路上生活者支援センター
暫定施設閉鎖時に残留者 50 人前後

受け皿施設メド立たず
入所 135 人中就労はわずか 36 人


都福祉局は二十四日,暫定的な路上生活者の自立 支援センター「北新宿寮」を今月末に閉鎖すること を明らかにした。現在入居中の四十数人は同じ新宿 区内の暫定施設「さくら寮」に移される。だが、「さ くら寮」にもまだ三十人以上の入所者がおり、合計 すると六十人以上の入所者がまだ自立の見通しが立 たない状況だ。しかも、「さくら寮」は地元との協 議で、来月末には暫定期間が打ち切られる予定とな っており、十月末には五十人前後の残留者が出る見 込みだ。だが、都と二十三区が合意した自立支援セ ンター構想は、水面下で具体的な候補地探しが進ん でいるものの、区側が強い難色を示しているため、 まだ一ヵ所も地元合意には達しておらず、時間的に みて残留者の受け皿となるのはほぼ絶望的。暫定施 設の期間延長も不可能で、残り一ヵ月間、入所者の 対応をどうするのか、福祉局は頭を痛めている。

路上生活者の就労促進を目的とした自立支援センター構想は二年前からあった が、地元住民らの強い反発等によって進展が見られなかった。

それが今年四月、「北新宿寮」と「さくら寮」が暫定的ではあるが、自立支援 センターとして期限付き開設ができたのは、二月七日早朝に起きた新宿駅西口広 場での火災が契機。この火事で、現場近くの段ボールハウスで暮らしていた路上 生活者五人が死傷し、約百人が焼け出された。

都では罹災に対する応急保護を理由に都営臨時宿泊施設「なぎさ寮」(所在地 ・大田区)に希望者を一時収容。その「なぎさ寮」は山谷対策の施設を兼ねてい るため、毎年、仕事の少ない五月の大型連休には多くの働働者が入居する予定だ ったことから、新たな受け入れ施設が必要になり、都と地元・新宿区の懸命の説 得によって、両施設での暫定使用が実現した。

四月の開設段階で、入所者数は「北新宿寮」が八十人、「さくら寮」が五十五 人。都OBの生活相談員や就労相談員を非常勤で配置し、個別相談にのるなど、 自立に向けたサポートを進めた結果、二十日現在で、両施設で三十六人が職を見 つけて退所あるいは退所に向けた準備を行っている。このほか自己退所、無断退 所、命令退所が計二十六人、生活保護の適用で二人が退所している。

これによって、現在は「北新宿寮」が四十八人(うち就労三人、生活保護適用二 人)、「さくら寮」が三十七人(うち就労十三人、生活保護適用十一人)が入所 中だ。

だが、新宿消防署仮庁舎跡を「北新宿寮」として使用する際に、都と新宿区、 地元代表の三者が締結した覚書では、「六ヵ月の暫定期間とする」ことを定め、 「自立支援事業の延長又は路上生活者対策での再使用は行わない」と明記されて おり、「北新宿寮」は今月末で閉鎖されることに。

北新宿寮の入居者は「さくら寮」へと移送されることになったが、「さくら寮」 も地元代表との協議で、都側は八月の話し合いの中で、「期限は十月末」「延 長はしない」と約束している。「さくら寮」は冬期臨時宿泊施設として使用され ているため、施設の改修工事などの準備期間から逆算しても十月末が限度だとい う。

都福祉局では「暫定施設の延長は地元との約束で出来ない。残り一ヵ月で就労 促進など自立支緩に全力をあげるとしか今の段階では言えないが、十月になって 景気・雇用状況がガラリと好転することは考えにくく、また要件を満たさない 人まで生活保護を適用するわけにはいかないので、五十人前後が残留するのは覚 悟している。しかし、期限が切れたからといって、路上生活に戻すことだけは絶 対に避けたい。既存施設の活用など代替施設を必ず確保していく」(生活福祉部 保護課)と話す。

だが、都施設の暫定的な転用や未利用地での仮設は、地元との調整に時間が かかる恐れがあり、状況はかなり厳しい。


都政新報 9/25/1998