新潟県の審議会等付属機関に関する調査報告書

市民新党にいがた 高見 優
注:まだ収録作業未整理です。図表などが未収録で改行処理・項目修飾などの作業が 終わっていませんが、調査報告のテキストデータとしては使えます。
 図表などは後日整理して収録します。

1.はじめに

 先に私は、『市民新党にいがたの挑戦』(白順社)において、審議会を「隠れ蓑」とする、わが国の官僚政治の手法を明らかにした。いわゆる審議会行政は、国政レベルだけでなく地方公共団体レベルにおいても日常茶飯のごとく行われており、その弊害については従来より繰り返し批判されてきたところである。  今回、新潟県の審議会等附属機関の実態を調査したところ、極めて興味ある結果が判明したのでここに報告する。

 地方自治法第138条の4第3項は、地方公共団体が「法律又は条例の定めるところにより」「審査会、審議会、調査会」などの「審査、諮問、調査のための機関を置くことができる」と規定している。したがって、新潟県など地方公共団体が審議会等の附属機関を設置するためには、法律・条例にその定めがなければならず、法律・条例によらないで設置要綱・要領などで設置することはできない。もちろん法律・条例によらないでいわゆる「私的な諮問機関」を設置することは自由であるが、その場合、運営経費や選任した委員に対する報償・旅費などに対して公金を支出することは違法である旨が、「地方自治関係実例集」やその他の専門書に記載されている。  国においては、昭和58年の国家行政組織法の改正により、政令によっても審議会等附属機関の設置ができるように改定された。しかし、地方自治法はそのような改定は行われていないので、地方公共団体の附属機関の設置は、依然として法律または条例によらなければならないのに、国にならって要綱・要領などに基づいて設置されている例が多数見受けられる。

 新潟県が1995年11月に設置要領によって設立した「イヌワシ等希少鳥類検討委員会」について、ある自然保護団体が、この委員会の在り方がイヌワシ保護のためというよりむしろ開発を推進する役割を果たしているのではないかと疑問を持った。そして、要領によって設置された私的な諮問機関は法定外の附属機関であるから、この委員会の運営に係わる需用費や委員に対する報償金・旅費が公金が支出されたのは違法であるとして、同団体に所属する3名のメンバーが新潟県監査委員に住民監査請求を行なった。しかし、新潟県監査委員はこれを棄却したため、現在、新潟地方裁判所に住民訴訟が提起されている。
 過去において、この訴訟のように地方公共団体の附属機関の設置をめぐる訴訟が提起された事例は見当たらず、本訴訟はわが国最初のケースであり、裁判の行方が注目される。


2.新潟県の附属機関の実態調査

 地方公共団体においては、与野党相乗りの首長が誕生するケースが増加したことや相乗り首長が「住民参加」の手法を多用する意味もあって、近年ますます審議会行政がさかんである。そして、保守単独首長の時代に比べて相乗り首長が増加した今日の時代の方が、圧倒的に審議会の数が多くなったと指摘されている(新潟県議会事務局の担当者)。
 これまでに地方公共団体の審議会等附属機関について一部の附属機関に関する調査はなされたことがあったが、今回のように一つの県の附属機関全体にわたる調査は、新潟県のみならず全国的にもほとんど前例がないようである。

(1)調査対象と資料
 1995年(平成7年)秋、まず、議会事務局を経由して新潟県が設置している全部局の審議会等の附属機関の調査にとりかかった。しかし当初は、県当局はもちろん、各部局の責任者でさえ自己の部局の附属機関についてその全体像を把握しておらず、資料収集は難航を極めた。ようやく提出された資料(平成7年8月時点)は、ダブリや記載漏れなど多くの不備があり、数回にわたって再提出を求めるなどして、1年以上の日時を費やすことで、ようやく全貌が浮かび上がってきた。
 しかし、議会事務局の調査によって最終的に得た資料を整理中、たまたま入手した県議会決算委員会に提出された「平成7年度普通会計決算資料(別冊)」を見ると、議会事務局の調査資料にはなかった83もの法定外附属機関が存在することが判明した。さらにその決算資料には、過去5年間に存在した法定外附属機関についての情報も掲載されており、その数は54に及ぶ。
 このように、新潟県の附属機関の実態はミステリーに包まれており、今回得られた調査資料から審議会等附属機関の全貌が明らかになったかどうか、まだ確定できない可能性もある。行政の外部からの調査では限界があるので、新潟県が自主的に全ての附属機関を県民に公開するとともに、文書管理の担当部局がその職務を忠実に遂行し、たえず実態を正確に把握する責任がある。各部局が恣意的かつ奔放に、法定外附属機関を乱造し、いつ解散したのかさえ不明瞭な運営実態があるので、文書私学課や議会事務局どころか、当該部局ですら実態がわからない場合すらあるのである。無責任な行政実態の一面を表している。

  (2)データ・ベースの作成
 パソコンの表計算ソフトを利用して、審議会等の附属機関を各部局ごとに、法律・条例に基づく附属機関(以下、「法定附属機関」という)、それ以外の附属機関(「法定外附属機関」)に分類し、全委員の氏名・所属団体を入力しながら、兼任する附属機関の情報も委員ごとに集計した。また、法定附属機関の委員名簿には、その審議会等の就任期間や県職員の経験の有無等の情報が記載されていたので、それらも入力した。
 なお、法定外附属機関について、調査資料の違いを明らかにするため、議会事務局資料によるものを法定外附属機関1、決算資料のうち平成7年度のもの、平成3〜6年度のものをそれぞれ法定外附属機関2、同3とした。  法定外附属機関2、同3の資料には委員名簿がなく委員のデータベース化は不可能であるので、名称、委員の数や開催回数など基礎データに限定せざるを得なかった。
  (3)データの解析
 全委員の情報の入力が終了した後、所属団体別に整理し、また兼任する附属機関とその数、就任期間の傾向などについて解析した。その結果、後述するように行政と審議会の委員の間に横たわる多くの問題を発見することができた。

  3.調査結果とその考察

(1)新潟県には、法定附属機関が75あるのに対して、法定外附属機関(1)が110もある。さらに法定外附属機関(2)が83、同(3)が54もある。平成7年度に限って調べると、法定附属機関75に対して、法定外附属機関(1+2)は193となり、全附属機関 268に対する法定附属機関の割合は3割以下である。つまり大部分が法律・条例の設置根拠を持たない法定外附属機関であることがわかる。
 全体の7割以上に達する法定外附属機関の運営等の経費が、「イヌワシ等希少鳥類検討委員会」と同じように公金によってまかなわれ違法・脱法行為が行われているとしたら、官官接待・カラ出張・ヤミ手当問題と匹敵する大問題である。

(2)法律または条例に基づいて設置されている法定附属機関について、各部局ごとに、名称、設置根拠、法令施行日、所管部(課)、女性委員の内数を含む委員総数、公開の有無、開催回数等を整理し一覧表にしたものが、表1である。また、法定外附属機関について、名称、設置根拠、要綱等の施行日と規定内容(委員の委嘱者およびその手続き、任期、事務局)、女性委員の内数を含む委員総数、所管部(課)の情報等を一覧表に整理したのが表3である。さらに、それらを所管部局ごとにまとめたものが表2である。
 県から入手した法定外附属機関の資料には、平成7〜8年度の開催回数、支出済額が記載されている。それをみると、すべての法定外附属機関とも、毎年、相当額の公金が支出されていることがわかる。支出科目は、報償費、旅費、需用費(食糧費及びその他)、役務費、委託料、使用料・賃借料となっている。
 平成7年度を調べると、法定外附属機関(1)の開催回数は238回(法定外附属機関1+2では 455回)、支出総額は年間約3,340万円であった(一部は平成8年度の数字)。

(3)附属機関の委員数は法定附属機関が1,106人(法律および条例に基づくものはそれぞれ802人および304人)、法定外附属機関(1)が1,506人で、合計 2,612人となっている。法定外附属機関(2)は2,199人、同(3)は800人であり、平成7年度の法定外附属機関(1+2)は3,705人に達している。
 男女共同参画型社会を目指して、審議会等の委員の中に一定の割合の女性委員を確保しようという、いわゆるクォータ制度について近年関心が高まっている。新潟県の審議会の女性委員の割合は、法定附属機関が14.9%(法律によるものが13.1%、条例によるものが19.7%)であるのに対し、法定外附属機関ではわずか5.8%でしかない。法定外附属機関(2)、同(3)は資料がないので不明であるが、法定外附属機関(1)の女性委員の割合は、法定附属機関の約3分の1に過ぎず、この点においても法定外附属機関には問題がある。
 委員名簿が入手できた法定附属機関と法定外附属機関(1)について、以下のとおり分析した。
 附属機関の委員の中には、複数の附属機関の委員を兼務している者がかなりいる。したがって委員の実人数は先に述べた数字より実際は少なく、法定および法定外附属機関(1)の実人数はそれぞれ828人、699人で合計1,527人である(図1)。
(図1)(未収録)


 兼務している委員の割合は、法定・法定外附属機関でそれぞれ25.1%、53.6%(全体では41.5%)を占め、委員一人当たり平均 1.7のポストを兼務していることになる。法定外附属機関の方が兼務している率が高いが、このことは後で考察する。

 委員ごとの就任ポスト数は次のとおりである。

ポスト 数 人数 ポスト数 人数
 1 1,101 名 10 7 名
 2   211 名 11 2 名
 3   88 名 12 1 名
 4 36 名 13 2 名
 5 33 名 14 1 名
 6 21 名 20 1 名
 7 6 名 24 1 名
 8 9 名 26 1 名
 9   5 名 28 1 名
合計 1,527名
 個別に分析すると10以上のポストを掛け持ち兼務している者が実に17名もおり、最高は28ポスト、次いで26ポスト、24ポストと続いている。この17名は全委員の1.1%でしかないのに、全ポスト数2,612 の 9.3%に当たる 242のポストを占めている。10ポスト以上を兼務する委員は以下のとおり。(注:( )内は、法定機関+法定外機関(1) の就任ポスト数)

 ポスト数
 28( 7+21) 稲葉  博(県・福祉保健部長)
 26(15+11) 伊藤孝二郎(県町村会会長)
24( 5+19) 堀江 昭雄(県・農林水産部長)
 20(12+ 8) 日浦晴三郎(県市長会長)
 14( 6+ 8) 松元  寿(県医師会長)
 13( 7+ 6) 平山 征夫(県知事)
 13( 5+ 8) 荒川 正昭(新潟大学医学部長)
 12( 7+ 5) 中田 久蔵(県商工会議所会頭)
 11( 5+ 6) 平野 清明(県教育長)
 11( 0+11) 月山 光夫(県地域農政推進課長)
 10( 1+ 9) 木村  明(新潟市民病院長)
 10( 0+10) 所  明彦(県・経営普及課長)
 10( 8+ 2) 鈴木 直和(県・商工労働部長)
 10( 4+ 6) 佐藤 信而(県農業会議議長)
 10( 4+ 6) 近  寅彦(新発田市長)
 10( 4+ 6) 相沢 健二(新潟日報論説委員長)
 10( 4+ 6) 山本 正治(新潟大学医学部教授)

  (4)法定附属機関の委員ポストの中には、いわゆる当て職と呼ばれる行政機関の役職に就いている者が自動的にその委員ポストに就任するケースが多く見受けられる。したがって、多くのポストを兼務している委員の中に、それらの行政機関の役職者が入っているのは当然かもしれない。しかし、(3)に示したランキングリストの行政機関の役職者の兼務状況を詳しく調べてみると、確かに法定附属機関の当て職が相当数あるものの、数の上ではむしろ法定外附属機関のポストの方が多いことがわかる。とくに、課長級の2名(月山光夫、所明彦)はいずれも法定附属機関のポストがゼロであり、すべて法定外附属機関のポストである。
 法定附属機関の委員に就任している県職員以外の者の多くが法定外附属機関の委員にも選任される理由は、彼らがそのポストに就任してきた実績を評価され、長年の付き合いを通じて気心が知れているため県としても何かと便利で重宝がられていることにあるのは、容易に想像できる。その証拠として、彼らの多くは10年、20年という長期間にわたって同じ委員ポストにあるのみならず、多くの附属機関の会長・委員長など重要ポストに就任し続けているのである。
 以上考察した県職員とそれ以外の者の委員ポストの兼務の傾向から推察されることは、条例の制定手続きがないので県議会のチェックを受けることがなく、県がいつでも任意に思うがままに設置できる法定外附属機関にあっては、それらの委員の選任に際して、身内の役職者や長年の付き合いがある既設の附属機関の委員が優先的に選任されることである。そしてそのことは(3)の最初の部分で述べたとおり、法定外附属機関の方が兼務する割合が大きいことからも証明される。
 このように行政に都合のいい法定外附属機関は、市民や議会の側から見た場合には、逆に、法定附属機関より不透明で密室性はより高いと言うことができる。これは住民参加の、住民に開かれた、市民が主人公の行政と正反対の行政手法ではないか。

(5)さらに問題なのは、特定の委員の就任期間が極めて長期にわたることである。法定外附属機関に関する県の資料には、委員の就任期間に関する情報が記されていないのでその実態は不明である。法定外附属機関は比較的最近になって設置されたものが多いので、ひとまず措くことにする。法定附属機関の資料には、一部を除いて委員の就任期間についても記されているのでそれについて整理したので考察する。
(注:資料収集とその解析に1年以上要したこと、県の資料の中に古い情報が混じっていることなどから、就任期間は1〜2年の誤差がある可能性が高いが、大体の傾向については把握できる。)

 32年 青池  卓(D201)
 30年 小林 力三(D203)
 26年 榊田 久雄(A101)、20年(D203)
    伊藤孝二郎(D203)、16年(C104)
    川室 道隆(D107)
 25年 亀山 宏平(D201・会長)
    高鳥  修(F102)
 23年 小出 良政(E201・会長)
    山添 真清(F201)
    渡辺 一夫(F201)
 22年 高鳥 一男(C104)、17年(B101・会長)
    高橋 芳子(D101)
   滝沢 宇平(H103・会長)
    茅原 一也(C102)
    西川 新次(K203)
    山田 伝吉(F104)
 21年 坂野 高次(D102)
    真島  正(D201・副会長)
 20年 今湊 良敬(A101)
   高橋 助七(D101・委員長)
    中野 雄一(D101)、13年(D111・会長)
    原  和弘(H103・会長代理) 10年(H101・会長)
 18年 池 儀三郎(D205)
  石堂 平也(D205)
  鈴木 辰治(D205)
伴  昭彦(B101・会長代理)
青木  滋(C104)
 17年 伊藤仙太郎(F104)
片岡  実(D115)
星野求五郎(F102・副会長)
 16年 竹田 惣作(D102)
富所  勇(H101)
豊島 重造(C104)
山岸  豪(D201)
 15年 井手口 薫(D102)
岩野  正(H105)、13年(C104)
荻野周次郎(B102)
小島 栄吉(E201)
近  寅彦(D102)
高橋 新一(D102)
富樫 又治(D102)
永野 敏郎(D102)
増村 幹夫(D107)
 14年 河内  実(D102)
本田 富雄(H102)
湯浅 赳男(E201・会長代理)
 13年 甘粕  健(K203)
大崎 完一(D102)
小林 厳雄(K203)
田中 憲一(D111)
古川長四郎(I101)
星野伊佐夫(H201・会長)
 12年 石沢  進(K203)
  橋本 保則(C203・会長)
 10年(H106・副会長)
  樋熊 清治(C104)
本間 義治(C203)
松元  寿(B201)
 11年 阿部 桂子(K103)
飯田  真(D107・会長)
伊豆野壹郎(F103)
加賀田達二(E103)
小磯  稔(F202)
小島 崇裕(H104)
鈴木 広介(D205)
高橋 克夫(F102)
丹治 俊雄(E103)
富樫 益郎(D102)
 10年 祝  富雄(F103)
木村 喜保(F103)
坂下作太郎(F103)
佐藤 貞雄(H104・会長)
竹内 正文(D102)
中瀬 成明(B101)
中野 政樹(K203)
野沢 悟郎(D102)
広田 秀憲(C104)
山本 正治(D205)

   以上のように、就任期間が10年以上の委員が84人、そのうち20年以上の委員が23人、最高は32年に達している。このように、特定の者にかたよって選任されているだけでなく、長期間そのポストを独占している実態があることがわかる。
 最近話題になったように、県自然環境保全審議会・同自然環境部会は、1989年(平成元年)以降、毎回傍聴が許可されてきたのに、本年6月に開催された審議会・同自然環境部会はいずれも傍聴が不許可とされた。この審議会会長であり同自然環境部会長の茅原一也氏は、前記のとおり20年以上にわたって審議会の委員に就任している新潟大学名誉教授であるが、現在、ある建設コンサルタント会社の最高技術顧問を務めている。ところがこの会社が審議会に諮問されている開発計画に係わる付け替え国道の設計を請け負っていたことが明らかになり、茅原会長自身も「誤解を与えたことには対応を考える」と、会長職の辞任に含みを残す発言をした。しかし、その後、県庁側から引き留められた模様で、引き続き審議会に留まっている。
 この事例が示すように、行政部局と審議会の親密な関係は、他の多くの審議会の委員の場合にも横たわっていることが想像される。

(6)次に、附属機関の委員に選任された者の所属について検討する。いったい、どういう人がどんな基準に基づいて委員に選任されているのだろうか。法定附属機関の場合は、設置根拠となる法律や条例に、「学識経験を有する者」「関係行政機関の職員」「一般消費者を代表する者」「事業者を代表する者」などの規定が示されている。この規定自体が極めて抽象的であり、それを基準とした場合でも実際に誰を選任するのか、具体的な選任手続きは明らかにされていない。
 監査委員や選挙管理委員会の委員の場合は、議会選挙や首長が議会の同意を得て選任する定めがあるが、法定・法定外を問わず附属機関の委員の選任については、すべて首長に一任されている。ただでさえ伝統的な統治実績とその権力を誇る官僚機構=行政機関は立法機関より優位に立っているのに、審議会行政を多用して有力な官民多数の力を取り入れる手法によって、議会が無力にされ、市民の行政への参加が阻害されているのではないか。市民の直接・間接の意思を問うかわりに審議会を隠れ蓑に使っていると批判されるのは、まさにこの点にある。
 審議会等附属機関が真に市民の代表によって構成されているのであれば、それは民主的な行政手法であるかも知れないが、現実の審議会行政はそれと逆行する実態がある。首長は、法定附属機関の場合でも、法律・条例に委員の選任規定があるとはいえ附属機関の委員の選任権を独占しているので、事実上、首長の意に沿う人物を選任することによって行政を思うがままに運営することが可能になるのである。ましてや法定外附属機関にいたっては、そもそも市民の代表者で構成されている議会に諮られずに設置されているから、委員の選任のみならずその運用実態はほとんど行政の補完物であると言っていいくらいである。
 以上のような審議会行政の歪みを是正するには、まず、地方自治法の規定どおり法定外附属機関を一掃することである(もちろん、首長らのポケットマネーによって運営される私的諮問機関まで廃止することの是非を論じるものではない)。そして、次に大事なことは、審議会等の委員の公選制を採用することである。そもそも今の審議会行政は誰のために多用されているのだろうか。真に民主的で公正な、市民に開かれた行政を実現するためには、市民の代表が公選され、市民がいつでも傍聴でき、議事録が公開されるなど、その運用の仕方を抜本的に改革しなければならない。また、議会、監査制度などの機能をより充実させるとともに、情報公開制度・行政手続き制度をより民主的に発展させる必要がある。そして、オンブズ・パーソン制度の導入も不可欠である。
 上に述べた理想形態と対比しながら、新潟県の審議会等の委員の所属先を分析する。
 他県では審議会の委員が公選されているところもあるが、新潟県の場合は全員が行政の都合によって選ばれている。法定・法定外(1)を問わず、全委員の所属・職業を調べてみると、国・県・市町村の役人がそれぞれ78人,135人,116人、そして県議が85人、医師が157人いる。新潟大学所属が128人など全国の大学関係者は204人となっている。また新潟県○○○という名前の団体関係者が328人に達しており、そのほとんどは経済連、建設業協会といった業界団体やさまざまな社会団体である。県下最大の発行部数を誇る新潟日報社からは、16人が大規模小売店舗審議会など各種審議会の委員44ポストに就任し、そのうちの5人は会長、副会長などの重要ポストについている。
 以上の諸団体の所属者が審議会等附属機関の全ポストの約7割を占め、残りの大部分も労働団体や福祉・教育・婦人など団体所属者で、県民個人はほとんどいないことがわかった。
 官官接待・カラ出張事件をキッカケに、宮城県の監査委員は弁護士会や税理士会の推薦者をそのまま任命することになったようであるが、新潟県の審議会等の委員に就任している弁護士15人は、全員一本釣りで選任(24ポスト)され、特に長期の5人の就任期間を合計すると 126年にもなる。そして彼らは、建設審査会、土地利用審査会、都市計画地方審議会、開発審査会などの重要な附属機関の会長などの要職ポストに就任しているのである。

4.まとめと提言

 審議会等附属機関においても問題となるのは、やはり人物、制度、そして運用の仕方である。
(1)附属機関の委員について
 公正、公平、中立を要請される行政執行に当たって、行政事務の意思を策定する重要な位置にある審議会等附属機関の委員に、誰が就任するのかは極めて重大な問題である。
 委員の選任がある種の傾向に偏ったものであったり、調査審議する問題に利害関係のある者が入っているのは論外である。本調査で明らかになったのは、以下のとおりである。これらを早急に改善するよう提言する。
  多くの附属機関の委員を兼任する者がおり、兼務率は法定、法定外附属機関でそれぞれ25.1%、53.6%(全体で41.5%)とかなり高い割合であること。兼任ポスト数の最大は28である。
  同じ人物が20年、30年と長期間にわたって同じポストに就任し続けるていること。最高32年。
  女性の委員の割合が平均 9.6%と少ないこと。とくに法定外附属機関(1)は5.8%となっている。
  特定の有力人物が会長などの要職ポストに長期間就任し続けており、利害関係が疑われる不透明な人事すら見受けられること。
  専門団体、業界団体などの委員を委嘱する際、一本釣りの方法が多用され、それらの団体による推薦による方法が採られていないこと。
  委員の公選制がとられていないこと。

(2)制度上の問題
 本調査の動機の一つが、法定外附属機関の違法性を巡る問題意識にあった。この点について、新潟県当局はあくまで合法であると強弁しているが、地方自治法をそのまま解釈する限り違法性は疑いがない。
  法定外附属機関は違法であるので、即刻廃止すべきである。あるいは、私的諮問機関として存続させるのであれば、公金の支出をやめるべきである。   行政の多様化・専門化の流れは否めないので、必要な附属機関の設置はこれからもやむを得まい。その場合、地方自治法に照らして、条例を制定した上で附属機関を設置しなければならない。
  附属機関について、委員の名前、開催予定の告知、公開、議事録開示など、積極的に県民に広報すべきである。
  附属機関の問題と直接関係はないが、市民の政治参加、住民参加の行政、情報公開の流れ、行政手続きの公平・公開などの要請に応えるために、また、近年の官官接待やカラ出張問題などの行政腐敗事件や薬害エイズ事件などで明らかになった審議会の在り方の問題などの反省に立って、オンブズ・パーソン制度の導入が不可欠である。

(3)運用の仕方の問題
  情報公開の流れ、住民参加の行政手法などを考慮したとき、もはや、非公開の密室審議は県民の疑惑を呼び起こすだけでしかない。「変わろう県庁」のスローガンどおり、開かれた行政の概念を審議会等附属機関にも及ぼし、審議会等附属機関公開条例を制定すべきである(原則公開、ただしプライバシーの権利侵害等の例外非公開の規定を盛り込む)。
  議会や裁判同様に、審議会等附属機関もいつでも誰でも気軽に傍聴できることが基本であり、附属機関の開催予定の告知など広報活動を積極的に行うこと。当然、議事録の開示も行う。
  審議会等附属機関の設置条例・要綱等に、県民等の参加による公聴会の開催、関係者や関係諸団体の意見陳述の機会を設けること、などの規定をおき、積極的に県民参加の機会を増やすこと。
  インターネット(Eメール)などの媒体を積極的に活用し、また従来の手紙・ファクシミリの方法も併用し、広く県民の意見を聴取すること。

5.おわりに

 巻末に、委員名簿が入手できた法定附属機関、法定外附属機関(1)の全委員について、50音順に整理した一覧表を掲載した。なお、本データの調査時期は平成7年8月および平成8年ころであるので、現在の委員やその所属などが異なる者がいることを承知願いたい。ともあれ、本報告が市民に開かれた民主的な行政の推進に寄与できれば幸甚である。
(1997/6/25)

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