在日フランス大使館
ベルナール・ド・モンフェラン 駐日フランス大使殿

「持たざる者」の国際連帯行動実行委員会 
〒111 東京都台東区日本堤1-25-11  
山谷労働者福祉会館気付

 私たちは、日雇・野宿労働者、失業者、フリーター、障害者、移民労働者、難民申請者など、新自由主義的グローバリゼーションの中で「社会的排除」を受ける、「持たざる者」「声なき者」たちの連帯行動実行委員会です。私たちは、2003年1月の世界社会フォーラム(ブラジル・ポルトアレグレ)において開催された「声なき者の第一回世界会議」に呼応し、フランスのいくつかの社会運動体とも連携をとりながら、日本において「持たざる者」の国際連帯行動を実施してきました。

 先月末からのパリ郊外及びフランス各地における暴動について、私たちはマスメディアによる情報だけでなく、フランス国内で同じような社会的立場にいる仲間たちから、直接的に情報を得ています。そしてこれらの暴動の背景が、フランスにおける移民・貧困者に対する政策の根本的な問題であると認識しています。政府と警察の弾圧を受け、暴動の主体となった若者たちの状況を、日本における私たちも、立場を重ね合わせて感じ取ることができます。

 これらをふまえた上で、私たちはフランス政府に対して、以下を申し入れます。誠意ある対応をよろしくお願いいたします。


フランス共和国
ジャック・シラク大統領
ドミニック・ド・ヴィルパン首相
ニコラ・サルコジ内相

申 入 書

 10月27日、警察により日々繰り返される「不審尋問」を逃れ、パリ郊外クリッシースボワで二人の若者が感電死した。この死への抗議から始まった低家賃住宅街地区の移民の若者たちを中心とした暴動は、治安権力(警察・サルコジ内相)と政策(失業と貧困、競争をあおる新自由主義グローバリズム)とに対する、腹の底からの怒りの血の叫びである。

 日本においても、日雇・下層労働者はその集住地域である寄せ場において、不当な警察の対応によって、人間としての尊厳が踏みにじられてきた。そして40年来幾度となく、今回のフランスでの移民の若者たちと同様に、仲間が血を流したとき、繰り返し暴動によって血の叫びを上げてきた。
 蹴散らされ、傷つき、弾圧されると分かっていても、その闘いがリスクと反動の大きな闘いであったとしても、立ち上がる怒りの深さを知るからこそ、私たちは今回のフランスにおける移民の若者たちの暴動に共感する。

 郊外の移民の若者たちによる正義と平等を求める取り組みは、幾年も続けられてきた。しかし、その要求は無視され続け、警察の不当な移民若年層へのレッテル張りとスティグマ化は、強まりこそすれ、止むことはなかった。そして、サルコジ内務大臣の「社会のクズ」「ごろつき」発言などの挑発により、フランス政府は正義と平等を実現する意志のないことを内外に示してきた。
 9月、老朽化住宅(日本では低額ホテルと報道)火災で48名が死亡した際、サルコジ内相がとった対応が、貧困住民の生命と生存権を保障する施策の実施ではなく、住民の排除であったことも、同じ「持たざる者」である私たちは座視し得ない。そして今回の暴動に際して、フランス政府は自らの政策への反省と当事者との対話ではなく、非常事態法に基づく夜間外出禁止令の適用という戦時並の強権を発動し、すでに2400人以上の逮捕・拘束を行っている。私たちは、このようなフランス政府の対応を、怒りを持って受け止めた。

 私たちは、フランス政府に対し以下を要求する。

・非常事態宣言を今すぐ撤回し、貧困地区への強権的抑圧を止め、被弾圧者をすぐさま釈放すること。

・サルコジ内相は従来の発言を謝罪し、死者に対する責任をとって辞任すること。

・排外と人種主義(レイシズム)を煽る現在の政策を止め、貧困と差別を再生産する新自由主義的政策を根本的に改めること。

・移民若年層を覆う社会的不平等、失業、貧困と、社会的排除の現状克服へ、何より、当事者が主人公として参与し得るよう改めること。

 以上

「持たざる者」の国際連帯行動実行委員会
〒111 東京都台東区日本堤1-25-11 
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