新宿ダンボール村からの報告

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いのけん通信読者の皆さん,お元気ですか?夏の残暑の厳しさもようやく終わった と思ったら,台風が各地で大暴れするは,秋雨前線は居続けるはと酷い天気です.と ころであいも変わらず,新宿の状況は目まぐるしく変化しています.

住んでいる私らにしても,あれよあれよというまに状況(というか東京都の出方 )が変化しているので,こうやって原稿を書くことが今までのことを整理するいい きっかけになるほどです.

さて 8 月 17 日(日曜日),私らは第 4 回の「新宿夏祭り」を無事やりきりました .問題点もいくつかありますが,非常に大勢のお客さんが来て,大きな事故もなく終 えることが出来ました.

ところで,東京都福祉局はとうとう 8 月 21 日に北新宿における「(仮称)自立 支援センター暫定実施計画」を事実上凍結すると発表しました.予想をはるかに越え た強固な反対運動にさすがの東京都もこれ以上の無理押しは出来ないと遅ればせな がら理解したようです.

しかし諦めの悪い東京都は,今度は「暫定的自立支援策」なるものを発表しました .これは,新宿駅西口地下広場の野宿者を対象に,新宿区内の民間宿泊所に原 則一ヶ月最大でも二ヶ月収容して仕事に就かせようというものです.

そして 8 月 25 日に街頭相談 を実施して入所者25 名を募ろうというのです.この事業を来年 3 月末ま で継続して実施して,西口地下広場の野宿者を一掃できれば良し,ある程度事 業の実績が上がれば残った野宿者を強制排除しても,世間の風当たりは弱いだ ろうという目論みと思われます.

この不況下に住所設定もしないで,しかも特別の雇用先も用意せずに職安へ通わせ るだけの「職業相談」では,たとえ収容されても就職に結び付く可能性はほとんど無 いと言っても過言ではありません.

しかも毎度のことですが,当事者団体である新宿連絡会を無視して,話し合いどこ ろか説明会も開かずにいきなり街頭相談を強行しようというのです.西口地下にお ける広報も内容の無い僅かな掲示物と「自立の意志のある人は集まってください」 という簡単な場内放送だけです.

私らは日曜日の炊き出し集会で協議し,具体的な説明もできないような聞こえがよ いだけの「暫定的自立支援策」など絶対に受け入れないことを確認しました.そし て 25 日の街頭相談の際,まず具体的な説明を求めるために押しかけようと衆議一 決しました.

そもそも東京都は,北新宿問題の時にも野宿者に対する説明を一切しようとはし ませんでした.いのけん通信第 15 号にも 書きましたが,5 月 10 日の地元住民説明会では私らが会場にはいること を理由もなく妨害しました.

それだけではなく,北新宿問題について当事者である野宿者に対して具体的な 説明をするように,7 月 15 日に都庁に対して申し入れをしました.会場もこちらで準備し,返 信用の葉書まで同封してありました. 当日 7 月 30 日,来るか来ないかわからない都庁を私らはおとなしく会場で待ちま した.出欠の返事の葉書も電話もなにもなしに彼らは結局来ませんでした.当事者で ある野宿者を完全に無視し,都庁は説明会をボイコットしたのです.

ボイコットの理由をマスコミに問われたときに,都庁は「私的な集まりには出席で きない」と答えたとのことです.来れないなら来れないという返事をすればよいのに ,それもせずにボイコットするほどの理由とは到底思えません.

25 日当日私らは何度もレポを出して権力の配備を警戒しながら午前 9 時に集 結しました.集結と前後して公安をはじめ権力の動きが始まりましたが,早朝の退去 勧告の時に比べれば動きは鈍く,比較にならないほどおざなりなものです.

私らは行動の意志一致を行なったあと街頭相談会場への全体で移動しました.旗 を先頭に隊列を整え,声を合わせて「ワッショイ」をかけながらです.通行人は目を 合わせることを避けるかのように遠回りして進路をよけていきます.

会場に到着しシュプレヒ・コールを上げたあと会場内で座り込み,都庁職員が来る のを待ち受けました.報道陣までどさくさに紛れて中に入り,設営中の会場内を映し たり私らにインタビューをしたりしています.

開始時刻の午前 10 時になって,都庁福祉局の職制がたったの 4 人でやってきました .私らは即座に彼らの周りを取り囲み,「一体何の相談なんだ.ちゃんと説明しろ 」と詰め寄りました. 彼らは「街頭相談です」というわけの判らない答えしか言えず,完全にパニック状 態に陥っています.彼らはそそくさと退却し「街頭相談は中止します」と捨てぜり ふを残していきました.

私らは街頭相談会場でも納得のいく説明を聞くことができなかったので,9 月 12 日に再度の説明要 求の申し入れ書を提出しました.真に私らの「自立」を支援するための施 策であることが確認できないかぎり,都庁の小細工を粉砕していきます.

現在も都庁と契約した宿泊所「新光館」に対する弾劾行動を継続し,「暫定的自立 支援策」をぶち壊すまで闘うことを全体で確認しています.これからもいのけんとも どもご支援をよろしくお願いします.


いのけん通信第 16 号(Sep. 27, 1997)
(c) 1997 池田 大介(新宿連絡会),渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会
inoken@jca.ax.apc.org

$Date: 1997/10/06 04:00:13 $ 更新

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