のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

Home | Volume Index | Link Other Pages | Mail Us | About Us | Contact Us   


私たちは何故反対するのか
「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案」
とその問題点

 2002年7月31日、「ホームレスの自立支援に関する特別措置法案(ホームレス特措法)」が参議院本会議において全会一致で可決、8月7日付けで公布された。
 私たち[のじれん」は民主党案が浮上して以来、この法案に対して、さまざまな理由で異議を唱えてきた。法案が公布された今、法案とともに「のじれん」が賛同する各個人、固体の論考を取り上げ、あらためてこの法案の問題点を探ってみたい。


 去る7月31日、「ホームレスの自立支援に関する特別措置法(ホームレス特措法)」が参議院本会議において全会一致で可決、8月7日付で公布された。
 
 のじれんは去年の春、民主党案が浮上して以来、@対策が行政のいう「自立」のみに集約されていること、A野宿当事者のヒアリングがほとんどなされていないこと、B全国各地の当事者団体、支援者団体の議論が不充分であり、国会内においても審議しつくされていないこと、という理由から、この法案に対し、異議を唱えてきた。
 
 今年に入り、政局のゴタゴタのなかで与党三党が乗り出し、排除条項が加わった与党案が提出されたが、それゆえのじれんはこの排除条項のみを理由に法案反対の立場を取っているのではないことに留意されたい。
 
 もはや、失業野宿の責任を自ら顕在化させる強制排除という手段ではなく、「自立支援」という「対策」を通じて野宿労働者を排除し、より下層へ追いやり、野垂れ死にを強いるという政府・資本の攻撃の本質を、私たちは当法案のうちに見てとるのである。
 付け加えるならば、法案成立にあたって与党サイドの肝いりで「人権に配慮」云々の付帯決議が加わったという経過を顧慮するにしても、これで排除に歯止めを掛けたと安心するのは早計である。
 
 社民党はこの付帯決議を根拠に賛成にまわったらしいが、衆議院厚生労働委員会で唯一人反対された川田悦子さんは、その理由をご自身のホームページ上で述べ、的確にこの法の本質をついている。
 
 「ホームレス特措法」は、野宿労働者の「自立支援」を国や地方自治体の「責務」とすることによって、逆に政府・資本の失業野宿の責任を覆い隠し、施設入所を通じた個人の自助努力に還元していることから、また「対策」を強制すると同時に、「公共地の適正化」を打ち出していることから、「排除と収容」を基本としたものであることは明らかである。 
 もはや、政府・資本による新自由主義的諸政策の下、労働者の最終処理過程がこの法制定によってより完結に近付いたと言っても過言ではない。失業野宿に追いやっておきながら、生きるための抵抗線である野宿すらも許さないこの法は、まさに下層への死刑法にほかならない。
 
 この特集においては、法文とともにのじれんが賛同する各個人・各団体の論考を取り上げる。しかし、我々は法の評価に留まり、論議している暇はない。
 実のところ「ホームレス特措法」制定直後から、すでに全国で排除収容の動きが強まっている。千葉・市川、大阪・大泉緑地で表面化した撤去策動は、当事者の粘り強い闘いと、各地の抗議でなんとか喰い止めることができたが予断は許さない。
 年内には名古屋・白川公園、大阪・大阪城公園においてシェルターが開設される。そして今秋、渋谷においても代々木公園で立ち退き工事が予定されている。
 
 今後「ホームレス特措法」の制定をもって、地域を飛び越え、全国各地の野宿労働者に収容と排除を基本とした「対策」による攻撃が吹き荒れるだろう。
 我々は局地や個別に留まることなく、階層的な対抗軸−野宿の仲間を殺そうとする奴等と闘う団結の形成を具体的に準備しなければならない。
(文責 黒岩大助)

   特集     目次

 


(CopyRight) 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org