生活保護法

第九章 不服申立て


(審査庁)

第六十四条
第十九条第四項の規定により市町村長が保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部をその管理に属する行政庁に委任した場合における当該事務に関する処分についての審査請求は、都道府県知事に対してするものとする。

(裁決をすべき期間)

第六十五条
厚生大臣又は都道府県知事は、保護の決定及び実施に関する処分についての審査請求があつたときは、五十日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
2 審査請求人は、前項の期間内に裁決がないときは、厚生大臣又は都道府県知事が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

(再審査請求)

第六十六条
市町村長がした保護の決定及び実施に関する処分又は市町村長の管理に属する行政庁が第十九条第四項の規定による委任に基づいてした処分に係る審査請求についての都道府県知事の裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができる。
2 前条第一項の規定は、再審査請求の裁決について準用する。この場合において、同項中「五十日」とあるのは、「七十日」と読み替えるものとする。

第六十七条及び第六十八条
削除

(審査請求と訴訟との関係)

第六十九条
この法律の規定に基づき保護の実施機関がした処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。

第十章 費用

(市町村の支弁)

第七十条
市町村は、左に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 その長が第十九条第一項の規定により行う保護(同条第五項の規定により委託を受けて行う保護を含む。)に関する左に掲げる費用
イ 保護の実施に要する費用(以下「保護費」という。)
ロ 第三十条第一項但書、第三十三条第二項又は第三十六条第二項の規定により被保護者を保護施設に収容し、若しくは収容を委託し、又は保護施設を利用させ、若しくは保護施設にこれを委託する場合に、これに伴い必要な保護施設の事務費(以下「保護施設事務費」という。)
ハ 第三十条第一項但書の規定により被保護者を適当な施設に収容し、又はその収容を適当な施設若しくは私人の家庭に委託する場合に、これに伴い必要な事務費(以下「委託事務費」という。)
二 その長の管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する者に対して、都道府県知事又は他の市町村長が第十九条第二項の規定により行う保護(同条第五項の規定により委託を受けて行う保護を含む。)に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費
三 その長の管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する者に対して、他の町村長が第十九条第六項の規定により行う保護に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費
四 その設置する保護施設の設備に要する費用(以下「設備費」という。)
五 この法律の施行に伴い必要なその人件費
六 この法律の施行に伴い必要なその事務費(以下「行政事務費」という。)

(都道府県の支弁)

第七十一条
都道府県は、左に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 その長が第十九条第一項の規定により行う保護(同条第五項の規定により委託を受けて行う保護を含む。)に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費
二 その長の管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する者に対して、他の都道府県知事又は市町村長が第十九条第二項の規定により行う保護(同条第五項の規定により委託を受けて行う保護を含む。)に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費
三 その長の管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有する者(その所管区域外に居住地を有する者を除く。)に対して、町村長が第十九条第六項の規定により行う保護に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費
四 その設置する保護施設の設備費
五 この法律の施行に伴い必要なその人件費
六 この法律の施行に伴い必要なその行政事務費

(繰替支弁)

第七十二条
都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村は、政令の定めるところにより、その長の管理に属する福祉事務所の所管区域内の保護施設、指定医療機関その他これらに準ずる施設で厚生大臣の指定するものにある被保護者につき他の都道府県又は市町村が支弁すべき保護費及び保護施設事務費を一時繰替支弁しなければならない。
2 都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村は、その長が第十九条第二項の規定により行う保護(同条第五項の規定により委託を受けて行う保護を含む。)に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費を一時繰替支弁しなければならない。
3 町村は、その長が第十九条第六項の規定により行う保護に関する保護費、保護施設事務費及び委託事務費を一時繰替支弁しなければならない。

(都道府県の負担)

第七十三条
都道府県は、政令の定めるところにより、次に掲げる費用を負担しなければならない。
一 居住地がないか、又は明らかでない被保護者につき市町村が支弁した保護費、保護施設事務費及び委託事務費の四分の一
二 宿所提供施設又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十八条に規定する母子寮にある被保護者(これらの施設を利用するに至る前からその施設の所在する市町村の区域内に居住地を有していた被保護者を除く。)につきこれらの施設の所在する市町村が支弁した保護費、保護施設事務費及び委託事務費の四分の一
三 市町村が支弁した保護施設の設備費の四分の一

(都道府県の補助)

第七十四条
都道府県は、左に掲げる場合においては、第四十一条の規定により設置した保護施設の修理、改造、拡張又は整備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。
一 その保護施設を利用することがその地域における被保護者の保護のため極めて効果的であるとき。
二 その地域に都道府県又は市町村の設置する同種の保護施設がないか、又はあつてもこれに収容若しくは供用の余力がないとき。
2 第四十三条から第四十五条までに規定するものの外、前項の規定により補助を受けた保護施設に対する監督については、左の各号による。
一 厚生大臣は、その保護施設に対して、その業務又は会計の状況について必要と認める事項の報告を命ずることができる。
二 厚生大臣及び都道府県知事は、その保護施設の予算が、補助の効果を上げるために不適当と認めるときは、その予算について、必要な変更をすべき旨を指示することができる。
三 厚生大臣及び都道府県知事は、その保護施設の職員が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したときは、当該職員を解職すべき旨を指示することができる。

(準用規定)

第七十四条の二
社会福祉事業法第五十六条第二項から第四項までの規定は、国有財産特別措置法(昭和二十七年法律第二百十九号)第二条第二項第一号の規定又は同法第三条第一項第四号及び同条第二項の規定により普通財産の譲渡又は貸付を受けた保護施設に準用する。

(国の負担及び補助)

第七十五条
国は、政令の定めるところにより、次に掲げる費用を負担しなければならない。
一 市町村及び都道府県が支弁した保護費、保護施設事務費及び委託事務費の四分の三
二 市町村及び都道府県が支弁した保護施設の設備費の二分の一
2 国は、政令の定めるところにより、都道府県が第七十四条第一項の規定により保護施設の設置者に対して補助した金額の三分の二以内を補助することができる。

(遺留金品の処分)

第七十六条
第十八条第二項の規定により葬祭扶助を行う場合においては、保護の実施期間は、その死者の遺留の金銭及び有価証券を保護費に充て、なお足りないときは、遺留の物品を売却してその代金をこれに充てることができる。
2 都道府県又は市町村は、前項の費用について、その遺留の物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有する。

(費用の徴収)

第七十七条
被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
2 前項の場合において、扶養義務者の負担すべき額について、保護の実務機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立により家庭裁判所が、これを定める。
3 前項の処分は、家事審判法の適用については、同法第九条第一項乙類に掲げる事項とみなす。

第七十八条
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。

(返還命令)

第七十九条
国又は都道府県は、左に掲げる場合においては、補助金又は負担金の交付を受けた保護施設の設置者に対して、既に交付した補助金又は負担金の全部又は一部の返還を命ずることができる。
一 補助金又は負担金の交付条件に違反したとき。
二 詐偽その他不正な手段をもつて、補助金又は負担金の交付を受けたとき。
三 保護施設の経営について、営利を図る行為があつたとき。
四 保護施設が、この法律若しくはこれに基く命令又はこれらに基いてする処分に違反したとき。

(返還の免除)

第八十条
保護の実施機関は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる。

第十一章 雑則

(後見人選任の請求)

第八十一条
被保護者が未成年者又は禁治産者である場合において、親権者及び後見人の職務を行う者がないときは、保護の実施機関は、すみやかに、後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

(町村の一部事務組合等)

第八十二条
町村が一部事務組合又は広域連合を設けて福祉事務所を設置した場合には、この法律の適用については、その一部事務組合又は広域連合を福祉事務所を設置する町村とみなし、その一部事務組合の管理者又は広域連合の長を福祉事務所を管理する町村長とみなす。

(保護の実施機関が変更した場合の経過規定)

第八十三条
町村の福祉事務所の設置又は廃止により保護の実施機関に変更があつた場合においては、変更前の保護の実施機関がした保護の開始又は変更の申請の受理及び保護に関する決定は、変更後の保護の実施機関がした申請の受理又は決定とみなす。但し、変更前に行われ、又は行われるべきであつた保護に関する費用の支弁及び負担については、変更がなかつたものとみなす。

(実施命令)

第八十四条
この法律で政令に委任するものを除く外、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。

(大都市等の特例)

第八十四条の二
この法律中都道府県が処理することとされている事務又は都道府県知事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下本条中「指定都市」という。)及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下本条中「中核市」という。)においては、政令の定めるところにより、指定都市若しくは中核市(以下本条中「指定都市等」という。)が処理し、又は指定都市等の長が行うものとする。この場合においては、この法律中都道府県又は都道府県知事に関する規定は、指定都市等又は指定都市等の長に関する規定として指定都市等又は指定都市等の長に適用があるものとする。
2 第六十六条第一項の規定は、前項の規定により指定都市等の長がした処分に係る不服申立てについて準用する。

(保護の実施機関についての特例)

第八十四条の三
老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十一条の規定により養護老人ホーム又は特別養護老人ホームに収容されている者に対する保護については、その者がこれらの施設に引き続き収容されている間、その者は、第三十条第一項ただし書の規定により収容されているものとみなして、第十九条第三項の規定を適用する。

(罰則)

第八十五条
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

第八十六条
第四十四条第一項、第五十四条第一項若しくは第七十四条第二項第一号の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は第二十八条第一項(要保護者が違反した場合を除く。)、第四十四条第一項若しくは第五十四条第一項の規定による当該官吏若しくは当該吏員の調査若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても前項の刑を科する。但し、法人の役員(理事、取締役その他これに準ずべき者をいう。)又は人(人が無能力者であるときは、その法定代理人とする。)がその法人又は人の代理人又は使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため相当の注意を怠らなかつたことの証明があつたときは、その法人又は人についてはこの限りでない。


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