2003年6月4日

文部科学大臣  遠山敦子 様

衆議院議長   綿貫民輔 様

参議院議長   倉田寛之 様

 

 

要請書

 

 

私たちは、すべての暴力が克服され、すべての人が平和に共存する社会を希求し、その実現のためには、未来を担う子ども・青年たちに平和教育が必要だと考え、次のことを要望します。

                                            

1.学校教育の中に憲法9条と教育基本法に基づく平和教育の場を保障する条件整備をすること。

 

 

子ども・青年たちが平和への理想を抱いて未来社会をつくっていくためには、現実社会への洞察と、過去の歴史を知ることが肝要です。そのために、きちんとした歴史教育を行うことが必要です。特に15年戦争における侵略、軍隊強制「慰安婦」、強制連行労働者・徴用工に関わる事実など、アジア諸国とのこれまでの歴史の真実を知ることは、これからの日本の歩みを正しい方向に向けるために不可欠ですし、国際社会に生きるうえでも必要です。「教科書検定訴訟」最高裁判決においても「七三一部隊」をはじめとする日本軍の残虐行為が確認され、大野正男裁判長は「我が国が近現代において近隣諸国の民衆に与えた被害を教科書に記述することは特殊な片寄った選択ではなく、また自国の歴史を辱めるものでは決してない。」と述べました。子ども・青年たちが歴史の事実を学び、自国の犯した過ちについて潔く謝罪と悔い改めの意識を持って未来へ歩み出すことこそ、誇りある前進となります。

 

 さらに2000年に東京で開かれた女性国際戦犯法廷とそのハーグ最終判決、また、沖縄戦とその後の沖縄政策に関する歴史事実など、戦争と暴力を、女性や少数者の視点から検証することも必要です。

 

また、暴力の原因となる差別の罪悪と差別を克服する学びも肝要です。特に南北格差・地域経済とグローバル化などの国際関係、性・出自・子ども・老人・路上生活者・民族・宗教など、あらゆる「違い」による差別に気づき、これをなくす教育が望まれます。

 

 平和を希求するすべての人の願いにもかかわらず、世界はいまだ戦争と暴力の恐怖に脅かされています。武力で平和を創れないことは歴史と現実が証明しています。人間としての恥である暴力を捨て、人間としての誇りである叡智と言葉によって相互理解と和解を生み出して行くことこそが、平和構築への現実的な取り組みです。これから平和を創ってゆく輝かしい子ども・青年たちの教育、すなわち平和教育の根幹となる精神とその具現化が、憲法と教育基本法に示されています。日本国政府文部科学大臣・国会は、憲法と教育基本法に基づく平和教育の場、即ち時間と場所の保障と、政府が保有する資料の提供等、条件整備の権能を果たされるよう要請します。  

 

 

日本キリスト教協議会

                             議 長  鈴木 伶子

                             総幹事  山本 俊正
 

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