緊急抗議声明

野宿労働者への偏見と悪意に満ちた 青島幸男都知事の暴言を許さない!


青島幸男都知事は,10月20日(金)の定例記者会見の場において,新宿西口4号街路に 「動く歩道」を建設する意向を表明し,さらにその上で「ホームレス」について, 「独特の人生観と哲学をお持ちだ.職を紹介しよう,仮の住まいを提供しよう,体が悪 いなら手当ももしよう,と言っても放っておいてくれと言う」「何も悪いことはして いない,というご自覚なんでしょうが,通行する方に嫌な思いをさせているこ とには, それなりの責任を感じていただかなければならない」と述べたといいます.

私たちは,野宿労働者への偏見と無理解,そして悪意に満ちたこの青島都知事の暴言 を,失望と悲しみ,そして何よりも心からの憤りをもって受け止め,これに強く抗議 するとともに,発言の撤回と都知事の謝罪を求めるものです.

「独特の人生観と哲学をお持ちだ」なる言葉は,一度でも野宿労働者と直接対話した ことのある人間なら決して吐くことのないセリフです.「あの人たちは好きでホーム レスをやっている」とでも言いたげなこの発言には,路上での生活を強いられている 人間の痛みに触れようとする感性のかけらもありません.構造的な不況の中,職と家 を奪われ,路上生活を余儀なくされている労働者は新宿だけで 600 人,都内全域に は 3,300 人以上いると言われます.激増する野宿労働者の現状を鑑み,東京都企画 審議室は今年 8 月,「新たな都市問題と対応の方向--『路上生活』をめぐって」と 題する調査報告書を発表し,この問題を社会・経済的な要因のからむ新たな都市問題 として捉える視点を提供しました.青島都知事の発言は,こうした行政内部における 基本的な議論の動向すら踏まえず,すべての問題を個人の責任に転嫁しようとする一 方的なレッテル貼りです.

「職を紹介しよう,仮の住まいを提供しよう...(中略)...と言っても放っておいてく れと言う」という発言は,事実を意図的に歪曲する悪質なものです.東京都に おいて, 野宿労働者を対象とした就労対策が行われたことがあるでしょうか.また,越冬期 の 2 週間のプレハブ施設への収容を除いて,「仮の住まい」が提供されたことがい ままであるのでしょうか.(しかも,その収容施設内では,昨年度 2 名の野宿労働 者が病死しており,施設のズサンさが問題になっています.) 東京都が行ってきたこ とといえば,その場しのぎの施設収容を除けば,排除の論理に基づいて野宿労働者の 所持品を奪っていく荷物撤去=「路上廃材撤去作業」のみです.私たちはこの間,東 京都に対し,野宿労働者への抜本的総合的な対策を求めて,東京都との団体交渉を要 求してきました.野宿労働者は,行政が施策を提供しているのに断っているのではな く,そもそも何ら施策がとられていない行政の貧困に悲鳴をあげつつも,粘り強く都 との建設的な話し合いを求めてきたのでした.そうした野宿労働者の切実な声を無視 し続け,私たちとの交渉を拒否し続けてきたのは東京都の方です.青島都知事が「通 行する側にいやな思いをさせていること」に関して,野宿労働者に「それなり の責任」 があると言うのなら,彼はまず,野宿労働者問題への抜本的対策を怠ってきた東京 都の責任を口にすべきです.自らが責任を負うべき行政の怠慢と失策についてはだん まりを決め込み,失業して路上生活に追い込まれ,通行人に邪魔にならないように柱 の陰で最低限の生活を送っている人々の「責任」を云々する権力者の人権感覚は私た ちを唖然とさせます.

そしてその人間が野宿生活者の生活の基盤を破壊し,100 人を越える人々を寒空のも とに叩きだそうとする「動く歩道」設置計画にゴーサインを出したのです.

折りしも先日,大阪では野宿労働者が 3 人の若者に川に投げ込まれ,殺されるという むごたらしい事件が発生しました.また,新宿でも通行人がダンボールハウスに 空きビン,空きカン,果ては火のついたタバコの吸い殻を投げ込むといった 嫌がらせが日常的に起こっています.こうした事件の背景にある市民社会の 「ホームレス観」---「あいつらは好きでホームレスをやっているのに自分たちに 迷惑をかけている」は,まさに今回の青島発言の背後にあるものでもあります. 今回の発言が「動く歩道」建設着工について述べられる中でなされたことは 決して偶然ではありません.この暴言ほど「動く歩道」の建設目的を満天下に明らか にしたものはないでしょう.「好きでホームレスをやって,通行人に迷惑をかけてい るような連中は排除してもかまわない」--- 市民社会に潜む襲撃者たちは自分たちの 行動を後ろ盾してくれる東京都知事の発言を聞いてどんなに喜んだことでしょうか.

青島都知事は「動く歩道」の建設に伴い,野宿生活者への「何らかの手だて」を考え ると発言したといいます.しかし,野宿労働者の生の声を聞くそぶりすら見せず,差 別意識に裏打ちされたステレオタイプの「ホームレス像」を振り回して立ち退きを迫 る政治家のリップサービスに私たちは何の期待ができるでしょうか.私たちは追い出 しを目的とした「動く歩道」建設計画の白紙撤回をあくまでも要求し,強制立ち退き に対して最後まで闘っていきます.そしてそうした闘いを通して,今回の青島暴言に 見られるような野宿生活者への差別,偏見を克服していくよう,広く社会に訴えてい きます.

1995年10月22日

新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議 (新宿連連絡会)
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