「人権と教育」月刊314号(2000.2.20)

戦争賛美集会に施設を貸してなにが平和か

−−国際平和センターは初心にかえれ


ご承知のようにここ数年来、 先のアジア・太平洋戦争の本質が日本のアジアヘの侵略戦争であったことを否定し、 歴史事実として確定しているはずの南京大虐殺すら「でっち上げ」 あるいは「まぼろし」であるとして、歴史を歪める運動が強まってきている。 次に掲げるのは、 そうした類の「20世紀の最大のウソ『南京大虐殺』の徹底検証」集会に、 大阪国際平和センター(ピースおおさか)がその設立の理念に反して、 施設使用を許可したことに対する津田道夫氏(「実現する会」事務局員)の 個人的発意にもとづく「抗議と要請」文である。 津田氏は個人的発意であるとはいえ、人権と民主主義、 平和主義の憲法的理念を実際行動で示すことが、 「実現する会」事務局員の責務であると自覚し、こうした行動に踏み切った。 本紙編集部としても事柄の重大性に鑑み、ここに掲載する。 編集部


抗議と要請

前略、去る1月13日の朝日新聞で知りえたのですが、 大阪府と大阪市が設立した大阪国際平和センター(ピースおおさか)は、 「戦争資料の偏向展示を正す会」主催の 「20世紀の最大のウソ『南京大虐殺』の徹底検証」なる集会に、 施設使用を許可したということです。 この集会は、藤岡信勝との共著である『「ザ・レイプ・オブ南京」の研究』に、 「日本人に『自虐史観』を植え付けるための最大の『教材』となって来た 『南京大虐殺』のウソが通用しなくなる日も、そう遠くはない」 と書くような東中野修道をメインの講師に迎えることにも象徴されるように、 世界公知の日本侵略軍による南京大虐殺を 「ウソ」とたばかるような性質のものであります。 それが、たとえば「加害の事実を踏まえて平和の尊さを伝える」ということをも、 基本理念の一つとしている「ピースおおさか」の設立趣旨に 大きく背反しているのはいうまでもありません。 かつまた、このような集会に使用を許可したことは、歴史の事実を損ねるだけでなく、 この戦争犯罪とはっきり向き合い、 そのことを通して日中友好の前進に寄与しようとするものの 民族的誇りをも著しく傷つけるものです。

お祭り気分で小学2年の折、「祝南京陥落」の旗行列に参加した私は、 そのことと今日の状況とを重ねて、 1995年『南京大虐殺と日本人の精神構造』(社会評論社)を上梓しました。 そうした私の個人的モチーフからいっても、今回の会場使用許可を、 まことに遺憾なものと認めざるをえません。

今次の貴殿の措置に強く抗議するのと併せて、 「ピースおおさか」の理念からいっても、 会場使用許可を取り消されるよう強く求めます。

なお、私は別に「抗議文」をお送りした 「ノーモア南京の会」(代表・田中宏)の会員であり、 東史郎にかかわる南京事件裁判では、 東側の正義と人権の立場にたって発言もしているものであることを 付言させていただきます。

    2000年1月18日
        埼玉県久喜市本町8−2−22
                  津田道夫

大阪府副知事殿
大阪市市長殿
大阪国際平和センター理事長殿


「人権と教育」編集部のご厚意により再録させて頂きました。


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