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2002年11月10日発行176号ピースネットニュースより
ロシア劇場占拠事件がもたらしたチェチェンと世界への暗雲
今こそチェチェンに平和と人権の回復を!
ピースネットニュース 青 山 正
さる10月23日に起きたロシアのモスクワ劇場占拠事件は、26日早朝にロシア軍に特殊部隊による強硬突入により、「解決」させられました。しかし、強力な催眠ガスを使用したこの強行突入により犯人側の女性も含む約40名チェチェン人武装勢力は1名を除き(その女性もその後死亡)その場で射殺され、さらに800名の人質の内催眠ガスにより最終的に128名(11月10日現在)が亡くなるという悲劇的な結果となりました。
確かに人質を取っての劇場占拠というテロ行為は許されるものではありません。しかし、チェチェン人がそうせざるをえないほど、1999年9月にロシア軍の空爆により始まった第2次チェチェン戦争は終結の見通しも無いまま、多くのチェチェン市民の戦争犠牲者の増加と悲惨な難民生活の長期化を招いています。チェチェン戦争への国際的な無関心の中、昨年の9・11テロ以降はあたかもチェチェン=テロ集団であるかのような報道やロシア側による宣伝がなされ、チェチェンの人々はますます国際的にも孤立感を深めてきました。そして今回の占拠事件でもロシア側は犯人グループを、「国際テロ集団」の一員と決め付けることでチェチェン戦争の現実と本質を隠そうとし、それが強行突入への国内外からの支持にもつながっているようです。まるで国際テロ集団と決めつければ何でもできるような状態です。
ロシアは事件後ロシア内に住むチェチェン人への不当な拘束を行い、そしてチェチェン内やイングーシの難民キャンプにおいても軍事作戦を強化して、一層チェチェン戦争は泥沼化し、そしてチェチェン人の苦悩と憎悪はさらに増すことでしょう。このままでは今回のような悲劇がさらに繰り返される恐れがあります。
一方米国は、国連安全保障理事会でのイラク決議案を多少の修正はあったものの全会一致で可決させ、イラクへの軍事攻撃の準備を着々と進めています。前回の湾岸戦争とその後の経済制裁によっても苦しんだのは一般のイラク市民でした。再び米国主導によるイラク攻撃が始まれば、疲弊したイラクの市民、特に子どもや病弱の人々に多くの犠牲者が出ることは十分予想されます。その上攻撃が始まればさらにその報復としてのテロが繰り返される危険性もあります。あるいは宗教・民族間の争いが世界各地で激化するきっかけになるかもしれません。世界でもっとも大量破壊兵器を所有する米国が、大量破壊兵器の開発の疑惑があるというだけで、国連を恫喝しながら一方的にイラクへの軍事攻撃に突っ走るというのは、どう見てもおかしなことです。ましてやその結果はさらなる憎悪と報復の連鎖であるとすれば、これは絶対にやめさせるべきだと思います。
昨年のアフガンでの軍事作戦でもタリバン政権は崩壊しましたが、市民の犠牲も多く、そして結局アルカイダを壊滅できず、新政権が発足したものの各地に軍閥が跋扈し、とても平和とは言えない状態が続いています。イスラエル・パレスチナ間の衝突も泥沼化し、テロと報復の応酬はとどまる気配はありません。
昨年以上に世界は武力と暴力に支配されているかのようです。しかし平和と非暴力を求める人々の思いは諦めさえしなければ、必ず実現されると思います。チェチェンの状況はますます厳しいものとなっていますが、チェチェンの平和と人権の回復はチェチェンの人々の問題だけではなく、私たち自身の問題でもあると思います。ロシアの軍事化・強権政治は確実に世界に悪影響を及ぼし、反テロの合言葉を利用しながら巨大化し、各国の人権と民主化を阻害する方向に向かうのではないでしょうか。それだけにロシアの将来を左右しかねないチェチェン問題の解決は全世界にとっても本当は大事な問題であると思います。今回の事件をきっかけに多少なりともチェチェン問題への関心が出てきたようです。ピースネット・市民平和基金も大したことはできませんが、市民平和基金設立以来のテーマであるチェチェン戦争の平和解決のためにできるだけのことをしていきたいと思います。どうかご協力をお願いします
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