のじれん・通信「ピカピカのうち」
 

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東京駅に行こう
東京駅へ行こう!

四ツ谷おにぎり仲間 酒井 匠

・おにぎり仲間、四ツ谷から日比谷へ
四ツ谷おにぎり仲間の活動目的は「一人も見捨てられていないことを皆に伝えた
い」。
おにぎり仲間はクリスチャンが中心になって始めたグループですが、「キリスト教信
者だけ」のグループにも、「仲間にただ食べ物を配るだけ」のグループにもなりたく
ない。そう願いながら四ツ谷周辺の仲間におにぎりを配り、話し込みを続けて来まし
た。
その内におにぎりを受け取る仲間より配る人の方が多い、つまり野宿者一人を四、五
人の支援者が取り囲む、という状態が始まりました。きっと何も知らない人が見た
ら、何人もの人間が野宿者を取り囲んでいじめていると誤解されそうな情景です。そ
してこの頃、おにぎり作成チームと配布チームの分業体制が出来つつあり、従前より
1時間以上早く出発できるようになっていました。その結果、四ツ谷パトだけなら夜
9時前に終了、解散できるようになったので、ある夏の日に何人かで四ツ谷終了後に
日比谷公園に事前調査に行きました。
・気持ちが日比谷に向かわない
 夏の日比谷公園は、アベックも多いが仲間も多い。当時の記録では50人ほどの仲
間が公園のベンチや図書館脇にいたとあります。この時調査パトに行った友人から
「日比谷公園も我々で廻ろう」という意見が出ました。しかし全員の意思が日比谷に
向かなかったので、その後も数回調査パトに行っただけで話は進みませんでした。
秋になってもまだ日比谷パトは話題に上る程度だったでしょうか。私個人としても、
その頃会社の仕事が殺人的に忙しく、とても日比谷パトまで考えが回っていませんで
した(四ツ谷パトすら参加していなかったし)。それでも時々は日比谷公園の事、日
比谷で配るおにぎり作りのことなど、電子メールでやり取りをしていましたので気に
はしていたのです。
そんなある寒い秋の朝、四ツ谷の仲間が路上で亡くなり、彼の追悼のため、そして自
分たちの活動を降り返るために、祈りの会を開こうと言う事になりました。
・それは神さまからの使命だ
 冬の市ヶ谷修道院で半日黙想会(祈りの会)を開きました。黙想会とは、無言の内
に神と対話し、神からの呼び掛けを聞こう、という祈りの会です。2時間ほど祈った
後で、私は聖書を3回無作為に開きました。そこから神さまのメッセージを聞こうと
したのです。最初に開いた箇所は「食べ物を運びなさい」、次に開いた箇所は「何も
心配することは無い」、最後に開いた箇所は「囚われた人に良い知らせ(福音)を伝
えなさい」。このメッセージを聞いて、即座に私は黙想会に参加していた友人に話を
しました。「これは神から受けた使命(ミッション)だ。怖れずに日比谷公園に行こ
う!」と。
・東京駅へ行こう!
「日比谷公園を含めた有楽町エリアに対して四ツ谷おにぎり仲間は拡大パトを計画
中」とのじれんに話をした所、実はのじれんでも東京駅方面への拡大パトを計画して
いるが、何せ人が足りないので逡巡していたとの事。そこで「四ツ谷おにぎり仲間と
のじれんは、年が明けたら合同チームを編成して東京駅を含む有楽町周辺の拡大パト
を計画している。しかし東京駅は人数も多く、2チームだけでは手に余る可能性があ
る。全都で共同して取り組めないか」と全都実に提案する事にしました。越年闘争を
目前に控えた12月の話です。
・いつの間に越年闘争へ?!
 全都実での反応は「各グループとも東京駅まで廻る余裕が無いので、2グループで
始めて欲しい」というもの。しかもいつの間にか「のじれんと四ツ谷おにぎり仲間は
この年末年始から東京駅パトを開始するらしい」という話になっています。会議の席
で「奴らはやる気だ」と言われた以上、後ろに引く事は出来ません。ましてや、日比
谷方面への拡大パトは祈りの会で神から示された使命(ミッション)だ、という自覚
が私個人にはあります。そこで、大将と具体的な日程を詰め、各人が自宅で作ったお
にぎりを持ち寄り、あれよあれよと言う間に2000年12月30日から「おにぎり
仲間とのじれん合同の日比谷、東京駅越年パトロール」が始まることになりました。
・現在の東京駅事情
おにぎり仲間は毎週土曜日18時に麹町教会を出発すると「四ツ谷・迎賓館組」と
「日比谷公園組」に分かれます。四ツ谷の仲間は10人前後、そして日比谷公園の仲
間は20人位に安定しており、パトも余り時間がかからない。次に東京国際フォーラ
ムと地下鉄・JR有楽町駅ヘ移動。ここで約50人の仲間を「おにぎりステージ(駅
へ下りる公共通路の踊り場)」まで来るように迎えに行きます。何故かと言うと、一
度フォーラム内でビラとおにぎりを配っていたら警備員に見咎められ、施設課長から
「施設内ではダメ。外なら良い」と言われたから。それから東京駅へ移動、のじれん
と合流して東京駅パトが始まります。東京駅の仲間は120人位。殆どが八重洲側2
箇所のコインロッカー周辺と地下通路で終電まで休んでいます。彼等は午前1時頃、
終電が終わると表に出されます。それから東京駅周辺の路上を歩きまわって始発電車
が動き始めるまでの時間を潰し、そして午前5時頃、再び東京駅に帰って来て休むの
です。
東京駅には様々な仲間がいます。これまでのパトでの感想は二つ。まず「高齢化が進
んでいる」。30、40代より60、70代の仲間が多く、みんな身体のあちこちに
不具合が出始めています。病気の症状が出ている訳ではないが、血圧上220下12
0の仲間がいたりします。次に「精神的にしんどい人が多い」。アルコール依存症の
仲間もいます。しかし精神分裂症の疑いのある仲間が非常に多いのです。しかし悲し
いかな彼等に対するケアや土曜日のパトを平日の福祉行動に繋げることがなかなか出
来ない。
・一緒だから、始められた
そんな悩みはチーム体制が救ってくれました。最近東京駅パトに看護婦さんがほぼ常
時参加してくれており、誰を福祉行動に繋げれば良いか分かるようになりました。そ
して合同チームを編成しているのじれんが中央福祉行動を担ってくれています。これ
で、福祉が必要な仲間に「休み明けに中央福祉に行くから集まってくれ」と伝えられ
ます。今までは「おにぎりを渡して話し込むだけ」だった東京駅パトが次第に福祉や
医療に繋がるパトロールになりつつあるわけです。次の課題は四ツ谷チームも少しず
つ医療や福祉の知識をつけること。活動を始める前に掲げた目標「一人も見捨てられ
ていないことを皆に伝えたい」。それを実現するためにも、仲間をケアする基本的な
知識と情報は必要です。毎週会う仲間にはいつも健康でいて欲しいから。病気の友達
の回復を願わない人はいないでしょう?
のじれんと合同で始めた「日比谷・有楽町・東京駅」への拡大パトは、新しい局面を
迎えようとしています。私たちおにぎり仲間だけでは、拡大パトを始める事も続ける
ことも出来なかったでしょう。もしかしたら「のじれん」だけでも続けられなかった
かもしれない。そう考えると、不思議な縁を感じます。これからもグッドパートナー
として活動して行きたいと思っています。


(CopyRight) 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org