のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

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『さなぎ達』〜話をしようよ〜

 『さなぎ達』〜話をしようよ〜

(1)『さなぎ達』の産声が聞こえますか?
長い不況の為にホームレスにならざるをえない人、競争社会に疲れ果てて逃避した人、生活保護の認可を受けられない境界領域の精神科疾患の人、知的障害のため生活保護費をひとりで計画立てて使えない人、国籍が違うため就労制限されている人、外見・顔醜のため仕事がない人、寿には多種多様な原因でそれぞれ路上生活を余儀なくされている人がいます。
「ホームレスなんて自分とは縁のない」と思っているあなた、少し視点を変えてみては?絶望から始まった、生きる事の厳しさや慟哭のような孤独から、一人の人間としての生きる元気・生きがいを実例を示して教えてくれるのは、意外にもこの街寿町なのかも知れません。漫然とただ利己的に生き続ける事ではなく、ボランティア活動を通して『この思いやりとやさしさ』を持って、『話をしようよ』と互いに歩み寄り、相手の人生を尊重する事で、自身の生きる元気をもらっていくこと。今、これからの私たちに必要なのは、『他人の生きがいを尊重する』社会を作っていくことです。
『さなぎ達』はこんな漠然とした目的を持って、『国際ボランティア年』の今年、まさしく文字どおり、日本人・在日コリアン・アメリカ人が集まって、NPOとして産声をあげました。これから寿町の内側にも外側にも『さなぎ達』の立場から、情報を発信していこうと考えています。
 ある者は蝶になり、羽ばたいて美しく飛び立つかもしれません。ある者はずっとさなぎのまま、一生を終えるかもしれません。私達はそのどちらも受け止めて、行政には埋められない立場から支援を続けていきたい願いで一杯です。やらなければならない事はたくさんあります。どうか、皆様の力を私たちに、お願い申し上げます。

(2)路上生活者と、それに至る恐れのある人々
土工・沖仲仕など、中高年者の求職難の原因は社会構造上の変化で改善は見込めません。仕事の得る事の出来ない日雇い労働者は路上での生活を余儀なくされています。また、出稼ぎに来た・家族の事情・事業に失敗した・企業が倒産し仕事が無くなった等、近い過去まで一般人として生活していた人々が、精神的な傷のために社会生活からはぐれ、路上生活を送っている場合もあります。その他、各種の罪を犯し刑期を満了し社会復帰したものの、仕事・家族とも折り合いをつけることが出来ず、たった一人での路上生活で日々を送っている人達もいます。そして、内臓疾患・精神的な病気+アルコール依存・薬物依存などの病気を役所では見分ける事が出来ず、単なる怠け者として放置されています。その結果、路上死・孤独死などの社会不安の原因にもなっています。医療の保護、その他行政の枠内で十分ケア可能な人達も、路上生活を送っています。     
『さなぎ達』は自立を支援するという事より、精神的・肉体的に路上に生きる仲間達自身が『自立自援』出来る土壌を作る事が、重要な活動の一つになります。仲間達は仕事がない事や物質的に貧しいだけでなく、精神的な傷を抱えながら生き続けている人々とも言えます。職能力のリハビリと言うより、精神的な躍動感が生まれてくる環境作りに活動の重点を置いています。

(3)『さなぎ達』の活動【昼パト】
毎週木曜日と日曜日の週2回(第3日曜日は土曜日に繰り上げ)、寿センター前の町内会館前の2階奥の部屋を開放し、カレーライスを作り昼食・夕食を共に食べる集まりを持っています。集まりは日に30人程度、月延べにして300人(600食)前後になります。集まりには精神的・身体的に障害のある人、健康な社会人、子供から老人までいろんな仲間が遊びに来てくれます。どこに住んでいる方でも大歓迎です。キーボード・ギター・バイオリン・ビオラ等、音楽もあります。出来る者が演奏します。合唱や合奏になるときもあります。遊びに来てくれる仲間のキャラクターにより、様々に姿を変える集まりです。
また、木曜日・日曜日以外でも路上生活者や寿の生活者に緊急を要する何かが必要になった時、毛布・衣類・洗面道具などを町内会館2階奥の部屋でお渡ししています。タオル・石鹸・髭剃り・下着・上着・サンダルまで揃えられる状態を維持し、必要と思われる時は風呂券も発行しています。ここでも精神や肉体に異常のある仲間は医療保護へと繋ぎます。また、入院する事になったり、体の具合が悪くなった仲間のドヤを定期的に訪問しています。
仲間の何人もが死に、何人もが通院し、何人もが生活保護を受けながら寿で暮らし、何人もが寿を離れ一般社会へと戻って行きます。心と体のリハビリ、また癒しの場としての『昼パト』の広場には手応えを感じています。

(4)『さなぎ達』の活動【夜パト】(木曜パトロールの会に連携し、協力しています)
毎週木曜日の夜9時頃より、市庁舎・横浜スタジアム・関内駅地下・文化体育館などで路上生活している人々を定期的に訪問しています。路上で生活をする人達と話をしたり、情報を提供したり、肉体的・精神的に問題を抱えている仲間がいれば最善に近い状態を共に探します (医療保護・生活保護・医療相談・炊き出しのお知らせetc…) 。また、寒さをしのぐ毛布・緊急に必要とする衣類・洗面用具(タオル・石鹸・髭剃り)と200食分相当のおにぎり、温かいスープ等を用意しています。なお、ダニ・ノミ・シラミ等が発生している現場にぶつかった時には、速やかに薬剤を提供し、下着を含め着替え、その他の必要な物を無料提供できる用意があります。以上の事に加え、『昼パト』の活動内容をお伝えしています。
一方的な夜のパトロールにより何かを変えようとしているのではなく、「私達は、あなたを見つめているんですよ」と話し掛ける事を、規則正しく繰り返していきます。無関心という囲いの外に路上生活者を置くのではなく、自分達の事として関心を持ち続けて行きたいと考えます。

(5)『さなぎ達』コンサート〜話をしようよ〜
去る5月19日、寿町にありますバプテスト教会にて『さなぎ達』コンサート〜話をしようよ〜が開催されました。このコンサートの発端は、昨年のクリスマスイヴの昼パトにありました。毎週木曜日と日曜日は音楽を出来る者が演奏し、それに合わせてみんなで歌を歌ったりしているのですが、特にクリスマスイヴの日は『さなぎ達』の部屋が満員御礼になり、人が部屋の外まで溢れるほどの大盛況でした。その時もキーボード・ビオラ・ギターなどの音色に合わせて大合唱となり、最高のクリスマスイヴとなりました。私達は『さなぎ達』の活動の主である『昼パト』の雰囲気を皆様に知っていただきたく、この『昼パト』の拡大版でもあるコンサートを開く事としました。
コンサートには総勢30名程の有志の方々が参加して下さいました。コンダクター・バイオリン・ビオラ・チェロ・チェンバロ・コントラバス・フルート・リコーダー・ソプラノ・胡弓etc...皆さん色々な職業をお持ちの方なので、練習は本番まで3回だけでした。そして本番当日、いつも『昼パト』に遊びに来てくれる仲間が一体となって会場設営を手伝ってくれ、準備が整い、開場しました。寿に住んでいる方・ソトブキ(寿の外)に住んでいる方・色々な方が来て下さり、開演の6:00前にはもうお客様でいっぱいとなり、その後もどんどんお客様が来て下さいました。最終的には寿内外から約200名超のお客さんがいらっしゃいました。演奏も『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』、『G線上のアリア』、『もののけ姫』など完璧な演奏で進行して行きました。そしてラスト、寿住民によるピアノ・ギターの演奏・寿住民による合唱に合わせ、お客さん・出演者全員で『翼をください』を大合唱しました。この『翼をください』はいつも昼パトでもみんなで歌っている曲で、まさに『さなぎ達』のテーマソングといってもいいと思います。「ある者は蝶になり、羽ばたいていく」という「さなぎ達」のテーマと、「翼をください」の「この大空に 翼を広げ 飛んでいきたいよ」という歌詞がピッタリ合っている感じがします。皆さん一体となって歌っていただき、感動的なフィナーレを迎える事ができました。

このコンサートは、1年に1回でも続けたいと思っています。『昼パト』の雰囲気を1人でも多くの皆様にお伝えする為にも、そして、寿に住んでいる方の癒しにもなれば...

(6)私達の『さなぎ達』について
『さなぎ達』は、企業のように強制力を持った組織ではありません。課題の最大のものは、個人の自発性をどのように結集して活動に組み立てていくかにあります。活動の動機は様々ですが、共通するのは少しでも社会を住みやすくして行こうという思いを、何らかの形で持っている事です。
『さなぎ達』は、ダイナミックなビジョンの作成、そしてその流れにいろんな思いを持った各人が加わり、大河へと変わっていく方法を取りたいと考えます。思い、動機は様々でも、社会を少しでも住み良くしてゆこうという大河の流れには従順に、一滴の思いも大河の内に取り入れていける、緩やかで、穏やかな源を作りたいと考えます。拘束力を持たないNPO法人は、善意を効果的にコーディネートし、それぞれの人がそれぞれの場所で充実感を味わう事が出来る事が必要です。明確な目的に対し、参加する全員が充実感を共有する事が、全体のエネルギー源となります。
『自分を犠牲にして尽くす』という事と、『好きだからやる』という思いは随分と違いがあります。好きな事をしていて、社会が少しでも住み良くなる事ほど楽しい事はありません。好きでやっているという自覚があれば、他人に恩をきせる事もなくなります。何となく楽しそうな、新しい出会いのありそうな雰囲気の満ちあふれた集まりを作りたいと思います。
もし、『さなぎ達』に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、お気軽に御連絡ください。
〒231-0026 神奈川県横浜市中区寿町4丁目13-1 寿町内会館2階
TEL&FAX:045-228-1055  E-Mail:sanagitachi@nifty.com
【NPO法人『さなぎ達』企画実行室 千葉 渉】


 


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