のじれん・申入書
 

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申し入れ書


渋谷区路上生活者問題連絡会関係各位
渋谷区長殿

また冬がやってくる。去年の同時期、私たちは渋谷区内で200人以上の野宿者 を確認していた。一昨年とは比較にならない多さだった。しかし今年、私たち はすでに約350名の野宿者を確認している。言うまでもなく、この数は冬に向 けてさらに増加していくだろう。

当然、野宿者の最後の「頼みの綱」である行政の果たす役割は、その数の増加 に比例して増大している。しかし「自立支援センター」がこの冬に間に合う見 込みはなく、また、従来の越冬対策の規模拡充の報も私たちの耳には入ってこ ない。従来規模の越冬対策では、とうてい現在の野宿者問題に対応しきれない ことが明らかであるにも関わらず、である。

ではどうするか。

行政が野宿者との緊密な協力関係の下で、各野宿者の生活状況・健康状態をよ く把握し、病気・衰弱・高齢の野宿者には自ら進んで医療対応を手配し、自立 の可能性を少しでも広げるために最大限の支援を行っていく他あるまい。国や 東京都が動かない以上、そして予算に限りがある以上、地域に根ざした地方自 治体としての渋谷区にできるのは、この冬に一人の餓死・衰弱死・病死・凍死 をも出さないための「きめの細かいケア」であるはずだ。

そんなことは重々承知だと言われるかもしれない。しかし本当にそうか。保護 課相談係の窓口対応が改善されてきていることは、私たちも認識している。し かし、たとえば前回話し合われた「求人チラシ」の公示問題一つを取ってみて も、渋谷区ができる範囲内で最大限の能力を活用しきっていると納得すること はできない。

野宿者がこの冬を乗りきるための利益になることであれば、私たちは、どんな ことに対しても最大限の協力を惜しまない。渋谷区は、私たちのこうした決意 を真摯に受け止めた上で、以下の事項について誠実な対応をしていただきたい。

1、さくら寮開設前の、街頭相談の実施

「きめの細かいケア」は、窓口でただ来訪者を待っているだけでは実現できな い。本人ですら気づいていない病気の発見、または様々な理由で福祉を嫌って いる人達への積極的な呼びかけを通じて、早期発見・早期対応の態勢を整える 必要がある。そのためには、街頭相談の実施、それもさくら寮に繋げることの できる時期における実施が、ぜひとも必要不可欠である。万難を排し、何とし てでも実施していただきたい。

2、生活保謨の積極的適用

前回の話し合いにおいて、渋谷区が生活保護適用に年齢制限を設けていないこ と、名古屋の林訴訟判決を参考にすることは了解できた。私たちも年齢や病状 だけでなく、現実的な就労機会の有無が生活保護適用判断の重要な基準の一つ となると考えているし、それが法の精神に則ったあるべきあり方だとも思う。 今後は公共職業安定所における求人倍率、本人の就労努力とその結果等を十分 に考慮された上で、生活保護適用の可否を決めていただきたい。すでになされ た合意の範囲内だとは思うが、この点確認しておく。

3、簡易宿泊施設の積極的かつ柔軟な利用

冬季においては、銀扇閣が満室になる事態が予想される。だからといって、こ れからの厳冬期に野宿者にアオカン通院を強いるようなことがあってはならな いことは、重々承知されていることと思う。では、そのような事態を見越した どのような対策を立てているのか、その具体的な内容をお聞かせ願いたい。

4、食料・防寒着の年末年始の緊急特別支給

「路上生活者対策事業費」の予算枠はあくまで目安であり、必要な場合にはそ れを超えることも可能だと、以前保護課係長は明言した。区役所が開かれない 年末年始期の緊急持別支給はぜひとも「必要」である。どうか実施していただ きたい。

5、廃止された小学校の体育館の開放

年末年始期における公共施設の野宿者への開放は、すでに他の地方自治体にお いて実現している。野宿者にとっては、何よりもまず雨・風・雷を防げる寝場 所の確保が最も身近で切実な要求である。検討していただきたい。

6、救急隊・病院への指導の徹底

冬季、とりわけ年末年始は野宿者の救急搬送が行われる可能性が高い。しかし、 しばしば野宿者は追い返しやたらい回しといった差別的待遇を受けてきている。 こうした非人道的対応が決して起こらぬよう、関係機関への指導を徹底してい ただきたい。

7、「越冬対策施設」(さくら寮、なぎさ寮)の広報の徹底

越冬対策施設の規模と野宿者数を比較してみれば、周到な広報と入所手続の工 夫が必要なことは容易に分かる。今年度はどのような態勢で臨むのか、具体的 な方法を提示していただきたい。

8、対策なき撤去の禁止と関係諸機関への連絡の徹底

対策なき撤去の禁止はすでに合意済みである。しかし問題は「対策」の質であ る。いうまでもなく、「対策」は単に実施機関から保護課への告知、保護課職 員の現場での同席だけを意味するものではない。先日、美竹公園での植裁工事 の際に工事実施者に私たちと公園課との合意内容が何一つ伝わっていないとい う事態があつた。また、東京体育館の撤去でも保護課は何ら具体的な対応を行っ ていない。こうした事態が起こっている以上、私たちは渋谷区の約束する「対 策なき撤去の禁止」を依然として言葉通りに受け止めることができない。渋谷 区の考える「対策」の内容を具体的に明らかにしていただきたい。

以上

1998 年 11 月 9 日

 


(C)1998,1999 渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合
(のじれんメールアドレス: nojiren@jca.apc.org