「神の国」発言に係る森喜朗内閣総理大臣の資質と暴力団に関する質問主意書

2000年6月1日

 森総理の「日本は天皇を中心とする神の国」発言をめぐる報道が続く中で、今般、森総理が中尾元通産大臣の秘書の結婚披露宴で、指定暴力団「稲川会」の会長一家と同席していたことが明らかになった。
 また、保坂展人衆議院議員が、平成十二年五月十九日に「『神の国』発言と森内閣に関する質問主意書」を提出し、それに対する政府答弁書(以下「答弁書」という。)が五月二六日に衆議院議長宛に提出された。
 この答弁書に関し、以下質問する。

1、「神の国」発言について  
(1)答弁書によると、「天皇中心」という表現は日本国憲法の下において「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である」との趣旨で述べたという。しかし、日本国憲法は前文において国民主権を宣言し、第一条で「天皇の地位は国民の総意に基づく」と規定して国の主権者、つまり「中心」は国民であることを明記している。主権者である国民の総意に基づく天皇の地位は、「象徴」である以上、国の「中心」とは解されない。「象徴」と「中心」は、法的に矛盾するのではないか。  
(2)答弁書によると、森総理の発言は、「国民主権の原理に反するものではな」いとしている。しかし、日本国憲法はそもそも国民主権に立った憲法であって、国民主権と対峙する主権者を排除していると考えるがどうか。  
(3)答弁書によると、「神の国」という表現は「特定の宗教について述べたものではなく、地域社会においてはその土地土地の山や川や海などの自然の中に人間を超えるものを見るという考えがあったとの趣旨」で述べたというが、戦前は、地域の土地土地の山や川や海などの自然の中に存在する、人間を超えるものもすべて総括した森羅万象の「現人神」が天皇だったのではないか。  
(4)日本国憲法が「国民主権」を宣言した歴史的意義について、政府の見解を示されたい。  
(5)戦前、「現人神」とされた天皇が、戦後、「人間宣言」を発した歴史的意義について、政府の見解を示されたい。  
(6)日本国憲法で、天皇が「日本国の象徴」「国民統合の象徴」となったことについて、政府見解を示されたい。  
(7)日本国憲法で、天皇の地位が「国民の総意に基づく」と規定された歴史的意義について、政府の見解を示されたい。  
(8)日本国憲法の下で、主権者の国民と象徴天皇の関係をどのように認識しているか、政府の法的見解を示されたい。  
(9)日本は立憲君主国か。天皇は日本の元首ではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

2、創価学会への弾圧について
(1)答弁書は、戦前の創価学会弾圧について「詳細は定かではない」としているが、なぜ「定かではない」のか。
(2)日本国憲法の「信教の自由」が大日本帝国憲法の「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」という制限を撤廃した経緯について、説明されたい。前記創価学会への弾圧も影響したか。
(3)創価学会は指導者らが国家権力によって投獄され、獄死するという弾圧された歴史を持っているが、政府はそうした歴史と現実をどのように認識しているか。

3、暴力団との関係について
(1)政府は暴力団の存在について、どのように認識し、かつ、政策として、どのように取り締まってきたか。
(2)竹下登氏が総理大臣に就任する前、右翼団体「皇民党」によるいわゆる「ほめ殺し」をやめさせるため、当時の与党実力者が指定暴力団「稲川会」会長に仲裁を依頼したといわれているが、それについて、政府はどのように考えるか。
(3)政治家と暴力団の関係について、どのようにあるべきと考えるか。
(4)政府は、森総理が自民党幹事長時代に、代議士秘書の結婚披露宴の場で暴力団と同席し、スピーチまでしたことについて、どのように考えるか。また、一般論として、国会議員事務所と暴力団とが関係を有することについて、どのように考えるか。

 右質問する。

「神の国」発言に係る森喜朗内閣総理大臣の資質と暴力団に関する質問に対する答弁書

2000年6月9日

1の(1)から(3)までについて
 平成12年5月15日の神道政治連盟国会議員懇談会における森内閣総理大臣の発言は、同懇談会の活動の経緯を紹介する趣旨でのものであって、当該発言中の天皇中心という表現については、日本国憲法の下において、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるとの趣旨で述べたものであり、このような意味において「中心」と表現したとしても、象徴天皇制と矛盾するものではなく、また、国民主権の原理に反するものでもない。
 また、「神の国」という表現については、特定の宗教について述べたものではなく、地域社会においてはその土地土地の山や川や海などの自然の中に人間を超えるものを見るという考え方があったとの趣旨で述べたものであり、天皇を神と結び付ける趣旨で述べたものではない。

1の(4)について
 大日本帝国憲法の下においては、天皇が国の統治権を総攬する地位にあったが、戦後はこれが否定され、日本国憲法では、その前文で「ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と国民主権をうたっている。この国民主権の原理は、普遍的なものとして、現在、世界の多くの国の憲法において採用されているものである。

1の(5)から(8)までについて
 天皇の地位については、戦前においては天皇は神と結び付けられ、統治権を総攬する地位にあったが、戦後はこれが否定され、日本国憲法第一条により、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくとされているところである。

1の(9)について
 我が国が立憲君主国であるかどうか、天皇が元首であるかどうかは、君主又は元首の定義いかんに帰する問題であると考えている。

2の(1)について
 「創価教育学会」の関係者に対する検挙状況について、詳細な資料がないことによる。

2の(2)及び(3)について
 大日本帝国憲法は、第二十八条で信教の自由を保障する規定を設けていたが、「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務二背カサル限二於テ」という同条自体の制限を伴っていたものである。
 日本国憲法においては、大日本帝国憲法のような条件を付することなく、第二十条第一項前段において、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」という規定を置いた。
 この点について、第九十回帝国議会(昭和二十一年七月十六日衆議院帝国憲法改正案委員会)において、当時の文部大臣は、「宗ニ對スル安寧秩序ナリ或ハ臣民ノ義務ノ方面カラ制限ヲ設ケルト云フコトニナリマスルト、安寧秩序ナリ或ハ臣民ノ義務卜云フヤウナコトガ、強制的二非常二廣ク解サレマシテ、濫用ノ弊害ガ生ジテ参リマスルコトハ既往ノ経験二徴シテ明カ」である旨説明しているところである。
 なお、大日本帝国憲法下において、御指摘のような団体の関係者が検挙されたことがあったことは承知している。

3の(1)について
 暴力団は、その構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号)であり、けん銃を使用した凶悪な犯罪、薬物事犯等を多数引き起こすなど、健全な市民社会にとって大きな脅威となっているものと認識している。
 暴力団を壊滅に追い込むため、暴力団犯罪の取締りの徹底、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の効果的な運用及び暴力団排除活動の推進を三本の柱とした暴力団総合対策を強力に推進しているところである。

3の(2)及び(3)について
 暴力団は、その構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある反社会的な団体であり、政府としても、暴力団を壊滅に追い込むため、暴力団総合対策を強力に推進しているところであり、国会議員等としては、この点を踏まえ、暴力団に対して良識ある対応を行うことが望ましいと考えている。

3の(4)について
 御指摘の事案については、自民党幹事長時代のものであり、政府として確認する立場にない。
 なお、一般論としては、国会議員のために仕事をしている国会議員事務所についても、国会議員本人の場合と同様、暴力団に対して良識ある対応を行うことが望ましいと考えている。


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