のじれん・現場からの声
 

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現場からの声

9月18日(土)Nさんこける

 以前この項でも紹介した48才の元調理師のNさんが就職をきめてから数週間、元気でやっているだろうかと思っていた矢先、ひょっこり炊き出しに現れた。すでにかなりきこしめしている様子、悪い予感がした。

 彼は某国立大学を中退後、数奇な人生をたどって、渋谷に辿り付いた仲間だった。文章もうまく、仲間うちでは知性派でとおっている。そもそも、彼が野宿生活に至ったきっかけは病気だ。入退院を繰り返しているうちに、帰るべき「やさ」を失ってしまったのだ。だから、少し特異な存在ではあった。彼自身にも、他の仲間とは違って自分には病気というやむをえない事情があって、はからずも野宿生活を送っているのだと言うエクスキューズがあったと思う。

 だから、就職が決まったのも彼自身で頑張った結果だった。のじれんの支援とは少しばかり距離をおきつつ自分で職安に通い、苦労して採用にこぎつけたのだ。 就職を決めた時に「野宿生活も長いと、つい、もうこのままでいいか、と思う弱い気持ちが心の中にもたげてくるが、それに勝たなくてはいけない。自分はもう2度と帰ってこないつもりだ」と抱負を語る彼の姿には、もはや野宿者の面影は無かった。それだけに、頑張り過ぎて体を壊さなくてはいいのだがと、仲間の前に現れなくなった後も心配していたのだった。

 そんな経緯で仲間の前から姿を消したNさんだったので、酒を飲んで現れたという事で大体の察しはついた。話を聞くと、仕事帰りに駅のホームで倒れ、救急車で運ばれたのだそうだ。定期的に飲まなければいけない薬の飲み忘れが、倒れることにつながったらしい。結果から言えば、やはり、病気が原因で仕事をクビになったということだ。

 あれほど戻りたくないと言っていた野宿生活に帰ったことで気力を喪失しなければいいが・・・、とりあえずしばらくは酒から離れられないことだろう。(高)

 


(C)1998,1999 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org