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2002年7月10日発行172号ピースネットニュースより

【連載】もうひとつのグローバリゼーションを求めて(15)
「公共サービスは売り物ではない」

ATTAC Japan 事務局  田 中 徹 二

 今回は、ATTACニュースレター132号(6月12日号)掲載の「公共サービスは売り物ではない!」の全文訳です。
 GATS(サービス貿易に関する一般協定)は、WTO(世界貿易機関)で交渉が進められている重要な協定の1つで、通信・建設・運輸・金融をはじめ、あらゆる分野にわたるサービスを対象としており、教育、医療や、郵便、電力、水道などの公共サービスも例外ではありません。
 昨年12月のWTO閣僚会議において、GATS交渉のスケジュールとして、1、各国は2002年6月末までに相手国に対する自由化要求項目(「リクエスト」)をWTOと関連各国に提出し、2、加盟国はこの「リクエスト」に基づいて、2003年3月31日までにWTOと各国に対して、自国の自由化の提案(「オファー」)を示すことが決定されました。EU(欧州連合)はすでに日本を含む29カ国に対して「リクエスト」のリストを作成しました。
 ヨーロッパ各国でGATS反対のキャンペーンが始まっており、多くの労働組合も参加しています。フランスでは、CGT(労働総同盟:最大のナショナルセンター)やSUD(連帯・統一・民主労組:ATTACを支持する新しい労組)などの労働組合が、農民連盟やATTACなどの団体と共に、以下のアピールを発表しました。[全文訳はATTAC Japanフランス語翻訳ボランティアの林昌宏さんです]
 日本では残念ながらこのようなキャンペーン活動を行い得ていません。本当ですと、今国会で焦点のひとつである郵政法制化問題にも反GATSの立場から問題提起すべきでした(ただし、日本の郵便事業は貯金・簡易保険も行われ、これが巨額の財政投融資の原資となり巨大な利権構造の温床となっているが、ここは市民的・社会的事業推進という立場から改革されなければならない)。力量不足を嘆くものですが、フランス−ヨーロッパの運動を学び、何とか日本でもキャンペーンを開始したいと思っています。

WTO、GATS(サービスの貿易に関する一般協定):われわれの公共サービスはフランスでも、またヨーロッパでも売り物ではない!
-WTO =World Trade Organisation(世界貿易機関)
-GATS=General Agreement on Trade and Services(サービスの貿易に関する一般協定)


民主的、効率的なおかつ民衆が団結する公共サービス確立にむけて団結しよう。

「このアピールを発表する理由」
 公共サービス―水、下水処理、ごみの回収とその処理、電気、輸送手段、ガス、医療保険サービス、教育、保育園や人的介護などの地域サービス、通信や電話、郵便制度―は基本的人権を保障するために不可欠の要素であり社会的地域的経済の団結の手段である。なぜならばこれらの公共サービスは人々の豊かな暮らしに欠かせないものであり、また、これらのサービスの運営の仕方によっては莫大なる富の源泉となる可能性がありその金額は計り知れない。
 公共サービスを定め、組織化するためにはすべての地域で公共の権力の役割が不可欠である。
 公共サービスは、厳しい市場法則を免れさせる必要があると社会がみなす財でありサービスである。なぜなら、何人たりともそのサービスの利用から排除されてはならないからである。社会の公共サービスは財と資源の相互扶助と連帯の原則に基づいている。誰でも自由にアクセスでき、ニーズに柔軟に対応でき、安定継続したサービスの供給、そして今日では社会的土台を構成する予防的原理である。
 公共サービスは現在、社会の帰趨を、闘いの対象を表現している。それはまた、一つの社会のある時期の社会的政治的力関係の結果でもある。ここ20年来の各国政府による公共事業の自由化は分野にもよるが情報技術や金融市場の発展、そして経済のグロ―バル化に促され、公共サービスを市場経済にゆだねるとともに、公共サービスの目的や公共サービスの枠組みを定めるいろいろな規制を見直すようになっている。
 ところで、事態は切迫している。自由化のプロセスがこれらのサービス網に浸透し続けている。医療と教育の分野も例外ではない。現在進行中の政策は欧州諸機関と国際諸機関の中で各国政府によって下された決定の結果なのである。WTOの枠組みのもとでGATSとをめぐる交渉ととともに一つの重大な段階が幕開けとなっており、EU諸国全体のために交渉を行うのは欧州委員会である。お金による支配の拒否し、より連帯しもっと友愛に満ちた世界を望んでいるすべての人々にとって、新しい段階の自由化を阻止し公共サービスを再建しヨーロッパ社会全体の利益に見合ったサービスのための規制の新しい枠組みを定義しなおすことが第一の課題である。
 今日、新しい市場開拓のために更なる自由化を押し進めたい新自由主義勢力と巨大金融グループの利害を目の前にして、アソーシエーションと労働組合の勢力が分散しているならば、問題を正しく把握することも、十分な提案を行うことも、その提案を受け入れさせる力関係を作り出すこともできない。

「公共サービスってなんの役に立ってるの?」
 公共サービスを通じて人々が求めているのは、日常生活と基本的人権の行使にとって不可欠な財とサービスの提供である。これらのサービスは公的機関により直接供給されているもの(国の行政機関と地方自治体)、企業により供給されているものがある。公共サービスを行う企業には、公的企業(郵便事業やフランス鉄道など)、私企業、半官半民企業などがある。
 公共サービスの使命は立法府により定められ、当該のそれぞれの地域のレベル(国、市町村、県、地域圏)が財とサービスの提供の方法(企業の種類や職務の実施)を決定する。これらの公共サービスは、すべての地域において、また、差別なく万人に平等に財・サービス(エネルギー、介護、電話電信、輸送、教育、医療)を享受する権利を確保することによって基本的権利の行使を保障する。公共サービスは経済、社会、地域のまとまりに貢献する。公共サービスは、不可欠だと判断される財やサービスを利潤追求から守ることができる。商業分野に属する公共サービス(電力など)もあるが、明らかにそうでないサービス(戸籍業務など)もある。この2つの分野の中間にあらゆる種類の異なるさまざまなサービスが存在する。非経済的とみなす必要があるすべての公共サービスの確定的なリストをいきなり頭の中だけで作成するのは難しい。
 同様に公共サービスは、市場を制御し、公共政策(エネルギー政策や環境保護)を導き、経済、社会の発展に貢献するために公的権力が得ることができる手段である。公共サービスの存在はすべてのEUのすべての国に違った形で、違った呼び名で存在する。しかし最終目的は同じであり、ヨーロッパの諸機関はそれらをEUの「共通の価値観」として認めている。
 公共サービスはEUのいろいろな国々の経済、社会そして国土のまとまりと、それぞれの国のアイデンティティへの帰属意識とに貢献するだけでなく、公共サービスはまた、単なる自由貿易地域を超えたヨーロッパを建設し、国家と世界の間に位置するヨーロッパ市民意識を芽生えさせる手段ともなる必要がある。さらに公共サービスの存在なくしては民主主義は不可能である。ここ数年来、フランス型公共サービスは欧州建設また国際間の交渉、特にかのGATSをめぐる交渉よって、再考を迫られている。

「ヨーロッパレベルでの公共サービスってなんだ?」
 EUのすべての加盟国において公共サービスや公共の利益追及のサービスを見出すことができ、それらがカバーする部門も同じように存在する。:水、エネルギー、郵便、交通輸送手段、などである。国によってモデルは多様であるが(フランスでは公的企業であるEDF=フランス電力公社のみがエネルギーを管理している一方、ドイツでは地区や地域レベルで約1000社がある)、その違いを超えて公共サービスは競争と言う一般法則以外の法則にすべて従っている。アムステルダム条約はその第16条でこれをEUの「共通の価値観」と宣言している。
 至るところで公共サービスは地域的または世代間の連帯に基づき、社会、経済、地域のまとまりに不可欠な役割を演じている。公共サービスはヨーロッパの社会的モデルの一部を代表している。ヨーロッパレベルをも含めて全域ですべてのヨーロッパ人に社会全体の利益を追求するサービスを行うことが必要である。ヨーロッパレベルでは次のようなものを考えることができる。鉄道料金、アメリカのGPSシステムとは独立した衛星(ガリレオ)誘導システム、海洋の安全、食品の安全、航空管制。どうして周辺地域や僻地を不利にしないようなヨーロッパ単一切手料金システムが存在しないのであろうか?

「GATS、悪魔の論理」
 GATS(サービスの貿易に関する一般協定)は1994年に合意されたWTO設立の協定の一部をなしている。これは、サービスに関する貿易交渉を規制しなければならない一般諸原則を定めるものだと主張する協定である。GATSの目的は、どの部門のサービスを自由化させなければならないかをそれ自身定めることなく、サービス全体の最高水準の自由化に徐々に達成していくことである。どの部門のサービスを自由化するかというこの問題を約束するのは国なのである。

「しかし、公共サービスはどこにあるのか?」
 サービス全体にまだ自由化を行き渡らせるために2つの手段が用いられている。1つには、このGATS協定ではサービスに非常に広い定義を与えている。政府権力の行使の中で供給されるサービス(すなわち商業ベースで供給されないものであり、上記サービスを提供する一つ以上の競争相手がいないサービス)を除くすべての部門のすべてのサービスがこの定義に含まれる。フランスではこの定義に当てはまらない定義はほとんどない。2つ目にこれらのサービスは「供給形態」と呼ばれるサービスの国際的な取引形態として定義されている。

モード1、国境を超えるサービスの提供:別の国で利用されるために国を離れる(たとえば、衛星放送によるテレビ番組配信)。
モード2、外国での消費:消費者が国境を超える(たとえば、観光者が外国のホテルに滞在)。
モード3、支店の開設:サービス供給者が外国に投資したり自らの施設を新たに設立したりするために法的に国境を超える(たとえば、銀行の支店)。
モード4、人間の一時的移動:サービスの供給者が国境を超えるが、この場合は人間の限られた期間の移動という形をとって行われる。
 これらの定義付けは軍隊と裁判所を除くすべてのサービス部門を網羅することができる。公共サービスと社会全体の利益に関して一切の言及はなく、公共サーボスの個々の特殊性は認められてもしないし、その指摘も見当たらない。

「ゲームのルールに騙されるな」
 GATSの差別なき国際貿易の主要な「ゲームのルール」をもう一度検討してみよう。最恵国待遇の条項には次のように明記してある。一国に最恵国待遇が認められた場合、他の国もこの待遇を要求できる。そしてそれはすべてのサービス部門に適用される。国内待遇の条項は、ある国のサービス供給者にも与えられた便宜・援助・補助金を外国のすべてのサービス提供者にも与えなければならないことを意味する。
 市場へのアクセスは、経済的ニーズを調査し、またサービス活動の数やらサービス製品の全体量を調査して、従業員の数や資本参加の規模の制限の度合いを正確に列挙している。以上の2条項は加盟国が約束した部門にしか適用されない。

「自発的な約束・・・・後戻りはできない!」
 加盟はどの部門の自由化が可能であるかを判断する。この「市場開放」は相互に同意された譲歩のもとに実現される。譲歩が明確に言及されなければならず、協定に盛り込まれる。譲歩の対象となるのは、市場へのアクセスと国内処遇であり、異なった供給モードに従って示される。例えば、EUは教育の自由化を提案している。小中高の教育は、モード1の国籍条件を付加しつつモード1,2,3に従い、成人教育は制限なくモード1,2,3に従って市場開放される。そのほかの例としては、加盟60数ヵ国が1997年に合意した基本電信電話に関する協定の追加誓約条項に署名した。この追加条項は、この部門の自由化が実施される諸条件――独立した規制機関、透明な料金体系、ネットワークへの差別なしのアクセスなど――を定めたものである。それぞれの例外や制限は5年ごとに再検討されなければならず、最恵国待遇に関する例外は最大10年間のしか継続が許されない。このようにして、オーディオヴィジュアルに関するかの有名なフランスの「文化的例外」は、協定の条件に従って再交渉されなければならないであろう。この再検討は、完全なる自由化を達成するために加盟国が「努力」を行うことを明らかに意味している。しかも、再検討の際に、制限が正当化していた諸条件がなお有効であるかどうかを判断するのはWTOであるということである! 他の部門と同様にサービスにおいてもWTOが、規則を決め、国家さえもコントロールし、紛争の裁きを行い、制裁を科す・・・GATSが通るところ、公共サービスは死ぬ!

「どうして間違いなしにできるのか?」
 最後に、GATS協定はいかなる機会もまったく残してくれない。補助金は「競争を歪める可能性がある」ので、こうした場合には、補助金をなくさなければならない。同様の手法で法と規制はどのような場合であっても競争を阻害してはならない。作業グループが、「サービスの質の確保のために必要とされるものよりも厳しい」加盟国の国内規制を検討する。この検討をするのは他のどこでもなくWTOでありWTOは反論に耳を傾けるわけでもなく独自の判断基準で決定を下す。
 最後に「違反なき場合の不服申立て」と名づけられたXX。−3条がある。これは、GATS協定を遵守した現行規則により利益を侵害されたと感じたサービス供給業者に対して提訴を行い、補償を要求し、規制の撤廃を求める権利を可能とするものである。・・・最終上訴機関としてWTOの紛争解決機構(ORD)があるが、ORDは不透明な内部裁判であり、反論も許されず、誰にも説明がなされないものであって、当該の規制について判断を下すだけである。

「WTO:ドーハ会議は公共サービスを無視」
 WTOの第5回閣僚会議はシアトルラウンドの失敗から2年後、2001年12月9日から14日までカタールのドーハで開催された。会議はさまざまな交渉者の間で絶大なる権力行使の後、「発展のサイクル」と言う最終宣言を打ち出すことに成功した。公共サービスなき発展である! 実際、この宣言は1994年以来ジュネーブで行われてきた交渉の継続を有効と認めた。
 協定については、公共サービスを認めるという修正も、「人間の共通の財産」を諸原則から取り除くという修正もともになされなかった。この結果は妥協としても役立たないものであり、ジュネーブでの交渉の継続が公共サービスの承認を認めさせなければならないだろう。加盟国のために交渉をするEUは社会全体の利益になるサービスを強化し、WTOに対してこの利益を認めさせなければならない。これこそ、ノーベル経済学賞受賞のA.セン氏の言う「個人が享受する本当の自由の拡大の過程」という意味での真の発展のための条件なのである。

「どんな提案?」
WTOと世界的機構のレベル

 公共サービス(または社会全体の利益のサービス)はすべて人々のための基本的権利の行使手段として認められなければならない。したがって、公共サービスは利益追及に従うことも商取引の対象となることもできない。WTOと国際的金融機関(IMFや世界銀行)は世界人権宣言を尊重し、国連の組織体制の中に統合されなければならない。公共サービスは、異なるいろいろな地域や機関の公共団体の間の交換の対象となることができ、この交換は経済的補償の対象となりうる。人々の基本的権利が十分享受されるよう公共サービスが供給しつづける保証が奪われないようにするためには、交換のいろいろな条件が、国によってだけでなく、国民も住民もその執行機関によっても同様に論議されなければならない。
 生活に必要な水や空気などといった必要不可欠な財は国際的レベルでの公共財(あるいは「人類共通の財」)として宣言し、国際的機構や市民を代表する団体(NGOなど)によって管理されなければならない。

「ヨーロッパレベル」
加盟国のために交渉をするEUに委任された権限を明確にすることが望ましい。この権限はヨーロッパにおける社会全体の利益のサービス(または公共サービス)という明確な概念を基本としなければならない。この概念は次の諸原則に基づかなければならない。

―ヨーロッパ全域を網羅するすべてのヨーロッパ住人のための利用の平等の保障

―サービスの継続的供給
―住民の要求の発展を考慮に入れて適応できる体制
―公共サービスとその管理の目的と使命の定義の透明化
―複数の鑑定の可能性を含む反対論を入れた多元的な公開の評価

「キャンペーンの成功はわれわれにかかっている」
 これらの提案は本質的に、より公正でより連帯した、そして持続的発展の要求により開かれた社会の構築を可能とするものである。それはそれ自身が民主主義の拡大につながるのだ。実際、労働者、市民、消費者の意見を聞かずして、将来、企業活動、社会にとって死活の活動が決定されるなどというのは問題外である。
 これらの提案を早急に討論しなければならない。そして提案を実現することは可能だ。だからこそ、われわれは、これらの問題を真剣に考えているすべての人々や、この問題に関わる組織、組合団体、地方議会や国会や欧州議会の議員にこのアピールを行っているのである。同時に、われわれは今後、将来の市民の会合や選挙中、選挙後の討論を通して、現在準備されている社会の大衆動員を通して、そして最後に大規模な国際的会議を通して、このキャンペーンを成功させることができる。連帯というわれわれの選択は、世界中で至るところで、自由主義的政策に対する民主主義的オールターナティブの構築のために活動している人々の決意の中に反響をまき起こすからである。
Collectif AGCS(コレクティフGATS):地区および社会の民主主義と教育のための協会、AILES、AITEC、ATTAC、CGT(労働総同盟)、家族組合連盟、AIJD(権利−連帯)、エマウス・インターナショナル、FAADDHED、FAFRAD、CGT公共サービス産別、AEFTI連盟、土地の女性、フェイカ・クルディスタン、EU移民フォーラム、解放フランス、FSU(統一組合同盟)、GAS(歓待と連帯グループ)、フランス支援グループ、人権同盟、LASAIRE、反失業ヨーロッパ行進、新しい人権、公共サービスのために、公共サービス・ネットワーク、SNUI(全国税務職員統一労働組合)、SUD-PTT(郵便・電信・電話部門の連帯・統一・民主労組)

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