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2002年9月10日発行174号ピースネットニュースより
「草の根から見たカンボジア内戦の実情」(3)
ピースネット白山フォーラム6月例会 2002年6月15日文京シビックセンターに於いて
るしな・こみゅにけーしょん・やぽねしあ 代表 松本 清嗣
●自衛隊の「貢献」の中身
それから、例えば自衛隊なんかも本当に金のかかるオペレーションていうか、彼らは道路を直したんですけどすぐ痛みましたよね。どこもかしこも道路建設がはじまって、自衛隊はアスファルトを入手するのに手間がかかって、物資の確保をできないんですよ。カンボジアに張り付いて一生懸命やってらっしゃる商社の方がなんとかタイから仕入れたアスファルトで彼らはようやく道路建設ができるんですけれども、そのアスファルトが僕の聞いたところでは劣悪なもので、壊れるのはわかっていた。彼らとしても永続的な道路を造るんじゃなくて36万人の難民がカンボジアに帰ってこれればいいっていうオペレーションだった。UNTACがうまくやれればいいって言う短期的なプロジェクトだったんですけど、使った金はすごいです。たとえば現地派遣の手当だけで一人100何ドル。給料は別です。カンボジア人一人雇うってのは1日1ドルが相場なんです。彼らに対する派遣手当だけで100人雇えるんですね。自衛隊ってのは軍ですから、民間人と一緒には行動できないですね。あれをNGOにやらせたら、重機の使い方、道路の造りかたを政府に対してもNGOに対してもトレーニングして、しかもあの時は雇用が少なかったですからたくさんの人を雇えたんですね。ノウハウもカンボジアに定着する。それを道路交通省みたいなところに重機を寄付して中長期的に道路建設ができるメカニズムを開発型にシフトしていくことは可能なんですけど、自衛隊はそんなこと考えないですね。完全に援助の素人ですよ。自分たちの道路建設のための資材の調達ができなくて民間に頼むんですよ。戦争おこった時にどうするんだ、と言いながら結局民間の人間が物資調達に走りまわらなあかんという、本当に情けない軍ですよ。まあお粗末っていうかみっともない状態だったです。
道路を直すんだったらもう少し別のやり方があったと思います。武装した人たちが行ってやるほどの所ではない、タケオって一番安全なところなんですね。あの段階ではみんな危ないといってましたけど。僕らのいたバッタンバンでは戦争やってましたけど、日本人は危ないところにいっちゃいけないんですね。僕にしてもCRS・アメリカのNGOのルートで入ったんで、日本の外務省とか大使館の風当たりは強くはなかったんですけど、とにかく日本人にそういうところに行って欲しくない。大使館の仕事を増やして欲しくない、効率的な援助をするよりも問題を起こして欲しくない、私の責任になることを起こしてほしくないというのが外務省の一貫した態度ではないかと思いましたね。
〈質疑応答〉
Q:ODAの農薬援助の問題、合成洗剤使用の問題について
松本:農薬に関して状況は非常にひどいですね。東南アジアの国はそういう傾向、フィリピンなんかそうだと聞いていますけど、法律を作っても政府がしっかりコントロールする気がないっていうか、関係ないですね。世界各地で使用禁止されてるような、WHOで禁止されてるようなAAAって書く非常に残留性の強い激烈な農薬が安価で売られてますね。有名なのはホリドールって、ホリドールを使えば一遍で死ねるっていわれて日本でも30年程前までホリドールで自殺する人が多かった劇薬です。日本でも30年以上前に使用禁止されてますけども、それなんかが一般的な農薬です。それ以外にも強い農薬が使われています。政府としてはそれを管理する気がないですね。トンレサップ湖にも流れ込んでいるわけですから、複合的な問題だと思いますね。農薬の使用量に関しては近郊農業、野菜・果実・花で統計をちゃんと調べてないんでわからないですけれども、増えていると思います。ただカンボジア農林水産省のIPM(インテグレイテッド ペスティサイド マネジメント)センターで統合的な病虫害の防除をオーストラリアとデンマークの支援を受けたプログラムでできるだけ農薬を使用しない形での稲作、畑作、果実の生産を進めてるって話です。ただ本部で聞くのと現地で聞く話はだいぶ違っててあまり影響力はないのかなあって感じです。現状としては農薬ばんばん使って高い値段でプノンペン、シムレアップで売ろうという形でやってますね。シムレアップでモニタリングを村人にしたらかなり体に悪い影響があって、吐き気がある、頭が痛い、体力が無くなるっていうので「ワシはやめて農薬散布は息子にしてもらってる」とかそういう感じですね。妊娠婦さんには危険だというのは知られてて、農薬は扱わせないですね。ただ基準も何もあったもんじゃないですから、彼らは農薬を混ぜるんですね。無茶苦茶なことをして散布してるんですけど、シムレアップの農家が、収入は増えたけれども医療費も増えて困るっていってますね。体は悪くなって医療費は増えるけど収入も増えているっていうふうに言ってます。
Q:るしなの具体的な活動は?
松本:村の中で協同組合を作りまして貸付をしています。借りたお金で例えば魚を捕る投網を買ったり、鶏・アヒル・豚を飼う、野菜をつくる、農機具を買うとか場合によっては医療費や食費に当てる、ですから生産費に充てられないこともありますけれども、基本的には生産費として収入向上のために使ってもらう。貸付資金の確保先は郵便局の国際ボランティア貯金を7年間お預かりしてまして、それは資金貸付を認めてないですね。我々としては初年度は米銀行と化学肥料銀行、今は止めましたが牛銀行とその三つで領収証を取れる形で最初の導入をすると。協同組合で貸付があって、返済、貯蔵、また貸付と回っていくんですけど、次年度からは村人の要望でほとんど米銀行とお金で回していく。こういう貸付に関する事務作業は議長・書記・会計のボランティア活動でやります。一切日当は出さないです。
貸付資金をリエルでやっていますが、札束がすごいんですよ。8桁の電卓全然使えないんですね。12桁で何とかやれると、この人たちボランティアベースでよくやるなあ、と感心します。例えば彼は地雷で足を飛ばされた農家の人ですけれども、後ろに寝てるのは国際ボランティア貯金で材料費を提供してもらった米蔵で、ここに米を蓄えて半年後に米を貸すとか、あるいはその米を売ったお金を資金貸付に回すとかするんですが、彼は大工さんでボランティアで蔵をつくるときも手伝ってくれました。
例えば92年93年でUNDP(国連開発計画)が約50くらいの村に貸付プロジェクトをやりましたけど全部消えました。彼らは村の権力構造なりそういうところを分析できない、それに対するアプローチをできなくて、結局は村の利権の中に資金を投入しただけ。NGOにおいてもそれはままあるんですけれども、我々のプロジェクトでも存続率100%ではないですが、汚職によってネコババされる形でつぶれたケースはないですね。2年連続で凶作が起きて返済不可能になり、つぶれたケースはありますけれど、UNDPや他の組織がやるようなみっともないつぶれ方はないです。
農業プロジェクトではみんなで堆肥の作り方をワークショップをしてます。この葉っぱを入れると堆肥が60℃70℃にすぐに上がる、酵素を持っているいい葉っぱなんです。村の農業ボランティアが「これを入れるといいんだよ」と教えてくれているところですね。この農業ボランティアが自分達の試験作業を自分の畑や田んぼでやり、それを村の人たちに教えるという、なかなかシャープないい試験作業をしてます。非常に面白いです。
ワークショップもやりますが。例えば乾季の田んぼで水遣りなしで落花生をつくった畑を見せても最初は村人は絶対信じないです。「おまえら絶対陰で水やってるやろう」て言うんですけれども、お百姓さん連れてってこの土を見せるとちゃんと湿っているんです。堆肥をやり、有機物を鋤きこみ土が良くなると藁が強くなって、その藁を地面に敷き詰めると雨が降らない時期でも湿気が保たれるんですね。そこに有効微生物が棲み、鳥なんかもよく来ます。乾季の水遣りなしの落花生栽培は僕の知る範囲ではここだけですね。
バッタンバンの稲作は非常に面白くて雑草はある一定の時期だったら生えれば生えるほど稲の出来が良くなる。一度30〜50センチまで伸びた稲を2頭立ての牛車で鋤きこむんですね。ザーっと稲を倒して、立ち上がってきたものだけが生き残る。その鋤きこみによって雑草はほとんど枯れて肥料になってしまうんですね。一部稲と一緒に育ってもみに混ざって値段を下げてしまう雑草は抜かなければ駄目なんですけれども、カンボジアの在来種の稲は1.5m以上になる野生種に近いような逞しいもので病虫害の問題はこの晩生の雨季稲ではほとんどないし、雑草の問題もないです。これは世界各地でも最も先進的な農業ではないかなと僕は評価してるんです。なかなか粘っこい粘土質の田んぼでなければできないんで土地としては限られてますが。
保健プロジェクトでは伝統産婆さんたちを集めて勉強しています。伝統産婆さんは我々が考えるような賃金労働とは違います。村の中で赤ちゃんを取り上げるのは伝統産婆さんの仕事で、たとえばすごく貧しいところの出産の立会いは、マッサージしてあげて、伝統的な薬草を与えて、そしてお産に立ち会って、いろんなアドヴァイスをして最後にはお金を置いて帰ります。貧しいから報酬が取れるような状態ではない。お金持ちからはいっぱい取ります。中くらいからは中くらい。貧しいところには取るか取らないか、あるいはお金を置いていく。いわゆるコミュニティワークなんですね。賃金労働じゃないです。この伝統産婆さんの活動は皆さん熱心ですね。責任感ありますから、月に一度のミーティングに来てもらってこの一ヶ月間どういう症例・事例があって、それに対してどうしましたってケーススタディを毎月やってます。非常に勉強されて、また技術も上がります。非常に面白いですけれども、カンボジア保健省は認めようとしないです。政府のトレーニングを受けた助産婦さんがやるべきだと。そういう助産婦さんは村の中に入らないですね。この辺はもうちょっと詳しく話さないといけないんですが、ヘルスセンターというところにいますが、伝統産婆さんの価値をもっと政府は評価するべきだと思います。
例えば危険な状態だったら帝王切開とか必要ですから、伝統産婆さんの手に負えないんでそれを病院に運ぶ。病院に運ぶ費用がない場合に伝統産婆さんと村の保健ボランティアと協同組合が、一時的にタクシー代というか、病院に運ぶ資金を貸し付けたり、貧しい場合にはあげたりっていうプロジェクトをいくつかの村で今年の2月から試験的に始めてます。
これは村の人たちに、感染症をどう防いだらいいのか、衛生環境をどう整えるのかを、おばあちゃんとか保健ボランティアが絵を使って教えてるところです。彼女が保健のマネージャーでサン・ナリーっていいますけれど、彼女は僕のワイフ、奥さんですね。
保健ボランティアの仕事のひとつは村の地図を書いて、どこに井戸を掘ったらいいのか作戦を立たりします。トップダウンで井戸を掘った場合は村長さんのところに掘ったりするんです。村の人たちはそれはうれしいんですけど、もっとどこに掘ったら一番みんなが使いやすいのか、村人との相談で決めていかないといけないんですけど、政府が政府に援助する、例えば日本のJICAの援助なんかも結構村長さんの周辺に掘られてしまう。ですから援助を対政府でしかできないODAは限界を持っている。ですから井戸掘り、リーダーを選ぶこと一つをとってもODAってのはかなりの限界を持ってしまってる。そこをしなやかにやれるNGOを正当に評価していただきたいと思います。資金の面でもね。
この井戸なんかも資金は三分の一ずつで折半です。村人が三分の一、協同組合が三分の一、あとの三分の一を北海道の道産子海外保健協力会っていう札幌の団体が出しています。負担を村の人たちにもお願いすることで、オーナーシップといいますけれども、井戸がちゃんとメンテナンスされるように俺達が作った井戸だという誇りと所有感を培う。こういうのもODAだったらぽんとあげて終わりですね。開発プロジェクトは徹頭徹尾教育的な配慮に基づいてなされるべきで、あげたらいい、何本掘ればいい、学校ができればいいって訳ではないです。時間をかけながらぼちぼちコミュニケーションを整えてやっていく、その辺でNGOの草の根プロジェクトは有効だと思います。
また保健の仕事としてエイズキャンペーンもやっています。エイズが非常に増えてまして、患者の家族に対する差別をなくすようなところを強調しています。たとえばこの彼女はエイズ患者でパートナーの方はすでにエイズで亡くなってますけれども、たくさんの会場の人たちの中から患者さんと一緒にご飯を食べられる人を募って、ステージの上でみんなでご飯を食べてもらって、一緒にご飯を食べても感染しないってことを見せ付けてますね。それといっしょに踊って頬と頬を合わせるとかいろんなことをやってます。
それからチャイルドケアセンター(孤児院)の運営もしています。生活クラブ生協の地球の木っていうところから支援をいただいてやってます。現在20人の子どもたちが入ってて8人がエイズ孤児です。これからもエイズ孤児が増えていくと思います。
洪水で流された橋の建設もやってます。協同組合が自分たちの資金でやってます。僕らの資金も協力して出しますけれど、基本的に村の協同組合の資金はこういうもののために使われる、あるいは相互扶助のために使われるって形でアレンジしています。
これらのるしなの活動を支えるための資金は非常に厳しいです。日本人の専従スタッフは僕一人です。現地28名のクメール人スタッフがいまして、日本各地で僕の友人達が事務所って形でいろんな支援をしてくださってます。みんなボランティアベースです。プロジェクトの規模はかなり大きいんですけれども、資金的には非常に厳しい状態でもしよろしければ会員になっていただく、ご寄付をいただければありがたいです。
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