公正取引委員会の「著作物再販制度の取扱いについて」に関する質問主意書

2001年6月28日

 雑誌・書籍、新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CDの再販に関する独禁法適用除外制度の廃止の是非について、公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、去る三月二十三日に「著作物再販制度の取扱いについて」(以下「見解」という。)を発表し、著作物再販制度を「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える」としながらも、「文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし、同制度の廃止に反対する意見も多く、なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある」との現状理解から、「現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することを行わず、当面同制度を存置することが相当であると考える」と結論した。
 著作物再販制度は言論・出版・表現の自由と学問・文化・芸術の継承・発展・多様性のために不可欠であり、専門的学術や先進的な少数意見を伝達可能とし、また、これらの著作物を安価に国民が入手できることによって、我が国の社会と文化、民主主義の発展に最も効率よく大きく寄与しており、著作物再販制度の存続を求める立場から、次の諸点について質問する。

1、見解は、いかなる法的性格の文書なのか、すなわち何らかの法的強制力、行政処分性を有する文書なのか否かについて明らかにされたい。

2、見解は、著作物再販制度を「当面」「存置することが相当」と結論しているが、「当面」とはいかなる期間、年数をいい、またいかなる要件、条件を想定しているのか、具体的に明らかにされたい。

3、見解は、公取委として「著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注する」と述べているが、いかなる予算的裏付けのもとに具体的に何をする予定なのか、明らかにされたい。

4、前記「国民的合意」とはいかなる指標・基準によって誰が判断するのか、具体的に明らかにされたい。

5、「関係業界に対し、非再販商品の発行・流通の拡大、各種割引制度の導入等による価格の設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し、その実施を要請する」としているが、具体的にはどのような各種割引制度等を想定しているのか、明らかにされたい。

6、前記割引制度が、著作物再販制度に抵触する場合として、どのようなケースを考えているのか明らかにされたい。  
 また、いわゆるポイントカードは再販契約に抵触するとの見解が一般的であるが、公取委はいかなる見解を有しているのか明らかにされたい。また、抵触しないとの考えならば、いかなる理由によるものか、併せて明らかにされたい。

7、5の「実施の要請」を関係事業者が適当ではないとの判断のもとに実施しなかった場合、公取委は消費者利益に反する再販制度の硬直的運用とみなすのか、またそうみなした場合、何らかの強制的な処置を採るのか、明らかにされたい。

8、著作物の流通についての意見交換の場としての「協議会」は、どのような目的、構成メンバーで、どのような頻度で、いつからいつまで開催されるのか明らかにされたい。また、具体的には何を検討し、そこで決定されたことを関係事業者に実施を約束させるような組織か否か、明らかにされたい。

9、見解は今後、「取引実態の調査・検証に努める」としているが、具体的にどのような手だてを考えているのか明らかにされたい。

10、公取委は、今後、著作物再販制度をどのように取り扱っていくのか明らかにされたい。   

右質問する。

 

公正取引委員会の「著作物再販制度の取扱いについて」に関する質問に対する答弁書

2001年7月31日

1について
 公正取引委員会作成に係る平成13年3月23日付け「著作物再販制度の取扱いについて」と題する文書(以下「取扱いに関する文書」という。)は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第23条第4項の規定に基づき同項に規定する著作物(以下「著作物」という。)の再販売価格維持行為について独占禁止法の適用を除外する制度(以下「著作物再販制度」という。)について、「規制緩和推進三か年計画」(平成10年3月31日閣議決定)を始めとする累次の閣議決定に基づき公正取引委員会が検討を行ってきた結果を取りまとめたものであり、それ自体、法的拘束力を持つものでもなければ、行政処分としての性格を有するものでもない。

2について
 取扱いに関する文書においては、お尋ねの「当面」の期間について、具体的な期間を想定しているものではなく、今後、著作物の流通実態、事業者における著作物再販制度の運用状況、著作物再販制度の廃止が文化に与える影響等の変化を通じて著作物再販制度を廃止することについて国民的合意が形成されたと判断するまでの間、著作物再販制度を存置することを相当としたものである。

3について
 お尋ねの国民的合意を得るための努力については、今後、公正取引委員会において、その具体的内容及び予算措置を検討してまいりたい。
 なお、公正取引委員会は、取扱いに関する文書において述べたとおり、「現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって、消費者利益の向上が図られるよう、関係業界に対し、非再販商品の発行・流通の拡大、各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進すること」を提案し、その実施を要請したところである。また、今後、取扱いに関する文書において示した「公正取引委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする協議会」(以下「協議会」という。)を開催し、著作物の流通についての意見交換を行うことを予定している。

4について
 お尋ねの国民的合意の形成の有無について、その判断の基準等を具体的にお示しすることは困難である日本国政府が、まずは、公正取引委員会において国民各層の意見等を踏まえて判断することとなる。
 なお、著作物再販制度を廃止するためには独占禁止法を改正する必要があり、政府として著作物再販制度の廃止に係る法律案を提出するに当たって、公正取引委員会において関係省庁と協議を行うこととなるが、最終的には立法府において当該法律案が適切かどうかについて判断されることとなる。

5について
 お尋ねの「各種割引制度等」について、公正取引委員会においては、月刊誌等の年間購読者に対する前払割引定価の設定、書籍又は雑誌の大量一括購入等に対する割引、新聞の長期購読者に対する割引定価の設定、音楽用CD等の廉価盤商品の発行等を想定しているところである。

6について
 お尋ねの割引制度やいわゆるポイントカードの提供が、再販売価格維持行為について定めた事業者間の契約に反するかどうかについては、当該事業者間において判断されるべき問題である。
 なお、公正取引委員会においては、著作物再販制度が硬直的に運用されているとの指摘もあることから、可能な限りその運用の弾力化等の取組が進められることによって、消費者利益の向上が図られることが望ましいと考える。

7について
 お尋ねの公正取引委員会の要請は、法的拘束力を持つものではなく、事業者において、当該要請に係る措置を採らなかったとしても、公正取引委員会として直ちに法的措置等を採ることはないが、独占禁止法第23条第4項の規定においては、著作物の再販売価格維持行為について「一般消費者の利益を不当に害することとなる場合及びその商品を販売する事業者がする行為にあってはその商品を生産する事業者の意に反してする場合」には独占禁止法の適用が除外されないとされているところであり、著作物の再販売価格維持行為が右の場合に該当するおそれがあれば、公正取引委員会としては適切に対処することとしている。

8について
 取扱いに関する文書においては、3についてで述べた公正取引委員会の要請について、「これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し、より効果的な方途を検討するなど、著作物の流通についての意見交換をする場として、公正取引委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする協議会を設けることとする」としたところである。公正取引委員会としては、本年秋以降、年一回又は二回の頻度で協議会を開催する予定であるが、その具体的な構成員、設置期間及び検討事項については、今後、検討することとしている。
 協議会は、構成員による意見交換の場であり、お尋ねのような「そこで決定されたことを関係事業者に実施を約束させるような」ものではない。

9について
 公正取引委員会においては、著作物再販制度が運用されている著作物の取引実態について、消費者利益の向上が図られるよう必要に応じて調査を行い、問題点があれば改善を図っていくこととしているが、当該調査の具体的内容については、今後、検討していくこととしている。

10について
 公正取引委員会においては、規制緩和を推進し、公正かつ自由な競争を促進することが求められていることから、競争政策の観点からは著作物再販制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきであると考えており、今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに、現行制度の下で可能な限りの運用の弾力化等の取組が進められることによって消費者利益の向上が図られるよう努めていくこととしている。


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