米空母インディペンデンスの小樽入港にあたって−

ガイドライン見直しと新潟港・新潟県

 

                                      1997年9月4日 市民新党にいがた
(9月4日、インディペンデンス入港抗議のために小樽港に向かう「平和船団」を送り 出した新潟西港で報道機関に配布した資料を一部修正したもの)


■インディペンデンス小樽入港と新ガイドライン・新潟港

 明日9月5日から約1週間、米海軍の空母インディペンデンスとイージス巡洋艦モー ビル(共に横須賀を母港)が、民間港である小樽港に寄港する。これは小樽市で開か れる航空ショーに艦載機を参加させ、「補給と休養」「親善」が目的とされている。 しかしこれはいくつか新潟にとっても見逃せない問題を含んでいる。
 米軍空母の海外母港を認めているのは日本だけであるが、その日本でも空母が民間 港に入港するのは初めてである。あえてこの時期に民間港への空母寄港が強行される のは、ガイドライン見直しを前に民間港と米軍の関わりをより強化しようとしている ことを先取りするものであると言える。
 そしてこのガイドライン見直しとの関連で、新潟港も米軍が有事の際に提供を求め ている港湾であることが先日来新聞等で報道されており(小樽港も含まれている)、 小樽へのインディペンデンス入港を皮切りに全国の港湾施設への米軍艦船入港が恒常 化し、新潟港の軍事利用が一層強化されつつある危険が明らかになっている。
 なお新潟港には海上自衛隊舞鶴地方隊の分遣隊が常駐する基地があり、すでに海上 自衛隊の護衛艦による公開演習などもおこなわれ、95年には米軍のフリゲート艦ロド ニー・M・デイビス(4100トン)が入港している。

■「ポートディレクトリー(港湾案内)で米軍に調べ上げられている新潟港と新 潟県

 米海軍はすでに以前から太平洋全域の約170の港湾施設を調査しており、そのうち 27港が日本の港湾で、その中に新潟港も含まれている。添付資料(このホームページ 上には未収録。入手希望者はnnpp@ppp.bekkoame.or.jp まで連絡を)はその調査 報告書「ポートディレクトリー(港湾案内)」の新潟港部分の抜粋の書き写しで、こ れらの原資料は核軍縮国際コーディネーターの梅林宏道氏がアメリカの情報公開法を 使って80年代に入手したものである。
 この資料を見ると、新潟港の正確な緯度・経度、位置、埠頭・桟橋のサイズと着岸 できる船の大きさ、油や水の補給、設備、修理設備(「新潟鉄工」と「佐渡汽船」の 名前があがっている)、艦船収容能力(巡洋艦が余裕を持って入港できる、と明 記)、港湾労働者の勤務時間、埠頭からの交通アクセス、新潟県の案内(自然、歴 史、主要都市などを記載)、医療情報(近接した民間病院施設として新潟大学付属病 院とガンセンターがあげられ、そのうち新大病院はベッド数690床と明記され、「両 施設とも良好な設備とスタッフがそろっており、全ての内科的・外科的専門分野を扱 う」と書かれている)、麻薬や売春に関する情報(「ハード・ソフトの麻薬が利用可 能。売春は法律で禁止されており、見つけるのは困難」)などが明らかにされ、米軍 によって新潟港と周辺施設、風俗習慣まで調べ上げられていることがわかる。ここに あるのは80年代当時のものであるが、各地の情報は米軍艦入港時などに更新されてい る。このレポートの上記の調査項目以外では、通信、娯楽施設、ホテル、レストラ ン、教会、劇場・映画館などについて「最新情報不明」という記載となっているが、 これらは95年入港当時の調査及びその後の公式・非公式の米軍関係機関の調査により 更新されているはずである。
 なお、この調査は米海軍艦隊諜報センター太平洋(FICPAC)が作成したものであ るが、この機関は「核兵器の配備とその計画をおこなうのに必要な直接的な支援をお こなう」などということを重要な任務としている機関であることも強調しておきた い。

■新潟港の軍事利用及び新ガイドラインと自治体政策

 今回の小樽港入港や95年の米軍艦新潟港入港は、日米安保に基づく地位協定の第5 条第1項「公の船舶・航空機の出入国、施設・区域への出入権」の「合衆国及び合衆 国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によつて、合衆国のために又は合衆国の管理 の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又 は飛行場に出入することができる。」という規定に基づいている。したがって米軍は ほぼ自由に、日本全土の港湾や空港を使用する法的根拠が与えられている。しかし運 輸省は、米軍の民間空港や港湾使用について、この地位協定に基づき可能として いる が、円滑な港の使用には、(1)港湾を管理する地方公共団体の同意 (2)民間船舶の使 用制限が必要な場合は民間会社との調整が必要。空港についても地方公共団体が管理 する空港はその同意や周辺住民、航空会社などとの合意、調整が必要 ―などとしてお り、通常は事前に通告や入港許可申請がおこなわれる。神戸市の場合、非核平和都市 宣言を理由に入港艦船に「非核証明書」の提出を義務づけ、以後米軍艦船が入港しな かった例がある。一方、95年9月、第7艦隊の旗艦ブルーリッジが長崎港に入港する 際には、被爆地ということもあって多くの市民から反対の声が上がり、長崎県・長崎 市が入港を拒否したものの、外務省は「協定上断ることはできない」として入港が強 行されたこともある。
 したがって、新潟港の米軍利用を避け平和な日本海と新潟を守るために、新潟県が 新潟港の米軍利用に「拒否」の態度を示すことは重要であるが、それだけでは事態は 解決できず、結局沖縄と同様、地位協定の問題に立ち向かわなければならないのであ る。
 「地位協定見直し」は今や「過激」な主張ではない。沖縄県が地位協定の全面見直 し案を明らかにしているのは言うまでもないが、「渉外関係主要都道府県知事連絡協 議会」(米軍基地を抱える都道府県知事の連絡会)も去る7月23日、国に対して米軍 基地関係の問題について要望を提出し、地位協定の見直しについて言及している。そ の内容は、沖縄少女暴行事件で問題になったような米兵犯罪者の捜査権などの改善ば かりでなく、例えば「施設及び区域周辺の住民の生活環境の保全及び安全の確保のた め施設及び区域における大気汚染防止法・水質汚濁防止法などの日本国内法の適用」 「そのための地元自治体職員の施設及び区域内への立入り・地元自治体との協議」な どを求め、米軍機による空港使用や低空飛行訓練に対しても「民間機の円滑な定期運 行や安全性の確保のため米軍機の緊急時以外の民間空港の使用禁止」や「米軍機の飛 行について航空法の適用除外をやめる」などを要望している。港湾や艦船についての 記述は「原子力堆進艦船の寄港時における通報内容を厳守」「非核三原則の厳正な堅 持」「原子力艦船の放射能事故対策の確立」などにとどまっているが、当事者自治体 として国にこのような働きかけをしていくことは重要であり、正当な要求である。
 この「連絡協議会」に新潟県は入っていない。しかし新潟県は日米合同委員会で米 軍使用を正式決定した関山演習場をはじめ新潟港・新潟空港など米軍が使用できる施 設を抱えている。関山での合同演習もすでに恒常化し沖縄海兵隊の参加する演習が本 年11月にも予定されているが、さらに低空飛行問題が全国化している(新潟県も飛行 ルートとなっている)ことを考えれば、地位協定見直しや国・米軍との交渉を沖縄県 やこの「連絡協議会」だけに押しつけるのではなく、全国的課題として知事会などに 積極的に提案し国に働きかけることが必要と考えられる。
 また、「新ガイドライン」の中間報告においても、「後方地域支援を行うに当たっ て、日本は、中央政府及び地方公共団体の機関が有する権限及び能力並びに民間が有 する能力を適切に活用する。」と書かれており、自治体や民間の機能を米軍のために 利用する動きがあることも警戒しなければならない。こうした内容を含む新ガイドラインの動きを、自治体としては単に「国の仕事」として無視するわけには行かず、住 民の安全と自治体の主権を守るために、何らかの発言や働きかけをおこなうべきであ る。

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