私たち「市民新党にいがた」は、新潟の地域に根ざす地域政党である。しかし、現
在危機が高まりつつあるイラク情勢に関し、緊急の声明を発する。それは、このよう
な米軍の軍事行動を支えるために基地を提供し私たちの税金から巨額の資金まで供与
している日本国家の主権者の一員としての当然の権利であり義務でもあると同時に、
新潟空港・新潟港・関山演習場など、米軍が注目し現実にすでに利用している施設を
抱えている新潟県に住む私たちが、今後このような米軍事行動に巻き込まれ、場合に
よってはそれを積極的に支える役割を担わされる恐れが現実のものとしてあるからで
ある。そのような意味で、私たちは日本の主権者として、そして当事者のひとりとし
て、今回のイラク情勢に対する私たちの態度を明らかにする。
まず第1に、今回の空爆には何の正当性や法的根拠もないことは明らかである。
私たちが知りうる情報から判断して、イラクのフセイン政権に対する国際的な批判
があること、そして「生物化学兵器の生産・貯蔵」を禁じた国連決議を遵守させるた
めの査察の経緯についても、その是非の判断は別にして、国連という機関の中での一
定の手続きを経たものであることは理解できる。しかし、これらの事実からただちに
米国によるイラク空爆が正当化されていいはずはない。国連憲章も、イラクへの査察
を決めた国連決議も、それを容認するものでないことは明白である。
軍事独裁政権国家はイラクだけではないし、国連決議を遵守していない国や国際法
を踏みにじっている国も世界中に数多くある。イスラエルは、国連安保理決議にも関
わらずゴラン高原やヨルダン川西岸地区を30年間も不法占領し続けており、これを支
えている国はアメリカである。また、インドネシア政府による東チモール併合は国連
によって一貫して非難されているが、20年以上も不当な統治が続き、20万人以上が
虐殺されていると言われている。そのインドネシア政府に対して日本は最大の支援国
のひとつとなっている。アメリカがニカラグアのサンディニスタ政権に対して行なっ
た軍事謀略活動は国際司法裁判所で明確に違法行為であると断罪され、グレナダやパ
ナマに対して行なった米軍の軍事侵攻に対しても国連によって非難され即時撤退要求
決議があげられている。ペルー政府は反政府勢力を上回る件数のテロ行為に関わり、
不当逮捕や不適正な裁判などが続けられていることが国際人権団体やアメリカの政府
機関の調査によっても明らかにされている。これらの国のひとつひとつに対してでは
なく、イラクに対してだけ空爆の脅迫がかけられるその基準は、何ひとつ明確にされ
ていない。しかもアメリカは、かつてこのフセイン政権を、そして数多くの同様の軍
事独裁政権を、これまで支援し続けてきた。
「近隣諸国への脅威」もイラク空爆の理由にされているが、サウジアラビアもトル
コも、米軍による基地使用を拒否している。エジプトのムバラク大統領も「空爆を支
持するアラブのリーダーはいない」と述べ、バーレーン政府も「他国に国連決議順守
を求めるなら自らが守るべきだ」と語り、カタールの外相も「湾岸6カ国はイラク爆
撃を歓迎しないし、望んでもいない」としている。これらの事実から考えても、イラ
クの脅威の緊迫性と、空爆の必要性は何ひとつ理解できるものではない。これら周辺
諸国だけでなく、フランス・ロシア・中国などの常任安保理事国をはじめとして、
オーストリアやスウェーデン政府も今回の空爆に対して反対を表明している。
91年の湾岸戦争では、空爆で殺されたイラク市民は15万人に達した。6千人もの
イラク兵が生きたまま塹壕で埋め殺され、大量に劣化ウラン弾が使用された。あまり
にも「汚い」戦争であったために、フランスやイタリアの軍幹部がこれを批判し、米
兵の多くが戦闘行動への従事を拒否した。劣化ウラン弾の残留放射能によって現在も
何万人ものイラクの子どもたちや市民が白血病やがんに苦しみ命を奪われ続けている
だけでなく、7千人以上もの米兵とその子どもたちも同様の深刻な症状に苦しんでい
る。さらにその後続く経済封鎖によって医薬品や食料品が不足し、普通であれば助か
るような軽度の疾病や栄養失調により多くの子ども達の命が奪われている。
空爆の必要性も、その基準も、その理由も、法的根拠も、何ら納得できるものがな
いままこれを強行し、91年の湾岸戦争の被害とそれに続く経済制裁下にあえぐ多くの
罪のない民間人に新たな犠牲を強要する空爆を強行しようとしているのは、広い世界
の中で、アメリカとイギリスのたった2カ国だけである。そしてこれに協力する国は
ほんの数えるほどである。米英両政府にとってはイラクへの恫喝のオプションのひと
つである「空爆」も、そこに生きる人々や、戦闘に参加する米英・イラク両軍のひと
りひとりの兵士にとっては、それぞれの生活と生命に対する現実の恐怖と脅威であ
る。それにもかかわらず、日本政府がきわめて安易にこの空爆の必要性を「理解」し
「支持」を表明することは、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平
和のうちに生存する権利を有する」「国際紛争を武力で解決しない」という日本国憲
法の精神を否定するものであり、断じて許すことのできない明白な違憲行為であると
言わなければならない。
第2に、このような野蛮で正当性のない戦争と違憲行為に、私たちが動員されよう
としている動きも看過できない。
この「空爆」準備のために、去る1月23日、米空母インディペンデンスが横須賀港
を出港し中東に向かった。中東での戦闘行動を明確かつ公的な目的にして日本を出港
したのは、安保史上はじめてのことである。しかし橋本政権でさえ「『(新ガイドラ
インで言う)周辺事態』ではない」としている今回の戦争を、日本が「支持」を表明
し協力したり、そのための出撃拠点を提供する根拠は全くないばかりか、安保条約の
逸脱でもある。また、これに先立ち同空母は、昨年9月、米軍空母として初めて民間
港である北海道小樽港に寄港した。私たち「市民新党にいがた」は、これが「改訂ガ
イドライン(新指針)」の先取りであると考え、同じように米海軍が利用を計画して
いる新潟港を抱える市民として座視できないことと考え、現地にメンバーを派遣し、
単なる抗議行動だけではなく、「新指針」で謳われている「自治体・民間機能の活
用」の実態を調査した。同空母の入港の際には小樽内外の自治体所属の港湾施設・艦
船・職員が動員され、小樽市は給水やゴミ処理をおこない、民間業者が食糧などを補
給し、警察や民間警備会社や市職員まで動員した周辺警備がおこなわれ、NTTは入
港後直ちに艦内まで電話線ケーブルを敷設した。そして乗組員は周辺の街で作戦行動
の間の束の間の休息を取り、多くの市民がこれを「歓迎」した。その空母が今、「91
年の湾岸戦争以来最大規模」と米政府が公言する戦闘行動の準備の一翼を担ってい
る。
その小樽港と同様、新潟東港・西港は、大型艦船の収容能力、港湾関連及び周辺施
設の整備状況や地理的条件から、軍事利用可能な施設として米軍によって注目されて
いる。そして新潟港ばかりでなくこれに近接した新潟空港も、すでに米軍による利用
実績がある。さらに昨年11月には、新指針後初の日米共同訓練が新潟県の関山演習場
でおこなわれ、米兵や弾薬の輸送には民間会社が動員された。「新指針」のもとで、
日本海周辺有事だけでなく地球の裏側の戦争に対しても、国家レベルの協力にとどま
らず、新潟県が、私たちの住む町や村が、私たちの職場が、私たちひとりひとりが、
このような野蛮な戦闘行動を支える枠組みづくりに動員されようとしているのであ
る。「事前協議」や「国会承認」を不要とするばかりでなく、この「動員」を強制的
におこなうための「有事法制整備」も今、進められようとしている。私たちの自治体
や仕事が戦争を支えどこか遠い地域の子ども達の命を奪おうとする行為に荷担させら
れようとする時、それを拒否する勇気と、拒否することのできるシステムを、私たち
は持たなければならない。
以上のような観点から、全ての国民、全ての自治体、全ての新潟県民がこの戦争に
反対の声を出し、このような戦争に強制的に動員しようとする「有事法制」に反対の
声をあげるよう、心から要請したい。