国土交通省大臣 殿                            2005年6月13日

同 契約担当部署責任者 殿

同 北陸地方整備局関係担当責任者 殿

 

申し入れ:

指名競争入札における指名業者名の公表に関する制度運用について

 

中山 均(新潟市議会議員)

栃倉幸一(   同   )

中川征二(   同   )

 

 つい最近、国発注の橋梁工事の談合事件が明らかになりました。新潟市でも一昨年、「官製談合事件」が発覚し、実態調査や再発防止のための取り組みが行なわれています。新潟市の談合事件を捜査した検察当局によれば、談合組織は新潟市だけではなく国や県の工事でも談合を繰り返していたとされており、この問題は特定の公共機関だけの問題ではなくなっています。

 

 私たちは、新潟市議会の中で、本市の事件について微力ながら実態の解明に努力すると共に、国や他の自治体の入札制度等についても調査研究を重ねてきました。その中で、談合が発覚する案件のほとんどが指名競争入札(もしくは公募型指名競争入札)であり、多くの公共機関において指名業者名が入札前の段階で閲覧・開示もしくは公表(以下一括して「公表」)されていることは大きな問題であると考えます。

 談合組織のある無しに関わらず、また予定価格が明らかであるか否かに関わらず、指名業者の範囲がわからなければ談合そのものが成り立たず、「予定価格の漏洩」よりも、この指名業者名の事前公表の方がはるかに重大な問題である、と新潟市の調査委員会も強く指摘しているところです。

 

 新潟市ではこの指名業者名の事前公表を取りやめ、入札制度改革が進むいくつかの自治体でも事後公表に切り替えていますが、まだ少なくない公共機関で入札前の公表が続いています。

 国交省におかれましても、公共工事の適正な入札及び契約のため日々努めておられることと存じますが、この問題に関連して、私たちは以下の観点で問題点を明らかにすると共に、制度運用の改善を申し入れしたいと思いますので、是非よろしくお取り計らいいただければ幸いです。

 

<実態と問題点>

1.実態

1)公表の実態

 国交省関係発注工事および県内の少なくない自治体(数年前にさかのぼると、ほとんどの自治体)の発注工事において、指名競争入札の場合、積極さの度合いは様々だが、指名通知後、入札前の段階で指名業者名一覧が公表されている(別紙1参照)。また、一般競争入札に近いとされる公募型指名競争入札の場合でも、国交省発注工事では事前公表が一般的となっている。

2)事前公表の「理由」・「根拠」

 各公共機関がこれらの情報の公表を依然おこなっている理由については、いくつかの機関が、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(以下「適正化法」)(註1)の中で「指名競争入札における指名した者の商号又は名称を公表する」旨謳われている(同法第5条・8条)ことを根拠としている。

 また、国交省の入札制度改革論議(20024月 公共工事の入札契約の適正化徹底のための方策検討委員会報告)(註2)の中では、指名業者の事前公表について「談合を助長する」という危惧も示されているにもかかわらず、「指名されなかった業者の不服申立機会の確保」等を理由にして事前公表を続けるとされ、多くの自治体はこれにならってきたものと思われる。

 さらに、現在事前公表を取りやめている新潟市では、当時公表していた理由を「仮に非公表としても、指名通知後は市役所の外へ情報が出てしまうので、業者間で情報交換すれば秘匿性が下がってとしまうと考えていた」としており、その認識自体は今も捨てていない。業者名の事前公表を行なっている公共機関はそのタイミングを「業者指名通知の時点」としていることからも、当時の新潟市と同様の解釈を取っている機関も少なくないと思われる。

 

2.問題点

1)公正取引委員会の見解と独禁法上の観点

 公正取引委員会はこのような制度運用について「入札や契約の方法については各機関にゆだねられており、透明性の観点からも公表しているところがある。しかし、独禁法上の観点からは、談合を容易にする可能性があり、やはり好ましくないと言える」との見解を示している(523日、同委員会経済取引局への問い合わせへの回答)。

 また、独占禁止法の観点から入札制度運用の指針として策定された「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(公正取引委員会、1994年。以下「入札ガイドライン」)(註3)では、事業者間または事業者団体が「指名や入札参加予定に関する報告を求めること」を、「独禁法違反となる恐れがある」と規定している。

 この規定は、そもそも指名業者名が事前に公表されてない、という前提に基づいており、国交省などを頂点とする各公共工事発注機関の制度運用は、この前提から逸脱しているものと言わなければならない。

2)「適正化法」「適正化指針」等の解釈について

 確かに「適正化法」では、「指名業者名を公表する」こととされているが、同法が国に制定を義務づけた「適正化指針」では、この公表の時期について「個別の入札及び契約に関する事項は、契約を締結した後、遅滞なく、公表すること」(註4)と明言している。

 また、「適正化法」施行令(註5)では、指名業者名を「契約の締結前に公表することを妨げない」としているが、この「契約の締結前」(落札業者が決定している段階)を「入札前」(落札業者が決定していない段階)にまで拡大解釈することは困難であるばかりか、きわめて不適切である。

3)国交省の見解について

 「透明性の確保」「不服申立ての機会の確保」のため入札前に公表するという国交省の見解は、公正取引委員会の見解からすれば問題があるし、上記に示すように法律や指針、施行令の解釈・運用を誤っているとさえ言わなければならない。

 「指名業者の事前公表」から「入札」までの期間、「指名されなかった業者」が実際に正式に不服申し立てなどをおこなった事例は、国交省北陸地方整備局でもごくわずか(昨年は0件)であり、新潟県はじめ県内の全市においては、過去数年間確認する限りほとんど皆無である(現在事後公表に切り替えている自治体も含めて確認済)。したがって、上記国交省の認識はそもそも実情に即しておらず、「不服申立機会の確保」を建前に、「談合の危険性」を放置してきたと言っても過言ではない。また、そもそも「透明性」「不服申立機会の確保」については、入札後に公表する形でも充分担保されるはずである。

4)「橋梁工事談合」でこの制度運用が果たした役割

 520日から各紙で報道されているニュースによれば、今回問題となっている鋼鉄製橋梁工事談合事件で、「47社で作る談合組織が、受注調整に応じない福島県の橋梁メーカーを排除するため、このメーカーが参加した入札では大幅に価格を下げて応札していた」(別紙2)ことが明らかになり、公取委と検察当局はその悪質さを重視している、とのことである。この「受注調整に応じない」業者が「入札に参加しているかどうか」こそ、「指名業者の事前公表」という制度運用によって容易に確認できるものであり、この制度運用が「談合そのもの」だけでなく、「談合に参加しない企業の排除」にも悪用され、談合をより確実にするものになっているということが言える。

(なお、当該の工事は公募型指名競争入札でおこなわれているが、同省の公募型指名競争入札の場合は事前公表が一般的である)

5)「秘匿性の低下」という認識について

 上記1)に示すように、「入札ガイドライン」(前掲;註3)では、事業者間または事業者団体が「指名や入札参加予定に関する報告を求めること」を、「独禁法違反となる恐れがある」と明確に規定している。

 したがって、公共機関が「仮に非公表としても指名通知後は(業者間の情報交換によって)秘匿性が低下する」という認識を持つこと自身、「違反となる恐れがある行為」(極論すれば談合もしくは類似行為)を前提としたものであり、重大な問題である。


<提言>

 新潟市談合事件に関する調査委員会報告では、指名業者名の事前公表が重大な問題であったと指摘されており、貴機関においても、「透明性の確保」という根拠が仮にあったとしても、新潟市の事件や橋梁談合事件で明らかになった問題を教訓に、制度の再検討・見直しを図るべきであると思います。また、県内の半数以上の市が入札制度改革の中でここ2,3年のうちに事後公表へと切り替えている現状からしても、国も早急な対応が望まれると思います。

 そこで私たちは、貴機関に対し、この問題について以下のように申し入れ・提言します。

 

1.入札及び契約に関連する諸法令ならびに独禁法等の適切な解釈に基づき、また、その理念を遵守し、入札前に指名業者名を公表することはただちにやめ、入札後または契約後に適正に公表すること。また、現在一部事後公表を試行しているとのことであるが、前倒ししてただちに全てを事後公表とすること。

2.これらの情報については、入札または契約後公表するまでは秘匿事項とすることを要綱等で明文化し、情報の管理を適正に行なうこと。

3.その上で、「入札ガイドライン」(1994年、公取委)の考え方に基づき、指名通知の際は、指名を受けた業者に対し、指名を受けた旨の情報交換が独禁法違反となる恐れがあることを明らかにし、そのような報告や情報交換をしないよう指導すること(これについては一部試行中の事案でもただちに実現すべきである)。

4.上記「3」も含め、「適正化法」第20条(註6)に基づき、各公共機関は、公共工事の入札及び契約が適正に行なわれるよう、職員や関係業者に対して関連法令やその理念趣旨に関する周知や教育、研修を強化すること。

 

 

以上

 

連絡・問い合わせ先:中山均●●●●●

新潟市真砂1-21-46●●●