路上から居住権を!12月行動宣言 (印刷用ファイル(pdf))
2年間、ひと月あたり3000円のアパートと月に数度の仕事を提供して野宿の 仲間の「自立」を促すという、東京都の「ホームレス地域生活移行支援事業」。 東京都は、この「アパート事業」がホームレス問題一般への解決策だと主張して きた。
それは、事業の目的が公園、河川敷からのテントの一掃であることが公然の秘密 としてあるからだ。こうして、野宿者の存在は社会から覆い隠されていく。
事業が施行されて3年が経つが、路上での暮らしを強いられる人々をめぐる状況 は悪くなるばかりだ。公共地からの追い出しはますますエスカレートし、仲間が 体を横にすることすら許されない。一方、最後のセーフティネットともいわれる 生活保護は、役所窓口による恣意的な運用により姿を歪め、本来の形からかけ離 れたものになっている。「水際作戦」といわれる違法な運用だ。家を失った人々 は、満足に眠ることすらできない生活で、日々声明を削り取られていく。 このような居住の剥奪は劣悪な仕事とからみあっている。野宿者の足下を見て、 弱味につけ込みタダ働きを強いる悪質な飯場や寮が数多く存在する。4年前に 3 人の仲間が殺された朝日建設は典型的な野宿者専門の飼い殺し飯場だった。資本 は「まともに住むこと」を奪うことで利益をあげる。寄せ場では昔からそうだ。 現在の日雇い派遣、消費者金融がやっているのも同じ事だ。労働者から搾りとれ るだけ搾りとって使い捨てる。しかし、寄せ場の「手に負えない奴ら」を手なず けることは資本には決してできなかったし、抵抗は常にそこから生まれた。
この12月、私たちは仲間の生活と生存を賭けて、新しい取り組みをはじめる。
私たちは、路上から直接アパートでの生活を要求し、生活保護を集団で申請、獲
得する行動をはじめる。通常、野宿の仲間が路上から生活保護を申請すると、役
所の窓口は宿泊所での生活を強いる(本人の意思に反し施設入所をこのように強
制することは法的には全く根拠がない)。しかし、宿泊所での相部屋での生活、
監獄のような環境は、多くの人々に生活保護受給を続けることを断念させ、宿泊
所を出ていかせるのに十分だ。しかも、家賃や食費の名のもとで、生活保護費の
多くが宿泊所によりピンハネされる。この中間施設としての宿泊所の強要は、野
宿者に生活保護を利用させないためのものであり、生活保護への拒否感、誤った
情報を氾濫させる原因となっている。
私たちは、役所窓口の違法な運用を拒否するため、アパートでの居宅保護を要求
する。生活保護申請書を自ら準備し、法律に基づく判断が出るまで待機す
る。この方法を切り拓き、私たちに様々な形で協力してくれる法律家の人々の取
り組みによって、少数であるが、すでに何人かの野宿の人々はこの方法でアパー
ト生活を獲得した。この12 月、さらに多くの人々が居住権を取り戻すため一斉
に立ち上がるのを目にするだろう。12月8日からの行動が口火を切る。生活保護
の決定が出るまで、申請した仲間たちは、野宿の仲間と支えあいながら持ちこた
える。
また、同時に私たちは小屋を持たない仲間が安心して暮らせる場を作る。生活保
護が機能していない中、路上に追いやられた何千人もの人々の命を救ってきたの
がテント小屋だった。そこには、同じ境遇、路上で暮らす仲間というだけで助け
合い支え合うつながりが生まれた。しかし、アパート事業により新しく小屋を立
てることが困難になった現在、新たに野宿を強いられる人々は以前よりも厳しい
状況に追いやられている。
これからも野宿を強いられる人が増えることは明らかに思われる。私たちはテン
ト小屋の持つ力を大きくし、そして貧困を強いられる仲間の力を大きくすること
を目指す。
今回の行動は野宿者運動にとって画期的な試みとなろう。これは東京・東部圏の 野宿者だけではなく、全都、全国の野宿者、そしてネットカフェで寝泊まりする 若者など、いま、貧困を強いられるすべての人々にとって新たな未来をひらくた めの重要な一歩になる。12月8日に始まる野宿の仲間が居住権を獲得する一連の 行動に支援と連帯を呼びかける。