「基地の統廃合(20)」(Base Realignment and Closure、以下BRAC)とは冷戦終了の直前から始まった基地の再配置や閉鎖の計画で、1988、91、93、95年の4つのラウンドで行われた。終了は2001年の予定。98年4月に出された国防総省の報告書(21)によると、2001年までに総額140億ドルが節約でき、さらに2002年以降毎年56億ドルの節約になると見積もられている。しかし、4ラウンドのBRACが完了したあとも過剰な基地の割合は23%にのぼると試算され、新たな2ラウンドのBRACが国防総省から提案された。これによって毎年30億ドルが節約できると見込まれている。このように、基地の統廃合は米軍の近代化にとって不可欠の過程だと国防総省はとらえている。
重要なことは、この基地の統廃合が地域の発展にとっても望ましい方向であることが各種の統計から明らかになっていることだ。4月21日に発表された『経済の再生:軍用地の再利用(22)』には「88年から95年にかけて閉鎖の対象として連邦政府によって選ばれた97の主要な軍事基地のうち74施設はその閉鎖が地域経済に大きな影響を及ぼすものと考えられたが、そのうち62施設は既に閉鎖された。(基地の閉鎖が)地域経済の死を悼む“弔いの鐘”となるのではないかと多くの地域は恐れていたが、実際のところ、(基地の閉鎖は)新しい経済発展への道筋を指し示す“胎動の鐘”だった(23)」と書かれている。そしてこの報告書には、基地閉鎖がいかにうまくいっているかが「基地再利用成功談(BASE REUSE SUCCESS STORIES)」として誇らしげに記されている。また、米会計検査院(GAO)の調査でも、基地が閉鎖された多くの地域が経済的には全米の平均を上回り、閉鎖時よりも経済的に発展していることが裏付けられている(24)。しかし、BRACの対象はほとんど米国内だけであり、沖縄をはじめとする海外の基地については大幅な変更の予定は今のところない。自国の基地を減らし、後述するように、海外の基地は受入国の負担増によって安上がりに運営しようとしているのが米国のやり方なのだ。
前回、前々回の資料でもふれたが、米軍は兵士の志気を高めるためにさまざまな施策を行っている。1999年度の『国防年報(25)』でも「生活の質」(Quality of Life、以下QoL)について第9章をあてており、QoLの6つの柱のうち一つは「軍人やその家族のために安全で近代的な基地内施設や住宅を供給する」ことと記されている。また、「士気向上、福祉、余暇」(Morale, Welfare, and Recreation:MWR)プロジェクトとして、基地内のフィットネスセンター・体育館・図書館・青少年施設などの整備を専門の部署を設けて進めている。とくに、フィットネスセンターの近代化については「Operation Be Fit」として特に力が入れられており、282の米軍基地内にある計576のフィットネスセンターに関する調査とそれをもとにした改善勧告が発表された(26)。3月に公表された『2000会計年度における国防予算概算(27)』によると、家族住宅建設費として30億ドル以上が計上されている。家族住宅を含め軍関連の建設費予算は85億ドル(54億ドルは2000年度、31億ドルは2001年度)である。表2は米国外の建設予定を抜粋したものであるが、公表されているものの中には在日米軍基地の施設は見あたらない(28)。
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| アンスバッハ |
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2100 |
| バンベベルグ |
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570 |
| バンベルグ |
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930 |
| バンベルグ |
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820 |
| マンハイム |
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450 |
| ラムシュタイン |
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710 |
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5580 |
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| ナプレス |
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2675 |
| アビアノ空軍基地 |
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370 |
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3045 |
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| キャンプ・スタンレイ |
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365 |
| キャンプ・ハウゼ |
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305 |
| キャンプ・ケーシー |
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3100 |
| 烏山空軍基地 |
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1200 |
| 鳥山空軍基地 |
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760 |
| 永山 |
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3857 |
| 永山 |
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255 |
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9842 |
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| ロタ |
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1702 |
| モロン空軍基地 |
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1520 |
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3222 |
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| フェルトウェル |
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300 |
| レイケンヒース |
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1240 |
| レイケンヒース |
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580 |
| ミルデンホール |
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410 |
| ミルデンホール |
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100 |
| ミルデンホール |
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230 |
| ミルデンホール |
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1020 |
| モールスワース |
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170 |
| フェットウェル |
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457 |
| レイケンヒース |
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377 |
| レイケンヒース |
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710 |
| ヒルステーション |
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50 |
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5644 |
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もちろん日本には他の「同盟国」ではほとんど例のない「思いやりの深い」施設整備費が存在するからだ。『共同防衛のための同盟国の寄与』には次のように述べられている(29)。
別枠の施設整備計画として、住宅や基地内のサポート・リクリエーション施設の建設、電気・上下水道施設の改善など、生活の質的向上プロジェクトのために、日本は自主的(voluntarily)に多額の予算を支出している。さらに、最近では、施設整備計画をこれまで以上に柔軟(increased flexibility)に運用して、滑走路や防爆シェルターなどの直接的軍事施設の建設も日本側が行うようになってきた。1997年に日本が米軍施設建設・再生・維持のために支出した金額は約9億ドルである。(イタリックは引用者)
別枠とは「労務費」「光熱水費」などの負担を決めた特別協定の枠外という意味である。地位協定24条1項・2項の経費分担原則から日本側が施設整備費を分担する義務はない。しかも、特別協定でも施設整備費は盛られていないから、これはあくまでも日本が「自主的(voluntarily)」に出していると米国は考えるわけだ。金丸信言うところのまさに「思いやり」である。さらに、直接的軍事施設の建設までも請け負うという「柔軟性」まで見せている。
『軍事研究』(1999年3月号)に興味深い記事があった(30)。彼我の違いを如実に示しているので引用する。
米軍の寝袋はゴアテックスなどで三重になっていて南国ハワイから来た米兵で風邪をひいたものはいないが、粗末な寝袋をつかっていた青森の陸自隊員には風邪をひくものが続出した。
今も昔も人間を使い捨てにする日本軍の体質は変わらないようである。しかし、まともな寝袋すら支給しない国が、「自主的」に、9億ドルもの金額を米軍施設のために支出するとは、なんと倒錯した精神であろうか。