のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

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やるでぇーさんでぇー
(のじれんの日曜日)


ボビー

 *就労相談

 日曜日午前十一時、昼間の太陽が強く照りつける中、支援のものと仲間二、三人が事務所に集まる。事務所のドアを開け、もあっとする空気をしかめっ面して入ってくる私たちは効かないと知りながらもクーラーをつけ早速作業を開始する。

 まず始めにこの日までに市販の求人情報誌から仲間のニーズに合った求人広告をピックアップしているものを切り取ってそれらを種類別(寮社宅付き、日払い、週払いなど)に分けて紙にはる。この時点でいつも思うのが仲間のニーズにあった仕事の少なさ。多くの路上生活者が求める仕事は寮社宅つき、日払い・週払いの仕事なのだが、これらの仕事は寮付だったらほとんどが三十五歳〜四十歳ぐらいまで。訪れる仲間に情報を提供し、相談に乗る日払いにしても四十五歳までがいっぱいいっぱい。野宿者の平均年齢が五十歳以上という現状を考えるとかなり厳しい。もし年齢的にクリアしていても中には未分証明書、銀行口座などほとんどの仲間が持っていないこれら証明書を必要とすることが多い。

 このようにして作った紙を十〜十五部くらいコピーして一時からの就労相談を迎える。

 一時を回り始めるとぽつぽつと仲間が集まってくる。これらの仲間を基本的に一対一で対応する。相談内容は日銭稼ぎを求めての仕事探しから、住民票・身分証明書等書類関係の相談、すでに仕事に就いている人の仕事場でのトラブルや悩みそしてケタ落ち飯場などでの賃金不払い、労災などの苦情……と本当に多種多様である。また、それと同時にいつもの行動ではなかなか支援者と話す機会のない仲間がこの機会にとその他の悩み(えさの問題、寝床の問題、からだの問題)を持ち寄せる。事務所の中は“子供110番”ではなく“野宿者110番”状態となりこちらも対応に追われる。相談に来ている仲間たちは真剣そのものなので、そう簡単に一人の相談が終わるはずもなく時には事務所内に待ちの列が二、三人出来るほど。

 ほとんどのケースはこの日に問題がすべて解決するのではなく、就労に関して言えば、めぼしい仕事を何個かピックアップして次の日の福祉行動で実際に会社に電話をかけ、面接のアポイントを取る。



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 *労務班会議

 四時から始まる労務飯会議では,今年度からスタートした仲間の自主的行動班:弁当隊、草刈り隊、ティーシャツ隊、フリマ隊などが集まって行うもの。この一週間にあった各班の活動報告と反省。そして今後の話し合いをする。ここでは今の現状では満足できないチャレンジ精神豊富な彼らが自由な発想でアイディアを出し合い冗談も交えながら会議が進む。こちらがあっと驚くようなアイディア、そして彼らの積極的な行動力を垣間見ることが出来、一般人が持つ “野宿者=なまけもの” という差別的固定観念とはまったくはずれたものである。

 長い間路上と言う劣悪な環境での生活を余儀なくされてきた多くの野宿者の中に見られる「どーせ俺には何も出来ないんだ」と言う自負心の少なさ(lack of self esteem)もこれらの活動を通して「俺らもやれば出来るんだ」と言う自信に繋がっている。こんな風に少しずつなりとも精神的に自信を回復し、自己成長をしている仲間たちは支援している側の私たちをも驚嘆するほど顔つきが変わり、それらの自信が就労意欲や現状打破意欲の大きな力になっている。

 これら就労相談、労務班会議2つに共通して見られるのは世間一般のイメージはどうあれ仲間たちは頑張っているということ。野宿者に対する行政の対応の遅れやサポート不足を「そちらがやらねば俺らでやるしかない」という正に死ぬ気になって新しい可能性に向けて日夜努力しているということなのでしょう。



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(CopyRight) 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org