種子を使っていないということで許されるが、少しでも青い部分が残れば、特許権侵害で訴えたり、賠償金を払えという手紙が来る。その手紙の最後にも、「この手紙が来たことは他言しないように」と書かれているそうだ。ヤクザまがいのこのやりくち、「アグリビジネス・マフィア」と呼びたいくらいだ。 シュマイザーさんは、モンサント社の関係者からこう言われたという。「誰もモンサントに刃向かうことなんてさせやしない。そんなことをすれば、必ずあんたを破滅させてやる」。 農村の地域コミュニティーを破壊したモンサント社 シュマイザーさんは、祖父の代にヨーロッパからこの地にやってきて、地域の人たちと力を合わせてまちづくりをしてきた。それが、このモンサント社のやり口によって、誰が通報したのかと疑心暗鬼になり、農民たちの信頼関係さえも壊され、地域のコミュニティーはズタズタに引き裂かれた。 GMOの問題点 1.収量が増える。 さて、2〜3年後、結果はどうだったのだろう。ダイズの収量は15%減ったし、栄養価が低いこともわかった。農薬に関しては、なんと3倍もの使用量になってしまったという。また、こんな農業を「持続可能な」と呼ぶことについては、言語道断であろう。 そして、農民を悩ます最大の問題は、GM食品を禁止しているヨーロッパという大きな市場をカナダが失ったことだ。このことは、カナダの農家に大打撃を与えた。 しかも、キャノーラ・ナタネとダイズに関して言うと、今やカナダにはGM汚染されていない種子は全くない。もう、有機栽培農家もキャノーラ・ナタネとダイズに関しては、有機栽培できなくなってしまったのだ。このままでいけば、「有機農家」「非有機農家」の区別はなく、あるのは、ただ「GMO農家」だけだ。 それだけではすまされない。アブラナ科であるキャノーラ・ナタネは、近似種であるカブやダイコン、ワイルドマスタードなども汚染しつつある。このようにGMOは、一度作付けされれば、もう封じ込めることができず、汚染を広げていくばかりだ。このことにより、生物界の多様性は奪われ、もし、すべての植物がGMOに汚染されれば、何か自然の異変があったときには全滅の可能性がある。 すでにGMOの出現により、雑草の農薬に対する耐性が強くなり、さらに強力で多量の農薬が必要なために農家のコストを押し上げている(このことは、モンサント社が儲かることを意味している)。もちろん、健康や環境への影響も計り知れない。 一企業による新たな植民地支配を許さない なぜ、ひとつの企業がこんなにも力を持つのかと疑問に思う人もいるだろう。それは、カナダの農務省とモンサント社の癒着があるからだ。カナダだけではない、アメリカ合衆国も同じだ。政府との共同開発を行い、助成金や政治献金をばらまくやり方は、1960年代にインドで行われた手口と同じだ(詳しくはヴァンダナ・シバ著「緑の革命とその暴力」日本経済評論社を参照)。その結果は、インドの大地を荒れ地にしてしまったことを考えれば、GMOの行く末も容易に想像できる。 シュマイザーさんによると、モンサント社は「有機農家をつぶしていく」「人々からGM以外の食べ物を選択する権利を奪っていく」ということを、明言しているそうだ。こんなことを許しておいていいはずがない。 シュマイザーさんの話は遠い海の向こうの話ではない。日本でも2001年と2002年、すでに15箇所で
GMOが作付けされ、今年は茨城県谷和原村で作付けが行われた。 (追記)昨年の「エコ・グリーン・テック2002(企業によるエコロジー見本市)」に「冬でも枯れない高麗芝」を出品しているブースを見かけ、問いただしたところ、やっぱり「遺伝子組み換え植物」でした。農産物だけでなく、ガーデン関連にも目を光らせねば! |