日米地位協定と新ガイドライン
が新潟県の自治体行政・民間活動及び県民生活に与える影響について

1997年11月改訂

はじめに

    日米防衛協力のための指針(いわゆるガイドライン)見直しの最終報告がこの9月 24日に公表された。この最終報告では、たとえ地球の裏側の「有事」でも、それを地 理的概念からではなく「日本に関連する」「周辺有事」と認定し、その有事体制に自 衛隊ばかりでなく「民間や自治体機能を有効に活用」し、事実上日本全体を総体とし て、米軍の戦闘・戦争に総動員させることが明確にされ、これに基づき自治体の主権 や国民の人権の制限を含む有事法制の整備までが謳われている。米軍は、これまで全 世界で侵略戦争を繰り返し、その中には国際司法裁判所や国連総会で糾弾・非難され ている行為さえ少なくない。私たちの税金が、私たちの職場と私たちの仕事が、私た ちの町や村や自治体が、そうした戦闘行為に「合法的」に動員されようとしているの である。
 この新ガイドライン見直し作業の中で、米軍が有事の際に使用したい港として新潟 港がリストアップされていることが報道された。しかしそうした動きを待つまでもな く、新潟港はすでに80年代から米海軍が使用を前提にした調査活動を積み重ね、95 年には米海軍のフリゲート艦が寄港している。また陸上自衛隊の関山演習場における 日米共同軍事演習は本年11月にも実施され、最初に演習がおこなわれた90年以来、 その頻度は2年に一度の頻繁な割合となっている。さらに最近全国的に問題となりつ つある米空軍戦闘機の低空飛行訓練のルートも新潟県を含んでいる。
 このような動きの中で、米軍関係者による事件・事故の危険、演習場の汚染や周辺 自然環境への影響、新潟港・新潟空港における民間活動の制限、各施設の軍事標的 化、自治体や民間機能の軍事の動員、住民生活へのさまざまな影響などが懸念され る。沖縄の米軍基地による頻繁な事件・事故について、私たちはしばしば、それが 「特別な沖縄のこと」であり、従ってそれは「沖縄差別」であるという主張をする傾 向がある。「沖縄差別」は許しがたい現実ではあるが、しかし見方を変えると、実は 「特別な沖縄」の現状を規定しているような、少なくとも法体系上沖縄だけに適用さ れる特別な法律はなく、安保条約も地位協定も特措法も、全国に適用されるものなの である。したがって私たちは、この国の主権者である国民のひとりひとりとして、そ して程度の差こそあれ米軍基地や米軍供用施設あるいは米軍が使用する可能性のある 民間港湾や空港などの施設を抱えるそれぞれの自治体の住民としても、自分たち自身 の問題としてこれらはとらえられなければならないのである。
 沖縄に次ぐ面積の米軍基地を持つ神奈川の市民グループは独自の地位協定見直し案 を作成し発表した。また、それに先立ち沖縄県が、そして最近本土側の米軍基地を抱 える自治体連絡会が、地位協定見直し暗夜基地の適正運用を求めて国に働きかけてい る。特に多くの軍事施設と日本海側の重要な港湾・空港機能を持つ新潟県とそこに住 む私たち県民も、従来より増して「米軍基地問題」や「安保・ガイドライン問題」の 明確な当事者となったという自覚を持つ必要性が生じている。
 私たちは、現行のガイドラインや地位協定と新潟県の自治体や民間活動及び住民生 活の関係と、さらに新ガイドラインによってそれがどのように変化していくかを検討 し、さまざまな関連資料を集め、整理して本年10月に本報告の「準備版」を公表し た。今回はさらに加筆修正を加え、整理してここに報告する。

1.「有事」に動員されうる新潟県内の主要施設・機能

 「はじめに」に述べた通り、「新ガイドライン」は、日本の中央政府・地方自治 体・民間企業などのありとあらゆる機能や権限を戦闘行動のために利用することを目 指している。朝鮮半島有事を想定して1992年に立案・シュミレーションされた米韓 連合の「作戦計画5027」では、空母5隻を含む艦船200隻余、航空機1600機余、人 員40万人余が動員される想定になっているが、これだけの大部隊を展開し、戦争を遂 行するために、その出撃基地及び収容施設、燃料・食糧・ゴミ処理などの兵たん業 務、日本国内を移動する際の輸送支援・警備、傷病兵を治療するための施設と人員、 在外邦人救助、避難民の受け入れと対策などが整備される必要が出てくる。このよう な「有事」の際に、以下のような新潟県内の自衛隊の諸施設、港湾・空港、病院、鉄 道・道路などの輸送機構、警察機構、自治体及び民間機能などが動員されていくこと になると考えられる

(1)自衛隊施設

 「有事」の際の中核部隊・施設として機能する自衛隊の県内諸施設をあげる。

<陸上自衛隊関係>

(1)-1 陸上自衛隊新発田駐屯地
(〒957新発田市大手町6-4-16 電話0254-22-3151)
 陸上自衛隊東部方面隊第12師団第30普通科連隊約1000名が駐屯。「普通科連隊」 は陸上における有事戦闘行動の中核部隊。
(1)-2 陸上自衛隊高田駐屯地
(〒943上越市南城町3-7-1 電話0255-23-5117)
 新発田に駐屯する部隊と兄弟部隊に当たる同師団第2普通科連隊と、同師団第5施 設群が駐屯。この数年来県内で行なわれてきた日米共同訓練の中核部隊となってい る。
(1)-3 大日ケ原演習場
 主要に新発田基地駐屯の第30連隊が使用する演習場。
(1)-4  関山演習場
(中郷村・新井市・妙高村・妙高高原村にまたが る)
 主要に高田基地駐屯の第2普通科連隊が使用する演習場。大日が原より大きく、防 衛施設庁の分類で「中規模演習場」に属している、比較的大きな演習場(約17km2) で、この数年来おこなわれている日米共同訓練の舞台となっている。沖縄海兵隊の実 弾射撃訓練の移転候補地にも上がった。
(1)-5 陸上自衛隊幕僚監部調査部第2課別室所属 小舟渡通信基地
(新発田市 電話不明)
 いわゆる自衛隊の諜報機関に属する通信施設で、同様の通信施設は全国で9箇所し かなく、米軍の通信網との密接な関連が指摘されてり、戦争を支える重要なC3I施設 となる。

<航空自衛隊関係>

(1)-6  航空自衛隊佐渡レーダー基地
(〒952-12 佐渡郡金井町大字 新保丙2-27 電話0259-63-4111)
 正式名称を「第46警戒群」。この基地も米軍の情報通新戦略に組み込まれていると 言われている。「警戒」と「迎撃管制」(すなわち、攻撃時には「攻撃管制」とな る)が重要な任務。
(1)-7 航空自衛隊新潟救難隊
(〒950 新潟市船江町3-135 電話 025-273-9211):日本海有事での戦闘を想定し、後方支援として負傷者の救助・ 不明者の捜索などを行なう。秋田の救難隊と連携。

<海上自衛隊関係>

(1)-8 海上自衛隊舞鶴地方隊新潟基地分遣隊
(〒950 新潟市新潟市 臨港町1-1 電話025-273-7771)
 京都府の舞鶴地方隊は、本州の日本海側のほぼ全域をカバーする海上自衛隊艦隊基 地であり、日本海側の防衛に当たると共に浮遊機雷の処理などもおこなう。新潟基地 はその出張所のようなもので、「有事」の際には上述の救難隊と共に日本海での戦闘 の後方支援と出撃拠点となると考えられる。


(2)自治体・民間施設および機能

(2)-1 港湾・空港施設
 新潟東港・西港(いずれも新潟市)は米軍にも注目され、下記「2」にある通り米 軍による「港湾案内」の調査対象となっており、95年には米フリゲート艦も入港して いる。また西港には上記海上自衛隊新潟基地もある。東港は深さ13メートルの埠頭が 数カ所あり、大型艦船を収容できる。また、「新ガイドライン別表」には「米船舶の修理」があるが、これに相当する業者として、別記「港湾案内」における「新潟鉄 工」「佐渡汽船」の名前が挙げらる。新潟空港も米軍関係者が既に利用しており、上 記航空自衛隊新潟基地が併設され自衛隊機利用の頻度も高い。下記「2」でああげた ように、現行地位協定でも米軍は日本の民間港湾・空港施設を使うことができるが、 新ガイドラインは、地位協定で「使用できる」とされた米軍の権利規定に対しこれに 対応する日本側の義務規定を明確にし(現行制度ではこれがあいまいであるため逆にこの点が攻防点になっている)、関係機関の権限・機能の活用をより円滑にしようとしていると言える。また、日米両政府は、新ガイドライン決定後の相互協力計画作りの中で、港湾・空港の米軍の24時間使用を検討する方向を示している。現在多くの空 港が騒音問題などで夜間使用を制限しており、また新潟港の港湾労働者の労働時間も 日中のみだが、「周辺事態」の際にこうした制限を解除し強制的に諸機能を動員する ための法整備が進められようとしている。
(3)-2 病院
 日本海周辺で戦闘行動がおこなわれれば、しかもその規模が上記作戦「5027」の 様なものであれば、当然新潟港・新潟空港及び海上・航空自衛隊新潟基地が後方支援 活動がおこなわれるとともに相当数の負傷者の救 援・捜索・治療活動などがおこな われる。傷病兵の治療のための施設としては、港湾・空港などから近くそれなりの規 模・水準に見合うものが必要で、後述の「港湾案内」(米軍諜報機関作成)によれ ば、それらの観点から新潟大学付属病院と県立ガンセンターの存在を注目している。
 80年代に日本海沖でおこなわれた日米共同演習では、負傷した米兵を航空自衛隊秋 田救難隊が救助し、秋田市内の民間病院へ運んだこともある。朝日新聞の田岡俊次氏 は、最近の「AERA」紙で「米軍傷病兵がどっと運び込まれれは、病院の確保も大問 題だ。米軍は沖縄に海軍病院、自衛隊は東京に中央病院を持つが、他の基地は小さい 診療所程度だ。(中略)軍は将兵の掌握を重視するから分散は嫌がるし、言葉の問題 もある。本国から来る米軍医たちが治療に当たれるよう、どこかの病院の明け波しを 要求する可能性は高い。」と述べ、医療施設現場での混乱の可能性を指摘している。 (3)-4 自治体業務
 上記港湾への米軍の出入港に対する支援、米軍の部隊・艦船・航空機などから廃棄 されるゴミの処理、中央政府機関の委託窓口業務、他機関との調整、民間からの苦情 処理などの機能・権限が動員され得る。また、議会の権限や住民の諸権利の制限も想 定される。
(3)-5 輸送
 「(人員・物資の)陸上・海上・航空輸送」(新ガイドライン「別表」)として、 新潟交通、JRなどの輸送機関、各運送会社(すでに日本の運送会社は米軍との契約で 武器、弾薬も運んでいる)、郵便、航空会社、船舶会社などの機能・権限が動員され 得る。
(3)-6 警備
 米軍基地、部隊や軍事物資の移動の警備、反戦運動の封じ込め、サボタージュやス トライキに対する調査や取り締まり、そのための情報交換などに警察や警備保障会社 などの権限・機能が動員され得る。
(3)-6 その他の自治体・民間活動
 新ガイドライン「別表」から、この他動員されうる民間機能及び中央政府・自治体 機能としては、「出入国管理や検疫」業務の他、「『米航空機・船舶』や『米軍施 設・区域』に対する『物資(武器・弾薬を除く)及び燃料・油脂・潤滑油の提供』」 (事務機器・食糧・衣料・燃料などの業者)、「医薬品及び衛生器具の提供」(医療 品会社)、「米航空機・船舶・車両の整備」(航空・船舶会社、自動車産業等)、 「通信」(NTT他通信会社)、「米軍施設・区域内における汚水処理、給水、給電」 (自治体及び水道局、電力会社)などがあげられる。

2.「平時」における安保問題−新潟県における「日米地位協定」問題

 「新ガイドライン」やそこで想定された「周辺事態」(周辺有事)という概念がこ れまでの安保の概念を大きく越えるものであるために、しばしば「平時」における安 保問題、すなわち現行地位協定などの問題が見逃されがちである。「新ガイドライ ン」の性格のおそらく半分以上は、現行ガイドラインや地位協定で謳われた内容の追 認とそのための基盤整備でもあると言える。なぜなら、現行の「地位協定」を分析・ 見直すことには、「平時」における米軍活動下での住民の安全を保障しようとする試 みであり、それ自体、「有事」に米軍の戦闘行動に市民を動員しようとする動きに対 する自治体や市民の側の最低限の防衛ラインを確保し、生活の現場から平和を創り出 していく余地を拡大することにつながるとも言えるからである。特に「自治体」を軍 が獲得するのか住民が獲得するのかでは「新ガイドライン」の様相は一変する。その 意味で、本年7月23日に米軍基地を有する自治体首長の連絡会である「渉外関係主要 都道府県知事連絡協議会」が米軍基地の整理縮小や地位協定の見直しなどを含む要望 書を国に提出した(末尾資料参照)が、この動きは、その中で明言はしていないもの の、あるいは当事者達が意識していたか否かに関わらず、「新ガイドライン」への明 確な対抗戦略としての意味を持っている。その他、特に低空飛行の問題では数年前か らいくつかの自治体が見直しを求めていたし、沖縄県は上述の「連絡協議会」より先 立ち、95年11月、それまで直面してきた具体的な事例を呈示し、さらにドイツや NATOと米軍との間に締結されている同種協定などと比較しながら、詳細な地位協定 見直し案を作成し国に働きかけている(これは96年10月の県民投票でも県民多数の 賛成を得た)。では「米軍占有」の基地を持たない新潟県にとって、これらは無縁な ことだろうか? 私たち新潟に住む者にとって、「平時」に安保・地位協定がどのよ うな位置を持っているか、そしてどのような影響があり得るか見ておきたい。

(1)日米地位協定における関山演習場の位置

 陸上自衛隊関山演習場における日米共同軍事演習は今年で4度目となる。初の実施 となった90年に先立ち、89年10月の日米合同委員会で同演習場は、「日米安保」に 基づく「日米合同委員会」によって「地位協定第二条第四項(b)の適用ある施設及び区 域として提供する。この場合において、合衆国軍隊がこれらの施設を使用している期 間中は、地位協定の関連ある条項が適用される」とされ、米軍への供用施設として決 定された。従って、その後同演習場は陸上自衛隊施設であるとともに、地位協定上、 「合衆国軍隊が使用している期間」−少なくとも共同訓練期間中−は、米軍が管理す る「施設・区域」でもある状態となった(このような「一時使用」は半永久的におこ なわれるので、ある意味では「『一時使用』の永久使用」とも呼ぶべき状態になって いる)。そして地位協定第3条は、米軍がこのような「施設・区域」においてその 「設定、運営、警護及び管理のため必要な全ての措置を執ることができ」ることが明 記され、そのための便宜のために日本政府には「関係法令の範囲内で必要な措置を執 る」ことが義務づけられている。したがって論理的には、同演習場に関して米軍が必 要だと考えれば彼らにとって都合のいい改変や新たな整備、米軍への反対運動への取 り締まりなどを日本側に要請できるようになっていると言える。
 米軍占有基地、すなわち沖縄や神奈川の基地では地位協定のこのような関連条項に よって米軍の「基地管理権」が野放し状態にあり、PCBや重金属、カドミウム、アス ベスト、トリクロロエチレン、砲撃によって破壊された山肌から流れ出た赤土などに よる地下水・河川・土壌など周辺環境への汚染が深刻な環境問題を引き起こしてい る。国内法では絶対に許されない「劣化ウラン弾」が大量に使われ放置されたのはこ うした文脈の中で発生したものである。関山演習場でも「合衆国軍隊が使用している 期間」は全く同じ法的状態にあるのだから同様の問題が発生する恐れがあり、この 「期間」が狭く共同訓練の期間だけを指すとしても、その間に米軍が「必要」と考え る限り、関山演習場でも劣化ウラン弾を使用しうるし、国内法の範囲を越えてさまざ まな環境汚染を招く可能性がある。そうなればこの問題は「合衆国軍隊が使用する期 間」だけの問題ではなくなるのである。
 さらに、地位協定第7条では「施設・区域」の外においても米軍はさまざまな「役 務」を有効に且つ優先して受けられるとされている。関山演習場周辺の県内公共施設 のさまざまなサービスも、必要に応じて米軍に優先して提供される根拠があるし、新 ガイドラインではそれはより明確な形となり、「提供」というよりは「徴用」という 形になるだろうと思われる。
 また、共同訓練の際この演習場とベースキャンプとなる高田駐屯地との間の移動に は行動が使われ、米兵が運転する車両も走行している。そうした移動中の事故、ある いは公務外の事故や犯罪の問題点は別項参照。

(2)新潟港・新潟空港の米軍利用

(2)-1 現行地位協定での米軍利用
「新ガイドライン」見直し作業の中で、米軍が有事の際に使用したい港として新潟港 をリストアップしていたと新聞等で報道された。しかしこの「新ガイドライン」を待 つまでもなく、現行地位協定でも同協定第5条によって米軍の港湾・空港使用が優遇 されており、「公」の目的のためであれば、日本全国の港湾及び空港を使用できるも のとなっている(ただし、これが受け入れ側の義務まで規定したものかどうかについ ては議論があり、外務省は「機能上問題なければ自治体が拒否できる余地はない」と いう見解だが、運輸省は「関係自治体との協議が必要」としている。つまりここが攻 防点でもある。95年9月にブルーリッジが入港した際には長崎県も長崎市も入港を拒 否したにもかかわらず入港を止めることができなかったという事実がある一方、85年 に富山港に米軍の原子力潜水艦が入港しようとした際、富山県知事の懸命な働きかけ によって入港が見送られたという例もある)ばかりではなく、「合衆国軍隊の構成員 及び軍属並びにそれらの家族」も「施設・区域」と「港又は飛行場との間を」「使用 料等を課されないで移動」することができる。新潟空港でも米軍関係者の単なるレ ジャーのためのフライト空港が年に数回、おこなわれている実績がある。
 注意すべきはこの同協定第5条第3項「日本国の港に入る場合には、通常の状態に おいては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない」で、これは逆に「通常 の状態」でない時、つまり「有事」の際には、現行地位協定・ガイドライン体制下に おいてさえ「通告無しで」入港があり得るということを意味している。
(2)-2 「港湾案内」
 米海軍は「軍事利用」を前提に、すでに以前から太平洋全域の約170の港湾施設を 調査しており、そのうち27港が日本の港湾で、その中に新潟港も含まれている。末尾 資料はその調査報告書「ポートディレクトリー(港湾案内)」の新潟港部分の抜粋の 書き写しで、これらの原資料は核軍縮国際コーディネーターの梅林宏道氏がアメリカ の情報公開法を使って80年代に入手したものである。
 この資料を見ると、新潟港の正確な緯度・経度、位置、埠頭・桟橋のサイズと着岸 できる船の大きさ、油や水の補給、設備、修理設備(「新潟鉄工」と「佐渡汽船」の 名前があがっている)、艦船収容能力(「巡洋艦が余裕を持って入港できる」と明 記)、港湾労働者の勤務時間、埠頭からの交通アクセス、新潟県の案内(自然、歴 史、主要都市などを記載)、医療情報(近接した民間病院施設として新潟大学付属病 院とガンセンターがあげられ、そのうち新大病院はベッド数690床と明記され、「両 施設とも良好な設備とスタッフがそろっており、全ての医学的・外科的専門分野を扱 う」と書かれている)、麻薬や売春に関する情報(「ハード・ソフトの麻薬が入手可 能。売春は法律で禁止されており、見つけるのは困難」)などが明らかにされ(ただ し一部の情報の信憑性などについては疑問のところもある)、米軍によって新潟港と 周辺施設、風俗習慣まで調べ上げられていることがわかる。ここにあるのは80年代当 時のものであるが、各地の情報は米軍艦入港時などに更新されている。このレポート の上記の調査項目以外では、通信、娯楽施設、ホテル、レストラン、教会、劇場・映 画館などについて「最新情報不明」という記載となっているが、これらは95年入港当 時の調査及びその後の公式・非公式の米軍関係機関の調査により更新されているはず である。なお、この調査は米海軍艦隊諜報センター太平洋(FICPAC)が作成したも のであるが、この機関は「核兵器の配備とその計画をおこなうのに必要な直接的な支 援をおこなう」などということを重要な任務としている機関である。

(3)米兵の事件・事故の危険性

 関山演習場における共同訓練や米軍の新潟港利用の恒常化などによって、当然米軍 関係者による事件事故の危険も高まる。また関山における最近の共同訓練では航空機 も参加するようになっており、また後述の低空飛行訓練問題でも騒音や事故の危険性 が高まっている。
 地位協定では、米軍人等による事件・事故について、第17条第3項(a)によって「公 務中の場合には日本に第一次裁判権がない」ことが明記されている。母子3名が死亡 した1977年の横浜市でのファントム墜落事件では、被害者側による告発がなされた が、「公務中の事故」ということで日本側に第1次裁判権がないことを理由に不起訴 処分となってしまい、米軍による調査も不完全なままに終わった。また、公務外の事 件でも「被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、起訴されるま で米軍が拘束」することになって(同条第5項)おり、日本国内で犯罪を犯した米兵 が基地内に逃げ込み、いつのまにか本国へ脱出してしまった例なども少なくない。
 また、上記の横浜ファントム墜落事故の現場では、米軍は現場を押さえエンジンを 国外へ持ち出した。航空機の事故の場合、運輸省におかれている航空機事故調査委員 会が調査するが、米軍機事故の場合その権限が日本側にない。米軍はこの地位協定23 条と「施設区域外の米軍事故現場における手続きに関する合意事項」によって墜落し た場所の所有者の承諾無しで立ち入りやその場の立入禁止措置をとることができるよ うになっている。
 また、同協定第10条ではアメリカの運転免許証を日本国内で無条件に有効としてい るために、米軍関係者による交通事故も多い。在日米軍人・軍属は家族を含めて 155000人おり、これらが利用する「Yナンバー」車両は全国で55462台(96年3月 末)ある。沖縄に限ってみると25969台あり、年間平均で人身・物損事故が約1000 件、25台に1台の割合で事故を起こしていることになる。本土の米軍関係者でも43台 に1台の割合で事故が起こされている。事故時の補償も全く不十分で、特に公務外の 事故の場合どこにも補償責任がなく、任意保険に入っていないなどの点から多くの問 題が生じてきた。1997年10月28日、関山での共同訓練のための建築資材を積んだ米 軍大型トレーラーが中郷村国道で事故を起こし、我々の不安は現実のものとなった。

(4)低空飛行訓練問題

 「キャッチピース」が96年におこなった自治体アンケートによれば143の市町村で 米軍機の低空飛行が確認され、いくつかの飛行ルートの中に、新潟県を含むものも存 在する。レーダーに捕捉されずに敵地に入り込むという極めて危険な訓練で、すでに 墜落事故も発生しているが、驚くべき事にこの訓練の名目は地位協定第5条「船舶及 び航空機は(略)は合衆国が使用している施設及び区域に出入りし、これらのものの 間を移動し、及びこれらのものと日本国の港または飛行場との間を利用することがで きる」にある。つまり、きわめて実戦的かつ危険な訓練の名目・根拠が「部隊間移 動」なのである。また、低空飛行を禁止する日本の航空法について、米軍は「地位協 定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」によってその適用を免れているのであ る。また、同「航空法の特例に関する法律」によれば、夜間飛行の灯火義務・飲酒操 縦禁止・飛行区域遵守・最低安全河渡遵守・粗暴操縦禁止・爆発物輸送禁止・曲芸飛 行禁止など、飛行行為に当たっての安全を確保するための制限事項がことごとく適用 されず規制から外されているのである。

<資料編>

■米軍占有基地を抱える都道府県知事の連絡協議会が国に提出した要望書

(97年7月23日)
基地対策に関する要望書    平成9年7月23日   渉外関係主要都道府県知 事連絡協議会
(中略) 会長神奈川県知事 岡崎 洋 (以下、関係都道府県知事名が連記)
 日米地位協定に基づき提供されている「施設及び区域」(米軍基地)を抱える地方 公共団体は、基地の存在およびその運用に伴う諸問題によって地域の生活環境の整 備・保全や産業振興等にさまざまな障害を受けており、その対策に日夜腐心している ところであります。
 また、航空機事故、艦船の事故や弾薬等による事故への不安、航空機騒音による被 害の増大、環境汚染、米軍人による事故や犯罪の発生、駐留軍従業員の雇用問題な ど、基地に起因する問題は広範多岐にわたるとともに深刻化しております。
 政府におかれては、基地周辺の生活環境の整備や民生安定のために種々の施策を講 ぜられているところでありますが、住民のニーズも多様化している今日、これに応え られる内容とはいえません。
(中略)
 世界に目を転じますと、東西冷戦終結後の軍縮の流れの中でも、各地で地域紛争が 頻発するなど世界には多くの不安定要因が存在しております。
 米国の戦略も地域紛争重視となるなかで、我が国の米軍基地は存在理由が変化しな がら、むしろ強化されているという声があり、本年4月の97年版米国防報告において も、一昨年2月に米国防総省により発表された「東アジア戦略報告」と同様に、在 日、在韓米軍を中心とする10万人体制の維持が確認されるなど、基地を抱える地方公 共周体にとって、依然として懸念される状況となっております。
(中略)
1 米軍基地の整理、縮小、移設(沖合移設)と早期返還の促進および基地跡地の地 元優先の公共利用を図られたい。
(1)米軍基地(水域を含む)の整理、縮小、移設(沖合移設)と早期返還米軍基地につ いては、その施設ごとに必要性、使用状況、基地に起因する危険性、基地周辺の実情 等を総点検し、地元要望を尊重の上、積極的に整理、縮小、移設(沖合移設)および 返還の促進を図られたい。
(2)基地の動向等に関する情報の事前提供と協議基地の機能変更、閉鎖、移転、返 還等は、地元地方公共団体にとって極めて重大な問題であるので、それらの検討を進 めるにあたっては、地元の意向が尊重されるよう、あらかじめ関係する地方公共団体 に情報提供と協議を行われたい。
 また、我が国を取りまく情勢についても可能な限り、情報を提供されたい。
(3)基地跡地の利用および管理
(中略)
2 日米地位協定とその運用について、適切な見直しを行い、改善を図られたい。
(1)2条関係
 地元自治体からの要望等により、施設及び区域の返還についての検討に際しては、 あらかじめ地元自治体の意見を聴取し、その意向を尊重する旨を明記されたい。
(2)3条関係
 ア 施設及び区域周辺の住民の生活環境の保全及び安全の確保のため、施設及び区 域における大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの日本国内法の適用や、地元自治体 職員が施設及び区域内への立入りを希望した場合には速やかに応ずる旨を明記された い。
 イ 施設及び区域において、規模・機能を変更(提供面積の拡張、中隊の配備等) しようとするときは、これを日米政府間の協議事項とし、あらかじめ関係する地元自 治体に協議することを明記されたい。
(3)5条関係
 ア 民間機の円滑な定期運行や安全性の確保のため、米軍機の緊急時以外の民間空 港の使用禁止を明記されたい。
 イ 米軍機の飛行(低空飛行訓練を含む)については、現在、航空法第81条の最低 安全高度の規定が、特例法により通用除外とされているのでこれを見直し、航空法第 81条が適用されることとされたい。
(4)6条関係
 民間機の円滑な定期運行や安全性の確保のため、那覇空港の進入管制業務を日本側 に移管するための協議を開始されたい。
(5)9条関係
 施設及び区域周辺の住民の生活環境の保全及び安全の確保のため、人及び動物、植 物に対する検疫並びに人の保健衛生に関して、国内法を適用する旨を明記されたい。
(6)13条関係
 合衆国軍隊の構成員等の私有車両に対する自動車税及び軽自動車税の優遇制度を是 正されたい。
(7)17条関係
 日本側が第1次裁判権を有する時は、合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘 禁・取調べについて、日本側が何の支障もなく行えるよう明記されたい。
(8)18条関係
 公務外の合衆国軍隊の構成員又は軍属により、あるいは、合衆国軍隊の構成員又は 軍属の家族により被害を受けた場合も、日本政府の責任で補償が受けられるよう明記 されたい。
(9)23条関係
 災害時における在日米軍との相互応援が実施できるよう明記されたい。
(10)25条関係
 日米合同委員会の場で、基地の運用等に関して関係自治体の意向を聴取し、それを 協議することを明記されたい。
 また、併せて、日米合同委員会合意事項を速やかに公表することを明記されたい。
(11)航空機の騒音軽減措置関係
 ア 三沢飛行場、横田飛行場、厚木飛行場及び岩国飛行場における米空母艦載機に よる飛行訓練、特に夜間連続離着陸訓練を行わないことを日米間の合意事項として明 記されたい。
 イ 「厚木飛行場周辺の航空機の騒音軽減措置4-d-(3)」において、厚木飛行場 におけるデモンストレーション・フライトを認めている、「ただし書き」を削除され たい。
3 基地運用の適正化に努められたい。
(1)基地の適正な運用と安全管理の強化
 基地の運用にあたっては、周辺住民に不安を与えないよう、細心の配慮をするとと もに、特に航空機燃料、弾薬等危険物の管理、輸送およぴ演習(日米共同訓練を含 む)時、ならぴに艦船の航行時の安全確保については、万全の措置を講ぜられたい。
 また、基地の機能強化および恒久化につながる施設の新・増設および改修にあたっ ては、地元地方公共団体の意向に十分配慮されたい。
(2)航空機の安全飛行
 ア 飛行場周辺および飛行コース下の住民は、常に航空機事故の危険にさらされて いるので、航空機の整備点検、周辺住民の安全を最優先としたパイロット等の安全教 育はもとより、住宅地域、工場地帯および原子力施設周辺上空における飛行の中止、 飛行の制限、物資投下訓練の中止等徹底した安全対策の措置を講ぜられたい。
 また、特に低空飛行訓練等は、騒音等の公害や重大な事故につながるおそれがある ので、地域住民の不安解消のため、その実態を明らかにするとともに、このような飛 行を行わないよう措置されたい。
 さらに、民間航空路線と重なる訓練空域については、民間機の安全確保を図るた め、空域解除等、特段の措置を講ぜられたい。
 イ 米軍機の民間空港への飛釆は、円滑な定期運航や安全性の確保に支障があるの で、緊急時以外は禁止するよう措置されたい。
(3)基地公害の防止対策等
 ア 基地に起因する騒音、大気汚染、水質汚濁等各種公害については、国において 迅速に調査し、環境基準に照らし、直ちに適切な措置を講じるとともに、演習等によ る自然破壊のないよう配慮されたい。
 また、老朽化した公害防止施設については、地元地方公共団体立合いのうえ早急に 点検し、整備されたい。
 イ 基地内の河川等の氾濫や、雨水、油、土砂の流出などにより基地周辺地域に被 害を及ぼさないよう適切な対策を講ぜられたい。
 また、基地内の廃棄物等については、基地内処理とするよう、措置を講ぜられた い。
 ウ 戦車、装軌車等の大型車両の通行に伴い発生する騒音、振動、土ぼこりおよぴ 道路上に堆積する泥土等により、基地周辺地域に被害を及ぼさないよう緩衝緑地帯の 造成等抜本的な対策を講ぜられたい。
 エ 航空機の市街地上空における飛行を制限するとともに、夜間・早朝、土曜日日 曜日、祝日、盆および年末年始における飛行エンジンテストを全面的に禁止された い。
 また、離着陸訓練をはじめ、飛行訓練は極力制限することとし、特に夜間連続離着 陸訓練は禁止する等の措置を講しるとともに、消音施設、防音林、緑地帯を増設、整 備するなど、騒音防止の対策に万全を期せられたい。
 オ 砲撃等による発射音、炸裂音および振動の防止を図るとともに、遮音壁の設置 等適切な対策を講ぜられたい。
 カ 実弾砲撃・射撃演習により派生する環境への影響等に配慮し、演習場に残る不 発弾処理について早急に適切な対策を講じられたい。
(4)電波障害防止制限区域等の見直し
 基地に起因する電波障害防止制限区域およびその制限基準については、周辺地域の 住環境の実情に即して見直されたい。
(5)基地運用等に関する情報の提供
 ア 基地周辺住民に影響を及ぼすような大規模な演習、訓練に際しては、住民の不 安を取り除くためにも、速やかに情報の事前提供をされたい。
 また、各基地についての運用等に関する日米合同委員会の合意内容を公表された い。
 イ 基地に起因する事故が発生した場合、事故の大小にかかわらず速やかに事故等 の情報を地方公共団体に提供するとともに、周辺住民に対する説明会等のP.A.(パ ブリック・アクセプタンス)活動にも十分配慮されたい。
 また、事故の事後処理、原因究明、再発防止策および損害賠償等の措置について は、迅速な誠意ある対応に配慮されたい。
 ウ 原子力堆進艦船の寄港時における通報内容が厳守されるよう配慮されたい。
(6)基地内施設等の住民利用
 基地内道路、遊休地等および基地周辺の国有地については、住民利用を積極的に推 進されたい。
(7)災害時における在日米軍との相互協力
 災害時の住民の生命、財産を守り、安全を確保するため、人道的見地から在日米軍 との相互応援が実施できるよう、日米合同委員会合意事項などの包括的な取決めを行 うとともに、その取決めに基づき、地方公共団体が基地司令官と必要に応じて相互応 援協定を締結できるよう、米国に対して働きかけられたい。
(8)米軍人等による犯罪の防止
 ア 米軍人等による犯罪を防止し、住民の不安の解消を図るため、規律の厳正な保 持、教育訓練の徹底、警らの強化等適切な措置を講ずるよう米軍に働きかけられた い。
 イ 米軍人等のいわゆる迷惑行為等による住民被害の補償について検討され、救済 措置を試ぜられたい。
(9)事故補償賠償事務手続きの迅速化およぴ補償の確保米軍人等による事故等の損 害賠償支払手続きの迅速化を図られたい。
 なお、米軍人等の私有車両の事故に対する補償については、任意保険(対人・対 物)への加入が米軍により講ぜられたところであるが、補償額の増額等により、適切 な対応が行われるよう米側に申し入れられたい。
(10) 非核三原則の厳正な堅持
 核兵器積載可能な艦船の寄港や航空機の飛来等をめぐっては、平成4年7月に、米国 大統領の戦術核撤去完了の声明があったが、有事の際の核配備など国民の疑惑と不安 は完全に解消されたわけではない。
 よって、政府におかれては、国民の疑惑と不安を解消するための適切な措置を講 じ、非核三原則を厳正に堅持されたい。
(11)原子力艦船の放射能事故対策の確立
 原子力艦船の万一の事故に備えた放射能事故対策を国の責任において、早急に確立 されたい。
4「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の積極的な運用を図られたい。
(1)法の運用
 法の運用にあたっては、地元地方公共団体の意向が十分反映されるよう配慮された い。
(2)予算の増額と対象施設の拡大
(以下略)

■終戦直後の進駐米軍による米兵犯罪

参考資料:新潟県警察史(昭和34年2月1日発行)「第四編 戦争終結以後」より抜 粋
(以下抜粋)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
進駐軍犯罪とMP
 本県に進駐した米軍は、素質に恵まれていたことと軍律が比較的厳しかったため に、当初予想されたほど不法行為は起きなかった。しかし、多人数の中には、相当素 質の良くない兵もありかつ先勝気分も手伝って、進駐当初は、悪質の犯罪もおこなわ れたが、時日の経過するに連れて減少した。
 昭和二十年及び二十一年中に、進駐軍によって行われた犯罪状況は、次の通りであ る。
 進駐軍犯罪統計     (新潟県内)

 進駐軍人の行った犯罪に対して、裁判権が日本になかったのはもちろんのこと、そ の捜査権も日本の官憲には与えられていなかったので、警察の捜査といってももっぱ ら進駐軍側に申し入れる抗議資料を収集する程度で、しかもそのことをいれるといれ ないとは先方の自由裁量に任されており、しみじみと敗戦のみじめさを思わされるも のがあった。
 しかし、進駐軍将兵の非行を監視する職任をもつMP(米軍憲兵)が、進駐地の所轄 署と新津・水原両所に常駐し、この種犯罪の場合は自国の利害をこえ、真に人道的な いし世界正義顕揚の立場で捜査の労をおしまず、警察の納得する処置をつけたこと は、さすが大国民を思わせ、学ぶべきものがあった。
(抜粋以上)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

■米海軍資料「港湾案内(Port Directory)」新潟港部分

(省略)必要な方は連絡下さい。

■終戦期の新潟港周辺被害(新潟市市史編纂課資料より)

主な戦災
 ○「鉄工丸」事件
 昭和20年7月2日,新潟鉄工所連絡船「鉄工丸」に引かれた艀(はしけ)が触雷 し,勤労動員中の生徒(新潟工業・新潟商業・相川中学)12人を含む28人が死亡し た。その後,この事故が原因で死亡した2人を加えると30人の死亡者を出した。
○「B29撃墜」事件
    昭和20年7月20日,B29が5機来襲し,新潟港に機雷を投下した。この時高射砲 が反撃し,1機を撃墜した。米軍機搭乗員11人のうち, 死亡者は4人とされている。
○「おけさ丸」事件
   昭和20年8月10日,入港してきた佐渡汽船「おけさ丸」が,米軍艦載機の銃撃を 受け,15人(乗客14人・船員 1人)が死亡した。 
○「宇品丸」事件 
 昭和20年8月10日の銃爆撃により,19人(軍人16人・船員 3人)が死亡した。 「宇品丸」は,陸軍運輸部所属の軍用船であり,朝鮮から食料等を運搬して来たが7 月6日,港外で触雷,港口に座州していた。「宇品丸」は,機関砲等を装備してお り,来襲した艦載機と交戦したものである。
○その他の8月10日の船舶被災
  昭和20年8月10日には,「おけさ丸」「宇品丸」以外にも次の船舶が新潟港付近 で被災した。
  ・第七万栄丸 死亡者3人(船員)
  ・第七星丸 死亡者3人(船員)
  ・よりひめ丸 死亡者2人(軍人1人・船員1人)
  ・掃海艇 死亡者1人(軍人)
     この他にも船舶の被災や人的被害があった可能性がある。
          ○風間小路等, 市街地の被災
 昭和20年8月10日の艦載機の銃爆撃で,市街地にも次のような被害が出た。
  ・風間小路(西堀前通10・11番町・古町通10番町)
   死亡者2人,負傷者5人 家屋全壊2戸,家屋損傷6〜7戸
  ・下山地区(阿賀野川畔・飛行場付近)
   死亡者1人,負傷者1人
  ・新潟鉄工所入船工場
   死亡者1人(工員),負傷者5人(工員) 工場の屋根等損傷
  ・昭和石油・日本石油 石油タンク各1基炎上 

■その他参考とした資料

この資料作成にあたり、平和運動活動家の梅林弘通氏(神奈川)、青木雅彦氏(兵庫)、新倉裕史氏(神奈川)、田巻一彦氏(神奈川)などから直接・間接に得た貴重な資料・情報を随所で役立てさせていただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。また、新潟市市史編纂室からも貴重な資料を入手できたし、その他、名前を個別に挙げることもできない多くの方々の御協力も得た。併せて感謝申し上げたい。
<参考とした主な資料>
●沖縄県作成「地位協定見直し案」1995年
 本紙料に収録した「連絡協議会」より前に作成されたもので、現行地位協定の問題 について沖縄県が直面してきた具体的な事例を呈示し、さらにドイツやNATOと米軍 との間に締結されている同種協定などと比較しながら、詳細な見直し案が作成されて いる。分量が多いため、本報告書には収録しなかったが一読の価値がある。沖縄県 のホームページからダウンロードできる。
●米軍基地関連14自治体の国への申し入れ 1997年7月
 巻末「資料編」に一部抜粋
●新潟市市史編纂課所蔵諸資料(文中及び巻末に引用または収録)
●「日米地位協定市民の見直し案・神奈川」(非核市民宣言運動・ヨコスカ 1997年3月改訂)
 沖縄県の見直し案などに触発され、神奈川の市民グループが独自に作成した見直し案。本報告書の多くをこれに依った。一部100円。問い合わせ:非核市民宣言運動・ヨコスカ 電話・FAX0468-25-0157
●「インディは小樽で何をしてきたのか」(市民運動宣言運動・ヨコスカ 1997年10月発行)
●「情報公開法でとらえた在日米軍」(高文研発行、梅林宏道)
 アメリカの情報公開法を駆使して在日米軍の実態を調べた力作。「港湾案内」も梅林さんが入手したもの。
●「全国131市町村で米軍機の低空飛行を確認」脱軍備ネットワークキャッチピース記者発表資料(97年1月22日)
 問い合わせ:キャッチピース03-433-3483
●PROMULGATION OF PACIFIC OCEAN PORT DIRECTORY(「港湾案内」米海軍艦隊諜報センター作成)
 梅林氏が米国情報公開法で入手したもの。巻末資料編に新潟部分を抜粋(本ホームページ上では省略)
●軍事問題研究会新潟支部が85-91年に作成した諸資料
●「赤旗」他各種新聞



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