テロ対策特措法質疑

 

153回国会  参議院 (大脇質問部分)

外交防衛委員会           2001年10月25日(未定稿)
外交防衛委員会           2001年10月26日(未定稿)
外交防衛委員会 締め括り総括  2001年10月26日(未定稿)
外交防衛委員会 反対討論    2001年10月26日(未定稿)


外交防衛委員会  2001年10月25日

○大脇雅子君 大脇でございます。  まず、私は、今回の自衛隊法改正案の提案理由についてお尋ねをいたします。  今般の法改正は、米国で発生した同時多発テロが日本における同様の攻撃等に備え万全を期することが必要という趣旨で提案されておりますが、この法案の内容を見てみますと、テロに関連していない事案、例えば今、小池議員が質問されました防衛秘密の問題等含まれているわけであります。  テロ対策支援法の審議に紛れての国家機密法の復活とか、あるいはテロ対策に便乗した火事場泥棒的な法案だとか、さまざまな世評もございます。  まず、この提案理由についてお尋ねいたします。

○国務大臣(中谷元君) 今回の法改正の内容は、御指摘のとおり、警護出動という項目並びに第二が武装工作員の事案や不審船の事案に効果的に対応するために武器使用権限を整備すること、第三に秘密を漏えいした者の刑罰を規定するということでございますが、第一の内容は、大規模なテロリズムによる攻撃を意味するものでございます。それから、第二、第三ということについても、武装工作員の事案や不審船の事案に対して有効に対処できる体制を構築して武装工作員の侵入を防止すること、また秘密保全に万全を期することという内容は、この第一のテロの行為と相まって、我が国に対するテロ攻撃を阻止するためにも重要なものであるというふうに考えているわけでございます。

○大脇雅子君 私は、そうした性格の違ったものが混在する自衛隊法改正法案を一括処理することに反対でございます。  それで、こうした実力行使を強化するという方向性は、例えば具体的に武装工作員等の事案や不審船の事案等を見ましても、我が国の平和的な外交努力と相反すると私は考えますが、外務大臣、いかがでございましょうか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 委員は、不審船でございますとか武装工作員とか、そうしたことも念頭に置いて御発言かと思いますけれども、日本もそうですが、主権国家として日本の安全及び国民の生命、財産の保護に万全を期するということは政府の重要な使命でありまして、今回の自衛隊法及び海上保安庁法の改正というものはこのために必要なものでございます。この改正によりまして、日本としての武装工作員、我が国としての武装工作員や不審船への対応というものが結果として強化されることになります。  また、日本は、従来からみずからの安全と繁栄を、安全と繁栄に対しまして密接不可分な関係にある世界との安定と繁栄を実現していくために、さまざまな政策手段を通じた外交努力を行ってきております。  加えまして、御指摘のことへの対応につきましても、在外公館等を通じて周辺諸国との連絡ですとか情報収集なども強化いたしておりますので、さまざまな事態に適切に対応できるように外交努力も行ってきております。

○大脇雅子君 やはり平和的な対話と説得の外交努力が必要だと考えるわけです。実力行使の強化に軸足を移してきている今回の法案については、次の点が最も大きな問題だと思います。  まず、五十九条と百十八条で現行法上服務規律を保護法益とした秘密保持の条文に対して、今回の九十六条の二という防衛秘密を保護法益としたこの規定の仕方でございますが、とりわけ、その防衛秘密は別表四ということでございますが、具体的には長官の指定によって秘密の範囲を決めるということになっております。  我が国は、憲法三十一条によりまして法定の手続の保障がございまして、法律の定める手続によらなければ、何人もその生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない厳密な罪刑法定主義をとっているわけでございます。この点では、罪刑法定主義にその秘密の範囲を長官が専権的に指定するということによって構成要件のあいまい性ということをもたらしますが、この点はいかが長官お考えでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 指定の範囲が明確で限定的でなければならないという御指摘でございますが、今回の改正案は、法律の別表第四に掲げておりますけれども、十項目の範囲内でございます。その上、公になっていないもの、また我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるもの、その上に防衛庁長官が指定したものというすべての要件を満たしたものを防衛秘密としておりまして、我が国の防衛上秘匿することが必要との意義については、具体的には、それを秘匿しなければ、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接及び間接侵略に対して我が国を防衛する、自衛隊法第三条にございますが、こういった自衛隊の任務の円滑な遂行に支障を生じるおそれがあるということを意味するものであります。  また、この秘密、これは実質秘ということでありますけれども、といった場合に、非公知性と秘匿の必要性の二つの要件が必要であるとされまして、防衛秘密についてもこの二つの要件は当然に必要でありますが、秘匿の必要性については、単なる秘匿の必要性だけではなくて、秘匿度が通常以上に高いものであることが必要であるということから、我が国の防衛上特に秘匿することが必要というふうにしているものでございます。  なお、この防衛秘密の対象については、先ほど申し上げました四つの条件で、その中で特にということで選び出すものでありまして、今回の改正案は、防衛秘密の範囲を限定的かつ厳正に規定しておりまして、さらに防衛秘密の要件に該当するか否かは最終的には司法審査に服することとなるものであることから、とめどもなくこの範囲が広がっていくという御指摘には当たらないものであるというふうに考えております。

○大脇雅子君 罪刑法定主義というのは、構成要件で罪となる事実が要件的に明快になっているということでございます。司法審査という事後的な処理によって明確化するということは何ら理由にならないのでございまして、この別表四は非常に抽象的であり、あいまいであり、漠然としており、非常に広範で包括的であります。そしてそれに、長官の指定によって範囲を限定するということになってまいりますと、この基準が客観的にどのようなものであるかということが人権の擁護のために必要になりましょう。  西山判決によりましても、実質的に保護に足る秘密というふうに言っているわけですから、そうした具体的な基準というものが省令ないしは少なくとも政府見解等で示されるべきだという指摘がございますが、この点いかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) この点につきましても、現実に別表四で十項目をいたしておりますが、その中にも、電波情報とか画像とか計画、研究事項、武器、弾薬、その種類、数量、通信網の構成等書かれておりまして、これらを漏えいされますと我が国の国を守るすべがなくなってしまう可能性もあるものでありまして、こういう中で国の守りに特に支障が出かねないものに対して秘密漏えいをしないように指定するものでございます。

○大脇雅子君 私が問題にしておりますのは、何が重要なのかという実質的な保護に足る秘密の基準というものを、この別表四と長官の指定だけでは不十分だと、したがって省令あるいは政令あるいは政府見解、ガイドライン、何でもいいんですが、そういったことで示すお考えはありますか、ありませんか。どのような手順を考えておられるんですか。

○政府参考人(首藤新悟君) 現在の庁秘にも機密あるいは極秘、秘という区分があるわけでございますけれども、そういったものについても、我が国の安全上高度に重要なもの、あるいは我が国の安全上秘匿が重要なものと、そういった、どうしても個別の案件を審査するときの基準としては全般的に一般的な表現にならざるを得ないわけでございますけれども、今、大臣からるる申されたとおり、別表にありますように、例えば暗号機とか電波情報とか、あるいは我が国の防衛計画でございますとか、あるいは魚雷、ミサイルを含む装備品の具体的性能でございますとか、そういったものがこういった防衛情報に含まれるのは常識的に当然のことでございまして、そういったようなものを主として対象に、今ございます秘匿を要する防衛庁の庁秘の、庁秘といいますか、秘匿を要する秘密の範囲の中から厳格に大臣が選び出すということになるわけでございます。

○大脇雅子君 長官が選び出すということになればまさに長官が法になるわけでございまして、その点について客観的な枠組みあるいは基準が必要だということをるる申し上げているわけであります。  十三万五千四十件という機密、極秘、秘という現在の防衛庁の秘密保全に関する訓令がありますが、大体この中からどの程度が防衛秘密になるというふうに考えておられるんですか。

○政府参考人(首藤新悟君) この法律が通りましてから具体的に選び出していくという作業が始まるわけでございますので、現在のところ具体的な数といったものが申し上げられる段階にはないわけでございますけれども、いわゆる四つの基準に従って絞り込んでいくということからいたしまして、おのずとその数は限定的なものになるということが予測されるわけでございます。

○大脇雅子君 その絞り込んだ場合に、内容は公開しないということであったわけですけれども、大体基準すら公開されないで罰則がかかる行為が存在するということは国民の人権上重要な問題だと思いますが、公開しないのなら基準を明快に、その四つの基準では足らないと思いますが、その点について、さらなる客観的な長官の指定する範囲の基準というものをつくり出していっていただかなきゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。長官、お願いします。

○国務大臣(中谷元君) 現在でも秘密はございます、極秘とか秘とか。それ以外にも秘密はあるんですけれども、今回指定する秘密というのは、現在の範囲よりは拡大いたしません。今の秘密指定の範囲の中でありますし、その指定の要件を厳格化するわけでありますけれども、この価値判断といたしましては、我が国の安全保障の業務を行う上において必要と、特にこれだけは守りたいという中から指定するわけでございまして、そういった観点で別表で十項目挙げておりますし、その中で公になっていないもののうち防衛上特に秘匿をすることが必要であるものを防衛秘密として指定をするわけでございます。

○大脇雅子君 拡張解釈をして国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならないというような普通の条項、通常そういう条項が全く入っていないということに私は警鐘を鳴らしたいと思います。  それでは、九十六条の二のちょっと条文についての解釈をお尋ねしたいんですが、「国の行政機関の職員のうち防衛に関連する職務」とありますが、これは地位が関連するんでしょうか、あるいは職務の一部が関連するのでしょうか、日常の職務なのでしょうか、その範囲についてお尋ねします。

○政府参考人(首藤新悟君) 九十六条の二第三項の今、先生がおっしゃられた部分についてでございますけれども、自衛隊がやはり任務を全うするためには防衛庁以外の国の行政機関と各種の調整などを行うことが必要不可欠でございますので、こうした調整などを行う際に、場合によりましてはその国の行政機関の職員に防衛秘密を取り扱わせることが必要なことがあるということで、この規定はこうした防衛に関する職務に従事する者について規定したものでございます。

○大脇雅子君 それから、「契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造若しくは役務の提供を業とする者」というふうに書かれてありますが、この範囲は例えば下請とか部品メーカーとか、そういった業者を含みますか。

○政府参考人(首藤新悟君) ここで言っておりますのは、防衛庁といわゆる製造請負契約を結び、そしてその情報の中に秘密が含まれる場合には、その会社と秘密保護に関する、保全に関する特約条項を結んでいる会社ということになるわけでございますので、一般的にはいわゆるプライムといいますか、主契約者が大部分になるわけでございますが、実際問題として下請あるいは今、先生おっしゃったようないわゆるプライム以外の会社とそういった秘密の製造契約などが必要な場合が生じたというようなときには、当然、防衛庁とその会社とのその秘密部分についての特約条項を結ぶといったような工夫が必要になると考えております。

○大脇雅子君 そうすると、特約条項を結んでいなければ該当しないと考えてよろしいですか。

○政府参考人(首藤新悟君) やはりその相手の会社が防衛庁との間で何らの契約関係にもないといったような場合には、その会社の、製造に携わる、秘密部分にタッチする、いわゆるこの法律で言う「業務とする者」というものには含まれないことになるだろうと思われます。

○大脇雅子君 本法において過失罪を創設された理由はどういうところにございますか。

○国務大臣(中谷元君) やっぱり秘密保護の本質というのは、あくまでもその秘密が外部に漏れるのを未然に防止するということにありまして、一たんその秘密が外部に漏れますと、その漏えいした者を罰しても取り返しがつかないことになっております。また、一たん公になれば秘密でなくなってしまう一方、この秘密の内容を急遽変更することは困難な場合が少なくありませんので、そういう結果を考えますと、この機密が漏れるということは大変危険性の多い行為でございまして、この秘密の漏えいを未然に防止するという観点で、着手をした、秘密の漏えいに着手をした未遂罪、また過失、これも罰するということにいたしております。

○大脇雅子君 過失罪を規定する場合には、その前提として注意義務違反ということがないと成り立たないわけですが、この注意義務違反というのはどういう概念でとらえたらよろしいのでしょうか。

○政府参考人(首藤新悟君) 何といいますか、その当該業務者たる者、この人間が、その事態におきまして過失を認めるに足りる程度の注意義務違反が認められるか否かによって個別的に判断されるべきものということで、今、基準としては今申し上げたとおりでございますので、あとは、その時々に応じて個別のケースごとに、最終的には司法判断によることになるだろうと思われます。

○大脇雅子君 非常に構成要件があいまいな中で、過失犯までも処罰するということは私は問題だろうと思います。  さて、共謀とか教唆とか扇動ということが含まれておりますが、これは国の行政機関の職員のうち、防衛に関連する職務を持つ者とか、契約上何らかの締結をしている者ではなくて、この共謀、教唆、扇動というのは国民全体にかかってきますよね。それは制限がありますか、ありませんか。

○政府参考人(首藤新悟君) 今おっしゃられたような正犯以外に関する三つの罪は、先生御承知のように、今の自衛隊法あるいは他の国家公務員法における守秘義務にもひとしく設けられているものでございまして、今回、特にそういった三つの罪が新たにつくられたというものではないわけでございます。

○大脇雅子君 だから、ないから、これは国民全般、すべてが教唆、扇動、共謀の罪に問われる可能性があるということを言っていらっしゃるんですよね。

○国務大臣(中谷元君) 現在の自衛隊法並びにほかの一般国家公務員法でも、この教唆、幇助、企てはもう全国民にかかっております。それと今回の改正案の範囲というのは同様でありますし、また、形態等におきましても、刑法上の犯罪行為であるというふうな内容で、同様ではないかというふうに思います。

○大脇雅子君 治安出動下令前に言う情報収集ということについて武器使用と認めてございますが、この場合、これは偵察活動を考えると思うんですが、この治安出動下令前に言う情報収集は国内に限定されますか、あるいは外国で行うことも想定しておられますか。

○国務大臣(中谷元君) これは国内だけでございます。  と申しますのは、これは治安出動のかかる前の段階での情報収集でございまして、治安出動の発動等は我が国の国内に限られておりますので、我が国の国内での活動であるという範囲の中でございます。

○大脇雅子君 九十一条の二の警護出動時の自衛官の権限について、武器使用をするかしないかという判断は、個々の自衛官ですか、部隊の責任者ですか。

○国務大臣(中谷元君) 武器の使用の判断はだれが行うのかという御質問でございますけれども、これは「職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害」というのは、仮にそのまま放置しておけば警護対象施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害ということでありまして、そういう事態が考えられるわけでありますけれども、このときの武器の使用につきましては、同条五項の規定によりまして、正当防衛または緊急避難に該当する場合を除き当該部隊の指揮官の命令によるということとされておりまして、原則として警護出動を命じられた部隊の指揮官の命令によって武器を使用することとなります。

○大脇雅子君 先ほどの中谷防衛庁長官の御発言で非常に重大な発言があったと思われます。  憲法上の表現の自由とか国政調査権の行使の場合は違法性の阻却理由になるというふうにおっしゃったと思うんですが、違法性の阻却の理由になるということは、刑法の犯罪上でいえば構成要件該当性があって違法性の阻却ということが問題になるわけですから、そうすると表現の自由、先ほどの取材活動の自由ということを含めて、まず構成要件該当性というのは形式的には表現の自由との関係ではあるというふうに理解するのですか。これはしかし非常に重大な御発言だと思うのですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(首藤新悟君) 先ほどの大臣の答弁はいわゆる西山事件判決を引いて答弁したものでございますが、その判決は、報道関係者の教唆犯の成否につきましては教唆の構成要件には該当する、が、といって、いわゆる刑罰法令に触れる贈賄、脅迫とか、あるいは社会通念上許されない方法とかいったようなことでない限りは、基本的に正当業務行為として違法性が阻却されるものとの判断という趣旨で答弁されたものでございます。

○大脇雅子君 先ほどの西山事件でこの構成要件に該当するかどうかという判例の判断は、他人の人権を侵害するような違法な取材行為であるから構成要件に該当すると言っているわけですから、すべての取材活動が構成要件に該当するという判例ではありません。  したがって、私は、すべてを違法性阻却理由にして、いわゆる取材の自由というものがこの構成要件該当性になるというふうに防衛庁が御判断になっているとすれば、これは重大だと思います。正当な取材活動というのは構成要件に該当しない、これは判例であります。おかしいんじゃないですか。

○政府参考人(首藤新悟君) 繰り返しになりますが、先ほど来の答弁は西山事件判決のポイントの部分を使って御答弁申し上げたわけでございますが、今、先生がおっしゃられたような取材活動がどのような人間によるどのような場合のあらゆる態様の取材活動がすべて教唆の構成要件に該当するかと、するというようなことは、いわゆるおよそ常識で考えてそのようなことはないとは思います。

○大脇雅子君 そうしたら、重大なことは、国政調査権ですら違法性の阻却事由だというふうにおっしゃったのは、国政調査権は憲法上認められた私どもの正当な権利行使でありまして、犯罪の構成要件該当性があるというふうな前提の御発言ならば、撤回していただきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 当然、国会議員に与えられた国政調査権というのは権利であると思いますが、しかし、この教唆に当たること、贈賄とか強要とか、そういう刑法に触れれば問題があるのではないでしょうか。あくまでも刑法に触れない範囲での国政調査権だというふうに思っております。

○大脇雅子君 そうしますと、確認をさせていただきますが、取材活動も適正であること、そして正当な国政調査権の行使である限りは構成要件該当性がないということを明快に確認させていただきたいと思いますが、御返答をお願いいたします。 ○政府参考人(首藤新悟君) 私どももそのように認識いたしております。

○大脇雅子君 長官の御返事をお願いします。

○国務大臣(中谷元君) そのように認識をいたしております。

○大脇雅子君 あと一分でございますが、私は、防衛秘密に関するこの漠然とした規定が将来我々の、自衛隊あるいは武力に対する、実力に対するシビリアンコントロールということ、そして民主主義の根底をも突き崩す危険性があるということを申し上げ、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならないよう厳格に防衛秘密を明示され、その運用をされなければいけない。  私は、この自衛隊法改正案には断固反対することを表明して、質問を終わります。


外交防衛委員会  2001年10月26日

○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。  アメリカによるアフガニスタンへの武力攻撃というものもかなり長期にわたってまいりましたが、アメリカの武力攻撃による民衆の被害の状況はどのようなものと把握しておられますか。

○委員長(武見敬三君) 答弁者はどなたにいたしますか。

○大脇雅子君 外務大臣です。

○国務大臣(田中眞紀子君) 米政府は、これまでの発表によりますと、米政府の発表によりますと、今般の軍事行動に際して民間人に死傷者が出たことは一部確認をされております。  そして、アフガニスタンでは、それまでの内戦等の結果から国内外におきまして多数の難民と避難民が残念ながら発生いたしております。  そして、国連は先月二十七日にドナーアラートを発表し、今後生じ得る新たな難民と避難民の人道上の必要にこたえるための国際社会の支援を呼びかけてきております。

○大脇雅子君 今回、社会民主党はパキスタンへ調査団を派遣いたしました。十月二十日から十月二十四日までイスラマバードとペシャワールに参りまして、UNHCRのアフガニスタン代表部、難民キャンプ、ペシャワールの会の活動、その他病院等視察をして帰ってまいりました。現地の衣装をまとって人々の生の声を聞いてきたと。その場合に、いわゆるメディアや情報として伝わっているものと実相はかなりの違いがあるというふうに報告をしておりました。  今般、まず空爆の被害を受けた人々が治療を受けている病院を訪ねたわけですけれども、そこにいた子供を含めた十三人は、運よく家族が国境まで到達して、パキスタン側にいた親切な個人に出会えて病院まで運ぶことができたという偶然で命が助かり、今治療を受けていると。国境までさえ行くことができない、国境まで来ても迎えてくれる人がいない空爆の被害者は治療を受けることさえできない状況であるということであります。  その中でUNHCRは、国境を越えられないアフガンの人々に何の支援もできない現状の中で、今その人たちが餓死の危機に瀕しているということが言われております。UNHCRによればそれは百万とも言われ、現状からいえば五百万人とも言われ、そのうちの少なくとも一〇%である十万人がともかくこの冬を越せなくて餓死するのではないかと危惧されております。  ともかく、こうした見殺しにされている人たちに水と食糧、それも小麦粉と油、命をつなぐための最低限のものを何とか送りたいということを言っているわけですけれども、そうした国内避難民にどう対処していくか、外務省としてはどのようにこの問題を考えられるでしょうか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 社民党の代表の先生方がパキスタンに行かれて現状を見られてのお話は、本当に臨場感もあるし、大変な状態であるということがよくわかりました。  御存じのとおり、UNHCRを通じまして前回テント、そのほかのものはお送りしましたけれども、今の小麦粉でありますとか油であるとか、そういう本当に身近な食品が必要である、食品以外のものももちろんですけれども、そうした御意見に接して、またこれからの援助の仕方ももう一度見直す必要もあるかということを感じました。  ただ、今までのことで申し上げますと、アフガニスタン国内の避難民等に対しましては、もう午前中も、また昨日の質疑でも申し上げておりますが、WFPでありますとかユニセフとかICRCなどの国際機関が支援を実施しておりまして、私どももそういうところに協力もいたしております。  そして、アフガニスタン及び周辺国におけるこうした人々への支援については、国連のドナーアラートを踏まえまして、今後の具体的な拠出要請に応じまして、全体として二〇%、最大一億二千万ドルまでの支援を行う用意がある旨、表明をしております。そして、その一環として緊急アピールを発出したUNHCRに対しましては六百万ドルを支援することといたしました。またさらに、要請を受けまして難民用の生活関連物資協力及びその輸送協力も行っております。  いずれにいたしましても、今後とも現地の情勢をよく踏まえまして、今、社民党さんからいらした代表の方の御意見ももちろん十二分に勘案させていただきまして、いろいろと協議の上、積極的に難民対策に対応していきたい、支援していきたく存じます。

○大脇雅子君 国内避難民に関するUNHCRの回答によりますと、UNHCRが援助できる対象は決まっていて、それは国外に逃れた難民である、国際法は国家主権に基づいており、基本的には自国の国民については国家が責任を持つ、しかし国外に出た時点で難民となり、国家の保護が受けられないから国際社会が協力して助けるという考え方に基づいているわけであります。  国内避難民の支援に関して、UNHCRは国連事務総長もしくは総会からの要請によって法的根拠を持つことができるとされていると。アフガンに関しては、要請もないし、治安状況としてできる状況ではないということでありますので、私は、大きなホロコーストとも言われ始めたこの空爆の結果というものを危惧いたしまして、空爆停止のための働きかけというものを日本はやるべきではないかと。そして、国連に対しても、こうした国内避難民の支援をすることが、それを難民化させないための大きな要素となると思いますので、そうした国連での国内避難民の救助ということに対して働きかけをしていってほしいと思うわけですが、いかがでございましょうか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 確かに、アフガニスタン国内にいて国境を越えられないでいる方たちの状態はさぞ大変なものであろうというふうに推察はいたしておりますけれども、今回の空爆の問題につきましても御意見はいろいろあろうと思いますが、やはり今回の発端がアメリカで起こったあのテロであるということ、このことは人類全体に対する極めて卑劣な行為でありまして、こうしたことを繰り返さないようにテロと戦う米英を中心とした世界の国々とともに、私どもも憲法の範囲内でできる限り最大限適切な支援をしていくということをいたしております。  人命が失われたことは本当に残念でございますけれども、やっぱり罪なき市民が犠牲者にならないように最大限努力をしているということも、アメリカの政府も言っておりますので、一日も早くこうしたことのテロがまず根絶されることを願っております。

○大脇雅子君 空爆による多少の被害はやむを得ないと総理は言われましたが、罪のない子供や女性や市民たち一人一人の命の重さというものは、私は等しいということを肝に銘じて施策を立てていくべきだと思います。  それでは、官房長官と外務大臣にお尋ねいたしますが、自衛隊の難民派遣ということはあるのでしょうか。国連の方からの要請はないという御発言も官房長官から、二十四日でしたかの期日で御発言になっていると思いますけれども、今どのような状況にあるのでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) 難民支援について、今の状況において行けるかどうかと、こういうことになりますでしょうか。  国連の機関から要請があれば難民支援はできる、これはこの法律ができてからの話でありますけれども、それはそういうことであります。今現在で難民支援をするということになりますと、これは国連のPKOの活動で、PKO法でもって対応するということになろうかと思いますけれども、これは現状においてはそのPKOをするということが国連安保理で決定しているわけではございませんで、したがいまして、これでは対応できないというように考えております。

○大脇雅子君 社会民主党の調査団の報告によりますと、今、現地では反米感情が予想以上に高くなっていると。難民キャンプなどで男の人たちが集まっているというと、タリバンへの参戦の募集であったり、あるいはモスクで女の人たちが集まっていると、タリバンへの募金でイヤリングなどを出していくとか、そういったものを見ておりまして、その人たちは、なぜ日本が助けてくれないかと口々に言ったと言われます。  武器を持って自衛隊の服装で、文化が違って言葉も通じないところへの難民支援ということは、非常にトラブルを完全に持ち込むのではないかということが報告されてきておりますので、自衛隊による難民支援ということについてはくれぐれも慎重にしていただきたい。むしろ行かないということを決められる方がいいのではないかということであります。ペシャワール会のボランティアでさえ、半数以上が文化や行動様式に合わず帰国せざるを得ないようなところに当面している。  何か十一月に入って調査団を派遣されるということも聞いておりますが、この点について、再びいかがでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) これは、この法律が通りますと、その現地情勢というものは把握しなければいけない。したがいまして、その現地情勢把握のために調査団を派遣するということは、これは必要性が生ずると思います、私は。ただ、どの地域でどういう活動をする可能性が出てくるかとかというようなことにつきましては、これからだんだん決まってくるということもございますので確定的なことを申し上げるわけではありませんけれども、その必要性は生ずるだろうと、一般的にそんなふうに感じております。

○大脇雅子君 防衛庁長官はいかがお考えですか。

○国務大臣(中谷元君) 社民党の調査の結果の報告も参考にさせていただきたいと思いますし、また現地の状況に関する情報の重要性は言うまでもございませんので、ありとあらゆる情報を総合的に勘案して判断したいと思います。  また、活動する上においては、風習の違い、生活観も人生観も違うイスラム社会での活動となってまいりますので、重々にその国の状況、立場等を考慮すると同時に、NGOの民間の方々とも十分連携をとって、お互いのいい点を生かして、現地の難民の皆様方が救われるような、そういう国際的にも評価されるような活動を、もし仮にするとしたら、実施をいたしたいというふうに思っております。

○大脇雅子君 昨日の毎日新聞によりますと、「国連のアナン事務総長は二十四日、パレスチナ自治区に侵攻したイスラエル軍を批判するとともに、即時に攻撃を停止して撤退するよう求めた。国連安全保障理事会でも同日、米国がイスラエル批判の声明を準備していることを明らかにした。」と報じております。  こうした紛争の根源は、中東のパレスチナ問題にあるということを多くの人が指摘しておりますけれども、こうしたパレスチナ問題と日本政府のこれまでとこれからの取り組みということについて、外務大臣にお尋ねいたします。

○国務大臣(田中眞紀子君) このパレスチナ問題というのは、もう歴史的に数千年も、起源をたどれば中東和平の問題というのは非常に長い過去があるわけでございますけれども、その安定のために世界じゅうが、日本も含めて、努力をしてきているということはもう御存じでいらっしゃると思います。  先回のローマでのG8でも、まず最初に取り上げられているテーマがこれでございますし、また、総理が行かれたジェノバ・サミットにおきましても、この中東にどのようにして和平をもたらすか、このことが非常に大きなキーであるということは、異口同音にどの代表もおっしゃっていることでございます。  そして、九三年に現行の交渉の土台となっているオスロ合意が成立したことは御存じだと思いますけれども、それ以来一貫して、世界じゅう、日本ももちろんですけれども、交渉による、話し合いによる解決というものを訴え続けてきております。  そして、和平プロセスは、昨年九月、イスラエルとパレスチナの間で衝突が発生いたしまして非常に困難な状況になりました。それに対しまして、日本としても、暴力の停止と和平交渉の再開を両方の当事者に対して強く働きかけましたし、一番直近は、きょう午前中も申し上げましたけれども、きのうのこの委員会終了後、私はイスラエルのペレス外務大臣にお電話をしまして、とにかく今まさしく大脇委員がおっしゃった状態を早くやめること、とにかく引き揚げて、話し合いをしてほしいということを申しました。先方も、いろいろな理由もおっしゃっておられましたけれども、非常に強く私の発言を受けとめて、期待にこたえる行動をしたいということを結論としておっしゃってくださいました。  その電話を切ってからすぐにアラファト議長におかけいたしまして、その経緯をお話しして、東京で前からプロポーザルもしていますけれども、いつでも日本の政府も日本国民も中東和平のための準備を、どんなお手伝いもいたしますからということを申しましたらば、アラファト議長も、今まで、過去の経緯をいろいろおっしゃっていましたけれども、しかし、好きでこういうことをやっているわけではなくて、とにかく平和、平和になること、それを自分たちも希求してやまないので、そうしたことの日本の努力にも感謝もするし、そのようにしたいということをはっきりおっしゃっていたことを御報告申し上げます。

○大脇雅子君 そういたしますと、国連がパレスチナの自治区への侵攻を批判し、今まで、米国はこれまで拒否権をちらつかせてこうした動きを封じてきたわけですけれども、米国も国連と共同歩調をとって、これ以上事態が悪化するということを避けて、イスラム諸国全体の怒りに発展して、さらなる国際テロ対策やテロの軍事行動が行われないというふうに判断をして、ある意味では非常に転機に今まさになっていると思います。  そこで、ぜひ日本も国連の諸国と手を携えまして、こうした動き、中東和平にイニシアチブを発揮していただきたい、田中外務大臣、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  終わります。


外交防衛委員会 締め括り総括  2001年10月26日

○大脇雅子君 総理にお伺いいたします。  現行憲法九十九条は、天皇を初め国務大臣、国会議員等の憲法の遵守義務を規定しています。この規定は、歴史的に見ますと、支配者の専横あるいは恣意的な支配を戒めて権力を抑止するということが法の支配として明言されている重要な意義だと思われます。総理に、この遵守義務というものをしっかりと認識しておられるか、お尋ねをいたします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 憲法はもうだれでも守らなきゃならない、法律も守らなきゃいけない、これはもう当然のことでありまして、遵守義務はだれでも持っているわけです。かといって、改正議論をしてはいけないということにはつながらない。法律も同じであります。法律があるから改正議論をしていけないというものではないのと同じように、憲法の遵守義務、憲法を守る義務はだれでも持っています。しかし、改正議論をしてはいけないという議論には通じないと思っております。

○大脇雅子君 総理は、衆議院の方では、憲法の前文と憲法九条の間にはすき間があってあいまいな点もある、そこら辺をいろんな方々から知恵をもらいながら考えていくんだというような御趣旨の発言をされています。そして、十月二十三日は、憲法の前文と憲法の九条を政治的に考えましたということで、この法案の根拠について御説明をされています。  この憲法の前文と九条のすき間という発言については、私は奇妙な論理だな、全く理解できないと思いますので、もう一度この趣旨はどういうことを言おうとされているのか、お尋ねをいたします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 憲法自身にいろんな解釈があるんです。今までの御議論を聞いてもわかるように、同じ憲法でありながら、片っ方では自衛隊は憲法違反であるという議論が厳然としてある、一方、自衛隊は合憲であるという議論がある、それほど憲法解釈についてはいろんな解釈があるわけですよ。  そういう中で、いかに日本の憲法を守りながら政治を運営していくかという場合、今回、前文は、憲法の前文をよく見ると、いずれの国も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないと、普遍的な政治道徳に対しては、国家の名誉にかけて、全力を日本としても尽くさなければならないというような、いわゆる精神を前文でうたっております。  今、国際社会が国際の平和、安全の脅威のテロに向かって各国は立ち上がろうというときに、日本も日本の持てる力を発揮して、どうやって国際社会と協調してこのテロに立ち向かうかというのが問われている。そういう際には、我々は自衛隊は合憲と思っていますから、日本の国力に応じて、憲法の範囲内で、武力行使はしない、戦闘行為はしない範囲で自衛隊の働ける場を与えてもいいんじゃないか、任務を与えてもいいんじゃないかということで、その規定がないんだったらば、法律の裏づけを持って、自衛隊に戦闘行為ではない、武力行使ではない新しい任務についてもらうという法律をとるべきだということで考えているわけでありまして、私は、そういう中において、憲法違反であるという認識は今回の法律において持っておりません。

○大脇雅子君 憲法の前文の最も根幹的なところは、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようとした決意というところにあり、我らは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認をするというところに私は魂があると。そして、前文は、その九条というものをどう解釈していくかという点について一体となってその精神というものを書いたものであって、前文と九条との間にすき間があるという言葉は、今、総理が御説明になった説明では、何か前文のつまみ食いのような感じがいたしまして、それは納得がいかないというふうに思います。  そうしますと、憲法に依拠しないあいまいな根拠に基づいてこの新法ができるのかなと。そうすると、もう到底、法治国としては認められないと、こういうふうに理解するのですが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、自衛隊が違憲という立場に立つか合憲という立場に立つかによって違ってくると思いますが、我々は憲法九条に今回の法律は違反していないと考えております。

○大脇雅子君 このすき間論というのは、自衛隊の合憲、違憲とは全く関係がない次元の問題であります。  内閣法制局長官にお尋ねいたします。  内閣法制局長官は、十月の二十三日に山本一太議員の質問の答えて、いろいろ従来から総理がおっしゃっておられますけれども、憲法の前文と九条の間で、そういう法律的な枠組みの中で、国が新しい事態に対処するために必要な現行の法律がない部分を埋めるために今回のテロ対策特別措置法案を提出した、一体、これは少し法律的な説明になっていない。憲法の前文と九条の間で、そういう法律的な枠組みの中でと、これは法律的にどう解釈したらいいんですか。もう少し法律家としてコメントしてください。

○政府特別補佐人(津野修君) これは御指摘のときに御答弁をさせていただいておりますけれども、まずその前提といたしまして、憲法は国の統治の基本的な枠組みを定めております。その憲法のもとにおいて、国等の行政権限の内容を定め、あるいは国民に義務を課しまたは権利を制限するという場合には法律によらなければならないという、いわゆる法治主義の原則があるわけであります。言いかえますと、憲法という枠組みの中で新しい事態に対応すべきであるけれども、そのために必要な現行の法律がないというような部分は新しく法律を制定して埋めていく必要があるというふうに考えられるわけであります。  その上で、先日の答弁、今御指摘になった答弁になるわけですが、憲法の前文と、これは前文で国際協調主義の理念が書かれてあります。その理念と、それから第九条のいわゆる平和主義の規定がございます、戦争放棄の、それから武力行使の禁止の規定がございます。そういう枠組みの中で、国が新しい事態に対処していかなければいけないというために必要な、その場合によって立つべき先ほど言いました法治主義に基づく現行の法律がないという部分があるわけでありまして、それを埋めなければ、それを埋めると言うと若干言葉としてはいささか適当ではないかもしれませんが、それを、その部分を埋めるために今回のいわゆるテロ対策特別措置法案を提出したという趣旨を述べておるわけでありまして、そういう意味で憲法解釈を変更するとか、あるいはその枠組みを変えるとかいうこととか、あるいは拡大するとか、そういったようなことは今回の法案では一切考えてしているわけではございません。  もうちょっと実態的な……

○大脇雅子君 簡単にやってください、時間がありませんから。  前文はやはり九条のいわゆる精神を明快にしたことで、憲法の前文と九条の間でということは、それはおかしい言葉ではありませんか。その点だけ。おかしくないですか。

○政府特別補佐人(津野修君) 憲法の前文と九条の間と、間というかすき間といいますか、そういう趣旨、意味は私は使っておりませんが、よくそういう、意味というのは先ほど言いましたような意味だと、御説明しましたような意味でございます。

○大脇雅子君 使っていないとおっしゃいますから、議事録にしっかりそう書いてあるということだけ御指摘して、終わります。  さて、この新法ができます場合に、自衛隊の派遣等、湾岸戦争のときは百三十億ドルに上った財政支出を思いますと、今回どのような費用、どの程度の費用、財政支出を考えておられるのか、どういう展開をされるのかということについてはどうでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) まだこの具体的な活動、行動の中身は決まっていないんですよね。ですから、どういう規模で出るかというようなことも決まっておりません。ですから、そのことが決まらないと費用の算定もできないということになるわけであります。例えば人件費とか燃料等物品購入費等とか、いろいろ内容によりましてあるわけでございますので、現状では申し上げることはできません。

○大脇雅子君 私は、今、米国が個別自衛権の行使というところでイギリスとともに空爆し特殊部隊等による軍事攻撃を展開しております。戦略目標を絞り込んでいるという報道の陰で、市民や医療施設への誤爆による犠牲者も伝えられ、おびただしい数に上る難民あるいは国内避難民という人たちが発生している、こうした新たな状況で私は、アメリカの自衛権の行使という場合にこの範囲を大きく逸脱しているのではないかと。  自衛権の行使は国連の枠組みが成立するまでの間で、緊急性やあるいは平衡性というかバランスがあるべきだというふうに言われている場合に、やっぱりこれは対抗措置と呼んだ方がいいのかもしれませんが、それもかなり行き過ぎているというふうに思うのですけれども、先が見えないこの紛争に対して、総理は、亡くなっている多くの子供たちや女性たちの命の重さを考えてどのように状況を見ておられますか。戦争を中止するためにどういう努力をこれからされようとしていますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、それではテロによって犠牲になった人たちをどう見ているかという視点が大事じゃないかと思っています。アフガンを武力攻撃する前に全く関係のない人たちが何千人殺されたか、そういう点に対して我々はどういう態度をとったらいいんだろうかと。  今まで、米国の同時多発テロ発生以前、九月十一日以前にはもう各国でテロが何回か起こっていました。あの世界貿易センターでも過去、爆破事件が起こって何人も犠牲になっている。しかし、何千人という数でなかったために、日本も、これは日本のことではない、各国も自分たちのことと考えなかった、人ごとと考えた。しかし、今回初めて九月十一日の米国の同時多発テロでこれは人ごとじゃないなと。アメリカをねらったテロだったけれども、犠牲になった人は全く無関係な人々だった。初めて立ち上がったわけでしょう。  今、アフガンに攻撃しているから難民が出ている、犠牲者が出ている。攻撃する以前から多くの難民は既にアフガンから出ていたんです。何人もの無関係な市民が殺されたんです、テロによって。  そういうことを考えると、私は、テロ撲滅のために、根絶のために今世界が立ち上がって、アメリカの個別自衛権を国連が認めているんです。国連憲章第五十一条に基づいて、今回アメリカの行動は安保理に報告されておりまして、そのアメリカの行動を国際社会が支持している、認めているわけですから、日本も国連社会の加盟国としてそれに一緒に立ち上がるのは私は当然だと思います。

○大脇雅子君 私も、テロの犠牲者になった方たちに対しては心から痛惜の念を禁じ得ないものでございます。  しかし、だからといって、今アフガンの中で空爆によって犠牲が出ている人たちの命も同じ重さだというふうに私は考えるべきだと総理に言いたいと思います。平和に生きる権利、恐怖と欠乏から免れて生きる権利は、貿易センターで生きていた人も、そして私たちも、そしてアフガンの人たちもあるんだということを平等にはかりにかけるべきだと私は思います。  とりわけ、社会民主党がパキスタンへ調査団を出しましたときに、難民になり得ない、国内で避難をして国境までたどり着けない何百万人の人たちが今この冬の中で餓死をするかもしれない、これは世界のホロコーストではないかとさえ言われている現状について、私は先にその支援を政府に考えていただきたいと申し上げましたが、私は、戦争はともかくやめること、そして平和のために忍耐強く対話と説得を続けること、そしてテロの犯人を追い詰めて裁きにかけること、これが一番大切だということを申し上げて、質問を終えたいと思います。


外交防衛委員会 反対討論 2001年10月26日

○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、テロ対策特別措置法案、自衛隊法の一部改正案に反対し、民主党提出の修正案にも反対の立場を表明して討論を行います。
 反対の第一の理由は、テロ対策特別措置法案は、戦後、日本がみずからのアイデンティティーである日本国憲法の理念を踏みにじり、憲法とその法秩序の体系、政府解釈とも整合性を欠く法案であるということです。
 政府・与党はテロ対策を口実に、自衛隊の海外派遣の範囲の拡大と集団的自衛権行使、武器使用の要件緩和のもと、武力行使容認への道を開こうとしています。
 従来、周辺事態法における自衛隊派遣も日米安保条約における派遣も、自衛隊法に基づく自衛隊の任務もまた専守防衛、国内に限定されてきました。しかし、今回の法案ではこれらを大きく逸脱し、自衛隊の派遣地域は無限定であること、近代戦では非戦闘地域は一瞬にして戦闘地域となり得ること、アメリカの軍事行動の支援という実質的な集団的自衛権行使に踏み込むこと、武器使用の緩和など、日本を戦時体制へと導くものであり、断じて容認できません。防衛政策の根幹を変えるものであり、社会民主党は断固この法案に反対をいたします。
 第二は、自衛隊法一部改正案の問題点についてであります。  防衛秘密が新設され、防衛秘密の別表四は抽象的で漠然、包括的、広範囲、秘密の指定は防衛庁長官の専権に属し、指定の客観的基準がない、構成要件のあいまいさは罪刑法定主義に反します。守秘義務の対象者を業務にかかわる民間業者などにも拡大すること、さらに過失を含めた厳罰化が行われることになっており、自衛隊の秘密指定が多用され、国民の知る権利と表現の自由が侵害される危険が大であります。あわせて、治安出動以外に自衛隊の警護出動を認め、その際武器使用も容認するという改正案は断固撤回、廃案とすべきであります。
 第三は、余りにも拙速な審議であるということです。
 例えば、PKO協力法、周辺事態法はともに八カ月ないしは一年の時間をかけて慎重な国会審議を行ってきています。戦後五十年に及ぶ日本の方向性を根本から覆そうとする重大な法案でありながら、衆参両院でわずか十日間の審議で法案を成立させようとする政府の姿勢は、国会と国民を著しく軽視するものであり、日本の議会制民主主義に対し強い危惧を抱かざるを得ません。
 テロという卑劣な行為は断じて許されるものではありません。しかし、テロを根絶するということと、自衛隊を海外へ派兵し、米軍の軍事行動を支援するということとは全く別の問題であり、アジアの近隣諸国や中東諸国との友好関係を築いてーきたこれまでの外交努力をも根底から突き崩すものであります。  我が国のとるべき道は、米英軍による軍事報復を即時中止するよう国際世論に働きかけ、中東の和平と経済援助を含むアフガン復興へ向けた外交努力を重ねることであり、戦火の拡大を助長される行為は厳に慎むべきであることを訴えます。
 最後に、私は、ノーベル賞受賞者、リゴベルタ・メンチュ氏からブッシュ大統領への手紙の一節を紹介して、反対討論を終わります。
 怒りでなく冷静な知恵、復讐ではなく正義の模索、それこそが今求められているのではないでしょうか。戦争を宣言される前にあなたにお願いしたいのは、違った形の世界の指導者としてのあり方を考えていただきたいということです。それは征服ではなく説得です。目には目をという野蛮人にとっての正義、中世の暗黒時代の人間の思考を私たちは過去千年からかかって克服してきたことを人類は示すことができるのです。
 神や創世について違う考え方を持っている人々を尊敬することを学ぶために新たな十字軍は不要です。進歩がもたらしてくれる成果を連帯して分かち、地球上いまだ残っている資源をよりよく守り、そして一人の子供も飢えたり教育を欠いたりすることがないような世界を築くことこそ私たちの望みです。
 終わります。

 


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