のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

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「北海道の労働と福祉を考える会」


―札幌での取り組み―

文責:小西祐馬

 皆さん、はじめまして。私達は「北海道の労働と福祉を考える会」です。この 場を借りて、私達の会の紹介、そして札幌の「ホームレス」の現状について若干 述べさせていただきたいと思います。

 私達の会は、北海道大学教育学部・教育計画研究グループと同・産業教育研究 グループ、そしてその他の学生や研究生を中心として、1999年11月1日に 発足しました。母体となった活動にさかのぼれば、1999年7月に行われた予 備調査から始まり、現在までに3回の調査と、1999年12月、2000年2 月、3月の3回にわたっての「炊き出し」と医師による「健康相談会」を行って きました。 


 <教官中心から学生主導へ> 

 発足前の予備調査、そして発足直後の段階では、教育計画研究グループと産業 教育研究グループの二人の教官が中心となって調査を進め、学生はそれの手伝い をしていたに過ぎませんでした。学生それぞれの動機は様々だと思いますが、 「ホームレス」の人達に対して今まで関心など持った事がなかった人が大多数だ ったと思います。しかし調査を進めていくに従って、野宿する事の、特に札幌の ような北国で野宿する事の尋常でない過酷さを知り、学生は「何とかしなけれ ば」、「私達に何かできる事はないか」とそれぞれ考え、活動のひとつとして 「炊き出し」を行う事を決め、「北海道の労働と福祉を考える会」の活動は学生 主導となり、本格化していきました。  


 <札幌における路上生活者> 

 札幌における路上生活者の存在は、近年の凍死事件等によって徐々に認知され 始めていますが、従来、冬の寒さの厳しい札幌には通年で路上生活者は存在しな いとされてきました。そのため、その正確な数・分布に関する情報は皆無に等し い状態でした。そこで、路上生活者数とその分布を把握するため、99年11月 に第一次調査を行いました。調査場所は札幌都心部の大きな公園、地下街(デパ ート含む)、地下鉄・JR駅という限定された場所、時間も午後7時半から午後 10時まで、調査員は18名(9組)、という条件で調査したにも関わらず、約 50名の路上生活者を確認しました。大きく分けて「札幌駅周辺」と「大通駅周 辺」の二ヶ所に路上生活者の姿が多く見られ、札幌駅の高架下には約15名がテ ントを張って暮らしている「テント村」が確認されましたが、本調査でここ以外 の大通駅周辺の人々は、定住の場所を持たないという実態もみえてきました。 

 1999年12月に実施された第二次調査は、札幌の路上生活者の不安定な生 活の現状を聞き取ることによって、さしあたって必要な支援のあり方を考える為 に行われました。17名の路上生活者の方が調査に応じてくれましたが、1日に 3度の食事を取れている人はほとんどいないこと、「テント村」以外の人は寝る 時間が主に不定であること(昼に暖かい屋内で寝て、夜の間は歩き回る)、多く の人が高齢にも関わらず、ここ最近では医療機関での受診経験がないこと、多く の人が「炊き出し」を希望していること、等が明らかとなりました。また、(私 達が第一次調査で把握している)路上生活者の規模が50数名というのは少なす ぎる、実際は100名から200名はいる、という声を路上生活者自身の口から 聞きました。この第二次調査を受けて、私達は「炊き出し」と医師の力を借りて の「健康相談会」を行う事を決めました。 


 <「炊き出し」と「健康相談会」 > 

 これまで、3回の企画を行ってきましたが、毎回試行錯誤の連続です。1回目 は1999年12月25日に行い、分かっているだけで2名の要治療と判断され た路上生活者を福祉事務所につなぎ、医療扶助の適用にこぎつけることができた こと、「札幌初の炊き出し」ということでマスコミに報道され、市民の関心を喚 起できたことなど、それなりの効果をあげました。しかし問題として、予想され る最大の路上生活者数200名から見ると、少ない利用者数(「炊き出し」に参 加した路上生活者は約30名、「健康相談会」は12名)だったということがあ げられます。 

 2回目は2000年2月に同様に行われましたが、参加者数は減少しました。 事前のPR不足、前回の報道陣のテレビカメラに対する拒否反応、などの理由が 考えられますが、やはり、私達が路上生活者の方から十分信頼されていないこと に尽きるのだと思います。  

 そして、3回目は3月に行いましたが、ここで初めて私達は大通駅会場を設け ました。市民会館の一室を借りて「健康相談会」と生活用品とおにぎりの配布を 行ったのですが、当初の予定を超えた20数名の方が来てくださいました。これ は前回の反省を活かしてPR活動に力を入れた結果だと思います。私達自身、数 回にわたってビラを配布し、さらには、協力を申し出てくれた路上生活者の方に ビラを配布してもらいました。しかし、札幌駅会場では、物資配布に5名、健康 相談会は1名と、さらに参加者は減ってしまいました。  


 <これからの方向性> 

 札幌で最も問題なのは「寒さ」ですが、未だ私達にも具体的な案は挙がってい ません。札幌市行政では、私達の後を追うようにして調査を行い、現在市議会の ほうでも議論が起こっている様ですが、今のところ路上生活者に対する支援策を 掲げる気配はありません。それどころか、「テント村」の場所で、定期的にフリ ーマーケットを行い、開催中はテントをたたんで撤去することを要請してきまし た。本格的な立ち退き要求はなされていないようですが、このフリーマーケット には少なからずその目的があると見受けられます。現在、私達は「テント村」の 人たちと話し合い、情報交換を行っていますが、これからは行政との話し合いも 必要となってくるかもしれません。  

 札幌の路上生活者はそれぞれが孤立しています。「テント村」でさえ、小グル ープに分かれていて、「村」と呼べるほどではありません。これからは、当事者 自身の話し合いの場を設ける事も考えていく必要があります。 

 先生のお手伝い的だった2回の調査、無我夢中でやってきた「炊き出し」と 「健康相談会」。ここに来て私達は、「北海道の労働と福祉を考える会」の方向 性について見失っているようでした。そもそも、全員が共有できる「方向性」な どなかったのかもしれません。十分な議論を先延ばしにしていました。現在、私 達の目指すべき道について議論を続けていますが、現在、会の活動の柱とし て、?調査・研究活動、?支援活動、?広報活動、の3つを挙げることには合意が なされています。今年に入ってからは支援活動のみに力を入れ、調査は行ってい ませんでした。これからの方向性として、「ホームレス」問題をより深く考える ための勉強会、行政に訴えていく為の調査・研究活動にも力を入れていきます。 広報活動としては、現在第1号が発行されている会報「ともに生きる」を中心に 行っていきます。それと同時に、できれば支援活動の定例化をはかり、「ホーム レス」の人達からの信頼を得ていきたいと思います。そのためには、彼らとの対 話の機会を多く設け、さらには当事者自身が会の活動に関わっていけるようにす る努力が必要だと考えます。  

 以上が私達の会と札幌の状況の紹介ですが、なにぶん発足したての若い会であ り、力量不足の点は否めません。これから私達自身で議論を深めていき、札幌の 現状をどうにかしていきたいと考えています。なお、調査の詳しい報告は北海道 大学教育学部教育計画研究室発行の「教育福祉研究 第6号」に掲載されており ますので、関心のある方はご覧になって下さい。 

カンパ振込み先:北洋銀行 北7条支店
店番312 口座番号 3469280
名前 北海道の労働と福祉を考える会 事務局長 山内太郎
会への問い合わせ先:011?706?3011

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