「新宿駅西口広場路上生活者の自立支援事業」の「街頭相談」を実施する際, 当該野宿者に対し全体で説明を行うよう要請します


東京都福祉局生活福祉部保護課御中

私たちは,新宿駅周辺に起居する野宿者の団体として, 今般突如発表された「新宿 駅西口広場路上生活者の自立支援事業」の実施内容 に関して,都に説明を強く求める.

「自立支援事業」なるものは,私たちの預かり知らぬ所で勝手に決められ,一方的 に進められようとしている.東京都が私たちに告知した内容はただ「宿泊所を利用し て生活相談,健康相談,職業相談などの事業を実施する」といった抽象的なものばか りで,対象基準はもとより,何人,どこの宿泊所にどういう条件で宿泊させ,どのよ うな内容の相談事業を行うのかを,何ら一切明かにしていない.場内放送では「自立 の意志のある人は集まってください」を繰り返すばかりで,単なる人集めのための告 知でしかなかった.しかも,「街頭相談」当日,福祉局職員は,私たちの「何のため の相談か?何をしてくれるのか?」という問いに対して「街頭相談だ」という意味不 明の回答をするだけで,当日集まった100名近い野宿者の一人たりとも納得のいかな い答弁の後,一方的に「街頭相談」の中止を宣言した.

北新宿自立支援センター暫定実施計画に関しても,私たちは今回と同様, 都に事前の説明を求め,7月30日には会場まで準備した にもかかわらず,都職員は誰一人とし て参加せず,また欠席の理由も明かにしないまま,説明をボイコットした.何故,東 京都は私たちの面前に出て説明すらし得ないのだろうか?対象者にすら事前に説明も せず,強引,一方的に施策を強行するのが都の姿勢なのだろうか?私たちにはまった く理解しがたい.実施対象者の多数は組織され,団体としてこの間,意志を表明して いるのである.これを無視し,一方的,強引に物事を進めようとすれば,前回の「街 頭相談」同様の混乱が生じるのは分かりきった事態であろう.しかも,当事者無視の 姿勢が原因で生じた混乱の責を全て私たちのせいにし,「相手は『都のやることは何 でも反対』との立場,話し合いを持つのは難しい」(8月26日毎日新聞)とのコメン トまでしている.「話し合い解決」を一貫して主張してきたのはどこの団体か,一貫 して「話し合い」を拒否してきたのはどこの誰か を胸に手を当てて思い返してみろ!

私たちは東京都が懲りもせず,再び「街頭相談」を行いたいというのであれば,そ の開始前に私たちに対し事業の説明を行うよう求める.少なくとも実施対象者に対し ,事業内容をつまびらかにするのは今回の事業を進めるに当たっての最低限の誠意だ と考える.何も知らず,聞かされず,収容され,後で不利益を被った対象者を過去に 多く見てきた私たちは,野宿者の利益を優先させる立場から,今回の事業が「強制で はなく自由意志」だと 言うのであれば,事業内容の情報は全て事前に公開する事を求める.

私たちは何も特別なことを要求している訳ではない.なんらかの法に基づかない基準も あいまいな法外施策は,事前に情報がなければ安心して相談にも行けないと言ってい るに過ぎない.1と月たって追い出されるような施策であれば,誰も率先して利用な どしないし,「自立支援」などという綺麗な言葉だけで東京都を信じる程,おひとよ しではないということだ.今回の事業に疑念をもっている野宿者は多い.それは都が 行ってきたこの4年来の強制排除策と収容政策に対する不信である.しかし,排除を 目的としたものではないと言うのであれば.後ろめたい気持ちもなく,堂々と我々の 前に出て説明くらいできるだろう.

次回「街頭相談」当日,9時半から私たちは都の説明を求めて街頭相談会場の前に て待ちうける.時間は30分.必要なら立ち会い人も設けよう.その条件に支障がある なら,事前に説明会を開催するよう求めたい.

検討し,回答するよう求めます.

以上
1997年9月12日
新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議(新宿連絡会)

(c) 1997 渋谷・原宿 生命と権利をかちとる会
inoken@jca.ax.apc.org

$Date: 1997/09/11 09:13:19 $ 更新

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