2002.6.12版

有事関連3法案とはなにか  

 

 有事関連3法案とは、1、「武力攻撃事態におけるわが国の平和と独立ならびに国及び国民の安全確保に関する法律案」(武力攻撃事態法)、
2、「自衛隊法改正案」、 3、「安全保障会議設置改正案」の3法案を言います。

 政府は4月16日臨時閣議で決定、17日国会に提出。日米防衛協力のための新ガイドライン、周辺事態法テロ特措法、自衛隊法改正、PKO法改正と、自衛隊の海外派兵も含めて活動範囲が拡大してきたなかで、憲法9条は、空洞化してきたといえます。有事法制は、憲法法制に「特例」や「例外規定」や「適用除外」を設けて、市民の基本的人権の制限を盛り込み、内閣総理大臣に地方自治体や指定公共機関へ強い「指示」の権限と「代執行」の権限を盛り込み、自衛隊の活動のいっそうの円滑化と日米共同行動の緊密化をすすめるものです。有事法制は、戦時法制と言い換えるとわかりやすく、憲法をずたずたに切り刻み、最後の息を止めようとする法制といっていいでしょう。

 主な問題点を列挙すると、次の通りです。

1、 平和憲法こそ最大の備え    

 いま日本を攻めてくる敵国は現実的にあるでしょうか?国際状況をみても、ブッシュ大統領が「悪の枢軸国」と名指した朝鮮人民共和国(北朝鮮)は、わたしは、2度訪朝しましたが、その経験からも、食料難のため侵略の意図や国力はなく、韓国の太陽政策もあって、経済の復興をめざしています。イランやイラクが日本をせめてくることはかんがえられません。なによりも私たちは、「武力で平和は築くことは出来ない」と言う哲理と真理の上に立つ必要があります。小泉首相は「備えあれば憂いなし」「平和な時代にこそ有事を考える」といいますが、どのように平和を創造すべきかをこそ問う必要があります。積極的に、北東アジアの集団的安全保障機構を創設するなどして、日本は、まず「対話」と紛争の「予防外交」に徹していくことが必要ではないでしょうか。憲法は、平和主義に徹することを国の方針としています。有事3法案は、憲法の原理に明らかに反します。

2、「武力事態」の発生恐れ予測の定義のあいまいさ  

 政府は、総理官房長官、防衛庁長官が、それぞれ異なった定義づけをし、かつ具体的な事態への適用問題ができなかった。そのため政府の統一見解を提示する羽目に。政府の統一見解は、つぎのとおり。しかしこれで、明確になったとはいえない。

 「武力攻撃」とは、我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力行使をいうものである。
 「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」とは、その時点における国際情勢や相手国の動向、我が国への武力攻撃の意図が推測されることなどからみて、我が国に対する武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態である。
 「武力攻撃のおそれのある場合」とは、その時点における国際情勢や相手国の軍事的行動、我が国への武力攻撃の意図が明示されていることなどからみて、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものである。」

3、 武力攻撃自体の恐れと予測は誰が判断するのか

 武力事態法は、わが国に対する「武力攻撃事態(恐れを含む)」の発生と予測が生じたとき、自衛隊の防衛出動と待機命令を出すことが出来ます。この判断のうち、防衛出動命令には、内閣総理大臣が、安全保障会議にはかり、国会の事前承認を必要とします。自衛隊は、陣地の構築や移動などのために、法律の適用の外で自由に行動できます。在日米軍の基地が攻撃されたときはこれに当たります。しかし「予測」されたときは、防衛待機命令が出されて、陣地の構築や移動などのために同じような行動が可能となり、これは国会の事後承認になります。国会の承認が取れなかったときは、「撤退」しなければ成りません。しかし、「予測」と「恐れ」の事態の判断を内閣総理大臣が行うためには、常時情報を収集し、判断することになりますが、実際には、日米共同作戦会議が常設されていて、さまざまな事態のシュミレーションがエンドレスにおこなわれており、これらは、日本側は幕僚レベル米国側は太平洋司令官の双方の制服組みが実地作業をし、日本側は外務大臣と防衛庁長官米国側は、国防長官と国務長官のいわゆる2+2がオーソライズするシステムができあがっている。周辺事態法(極東有事と日本有事のための米軍を日本の自衛隊が後方支援する法律)では、防衛協力ガイドラインにしたがって、相互協力計画のシステムが作られている。これらは、調整メカニズムで、日米軍事行動の総合的な調整がはかられているのであるから、二つの法律は、連動して、「武力事態の恐れと予測」の判断は、相互に「並立」または「重なり合う」ことは明らかである。判断と指揮権に日本の独立が確保出来るのか、国益上日本はノウと言えるのか、米軍の懐深く取り込まれた不安は払拭できない。周辺事態法が発動され、米軍が戦争をするときには、有事法制を発動して、国民を強制的に総動員するのが真のねらいではないのか?

4、国民の保護法制は、2年間先送り  

 日本には原発が52基、化学コンビナートも多い。食料の自給率はX%,石油資源はなし。戦争が起きたとき、国民はいったいどこへ避難し、身を護るのか。生き残ることは出来るのか。審議のなかでは、経済統制や配給制度、隣組、警戒警報や避難の誘導外出制限や交通規制等が論じられているが、国民に対する「措置」をだれが、指示しておこなうのか?有事の際には、「対策本部」が設置されて、内閣総理大臣は、副本部長を国務大臣であてるというのであるから、それが防衛庁長官であるとすれば、制服の自衛官がすべての指揮をとるというのであろうか?戦前の悪夢の再来である。警察との関係はどうなるのか?さらに先送りされているのは、米軍の支援に関する法律とジュネーブ条約の国内整備。この内容に関して政府は、「国連憲章や国際法に従い、日米安保体制の範囲内で法の整備に取り組む」と抽象的に答弁するのみ。対米支援の基盤整備と私権の制限の範囲ともども「霧の中」である。大事なことは、すべて後回し、枠組みだけを決めるという欠陥法。信じられないほどの政府の無責任。政府は全容を示すべきである。

5、シビリアン・コントロールの後退

 これまでの防衛出動は原則国会の承認が必要であった。法案によってさだめられる「対処基本方針」は、防衛出動にかかわる規定を含むにも拘わらず「特に緊急の必要」がある場合、閣議決定後の事後承認でたりることになっている。国会の関与は大きく後退している。対処基本方針の変更や終了は国会の承認事項となっていない。国の緊急事態か否かの決断こそ国会の関与が重要である。

6、地方分権に逆行し、白紙委任事項が多い  

 法案は地方自治体に対し、「必要な措置を実施する責務」を明記し、総理大臣による総合調整指示、代執行について定める。しかし協力以上の強制力を伴うものにもかかわらず、その具体的な中身は、まったく具体化されておらず、地方公共団体の長である知事や市長からも疑問が提起されている。これは、沖縄特別措置法の一般法化といってよい。指示や代執行の中身次第では、地方公共団体の主体性を完全に奪うものである。
 また対処基本方針のなかで、「指定行政機関」「指定公共機関」の範囲や内容は、政令で定めるとされる。「指定公共機関」は、独立行政法人、NHK、NTT、日本赤十字等通信や輸送、マスコミのどこまで拡大されるか不明である。国家総動員体制に近いものにもなりかねない。

 有事法制は、テロや不審船に対応するものではない。有事の際、自衛隊と米軍の共同行動を円滑にするために、物資の収用や建物、立木の形状変更等憲法に規定された私権を制限する。保管命令や立ち入り検査命令違反には罰則をかける。関係法律の特例を整備する―――そしてあいまいなまま国民の協力をもとめ、指定地方自治体や指定公共機関に協力義務を課す。憲法を破壊する有事3法案の廃案を求めて、断固抵抗しなければならない。  「戦争を知らず生まれし政治家が玩具のごとく扱う戦争」朝日歌壇より(5月13日付け)

 

 


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